第二十八話 最初の戦い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そして次の日……。
島では、暗黒武術会の開会を宣言する花火があがっていた。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました!!私(ワタクシ)、リングアナの小兎と申します。よろしくお願いいたします」
会場の中心にあるリングの中央には、動物の耳としっぽがはえた、小兎という女性がたっており、進行を務めていた。
「ただ今より、暗黒武術会を開会いたします!!」
そして、開会の宣言をすると、観客席の妖怪達から大歓声が響き渡った。
第二十八話 最初の戦い
「くくく。闇の世界にかかわり、悪魔に魂を売った人間の特権とでもいいますか。この世で地獄を見れる気分は、善良貧乏庶民にはわかりますまい」
VIP席では、闇の力をかりてのしあがってきた、金持ちの人間達が席にすわり、愉快そうにリングの方を見ていた。
「さっさと始めやがれ。待ちくたびれたぜェ」
「オレ達一般妖怪は、この日のために、人も喰わず、盗みもガマンして待ってたんだ」
「なにしろ、悪業(カルマ)を犯すと、入島すらできねーきまりだからなーー!!」
そして、一般席にすわる妖怪達は、開会宣言をしたというのに、やじをとばし、試合開始の催促をする。
「一回戦第一試合の、選手入場です。
六遊怪チーム!!」
小兎が、六遊怪チームが待機している選手入場の門を指させば、六遊怪チームのメンバーが入場してきた。
「うひゃあ、スゲー観客だ。燃えるぜ」
六遊怪のメンバーは、全員自信に満ちた顔でリングの方へ歩いてくる。
「おおーー。待ってたぜ、六遊怪!!」
「スラムの期待の星!!」
彼らが入場してきただけで、妖怪達は大盛り上がりだった。
「対するは、ゲスト・浦飯チーム!!」
そして、小兎が次に、浦飯チームが待機している門を指させば、相変わらず寝ている幽助と幽助をかついだ桑原、瑠璃覇、蔵馬、飛影が入場してきた。
「おお!?出やがったぞ」
「こらァ、ウラメシくたばれァ」
「ノコノコツラ出しやがって、タゴ作どもがァァァ」
「生きて帰れると思うなよ、てめェらぁ」
「裏切り者の飛影と蔵馬と瑠璃覇。てめーらは肉切れをクソにしてくれるぜ」
浦飯チームが入場すると、六遊怪チームの時とは違い、妖怪達は罵倒をあびせてきた。
「くあ~~~、おっとろしい殺気だぜ。日頃のうっぷんを、全部オレらに向けてきやがる」
「仲間意識のない奴等に、裏切り者扱いされるのは心外だなァ」
妖怪達からの罵倒に、桑原は何やら冷や汗をかき、蔵馬は軽くため息をついていた。
「両チーム、中央へ!!」
浦飯チームと六遊怪チームの両方が入場してくると、小兎の声で、両方のチームはリングの中央にやって来た。
「くたばれ人間(カス)どもォ」
「八つ裂かれて死ねー!!」
「血みどろになってはてくされーーー!!」
「まだ寝てるよ、あいつ」
「戦い方と勝敗は、両チームの大将同士の話し合いによって決めていただきますが、折り合いがつかない場合は、それぞれ5名が1対1で戦い、勝った人数の多いチームの勝ちといたします」
罵倒が飛び交い、向かい側では鈴駒が、未だに寝ている幽助に呆れている中、小兎は戦いのルールを説明する。
「大将っつったって………幽助はねてるぞ」
「―――なら、代わりは桑原君しかいないね」
「え?オレ?」
まさかの指名に、桑原は自分を指さす。
「いや~~。そんな、やっぱそうかなァ。ウラメシの次ってのが気にくわねーが許そう!!
よっしゃ、いっちょ決めてやんぜ」
「(アホ)」
なんだかんだ言いながらも、桑原はうれしそうにしており、瑠璃覇に幽助をあずけると、はりきって幽助の代理で前に出ていき、六遊怪チームの大将である是流と向かい合った。
「どんな方法でもかまわんぜ。できれば一対一がいいがな。遊びは長く楽しみたいからな」
「け!!望むところよ。男の対決はタイマンが一番!!」
熱く燃えたぎっている桑原は、拳を自分の前にもってきて是流の要望にこたえた。
「(んんん~~。決まったぜ)」
「では、勝負は、1対1の5戦方式とします」
桑原は自分に酔いしれながら、もとの場所へ戻っていき、瑠璃覇にあずけていた幽助を受け取る。
その時、背後から是流が、殺気混じりの妖気を放出してきた。
「うおお。や、焼けるような妖気だ!!あきらかに、幽助を挑発してやがる…」
「(凍りつくような目と、全てを焼きつくすような妖気。こんな奴が野心も持たず、人間界に、ただいる時代なのか……)」
それは幽助と……そして瑠璃覇に向けられたものだった。
けど、瑠璃覇も幽助も何も反応を示さず、幽助はなお眠っていた。
「オイ浦飯、起きんか!!」
桑原は幽助を起こそうとしたが、それでも幽助は、ピクリとも動かなかった。
「(………これだけの殺気を発しても起きんとは………やはり、ただのアホウか。
しかし……それ以上に気になるのは、あの女の方……。あの女は起きているのに、何故なんの反応も示さんのだ?ナメているのか?)」
殺気を発してもまったく起きる気配すら見せないので、是流は幽助には呆れ、瑠璃覇には疑問を抱いていた。
是流は知らなかった。
そして気づかなかった。
何故、瑠璃覇と幽助がなんの反応も示さないのかを…。
「では、先鋒前へ!!」
話し合いが終わり、いよいよ試合が開始されることとなった。
「いってくるよ~~~」
六遊怪チームからは、鈴駒が
「トップはオレしかいねーだろ!!」
浦飯チームからは、桑原が最初の試合に出ることとなった。
「出やがったなーーーークワバラァア」
「ぶっ殺せーーー!!」
先鋒戦は桑原と鈴駒に決まり、鈴駒が出ると歓声があがったが、桑原が出ると罵声があびせられた。
「(なーんだ。一番弱そうな奴が出てきたなァ。昨日、あれだけおちょくってやったのに、こたえてないし)」
鈴駒は、自分が戦う相手が桑原だということにガッカリしていた。
「一対一で戦うこと以外、ルールなし!!道具可!!場外とダウンはカウントをとり、10カウントでKO負けです」
両チームの先鋒が決まると、小兎は試合に関する細かな説明をする。
「では、始め!!」
場内にブザーが鳴り響き、小兎が試合開始の合図を出すと、いよいよ試合が始まった。
「どこからでも来なさい!!」
桑原は余裕の顔で、妙な構えをとる。
「ほいよっ!!」
桑原の挑発に応えるように、鈴駒は素早い身のこなしで、桑原の周りを走ったり跳んだりしていた。
「ああーっと。鈴駒選手、すごい身のこなし。早くも私、実況の小兎。動きを追うのがやっとです」
「たいしたもんだよ、それだけで。
このニーチャンは、見えてもいないはず…」
鈴駒はそう思った。
だが、気づいたら桑原が目の前まで来ていて、自分を殴りとばしたので、鈴駒も他の六遊怪のメンバーも六遊怪のオーナーも、観客席の妖怪達も驚いていた。
「なめんなよ。本番になりゃ、こんなもんよ!!」
「くっ」
鈴駒は、なんとか体勢を立て直して桑原に向かっていく。
「だっ」
しかし、次に桑原に蹴られ
「くっそーー!!」
更にはまた殴られてしまい、まったく敵わなかった。
「なんだ、あの鈴駒とかいうチビ。てんで弱ェじゃねェかーーー!!」
「ボケェ。弱ェヤツはひっこめ!!」
桑原にやられまくっているので、観客席からは文句がとんできた。
「いや……桑原くんが強くなっているんだ。特訓につきあわされてわかったが、彼は、実戦ではじめて本気が出せるタイプ」
「……バカが。武士道でも気どるつもりか。今のうちに、霊剣でつき殺せばいいものを」
「飛影の言う通りだな。とどめはさせる時にさしておかないと、あとで自分にダメージがくるぞ」
瑠璃覇が飛影の言っていることに同意した時、桑原のパンチが鈴駒の腹にヒットした。
「ぐぁ……」
鈴駒は後ろにふっとびながら、痛みに顔をゆがめ、殴られたところを手でおさえる。
「完全にとらえた。これで決めれる!!」
蔵馬は桑原の勝利を確信した。
その間にも、桑原は鈴駒を追いかけていき、とどめをさそうとした。
「なぶる趣味はねー。楽にしてやんぜ。10カウント、ゆっくりねてな」
だが、急に劣勢であるはずはずの鈴駒の顔が豹変し、桑原が拳を振り下ろした瞬間…。
「!?」
「つかのまの優越感、楽しんだかい?」
鈴駒は桑原の視界から消えると、いつの間にか桑原の背後に回り、桑原の頭を蹴り飛ばした。
それと同時に、ボキっという、鈍い、嫌な音が響く。
「はっはっはーーーー。どう?ハラハラした!?ただ倒したんじゃおもしろくないから、ちょっと演出してみました❤」
「1、2」
「カウントしてもムダだよ。首折っちゃったからねー。もうそろそろ死ぬんじゃない?」
「(くくく。ふざけたヤロオだ。戦いを心から楽しんでやがる)」
「味なことしやがって、コノヤロー」
「いいぞ、スカッとしたぜ」
さっきとは違って、観客席は盛り上がり、鈴駒は歓声に応えるように手をふった。
「(桑原もバカだな。いっきにケリをつけるか、なぶって二度と逆らえないようにすればいいのに…。
でもまあ……あれなら心配ないかな…)」
今の戦いを見て瑠璃覇は呆れてはいたが、まったく心配はしていなかった。
「!!」
「だれの………首を折ったって?」
鈴駒が観客に手をふっていると、後ろで、やられたはずの桑原が立ち上がる。
「なんと、立ち上がりました。試合続行です!!」
「ふざけやがって。万倍にしてかえしたんぜ」
「………」
蹴られた箇所から血を流してはいるものの、それ以外は至って大丈夫なようだった。
しかし鈴駒は、桑原が立ち上がっても気にすることなく、それどころか不敵な笑みを浮かべていた。
「しぶてぇ野郎だ。あのケリくらって立ちやがった」
「かまうな、ちっちゃいの!!本気でぶち殺せェ」
「一方が心理作戦で虚をつけば、一方はそれを受けて立ちあがる!!さあ、一回戦第一試合から、白熱の好勝負となりました」
「正直言って、裏をかかれたのは事実だぜ。
だが、無防備のドタマにケリ入れてもオレを倒せねーとこ見ると、オメー、力はそんなにねェな」
「さすが"ゲスト"だね。………確かに、あのキックで倒せないなら、妖力で倒すしか」
鈴駒はしゃべりながら、肩にかけている小さな袋に手をつっこみ
「ないね」
中からヨーヨーを取り出した。
「魔妖妖(デビルヨーヨー)!!!」
それを、親指以外のすべての指につけ、両手に合計8つのヨーヨーを持ち、指と指の間にはさんで構える。
「本領発揮か。それならこっちも」
鈴駒が武器を取り出せば、桑原も手に霊気を集中させ
「遠慮しねーぜ!!」
自分の武器である霊剣を、両手に合計二本出して構えた。
お互い武器を構えると、先に仕掛けたのは鈴駒だった。
「ショット」
鈴駒は高く跳ぶと、上から右手につけたヨーヨーを投げつける。
「ケッ。こんなもん、ジャストミートでまっぷたつに…。
!!」
桑原は霊剣を構え、ヨーヨーを切ろうとした。
「(なにーーー!?)」
だが、まっすぐに投げたはずのヨーヨーが、まるで蛇のようにくねりながら桑原の体を攻撃した。
「(ヨーヨーが、蛇みてーにくねりながら攻撃してきやがった)」
まさか、ヨーヨーのひもが、あんな風にくねってくるとは思わず、桑原は驚きをかくせなかった。
「ああーっと皆さん、確認できましたでしょうか。今確かに、不可解な動きで、桑原選手を翻弄しましたァ」
「カカカ、バーカ。子供のケンカじゃあるまいし、ただ投げるだけだと思ったのかい。魔妖妖には、指から充分にオイラの妖気を送りこんである。8本全てバラバラに、オイラの意志通りに動かせるのさ」
鈴駒はデビルヨーヨーの説明をしながら、ヨーヨーで遊んでいた。
そのヨーヨーは、ただのヨーヨーではないということを表すように、リングにあたった瞬間にリングのコンクリートをえぐった。
「こ~~んなふうにね」
「ぐっ」
そして鈴駒は、今自分で説明したことを実演してみせる。
それはさながら、蛇のごとき動きであった。
「そんなナマクラ刀じゃあ、このヨーヨーのひもすら、傷つけることはできないよ!!」
鈴駒は叫びながら、左手のヨーヨーを上から、右手のヨーヨーを下から投げた。
「なにィ。地面をけずりながら向かってきやがる!?」
下から投げたヨーヨーは、地面をけずりながら自分に向かってきたので、まさか、ヨーヨーでそんなことができると思わなかった桑原は驚いた。
「くっそーーー!!」
桑原はなんとかヨーヨーを避けたが、すぐに曲がって、方向を変えて向かってきたヨーヨーによって、背中を打撃され、そのまま地面に叩きつけられてしまう。
「自由自在に方向を操ることができるのか」
蔵馬が驚いていると、ヨーヨーが桑原の手首と足首に巻きついた。
「おお!?」
そして、ヨーヨーは巻きつくと、そのまま桑原の体を宙に浮かした。
「ぐっ」
「なんと、180cmはある体を、ヨーヨーで持ち上げました。恐るべき妖力!!」
「そーれ、世界一周だ!!」
「うおお」
桑原の体を宙に浮かすと、今度は勢いよくふりまわし、リングに叩きつける。
「よっしゃあ。いいぞ、ぶち殺せ!!」
「かまうことはねェ。
もっとたたきつけろ!!」
そのことで、周りからは歓声がわく。
「ぐあ」
観客に応えるように、鈴駒は何度も何度も、桑原の体を叩きつけた。
「蔵馬、瑠璃覇、お前達の特訓も、ムダだったな。2本の剣でもあのヨーヨーを防ぎきれん」
「………いや…まだ、特訓の全てを出したわけじゃない」
「……確かに奴は人間で、私達の中では一番弱い。けど、あいつの力は、たまに目を見張るものがある。それさえ出せれば……」
「もし、出せなかったらどうする?」
「まあ、その時はその時で、なんとかするだろう。あいつは……バカで弱いが、根性はなかなかあるやつだ」
アバウトな考えだが、それなりに桑原のことを認めている瑠璃覇を、飛影は無言のまま見ていた。
「ぐぁ…く、くそォ…。てめェ………ぶち殺したる…!!」
「タフな奴だな。こっちが疲れちまう。戦いは今日だけじゃないし、そろそろ決めるか」
桑原は顔中血だらけになりながらも、鈴駒に喰ってかかった。
あまりのタフさに鈴駒は軽く息を吐くと、ヨーヨーを使って、桑原を先程よりも更に高く持ち上げた。
「てめー、おろせ」
「ながめはどうだい?もう少し上げたら落としてやるよ」
「さあ、天高くつり上げられてしまった。これは絶体絶命!!」
「ころあいの高さだな」
「おろせ、くそったれ」
「落とせェ。殺せェ」
「終わりだ。クワバラァ」
どんどんと高く上がっていく中、周りの観客席からは落とせコールが起こる。
「カエルみたいにへたばって死になァ」
鈴駒は、桑原に巻きつけてたヨーヨーのひもを一気にほどいた。
「おおおお」
そのせいで、桑原はまっさかさまに落ちていった。
.