第七十六話 本当の目的
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「幽助、瑠璃覇、よく聞いてくれ」
「ん?」
「なんだ?」
天沼が出てくると、蔵馬は幽助と瑠璃覇に話しかけた。
「正直なオレの意見だ。天沼が、実際のゲームのボスと同じ程度のレベルなら、十中八九、オレか海藤のどちらかが勝つ。だが、天沼は実際のボスより強いに違いない。だからこそ、このゲームを選んだはず」
「今までの魔人達とはケタが違うってんだな」
「そうだ。瑠璃覇と飛影では、このゲームで天沼には勝てない。そこで結論だが、もしオレと海藤が負けた場合は、一度ここを脱出することを考えてくれ」
「脱出!?」
無言でうなずく蔵馬は少しだけ冷や汗をかいており、とても慎重になっていることが、見るからにわかるほどだった。
「わかった…。もしもの時は、ここから出て、一度態勢を整えてから出直すとしよう」
「そうしてくれ」
瑠璃覇も、自分はTVゲームをやったことがあるにはあるのだが、それは人間界にやって来たばかりの頃に、人間界のことを学ぶために、かじる程度にやったことがあるだけ。それから16年間は、一度もやっていない。せいぜい、蔵馬の家に行った時、蔵馬がやっているのを見たことがある程度で、ゲームの経験はまったくといっていいほどにない。ましてや、ゲームバトラーの経験はまったくないので、普通の戦闘ならともかく、ゲームでの対戦となると、絶対に勝てないというのはやらなくてもわかるので、素直に蔵馬の指示に従った。
「(蔵馬が今までにねーほど慎重になっている。こんな蔵馬は初めて見るぜ。肌で相手の強さを感じられねェってのは、やりづれェ上に不気味だぜ)」
敵前逃亡が好きではない幽助だが、それでもチームのブレーンである蔵馬が、かなり慎重になってるのを見て、ただごとではないと感じたのと、自分自身もやりづらさを感じていたので、特に反対することはなかった。
「さーて」
そうやって幽助が考えてる間にも、天沼はスロットをまわしはじめた。
「久々にアクションゲームやりたいな」
ゲームが楽しくて仕方ないといった感じで笑う天沼。
しかし、スロットが止まり、示したのは、レベルGの一般のクイズだった。
「あいって~、クイズかァ~~~~。あんま得意じゃないんだよなァ~~」
それは、天沼の不得意分野だった。
「よーし、ラッキー」
これなら蔵馬の考えも杞憂に終わるだろうと、幽助はうれしそうな顔をする。
「オレがやるよ。クイズは負けたことがない」
天沼に対して海藤は、自分の得意分野なので、自信に満ちていた。
第七十六話 本当の目的
「たのむぜ海藤!!あと一勝すれば、オレ達の勝ちだーーーー!!」
海藤は眼鏡を上にあげると、操作台へと歩いていった。
天沼もすごいにこにこと笑いながら、操作台の方に歩いていく。
「自信たっぷりといった感じだな」
「ああ、得意じゃないと言ったわりには、ずいぶんと余裕のある顔だ。なんか気になるな」
先程言っていたことと、まったく逆の表情をみせる天沼を、瑠璃覇と蔵馬は疑問に思った。
「御手洗くん…。天沼の能力を詳しく教えてくれないか」
「実は、ボクもあいつの能力を、実際に見るのははじめてなんだ。だから、彼がゲームを現実化できるってことぐらいしか………。ボク達が今、ゲームの世界の中で戦ってるってことぐらいしかわからない」
蔵馬は、元仲間である御手洗に、天沼のことを聞きだそうとするが、御手洗も詳しくは知らなかったようだ。
「フフ、よろしく」
「本物のゲー魔王は、あくしゅなんか求めないぜ」
「はいはい。おもしろみのない奴」
「フン」
一方で、天沼は海藤に、にこにこと笑いながらあくしゅを求めると、海藤はそれを拒否したので、天沼はおもしろくなさそうに耳の穴をほじる。
「クイズは早押しの四択。十問先に正解した方の勝ち。答えを間違えてもマイナスは無し。ただし、間違い三回で即失格だよ」
「わかってる」
「それじゃ、始めようか」
《ゲー魔王対海藤。クイズスタート!!》
ゲーム開始の合図とともに、海藤はコントローラーをにぎる。
けど、天沼はまったく構えておらず、腕組みをして、余裕の表情で立っていた。
「ん?何のマネだ?」
「ハンデをやるよ。五問くらい。オレ、だまって見てるからさ。勝手に答えていいよ」
「ハンデ?必要ないと思うけど」
天沼だけでなく、海藤も余裕の表情で返す。
《それでは、第一問いきます!!アマゾ…》
ピンポーン
「何ィィ!!?」
さっそく一問目のクイズが出題されるが、海藤は「アマゾ」のたった三文字が出ただけでボタンを押してしまう。
画面には問題の「アマゾ」の三文字と、答えの選択肢が、AからDの四つが映しだされる。
これでは、何がなんだかさっぱりわからないというのに、海藤は迷うことなくCを選んだ。
《正解です》
選んだ答えは正解で、正解した時に流れる音楽が鳴り響いた。
「問題がたった三文字出ただけで、答えがわかったってのか!?」
「バトルクイズ一般の問題数は、全部で一万七千問。その中に、「アマ」ではじまる問題は、アマゾンに関する三問だけしかない。答えはそれぞれ、「ポロロッカ」、「ピラニア」、「アマゾン・ハイウェー」のどれか」
「も…問題全部覚えてやがんのか!!二万問近くある問題と答え全部…」
《ちなみに問1は、「アマゾンのアラグワリ河流域で起こる、河の水が逆流してしまう自然現象を何というか?」でした》
「オレに、ハンデは必要ないことがわかったかい?」
「二問目はじまるよ」
普通なら脅威を感じるところだが、天沼はまったく気にすることなく、表情を変えずに画面を見ているだけだった。
それから海藤は、その勢いで四問連続で正解した。
しかし、その間天沼は、まったく微動だにせずにモニターを見つめていた。
「よっしゃあ。これで5-0だ!!」
「すげーぜ。オレにゃあ答え聞いても一問もわからねえ」
自分達の側がリードしてるので、幽助と柳沢は単純に喜んだ。
だが、6問目が始まろうとした時……
「よし!!わかった」
「ん?」
急に天沼が声をあげ、明るい表情で妙なことを言い出したのだ。
「よーし。反撃開始だ」
やる気満々な天沼は、右腕をグルグルとまわした。
「わかった?何がだい?今までの五問は、オレの実力を探っていたというのかい」
「ベーー。バッカじゃないの。わかったのはもっと別のこと。あんたの実力なんか、はじめっから全然気にしちゃいないよーだ」
「……?」
と言われても、海藤にはさっぱりわからなかった。
「次の問題でわかるさ」
余裕で自信に満ちたりた表情で、画面に視線を戻すと、6問目が始まった。
《第6問、いきます!!》
ピンポーン
けど、まだ問題が一文字も言われていないうちに、天沼はボタンを押した。
当然、問題も四択の答えは出ず、何がなんだかわからない状態だった。
「(どういうつもりだ)」
「問題が全く出題されないうちにボタンを押せば、四択の答えさえ、画面には表示されないのに…」
「じゃあ、奴は全くのカンで答える気か!!?」
海藤だけでなく、幽助達もふしぎそうにしているが、それでも天沼の表情が変わることはなかった。
「問六の問題は、西暦二千年、地球に激突するという説が出て、話題となった小惑星の名前は何か?答えは、Bのトータチス」
しかし天沼は、問題と答えを当然の如く言い当ててしまい、迷わずBを選択した。
《正解です!!》
選択した答えは、天沼が言った通りBだった。
「な…」
「何だと……」
本当にBだったので、幽助達は驚きを隠せなかった。
画面には、天沼が言った通りの問題と答えが表示された。
「ほ…本当だ。奴の言う通りの問題だ!!問題を見る前に、答えまでわかっちまってる」
「ど、どういうことだ?」
「まさか、予知能力…!?いや!!何かイカサマに違いねェ」
「いや、違う。クイズの問題と順序。そして、答えの位置全てを記憶しているんだ!!」
「馬鹿な。このクイズの問題も答えも、全て順序はバラバラのはずだ」
幽助達も信じがたそうにしているが、一番信じられないのは、回答者である海藤だった。
「甘いね。バラバラに見せて、実は法則があるのさ。その公式を探し出すのに、大体五問くらいかかるんだけどね。ハンデ五問じゃ足りなかったかな?」
何故今までだまって見ていたかを説明した後、不敵な笑みを向ける。
「なるほどな…。得意じゃないと言っていたのに、自信に満ちた顔をしていたのは、そのためか…」
クイズは自信がないといったわりには、余裕のある顔で、自信たっぷりな笑みを浮かべていたことに、瑠璃覇は納得した。
その後も天沼は、問題が出題される前にボタンを押して、八問連取した。
海藤も、天沼と同じように、カンだけを頼りに同じ戦法で対抗するが、たて続けに二問間違える。
そして、十七問目…。
《不正解!!ゲーム終了。海藤、三回目の間違いで失格です》
答えを選択した後、不正解の音が鳴り、海藤の負けが宣言されてしまった。
「完敗だな。クイズの順番に、法則があることは気づかなかった」
「でもいいセンいってたよ。あんた強いよ。次は、別のゲームで戦いたいな」
今回の勝負は自分の勝ちでも、結果として負けている。
幽助達の側があと一勝すれば、次も何もない。
それなのに、無邪気に笑う天沼に、海藤は目を丸くしていた。
「くそ~~。海藤が負けちまった」
「あいつ、ハンパじゃねーぞ」
「あとはもう、蔵馬に頼るしか…。
あ、そういや、今まで四人が楽勝してたから気にしなかったが、天沼の領域の中でオレ達が負けちまったら、一体どうなるんだ!?見たところ、海藤は何ともないようだが…」
海藤は、自分が負けてしまったので、申し訳なさそうな顔をして、こちらへ戻ってきた。
「すまない。でも、なんか調子狂うよ。あの天沼ってヤツ。ただ、対戦ゲームをやって楽しんでるって感じだ。本当にあいつ、仙水のやってることわかって仲間になってんのかな?」
相手は小学生といっても、理解能力がある年齢ではあるので、海藤は疑問に思っていた。
「海藤…お前何ともないか?」
「ああ…。オレの能力みたいに、魂取られるくらいは、覚悟してたんだけど」
「もしや…だとしたら……」
「な、なんだ蔵馬。何かわかったのか?」
「多分、オレ達はゲームで何回負けても何ともない。だが、あきらめると死ぬことになる」
「何ィィ?どういうこった!?」
「本当のゲームでは、主人公側が負けるとゲームオーバーの表示が出る。その後で、「つづける」と「あきらめる」の表示が出て、どちらかを選ぶ。「つづける」にすると、オープニングを省略して、すぐ最初の一人からゲームを再開できる。だが、「あきらめる」を選ぶと…主人公達の墓をバックに、ジ・エンドの文字が出る」
「おいおい、ちょっと待てよ。それじゃ、天沼に勝たねー限り、ずっとここで、ゲームしてなきゃいけねーのか!?そんな時間はねーぞ、オイ!!」
「天沼は、はじめからオレ達と、命のやりとりをする気はないんだ。時間稼ぎが目的だ。界境トンネルが開くまでのな」
「その通り!時間がきたら、すぐに領域は解いてやるよ。あんた達は数時間くらい、オレとゲームを楽しんでいればいいんだよ」
蔵馬が自分達の目的に気づいても、天沼は余裕で笑っていた。
自分の領域は、ゲームで自分に勝たないかぎり解かれることはない。けど、自分はゲームには自信があるので、相手が自分の領域をやぶることは、到底不可能。その余裕からくる笑みだった。
その頃、洞窟の最奥では……。
「実に順調だ。驚くほど自分の力が高まっているのを感じる。多分あと二時間かかるまい。
見ろよ、忍。オレの後ろを」
そこにある湖の中心には小さな船が浮かべられており、その船の上には、樹がすわっていた。
更に後ろには、魔界の穴と、その中にはたくさんの妖怪が集まっており、穴が開くのを、今か今かと待っていた。
「明りをかぎつけた魔界の猛者が、ウヨウヨ集まってきている」
「ちょうど、この映画が終わるころだな。その時には、いい返事が聞きたいな、桑原くん」
「ケッ。死んでも協力なんぞするか」
仙水は湖の近くで映画を観ており、後ろにいる桑原に話しかけるが、桑原は仙水の頼みを拒んだ。
「仙水さん、やっぱこいつ、食った方がいいですよ。こいつ、本当に協力する気ないもん」
「あせることはない。あと、たった二時間じゃないか」
「同感だ」
協力を拒んだ桑原を見た巻原は仙水に提案するが、仙水は余裕で、樹も仙水に同意していた。
場所は、天沼の領域に戻る…。
「さーて、次やろうか。魔界とのトンネルが開通するまでの時間、オレとここでゲームしててもらうよ」
「そうか。あのガキ、はじめっから時間稼ぎが目的だったのか。だからこんなのん気に、ゲームを楽しんでやがるんだ」
「トンネルが開けば、オレがわざと負けて、領域は解いてやるよ。それっ」
天沼は次の対戦を決めるべく、スロットをまわした。
「くっそォ~…。いつまでも、こんなガキのゲームに付き合ってられっかよ!!なんか方法はねーのか!?」
「ゲームであいつを倒す以外ないな」
「飛影?」
「さっきから、炎を出そうとしてるがうまくいかん。海藤の能力と同じように、奴の領域の中では、ゲームをジャマするような力は使えんらしい。
――だとすれば、オレの出る幕じゃない。終わったら起こせ」
TVゲームすら知らなかった自分が、天沼に勝つことなど到底不可能なので、飛影は壁にもたれかかって目を閉じた。
「蔵馬、ゲームで勝算はあるのか?」
「わからない。しかし……もしオレの想像通りだとすると、天沼を負かすのは気が重いな………」
「どういうことだ!?」
「何かわかったのか?蔵馬」
「天沼の能力は、ゲームを実物大で体験できることだろ。本当のゲームの結末と同様に、オレ達はあきらめた時死ぬことになるが、ゲームを続ける限りはなんともない。要するにこの領域では、全ての人間はゲームのエンディング通りになるということだ。天沼は、自分の能力の本当のおそろしさを、自分でわかっていない」
「(まさか…な…)」
説明されても、幽助はまだよくわかっていなかった。
けど、瑠璃覇はこのゲームを知らないが、蔵馬の口ぶりからして、なんとなく想像がついた。
「(天沼は仙水に利用されているだけだ。仙水……!!何て残酷な事を思いつく男だ)」
天沼の能力と仙水の策略に気づいた蔵馬は、悲痛な眼差しを天沼にむける。
彼らが話しているとスロットは止まり、次のゲームが決まった。
次のゲームは、レベルGのスリーセブンというパズルのゲームだった。
「さ、スロットは決まったよ。次は誰が出てくるの?…と言っても、残ったうちの一人は、寝ちゃってるみたいだけどね」
「……オレがやる」
蔵馬は何かを決意したような顔で、操作台へと歩きだした。
「スリーセブンてどんなゲームだ?」
「テトリスやぷよぷよに代表される、いわゆる「おちもの」のゲームだ。
0から7までの数字が、いろんな組み合わせでおちてくる。これをタテかヨコが、合計「7」になるように消していく。ただしスリーセブンの名前の通り、7の数字は三つ並べないと消すことができない。
数字の落下はどんどん早くなる。それに対応して数字を消せずに、画面を数字で埋めつくしてしまった時点でそいつの負けだ」
「聞いてるだけで頭がいたくなってきた」
「慣れると何時間でもやっていられる。要するに、経験と集中力が勝負を左右するゲームだ」
「な、何時間でも!?」
「ああ。実際のゲームで、ゲー魔王と対戦した時は、決着まで二時間位かかった。
多分南野は、心理戦に持ち込む気だ。いかに相手の集中力を奪うかで、勝敗が決まる」
蔵馬の意図を察した海藤は、蔵馬に目を移し、他のメンバー(飛影はのぞく)も、蔵馬に注目した。
「天沼君…。聞きたいことがある」
「何?」
「「ゲームバトラー」で戦えと言ったのは、仙水じゃないか?」
「そうだよ。決戦の時は、「このゲームが最もふさわしい」ってね。オレも、このゲーム得意だしさ」
「(やはり…!!)」
今の質問は、自分の予想を確認するためのものであり、自分が予想した通りのことを天沼が言うと、予想は確信に変わった。
「君は、仙水のやろうとしている事がわかっているのか?」
「わかってるさ。魔界から、妖怪がウジャウジャ出てきて、大騒ぎになるんだろ?楽しいじゃん。学校もなくなるだろうしさ。オレは、自分の領域の中にいれば安心だしね。どんな妖怪だって、ゲームでオレに勝てっこないからね」
理解能力や自分で考える力があるといっても、しょせんはまだ子供。ことの深刻さがわかっておらず、無邪気なものだった。
その無邪気さが、余計に蔵馬の決断を苦しめることになった。
「このゲームで君が負ければ」
「ん?」
「君は死ぬ」
「えっ!?」
今まで無邪気にしていたが、蔵馬から残酷な一言が告げられると、一気に表情が曇る。
「えぇっ!!」
「なに!?」
「(やはりな…)」
衝撃の一言に、天沼だけでなく、幽助と柳沢も驚いた。
瑠璃覇は、先程の蔵馬との会話から、なんとなく想像がついていたので、冷静なものだった。
「それもわかってるかい?」
「びびらせて勝とうっての?セコイね。そんなウソにはだまされないよ」
「君は多分オレ以上に、このゲームのエンディングを、何度も見てるだろうな」
「エンディング?」
「ゲー魔王が負けると、画面にはっきりと「死ぬ」と出る。こういうゲームは意外に少ない。そして君の能力は、忠実にゲームの最後を再現する。
断言してもいいが、君は「ゲームバトラー」で能力を使うのは初めてだ」
「……確かにそうだけど。でも、それはこのゲームの相手が、八人も必要だからさ。他のゲームじゃ、別に何ともなかったぞ」
「いや…。ゲームバトラーに限らず、エンディングやプレー中に、死を暗示する様なゲームでは、その能力を使っていない。違うか?」
「それは…」
「それとなく、仙水に止められているはずだ」
「……確かに…」
蔵馬に言われ、今蔵馬が言ったことと同じようなことを、以前仙水に言われたのを、天沼は思い出した。
「待てよ蔵馬。さっき「天沼は、オレ達と命のやりとりをする気はない」って言ったじゃねーか。いくらなんでも、そんなガキが、命がけでゲームをやってるとは思えねーぜ!!」
「その通りだ。天沼本人にはその気はない。だが…仙水は…!」
自分の手を開いてみると、手の平に爪がささった痕があり、そこから流れた血が、指先や手の平に付着していた。
あまりに悲壮な決断をしていたため、強く拳をにぎりしめたせいだった。
「結論を言う。仙水は目的のために、君を犠牲にした」
再び拳をにぎりしめると、残酷な言葉を天沼に告げた。
結論を聞くと、天沼の瞳が揺れた。先程まで自分が否定していたことが、現実味を増したからだ。
仙水に犠牲にされたというのに、相当にショックを受けた天沼は、一瞬固まった。
《ゲームスタートです!!》
「あ…」
画面からゲーム開始の合図が聞こえると、天沼は現実に引き戻されたように、あわてて操作レバーをにぎる。
《先に数字のブロックが、上まで積み上がった方が負けとなります》
モニターはスリーセブンの画面に切り替わり、ブロックが落ちてきた。
天沼は、仙水に疑心を抱いたまま……揺れた心で、蔵馬と対決することになった…。
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