第七十九話 宿命の一騎討ち
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幽助と対峙している仙水は、今にもとびかかってきそうな幽助を前にしても、冷静で、微動だにせず、右手の人差し指を額に持ってきて、口を開いた。
「霊界探偵を続けている内にね…心が何処かから腐っていくのがわかるんだ」
「………」
「だが、それを止めようと努力する気がおきない。何故かわかるかい」
問われても、幽助は何も答えず、仙水を睨むように見るだけだった。
「その腐蝕部分こそ、本当のオレだということもわかってくるからさ。君もいつかきっと気づく。何かの為、誰かの為に闘っているうちに、段々…闘うために目的を探すようになる。血だけ見たくなるんだよ」
そして仙水も、問いだしたというのに、幽助の返答を待たずに、ただ淡々と自分の心のうちを話していた。
「穴なんか、もうどうでもいいんだよ。お前と対峙するこの瞬間が、最も大事なのさ」
仙水が本音を語ると、幽助は耳の穴をかっぽじった後、突然仙水の視界から消えた。
そして、一瞬で間合いをつめ、仙水を横から殴ろうとした。
仙水も応戦しようとするが、その前に、幽助に顔を殴られてしまう。
いきなりのことと、強い力のため、かなり後ろまでとばされてしまった。
だが仙水は、体勢を崩すことなく、足で立ってふんばった。
「バカかてめェは。それなら、「どっちか死ぬまでやろう」でいいじゃねェか。なぜ、はじめからオレにケンカ売ってこねェ。こうでもしなきゃ、オレが逃げるとでも思ったのかよ。
ムカつくぜ、てめェ」
幽助は仙水を、先程よりも、更に強く睨みつける。
「ククク、お前はシンプルでいいな。それもよかろう」
仙水は右手に霊気の球を作り出し、戦う態勢に入ると、幽助もまた身構えた。
第七十九話 宿命の一騎討ち
「浦飯くん…。君のパワーを10とすると、オレは6と7の間くらいだろう」
いきなり話しだした内容に、幽助は何がなんだか訳がわからず、一旦構えるのをやめた。
「スピード、バネ、スタミナ、全て君が上だろうな…。だが、君はオレに勝てない。なぜかわかるかい?」
「理由はカンタンでーー。てめーの頭がイカれてんだよ」
幽助は答えを返すと、仙水のもとに向かって走りだす。
「そのタマ、蹴るヒマ与えねーぜ!!」
幽助は全力で仙水に殴りかかっていった。
だがその拳は、仙水に、片手であっさりと止められてしまう。
何度も何度も攻撃するが、全て受け止められるか、軽くいなされてしまう。
「くっ」
それどころか、仙水の蹴りは、かする程度だが自分にあたり、血まで流れてしまう。
「うらぁーー!!」
けど、それでも幽助は、仙水に殴りかかろうとするが、またしても、仙水に軽くいなされてしまい、それどころか蹴りとばされてしまった。
幽助は地面にたたきつけられ、後ろへふっとんでいく。
「でで」
今のでダメージをくらったが、幽助はすぐに起きあがった。
「てめーうそつき!!オレの方がスピードあるなら、なんでパンチが当たんねーんだよ!!」
先程の仙水の説明とは違うので、幽助は仙水に文句を言った。
「君が勝てない理由その1。オレには君の攻撃が、なんとなく読める」
「なんとなくだァーー!?子供かてめーは!キッチリ説明しやがれ!!」
だが、理由をきいても全然納得できず、ますます怒っていた。
「つまり、キャリアさ。生まれたときから妖魔と戦ってきた戦歴。さっきみたいに不意をつかれ、攻撃をくらっても、戦いのカンってやつが反射神経よりも早くオレを動かし、致命傷をさける」
「ケンカの数なら負けてねーーーー!!!」
キッチリ説明はされたものの、負けず嫌いな性格からか、再び仙水に向かっていった。
幽助は仙水の前まで来ると、仙水ではなく地面を殴った。
「くっ」
そのことで土煙が起こり、仙水は周囲が見えなくなる。
「上か!!!」
煙の向こうに、何かが跳びあがるのを見た仙水は、上を見上げた。
しかし、それはただの岩だった。
「下だよ」
幽助は仙水の足もとに身を低くしており、仙水の隙をついて、連続で腹部を殴り続ける。
そして最後に腹部に重い一撃をくらわせると、仙水は後ろにふっとんでいき、湖に落ちた。
「よっしゃあーーーー!!!浦飯必殺メニュー、内臓殺し!!オレはあれで、一週間メシが食えなくなったんでー!!」
幽助の攻撃が見事にあたったので、桑原はガッツポーズをして喜んでいた。
しかし、後ろにいる樹は余裕の笑みを浮かべていた。
「上がってこい、コラ!!まさか溺死なんてオチじゃねーだろーな」
幽助が叫ぶと、湖の中から仙水が顔を出した。
「やれやれ、服がボロボロになってしまった」
地面に上がってきた仙水の服は、先程の幽助の攻撃で、ボロボロに破けてしまっていた。
その体を見て、全員驚く。
それは、仙水の服の下の体には、たくさんの傷があったからだ。
「す、すげェ。傷だらけだぜ。百戦錬磨ってのは伊達じゃねぇな」
「桑原くん、それは違う」
こちら側にいても、亜空間にいる桑原の声が聞こえるようで、裏男……正確には、その中にいる桑原の方を見て、桑原が言ったことを否定する。
「これは修業中に、自ら負った傷だよ。敵につけられた傷など一つもない」
「(いいガタイしてやがる。ぶ厚いタイヤを殴ったみてーな感触だったぜ)」
幽助が仙水をジッと見ていると、仙水の背後の湖から、先程仙水が持っていた霊気の球が出てきて、仙水の元へとんできた。
「気の塊の遠隔操作もできるのか」
「やっかいだな」
「これだと、離れた場所にいても、攻撃できてしまう。しかも、実力は幽助より仙水の方が上だ」
連続攻撃があたっても、全然きいておらず、こちらが不利な状況だったというのに、更に不利な状況になったことで、樹は軽く笑った。
「むん!!!」
仙水が霊気を集中させると、たくさんの霊気の塊を作り出した。
それは、仙水を囲むように宙に浮いている。
「な…なんて数だ!!あの球の力、全部足したら、浦飯の霊丸と同じ…いや、それ以上かも」
それを見て、幽助だけでなく、桑原も驚く。
「少々本気を出すか」
そう言った仙水の言葉に、幽助はいつきてもいいように、構えをとった。
「行くぞ」
すると、周りに浮いていたたくさんの霊気の球が、仙水の足元に、一つになってかたまる。
あれだけたくさんあったというのに、思ったよりも小さな……だけど、大きな力が凝縮されたような球となった。
「裂蹴ゥゥ紫炎弾!!」
仙水は右足を後ろにひくと、一つにまとまった霊気の球を蹴った。
蹴ると、球は先程と同じ大きさの複数の球になり、いっせいに幽助に向かってきた。
「(数が多すぎる!!) ちィ!!」
幽助は必死でよけていく。
けど、最初のうちはいくつかよけることができたが、球の数が多く、横からとんできた球が、顔の側面にあたってしまう。
そのせいで、幽助は倒れそうになってしまい、その隙に、次々ととんできた球にあたってしまった。
「くっ」
体勢を崩すが、なんとか立て直すものの、別の球が、幽助を狙ってとんできた。
「く!!!」
その球をよけるために跳びあがるが、背後にまわった仙水に、強烈な蹴りをくらわされた。
「がっ…」
蹴りとばされると、幽助は地面にたたきつけられてしまう。
「ぐわっ」
それだけでなく、また霊気の球が次々と襲ってきて、すべての球があたった。
「うらめしィーーー!!」
桑原が叫んでる間にも、球は容赦なく幽助に襲いかかり、そのせいで土煙がたちこめ、幽助の姿が見えなくなる。
「まさか…やられちまったのかよ、オイ」
「浦飯さん…」
「心配ない。あのていどでやられる幽助じゃない」
「あの球は、見た目より威力はないようだ。そんなにはダメージをくらわないだろう…」
「本当ですか?」
ふり返りながら聞く御手洗に、蔵馬は優しく笑ってうなずく。
「(だが…さっきのような攻撃を、何度もくらったら…)」
どんな小さなダメージでも、立て続けにくらってしまったら、ダメージは大きくなる。
御手洗にはああ言ったものの、蔵馬は幽助のことが心配だった。
「ぐ くそっ」
土煙が起こる中、幽助はなんとか手足を動かした。
「ふぬっっ。まだまだァ」
そして、多少ダメージをくらいながらも立ち上がる。
「フフフ、さすがにタフだな…。しかし君は勝てない。
理由その2。君は多角的な攻撃にひどく弱い」
「何ィィ?」
「君は、一対一の戦いに慣れすぎている。逆にオレは、いつも一人で大勢の敵を相手に戦ってきた…。その結果生まれた技が、この裂蹴紫炎弾。とうてい君一人で避けきれる技じゃない」
仙水はまた霊力を高め、周りに無数の霊気の球を作りだした。
「バカな…。ちくしょォ。あれだけの霊気を放出したすぐ後で、また同じだけの力を」
あれだけ霊気を放出すれば、次は多少は疲れが出るだろうに、まったく疲労もみせず、先程と変わらない力に、幽助は驚いていた。
「まずい…まずいぞ」
「えっ」
「まさか、こんなに差があるとは……」
これは蔵馬も想定外だったのか、顔がくもり、顔に冷や汗をかいた。
「そして、決定的な理由、その3。霊気の全容量、すなわち霊力値の差だ。
君の霊力値を10とすると、オレは100だ!!」
3つめの理由を説明すると、その顔に、余裕に満ちた笑みを浮かべる。
「裂蹴紫炎弾!!」
仙水は、再び裂蹴紫炎弾で攻撃をしてきた。
幽助はよけるものの、またしてもくらってしまう。
「これで二発目。君にはこの攻撃は避けられんよ」
まさに手も足も出ない幽助に、仙水は相手を見下すように笑っている。
「立てェ。立ちやがれ、浦飯ィィ!!」
二度も同じ攻撃をくらい、倒れたことで、桑原は激励した。
「わかってらァ。外野はだまってろ」
桑原に激励されると、先程よりもダメージがあるはずなのに、幽助は立ちあがった。
「へっへーー。平気平気。霊力値がオレの十倍だかなんだか知らねーがよ。こんな攻撃、"へ"でもねーぜ」
「フ…。よかろう。ならば、何発でもくれてやる。
くらえ、裂蹴紫炎弾!!」
仙水はまた裂蹴紫炎弾を放つ。
「うおお」
球がこちらに向かってくると、幽助は、今度はよけるのではなく、球に向かって走りだしたのだ。
「む」
それには、瑠璃覇達だけでなく、仙水までもが驚いた。
「いたくねー!!」
幽助は球をはじきながら、仙水のもとへ走っていったのである。
「避けられねーならガマンするだけでーー。攻撃は最大の防御だぜ」
球の中につっこんでいったのは、戦法を変えたからで、仙水の近くまで来ると、幽助は宙にとんだ。
「ほお…」
亜空間の中では、戦法を変えた幽助を見て、樹が感心していた。
「あのタマの攻撃力が弱いと判断して、攻めに徹する気か。切り替えの早い、幽助らしい戦法だな」
そして、蔵馬の顔からは、先程の不安や焦りはなくなっていた。
幽助は地面に着地すると、仙水に連続で殴りかかった。
「どーした。何発でも、撃つんじゃなかったかァ」
「ちっ」
その攻撃に、仙水は防戦一方で、その勢いに少しずつ後ろにさがっていく。
幽助の思わぬ反撃に、仙水は小さく舌打ちをした。
「てめーの言ってた、オレが勝てねー理由ってやつを、一つつぶしてやったぜ。あと、オレの攻撃を読めるとかいってたなァ」
幽助は攻撃を止めると、後ろにジャンプして仙水から少し離れた。
「これならどーだァーー!!」
後ろにさがると高く跳び上がり、湖にとびこんだ。
その行動に、みんな目を丸くして、あいた口がふさがらない状態になる。
「ブァハハハ。どーだ!!よめるか!?オレ様の次の行動がーーー!?」
湖にとびこむと、幽助は何故か、湖で泳ぎ始めた。
「バカかてめーはァ。泳いでどーする」
「確認せんでもバカだ」
「確かに行動がよめんな。バカすぎて…」
この幽助の行動を見て、瑠璃覇、飛影、桑原の三人は、呆れ顔でつっこんだ。
少し泳ぐと、幽助はすぐに、湖からあがってきた。
「あーーー、一泳ぎしてすっきりしたぜ。よっしゃ、戦闘再開。
うらぁ!!」
陸にあがると幽助は、まっすぐに仙水に向かっていった。
「フッ、またお決まりの鉄拳攻撃か。さっきの茶番は、体力回復のための時間稼ぎといったとこだろ」
今までの攻撃を見て、仙水はそう判断した。
しかし幽助は、自分が着ていたぬれたTシャツを破り、それを仙水の左腕に巻きつけた。
「あ!!ボロボロになった濡れたTシャツを自ら破って…」
「これで仙水の裂蹴拳を封じることができる」
「ああ。少なくとも、あいつの動きを制限させられるな」
ただ、バカみたいに泳いでいたわけではなかったので、瑠璃覇達は驚いた。
「水に入ったのはこのためか!!」
「ようやくつかまえたぜ。これでフラフラ逃げれねー」
このことには、仙水も驚いて固まってしまう。
「くらえーー!!」
「ぐっ」
その隙に幽助は、仙水の腹に、拳がめりこむように殴った。
その勢いで後ろにふっとび、地面に倒れると、仙水の上に馬乗りになり、顔を何度も殴りつける。
「うおお。形勢大逆転ーーー!!イッキだ。一気に決めろォ!!」
完全に幽助が優勢になったので、桑原の応援にも力が入った。
幽助は、もうとにかく殴って殴って殴りまくった。
「オラ、も一丁ォ」
何回殴ったかわからなくなった時、急に仙水の目が怪しく光った。
そして、拳をふりおろそうとした瞬間、幽助の腹を、何かが撃ちぬいた。
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