第七十一話 領域(テリトリー)を打ち破れ!!
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瑠璃覇は幽助を助けるために、先程この階にあがるために使った階段をめざして走っていた。
階段の近くまで来て、あとは階段を降りるだけとなった時、あるものが目にとまった。
それは、エレベーターだった。
階段の向こう側…。自分が今までいた場所とは逆方向の階段のそばに、エレベーターがあったのだ。
瑠璃覇はそれを見ると、あることを思いつき、階段の前を通りすぎて、エレベーターの前まで行った。
第七十一話 領域(テリトリー)を打ち破れ!!
瑠璃覇はエレベーターの前に立っていた。
そして、妖気を集中させると、閉ざされているエレベーターの外側の扉を、風の力で動かして開けた。
「よし。ちょうど下の方にあるな」
それは、いちいち階段を降りていくよりも、エレベーターを使って降りていく方が、早いと判断したためである。
それも、普通にエレベーターに乗って下まで降りるのではなく、エレベーターが移動する空洞のところを、一気に降りていこうという考えだった。
普通ならそんな考えには至らないが、瑠璃覇は普通ではなかった。
普通でないどころか人間ですらなく、妖怪なので、この程度の高さなら、余裕で降りることができるのだ。
瑠璃覇は扉を開け、下をのぞいてみると、都合がいいことに、エレベーターの本体は、一番下の階にあった。
途中の階にあると中途半端になるので、かえって無駄足になるが、一階にあれば、手間がかかることなく下に行ける。
瑠璃覇はニッと笑うと、一刻も早く幽助を助けるべく、そこからとび降りていった。
それから数秒後、瑠璃覇はエレベーター本体の天井の板を蹴破りながら、エレベーターの中に降り立った。
「!!」
エレベーターの中に降り立つと、そこにはあの虫がいて、瑠璃覇に襲いかかってきた。
しかし瑠璃覇は、エレベーターの中にいた虫達を、風を操って一気に倒していく。
虫はあっという間に全滅し、瑠璃覇は外に出るため、開のボタンを押した。
開のボタンを押すと扉が開き、扉の向こうから光がさしこんでくる。
完全に扉が開くと、エレベーターの外にいた虫達がいっせいに瑠璃覇に襲いかかってくるが、瑠璃覇はそれを、また風を操って、一瞬で倒してしまった。
その隙に、エレベーターの天井から虫がやってくるが、それすらも倒してしまう。
また、今のとは別の虫の群れが、違うところからやってきて瑠璃覇を襲うが、もちろん瑠璃覇は、それも倒そうとした。
だが、その虫は瑠璃覇が倒す前に、いつの間にかやって来た蔵馬によって倒された。
「蔵馬っ」
別行動をとっていたはずの蔵馬が目の前に現れたので、瑠璃覇は目を丸くした。
「この虫は…一体…?」
市内を飛びまわっていた魔界の虫とはまったく違う虫だったので、蔵馬はなんなのか不思議に思った。
「蔵馬」
「瑠璃覇」
蔵馬が来たことで、瑠璃覇はうれしそうに蔵馬のもとへ駆け寄っていく。
「蔵馬、どうしてここに?」
「一度、瑠璃覇達と合流しようと思ってね。そうしたら、この病院から、幽助の霊丸が見えたから駆けつけたんだ」
「そうなのか…」
「ところで瑠璃覇、この虫は一体なんだ?一体ここは、どうなってるんだ?」
蔵馬に問われると、瑠璃覇は今の状況を簡単に説明した。
別行動をとっていた時、敵ではないが、魔界の穴の影響によって生まれた、能力者をみつけたこと。
その能力者に協力してもらい、敵をみつけようとしたこと。
首謀者をみつけたが、奴の仲間の能力者に、協力してもらっていた能力者が撃たれたので、救急車を呼んで、この病院まで運んできたこと。
けど、この病院は敵の能力者がいるところで、いきなり自分達を変な虫が襲ってきて、柳沢と協力してもらっていた能力者がやられたので、その敵の能力者を倒そうとしていたこと。
それら全てを説明した。
「それで、この虫はそいつの能力でできたもので、さされた者を病気にできるそうだ。二人やられてしまってな。だから、残った四人で手分けして、敵を探しに行ったんだ。私は最上階を探していたんだが、幽助の霊丸を見て、もしやと思ったんだ。
探ってみたら、案の定幽助がこの階で戦っていたから、加勢にいこうとしたんだ。でも、外から行くと、敵に警戒されるかもしれないし、階段から行くと、私がいたところは最上階で、少し時間がかかるから、エレベーターの中を降りていった方が早いと思ってな。
それで、都合よくエレベーターの本体が一階で止まっていたから、そのまま中の空洞を降りていったら、お前と会ったってわけさ」
「そうだったのか」
ここで起こったことを瑠璃覇に説明されると、蔵馬は納得した。
「あっ…そうだ。こんなところで、こんなことをしている場合じゃない」
この階に来たのは、幽助を助けに来たからなので、瑠璃覇はそこから走り出した。
「あ、瑠璃覇っ」
「すまない、蔵馬。先に行く」
蔵馬が名前を呼ぶが、瑠璃覇はやや急ぎ気味に答えると、幽助のもとへ走っていった。
瑠璃覇は幽助の霊気を探りながら、幽助のところへ向かっていた。
向かっていると、途中であの虫が襲ってきた。
しかし、瑠璃覇はそんなのはものともせず、風の力で一瞬で倒してしまう。
そこから少し走ると曲がり角があったので、そこを曲がった。
そこでは、能力者であろう医者の男が、虫にさされて病気になり、人質にとっていた看護師に化学薬品をかけられて悶絶し、看護師の腹を、刀で切るように、素手で切りさいていた。
腹を切られると、看護師は柳沢になった。
この看護師は、柳沢が自分の能力で化けていたのだった。
「ヤナ!?」
まさか、病気になった柳沢だったとは思っていなかった幽助は驚いた。
「へっ。ざまあみやがれ」
柳沢は、男…神谷に切られると、扉に体をぶつけてしまう。
「き、貴様も、能力者か。……まだ、動けたとは……。普通の人間よりも抵抗力があるということか!!」
神谷は幽助がいる方とは、反対の方へ逃げ出した。
「悪あがきはやめとけ」
だがそこへ、逃げ道をふさぐように幻海がやって来た。
「もう逃げられん」
そこからは逃げられないと判断すると、窓から逃げようと、体を横に向けた。
「おっと…」
だが、窓に体を向けた時、幽助がいる方が視界に入り、動きを止めた。
「人間が……能力を持っているとはいえ、ただの人間が……私から逃げられると思っているのか?」
そこには、幽助だけでなく、幽助の霊気をたどって来た瑠璃覇もいたからだ。
「……!!」
幻海と瑠璃覇の姿を目にすると、神谷は冷や汗をかいた。
「最後の忠告だ…。みんなを、病気から解放しろ。さもねェと
殺す」
幽助が言ってることは、狂言などではなく、本当のことだった。
「わ、わかった。負けたよ。実は血清があるんだ。これを注射すれば助かる」
幽助は本気なのだということが、目を見てわかった神谷は、白衣の内ポケットに入っている箱を取り出した。
開けると、その中には細長い透明の入れ物に入れられた薬が入っていた。
「本当だろうな」
物を見せられても、敵の言うことを「はい、そうですか」と素直に聞き入れるわけもなく、疑いの目を向け、警戒はとかなかった。
「誓う!!誓うよ!!オレだって、本当は死にたくねェ」
とは言ったが、実はこれは薬ではなく、ただのブドウ糖だった。
神谷は、「何としても、この場は逃げきる」、「これを渡す一瞬のスキで、幽助を殺す」と考えていた。
「だまされるな!!」
その時、瑠璃覇と幽助の後ろから、別の人間の声が聞こえてきた。
「野郎の心の声を盗み聴いたぜ。その中身は、ただのブドウ糖だ!!」
それは、街を探索している時に、偶然出会った室田だった。
「ぐっ」
せっかく、うまくいくかもしれないと思ったのに、思わぬ伏兵によってウソが見抜かれてしまったので、悔しそうに顔をゆがめる。
「ちくしょオーーー!!」
そして、持っていた箱を、感情のままに床に投げつけた。
「てめェ…救えねェよ」
神谷が言ったことがウソだとわかった幽助の顔は、更に鋭くなっていた。
「うるせェあーーー」
神谷は叫びながら、ヤケになったように、幽助に襲いかかった。
だが、幽助は自分がやられる前に、神谷の顔を殴った。
一発殴っただけで、顔そのものが変形するくらいに…。
幽助は一発だけでなく、何度も何度も、顔や体を、殴って殴って殴りまくった。
そして、渾身の一撃を最後にくり出すと、神谷は窓ガラスをつき破って、外に放り出された。
地面に倒れた神谷は、数回痙攣すると、意識を失った。
「あ…。斑点が消えた。神谷が…死んだのか!!」
神谷の意識がなくなったことにより、虫にさされた柳沢や室田の体にできた斑点が、消えてなくなった。
「くそ!! (殺るしかなかった………!!ちくしょう)」
いくら敵で悪い奴とはいえ、人間の命をうばってしまったことに、幽助は悔しそうに顔をゆがめ、拳を強くにぎっていた。
その時、いつの間にか外に出ていた幻海が、霊気をまとった拳で、神谷の胸をたたいた。
「!? ばーさん!?」
幻海が胸をたたくと、神谷は口から微量の血を吐き出す。
「がはっ が…」
そしてその後、神谷は息をふき返した。
「安心しろ。息をふき返した。電気ショックの要領だな」
「……」
「こんな奴の命を、お前がしょいこむことはない」
幻海の言葉に、幽助はほっとしたように笑う。
隣では瑠璃覇も、そんな幽助を見て、うれしそうに笑っていた。
神谷の蘇生を終えると、幻海は病院の中に戻ってきた。
「瑠璃覇、柳沢と室田のケガを診てやれ」
「はいはい」
幻海に言われると、瑠璃覇は幽助から離れ、二人のもとへ行くと、柳沢と室田のケガの治療をした。
「おーーい」
瑠璃覇が柳沢と室田の治療を終えると、桑原の声が聞こえてきた。
「おう!」
声がした方へ振り向くと、桑原、海藤、ぼたんがやって来た。
「ここで一体何があったんだい?」
「もう話す気にもなんねーよ」
「やあ。一件落着したみたいだね」
「まあな」
そして桑原達が来た方とは反対の方から、蔵馬がやって来て合流した。
その時、蔵馬が来た直後に、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「さあ、長居は無用だよ。ここにいると、いろいろ面倒だ」
当然、今のさわぎでここにやってきたパトカーなので、いろいろと聞かれる前に退散しようとした。
「オレはここに残って、城戸を入院させます」
だが海藤だけは、敵と対峙して精神力を使いはたし、意識を失ってしまった城戸を入院させるために、ここに残ることになった。
「おう、あとは頼んだぜ」
幽助が海藤に一言言うと、全員急いでそこから去っていった。
しばらく走り、病院からある程度離れた場所に行くと、この日幽助達は、お互い行動していた時のことを話したあと、「なるべく一人で行動しないこと」を確認し合ってから別れた。
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