第六十四話 四次元屋敷への招待状
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あれから瑠璃覇は、授業が始まる前に、再び教室から出ていった。
すると、スカートのポケットに入れてある霊界コンパクトが、突然鳴りだした。
「なんだ?」
《瑠璃覇ちゃん、こちらぼたんよ》
「みりゃわかる」
周りに誰もいなかったので、瑠璃覇はコンパクトを開く。
出たのはもちろんぼたんだった。誰が出るのかは、最初からわかりきっていたことなので、瑠璃覇は冷たく返した。
《もぉ~~、相変わらず冷たいんだから…》
「なんの用だ?」
《そうそう。実はね、久しぶりに霊界探偵の仕事が入ったんだよ》
「最近なかったのに…。とうとうきたのか」
《そんなにめんどくさそうな顔をしないどくれよ。それより、最初は幽助と話をしてから瑠璃覇ちゃんにも…って思ってたんだけど…。皿屋敷中学校は、もう授業始まっちゃったから伝えられなかったんだよね》
「だからなんだ?」
《うん。だからね、放課後にもう一度幽助に会いに行って、その時に伝えるつもりなんだ。そのあとで、瑠璃覇ちゃんとこにも行って伝えるから、予定をあけておいておくれよ。そんじゃあね》
「あ、ちょっと…」
ぼたんは瑠璃覇の都合を聞かず、一方的に用件を言うと、瑠璃覇の返事を待たずに霊界コンパクトを切ってしまった。
「…………自分勝手……」
コンパクトが切れると、少しイラついた瑠璃覇は、コンパクトに向かって、低めの声でぼそりとつぶやいた。
第六十四話 四次元屋敷への招待状
それから、早々と放課後になった。
「すみません。もうすぐ下校時間になりますので、もし本を借りる人がいたら、今のうちに手続きをしてください」
もうあとちょっとで下校時間となるため、貸し出しカウンターにすわっている図書委員は、図書室全体に聞こえるような声で案内をした。
「(もうそんな時間か、早いな)」
図書室で、一人本を読んでいた瑠璃覇。
案内があり、図書室の壁にある時計を見てみると、17時をまわっていた。
「(もうこんな時間か…)」
時計を確認すると、読んでいた本をとじ、席を立った。
「(もうそろそろ、蔵馬を迎えに行くか)」
今日は、蔵馬は部活があるので、図書室で暇をつぶしていた瑠璃覇だったが、もう図書室も閉まるし、今までの経験からすると、もうそろそろ終わるだろうと思った瑠璃覇は、本をもとの場所に戻すと、図書室をあとにし、蔵馬がいる生物室へ向かった。
その頃生物室では……。
「なぁー南野ォ、頼むよォ」
今は部活の最中で、蔵馬は白衣を着てビーカーをなぶっているが、後ろにいる3人の男子生徒はそのままの格好で、真ん中にいる一人の男子生徒が、蔵馬に頼みごとをしていた。
「部長になってくれよ。このとーりだ!!」
手を顔の前であわせ、何がなんでもといった感じに、蔵馬に頭をさげている。
「先輩、オレまだ2年ですよ。責任感ないし」
ずっと手に持っていたビーカーを机に置くと、男子生徒の方へふり向き、あっさりと断った。
「いや、そんなことはない。我が弱体生物部を救えるのは、君しかいないんだ!!」
それでもめげることはなく、蔵馬が言ったことを否定する。
両隣に立っていた二人の男子生徒も、その通りだというようにうんうんとうなずいた。
「学年トップで、女生徒にも絶大な人気のある君にしか、生徒会予算の増額を勝ちとれない!!たのむ!!」
「「たのむ!!」」
再度頼みこまれ、両隣の男子生徒も一緒になって頼みこんでくると、蔵馬はその勢いに、体が後ろにさがる。
「秀一」
そこへ、瑠璃覇がやって来た。
「秀一、もう部活終わったか?一緒に帰ろう」
「瑠璃覇」
何も事情を知らない瑠璃覇は、まるで蔵馬以外の男子生徒は目に入っていないという感じで、蔵馬のもとに歩いてきた。
突然の瑠璃覇の出現に、天の助けとばかりに蔵馬はほっとした。
「ああ、もう終わるよ。一緒に帰ろうか」
少し早口でしゃべり、そこから去ろうとする。
「待ってくれ、南野。まだ話は」
「話?」
「南野に、部長になってくれないかという話なんだ」
「部長?」
「あの…その話は…」
「人にものごとを強制するのは、よくないと思うぞ」
「じゃあ、銀さんが我が生物部に入ってくれないか?南野と銀さんなら、鬼に金棒だ!!成績優秀!スポーツ万能!才色兼備!その上、男子生徒に絶大な人気のある君がいてくれれば、生徒会予算増額を勝ちとれると思うんだ!!」
「断る」
ただ蔵馬に助け舟を出しただけなのに、瑠璃覇は急に部活勧誘をされる。
だが、必死に頼みこまれても、瑠璃覇は間髪いれず、包みかくしたり遠まわしな言い方もしなければ、考えもせず、即座に断った。
あっさりと断られたことにより、男子生徒はガクッと肩を落とす。
「じゃあ、南野!!せめて君だけでもうんと言ってくれ。部長になってくれよ」
「いや…あの…」
「なあ…後生だからたのむ!!」
「「たのむ!!」」
「そんなこと言われても。すいませんけど…」
どう言ってもあきらめそうにないので、そこから逃げるように教室を去ろうとした。
「ま、待ってくれェ!!」
しかし、そんなことであきらめるわけもなく、あわてて走っていき、蔵馬と扉の間に立ちはだかると、行く手を阻んだ。
「うんと言ってくれるまでは、ここを動かんぞォお」
「弱ったなぁ…」
あまりにも必死すぎる相手に、どう対処しようかと悩んでいた。
「蔵馬ァーーー!!瑠璃覇ァーーー!!」
その時、何故かここにいるはずのない人物の声が聞こえてきた。
「ん?あの声は…」
「まさか…」
それは桑原の声だった。
この学校の生徒じゃないどころか、高校生ですらないので、何故こんなところに桑原がいるのか、二人はふしぎに思った。
「どこだああ!!出てこーーーーい!!蔵馬ァーーーー!!瑠璃覇ァーーーー!!」
「ちょ、ちょっとォ。声が大きいわよ」
「大きくなくちゃ聞こえねーだろーがよ。
おら出てこい。蔵馬ァーーーーー!!瑠璃覇ァーーーーー!!」
あまりに大きい声の上、他校の生徒……しかも中学生なので、桑原の存在は目立っていた。
一緒にいたぼたんは、あわてて止めようとするが、そんなことを聞く桑原ではなかった。
「南野ォ!!お願いだ、うんと言ってくれ。なっ」
場所は生物室に戻り、男子生徒は、まだめげることなく蔵馬に頼んでいた。
桑原の声に気をとられていたのもあり、蔵馬は余計にあわてる。
「あっ、いや…あの…今それどころじゃ…」
「なぁあ、南野ぉお」
「蔵馬ァーーー!!瑠璃覇ァーーー!!」
了承してくれないどころか話をそらされそうになったので、目じりに涙を浮かべながら蔵馬に詰め寄る男子生徒。
だがその時、桑原の声が大きくなったかと思うと、いきなり男子生徒の後ろの扉が蹴破られ、ちょうど扉を背にしていた男子生徒は、その衝撃で、はずれた扉の下敷きになってしまった。
「おーー、いたいた。探したぞ、瑠璃覇、蔵……お?」
「ありゃま」
蹴破った時はわからなかったが、瑠璃覇と蔵馬をみつけて話していた時、ようやく、自分が蹴破った扉で、下敷きになった生徒がいたことに気づいた桑原だった。
「君たち……なんだい?」
「蔵馬って?」
「あーー。いや、あの……気にしないでください。あだ名ですよ。ね、桑原くん」
「え?」
当然、南野秀一が妖怪だなんてことは知らないので、突然の桑原の出現と、蔵馬という謎の名前に、二人の男子生徒は顔をしかめた。
けど桑原は、蔵馬が誤魔化し、話をふってきても、何がなんだかわけがわからなかった。
「まずいですよ。ここでは南野!!」
「あっ、ワリィ」
小さな声で説明されて、ようやく蔵馬が言ってたことがわかった桑原だった。
「ところで、なんの用です?」
「おー、そうそう。これ見てくれよ」
蔵馬に問われると、制服のポケットから一枚の紙を取り出し、蔵馬に見せる。
側にいた瑠璃覇も、一体なんなのだろうと、蔵馬の隣に来て、桑原が出した紙を見た。
その内容は、こうだった。
〈今夜十一時、ろくろ首町、四次元屋敷にて待つ。何人でも可。ただし、桑原・飛影・蔵馬・瑠璃覇の四人は、必ず来ること。この条件を守らぬ場合、浦飯幽助の命は保証しない〉
とても簡単に言えば、幽助をさらったという内容であった。
「おめーら、心あたりあるか?」
「いえ、全然…」
「私もまったくないな…」
「11時まで、あと5時間しかねェんだ。おめーら、飛影の居場所知ってるか?」
「さあ、見当もつかないな。彼も霊界裁判で執行猶予中の身だから、そう遠くへは行かないと思うけど」
「私も……。飛影とは、あれ以来交流がないし……飛影の好みそうなところはわからないな」
「くっそォ…」
「こんなとき飛影がいてくれれば、邪眼で見つけられるのに!!」
「そうだぜ!!」
「「…は?」」
「相当あせってますね」
「うん…」
焦りながら変なことを言う桑原とぼたん。
二人は、自分達がおかしなことを言っているということに、全部言い終えてから気づき、そんな二人に、瑠璃覇と蔵馬は苦笑いをした。
その時、下からもがく声が聞こえてきたので、ふと下を見てみる。
「あ…」
「ぐ…ぐるじい…」
そこには、扉に下敷きにされた上、桑原とぼたんに、上から踏みつけられている男子生徒がいた。
それから四人は街に出て、今は皿屋敷中学校近くの歩道橋にいた。
「それで、どうするよ?」
「うん…。望み薄だが、手分けして探そう」
「ぼたん、コエンマに頼んで探せねーのか?」
「無理だよ。大体、人間界の事件を解決するために霊界探偵が……あ!!」
「え?」
「あった!霊界七つ道具よ」
「なんじゃそりゃ?」
「幽助に初めて指令を出したとき。そう!!指名手配中の、蔵馬と飛影。あれ、もう一人いたっけ?ま、いいや。とにかく、その時幽助に使わせたんだよ。すぐに壊しちゃってさ。霊界で修理したはずだけど。そのまま忘れちゃってたよ。ハハハハハハハ」
「なんか怪しげだな…」
「だが、今はそれに頼るしかなさそうだ」
「まあ、なんにもないよりはマシなんじゃないのか?」
「よしきた。あたし取ってくるわ」
「じゃあ、1時間後に公園で」
「わかった!」
待ち合わせの約束をすると、ぼたんは霊界に七つ道具を取りに戻るために駆け出し、瑠璃覇達は近くの公園へ向かった。
それから一時間後、ぼたんが七つ道具を入れたトランクを持って戻ってきた。
合流すると、ぼたんは地面にトランクを置き、それを開いて見せる。
「とりあえず、全部持ってきたけど」
「かーーー。スパイセットみてーだな」
「で、どれを使うんですか?」
「は?あ…えっと~…あ、そうだな。……あ…妖気計はどう?さらに高性能になって、どんな妖怪でもキャッチできるよ!!」
少し焦りながら、どこか自信なさげにぼたんが出したのは、妖気計だった。
「でも……それじゃあかえって、飛影だか誰だかわかんないんじゃ…」
「それに、まずここに、二人妖怪がいるしな」
「あぁ…」
けど、そこを瑠璃覇と蔵馬につっこまれ、また焦ってしまう。
なんとかしようと、妖気計の横のボタンを押して開いて見せた。
「で、でも…ほら!この中に探したい人の肉体の一部…例えば、カミの毛とか爪とか入れれば大丈夫。ちゃんと特定してくれるさ」
「で?飛影のカミの毛か爪はあるんですか?」
「あ……」
しかし、また蔵馬が疑問をぶつけるようにつっこんできた。
「う……そ、それなら、これはどう?霊透メガネ。これで、そこらへんをくまなく探せば…」
「あと1時間で?」
「あ………じゃあ、この霊撃リングで、そこらへん壊しまくっちゃったりして………ハ…ハ…ハァァ……はぁ…」
ろくな道具がないので、4人は同時にため息をついた。
「だあーー!!もう!!なんか他にねーのかよ!?」
「あー!あー!ちょっと、桑ちゃあん!!」
苛立った桑原が、勝手にトランクをあさりだしたので、ぼたんはあわてて止める。
「飛影を探す道具じゃなくて、こちらから呼びかける道具とかはないんですか」
「バーロー!!そんなもんがありゃ、最初から苦労はしねェ…」
「あるわ!!」
「ある!?」
蔵馬に言われて思い出したぼたんは、片方の手のひらを片方の拳でぽんっとたたくという、少々古いリアクションをとり、桑原はぼたんの返答にずっこけた。
「イタコ笛!!」
某ネコ型ロボットが便利道具を出す時のような感じで、ホイッスルの形の笛を取り出した。
「何故最初から、それを出さなかったんだ?」
「え?いや………あ…あの………それは…ちょっと……忘れてたというか…」
「あ、そう…」
今度は瑠璃覇につっこまると、しどろもどろで答え、瑠璃覇はその答えにあきれて、軽いため息をついた。
「この笛はね、普通の人間には聞こえない音波を発するの。霊力の強い人がふくほど、遠くにいる人に知らせることができるんだけど。あたしでも、半径100キロぐらいまでなら届くはずだよ」
先程とは違い、自信満々といった感じに説明をすると、その場を立ち上がる。
「すごい音だから、耳ふさいどいてくれ」
「お、おう!」
3人は後ろにさがり、言われた通りに耳をふさいだ。
「んじゃ、ふくよ!!」
ぼたんは息を吸いこむと、イタコ笛をふいた。
笛からは超音波のようなすごい音が響き、公園の鳥がいっせいに飛び立っていった。
「なんだ…この音…」
「た、たしかにすごい音だ…」
「そうか?オレには全然聞こえねーぜ」
あまりにすごい音に、蔵馬と瑠璃覇は顔をゆがめるが、桑原は至って平気そうだった。
「飛影、お願い。聞こえたら返事しとくれ」
笛を口から離すと、飛影にこの音が届いていることを祈った。
けど、そんなものは心配無用だったようで、ぼたんの後ろにある木から、飛影が逆さまになって落ちてきた。
「ん?あーー!!」
落ちた時の音に気づいてふり向いてみると、そこには探していた飛影がいた。
「カブトムシか?」
「うっ…。な、なんだ…。今のでかい音は」
至近距離で、あれだけすごい音を直接耳にしたので、飛影も顔をゆがめていた。
「ん?」
今の音を謎に思っていると、目の前に4人がやって来た。
「飛影、やっぱり来てくれると思ってたよ」
「ちっ。なんのことだ?オレは貴様らのところに来たつもりなどない。いい迷惑だ」
「飛影、これを…」
「ん?」
蔵馬はさっそく、あの手紙を飛影に見せた。
手紙を渡されると、飛影はその手紙を読む。
「フン。幽助の奴、ざまあないな。おおかた、暗黒武術会の優勝でいい気になってたんだろうが。後悔するだろうぜ。上には上がいたとな」
飛影は蔵馬に手紙を返すと、まったく興味なさそうに、踵を返してどこかへ歩き出した。
「興味はありませんか?」
「ん?」
だが、蔵馬に呼び止められると、足を止める。
「幽助をとらえるほどの奴に、興味はわかないんですか?」
「ないな。オレには関係ない」
冷たく返すと、再び飛影は歩きだした。
「あんたがこないと、幽助が殺されちゃうかもしれないんだよ」
「頭にくる野郎だぜ…」
飛影はまた立ち止まり、ふり返ると鋭い眼を向ける。
「生死をかけた戦いの後に、あっさりつかまるような大まぬけの面倒をみていられるか」
「では…仮に、敵の力がまったく未知のものだったら………」
けど、次に蔵馬の口から出た言葉に、飛影は反応を示す。
「オレと瑠璃覇もさっき聞いたんだが、最近人間の中に、妙な力を持った者が現れ始めているらしい」
「幽助はその人間につかまったというのか?」
「ねえ、飛影。あんた、霊界からの指名手配、まだ正式にとけてなかったね」
「だからなんだ?」
「幽助を助け出してくれたら、もう霊界は、一切あんたに関知しないってのはどうだい?」
「ゲッ!!おいおい、いいのかよ?」
「仕方ないでしょ!!時間ないんだから。それならいいだろ」
「晴れて無罪放免か。よし、いいだろう」
この条件に、飛影が口角をあげ、幽助救出を了承した。
「決まりだね。じゃあ、急ごう」
「よォーし」
紙に書いてあった11時まで、あと20分しかないので、5人は急いで四次元屋敷へと向かっていった。
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