第五十四話 黒き龍の咆哮
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「蔵馬!!」
蔵馬が立ち上がると、そこへ瑠璃覇がリングに上がって、蔵馬のもとへ走ってきた。
「瑠璃……
!!」
そして、その勢いのまま、瑠璃覇は蔵馬に抱きついた。
「瑠璃覇……」
抱きついたまま、何もしゃべらない瑠璃覇を見ると、わずかに震えているのを目にした。
自分がすて身の戦法で戦い、命を投げ出そうとしたからだというのが言われなくてもわかり、蔵馬は瑠璃覇の背中にそっと腕をまわし、落ちつかせるように抱きしめた。
第五十四話 黒き龍の咆哮
「やったぜー。蔵馬の逆転勝利だァ。まず1勝!!」
リングの外では、蔵馬が逆転勝利したことに、桑原が喜んでいた。
蔵馬のことが心配になった幽助はリングにあがり、蔵馬のもとへ駆け寄っていった。
「大丈夫か、蔵馬」
「すまない。奴を倒すだけで精一杯だった」
「え?」
「試合終了ーーー!!鴉選手の勝利です!!」
幽助がわけがわからない状態でいると、その答えを教えるかのように、樹里の声が響いた。
それを証明するように、スクリーンには鴉の名前の下に、勝利を意味する〇が表示される。
「どーゆーことだよ、チクショオ!!確かに蔵馬は、鴉をぶっ倒したじゃねーか!!」
確かに蔵馬は、吸血植物を召喚して鴉を倒したのに、桑原はわけがわからなかった。
「10カウントダウンです!蔵馬選手は、ダウンした状態からそのまま反撃しましたが、攻撃をしたのは、私が10カウントを数えた後だったのです!!」
「10……カウント~~~!?」
「そういうことだ」
「なんと、試合中は、大声援にかき消されていた樹里さんのカウント!!ビデオで確認した結果、たしかに蔵馬選手の攻撃は、ダウンの11秒後でした」
小兎がビデオで確認をすると、樹里が言った通り、蔵馬はカウントを数えて11秒後に攻撃したのだった。
それにより、観客達が大喜びで「あと2勝」と戸愚呂チームに声援を送る。
「うるせーぞ。試合に負けて、勝負に勝ったってやつでーーー。生き残りゃ、こっちのもんよ!!」
桑原が言い返すと、今度は桑原に対する罵詈雑言に変わる。
「わかってないな」
しかし、戸愚呂兄が口を開いた途端、桑原の時とは違い、会場が水をうったように静まり返った。
「忘れたか?優勝チームのメンバーには、それぞれほうびがもらえることを。オレの望みを教えてやろう。お前ら全員の死だ」
そして、戸愚呂兄が自分の望みを言えば、観客席は盛り上がり「殺せ」コールが響き渡る。
「ぬう~~」
「オレの望みも教えてやろう」
その時、飛影が前に出た。
「この大会の黒幕全員の命だ。二度と、こんな下らんゲームに呼ばれんようにな」
飛影の言葉に、左京は含み笑いを見せた。
「幽助、オレが黒メガネとやりたいとこだが、幻海にめんじて、貴様にゆずってやる」
「……飛影」
「あれでガマンしてやる」
飛影が目を向けた先にいたのは、武威という、大きな斧をもった男だった。
「出たぜー。たのむぞ、武威ーー!!」
「そのオノで、あのチビをまっぷたつにしてやれー!!」
「やれやれ…。オレをザコ扱いか」
飛影は戦うためにマントをぬぐと、リングに上がっていった。
「ゲッ……!!右手に、前以上の包帯が巻かれてやがる。あいつまだ、右腕がなおってねーんじゃねーかよ」
「いや……!あの巻き方は、忌呪帯法を使っている」
「と言っても、ちょっと基本を無視した巻き方みたいだがな」
「なんだよイジュタイホウって?」
「ま、まさか、こんな短期間に」
「あいつ……黒龍波を極めた…のか?」
瑠璃覇と蔵馬は、信じられない思いで、飛影を見つめた。
「決勝戦第2試合!!武威対飛影。始め!!」
二人がリングの中央に来ると、試合開始の合図が出される。
試合開始の合図が出ると、武威は飛影に向かって走っていった。
「先にしかけたのは、武威選手!!」
武威は斧を振り上げると、勢いよく飛影をめがけて振り下ろした。
だが、飛影はあっさりとよけ、武威の後ろに立った。
「本気を出せ。反撃する気もおこらん」
武威は斧に力をこめると、そのままリングの石板を斧を使って持ちあげた。
「な…なんてェ馬鹿力だ!!」
そしてそれを、飛影に向けて投げつける。
しかし、それは飛影にはあたらず、飛影の前でリングにあたって砕けた。
「ふざけたマネを………」
それは、わざと飛影にあてなかったからで、それがわかった飛影は眉間にしわを寄せる。
その間に、武威は間合いをつめ、飛影の目の前まで来ていた。
「速い!!」
あの巨大な斧を、武威は軽々と操って、飛影を倒そうとしていた。
戸愚呂弟も、観客達も勝ったと思った。
「フン」
だが飛影は、自分にあたる前に、斧をいとも簡単にとかしてしまった。
そのことに、観客達も武威も驚く。
「本気でこいと言ってるんだ。
妖気も通っていない鉄クズが、オレに通用すると思ってるのか。いい加減ムカついてきたぜ」
「あ…あ…あのデケェオノを、チョコレートみてーにとかしちまった」
「操る炎の威力が、前よりもアップしている」
「(あやつる炎の威力が数倍アップしている。やはり……) とんでもないヤツだな…」
「………なるほど。鎧をつけたままで、勝てる相手じゃなさそうだ」
すると、突然武威がしゃべり出した。
それだけ言うと、武威は鎧をはずし始める。
はずした鎧をリングの外に放りなげると、その鎧はあまりの重さに、地面にめりこんだ。
「い…今まで一体、なん百キロの重さで闘ってたんだ、あいつ」
肩の部分だけでも、地面にめりこむくらいの重い鎧だというのに、あんなに身軽に動いていたので、桑原は驚いていた。
「鎧は、普通、外からの攻撃を防ぐためにつける。オレは少し違う」
体につけている鎧をすべてはずすと、ついに顔の部分の鎧をはずした。
「自分の力を抑えるために着ている。自分でも止められない、おそろしい力をな」
鎧をはずすと、武威の姿が露わになり、武威の説明で、観客は盛り上がりを見せた。
そして、武威のその身からすさまじいオーラが放たれ、武威は宙に浮かんだ。
「武装闘気(バトルオーラ)!?これが武威の本当の鎧だ。体が浮かぶほどの……こんな巨大なヤツは初めて見る」
「お前も本気を出せ。いい思い出にしてやる」
「後悔するぜ」
武威は、もう自分が勝つのが決まっているかのような口ぶりだが、飛影は不敵な笑みを浮かべながら、包帯をほどき始めた。
「飛影が包帯をとるぞ。おい蔵馬!!イジュタイホウってなんなんだよ!!」
「武威の鎧と同じさ…。呪符で自分の力を抑えつけているんだ。出したら、自分でも止められないほどの、すさまじい力を」
「だが……封印をといたふたつの力がぶつかりあったら……この会場は消しとぶかもな…」
「んなぁ!?」
蔵馬に続き、瑠璃覇が説明すると、桑原は顔が青ざめる。
「むっ」
「もう後もどりはできんぞ。巻き方を忘れちまったからな」
包帯がすべてはずれた飛影からは、強い妖気が放たれ、魔界の獄炎が手にあった。
「見せてやる。極めた黒龍波をな」
「おーーっと。すごい妖気が放出されているーーーーー!!」
「や、やはり黒龍波を…!!」
「そのようだな」
「いくぞ」
飛影は炎を右手から放出しながら、武威に向かって走り出した。
向かってくる飛影を見て、武威は思った。
邪王炎殺拳最大最強奥義の炎殺黒龍波を防ぎきれば勝てると…。
それは、はねかえされた黒龍は術師にかえり、自ら放った黒龍に焼かれて喰われるからだ。
「炎殺黒龍波!!」
飛影の右手から黒龍波が放たれ、武威のもとへまっすぐにとんできた。
「うおおおーーーっ」
武威は、バトルオーラをまとい、両手で黒龍を受け止めた。
武威を押しながら、黒龍は会場の中を暴れまわる。
妖気の弱い観客は巻きこまれ、次々に焼かれていった。
「ぬううう」
「か、会場中を黒龍波が暴れ狂っていますーーーー!!妖気の弱い観客は、一瞬にして焼き尽くされてます!!」
「うおおおおぉ」
そして、黒龍が天井をつき破った時、武威は黒龍を、飛影に向けて投げとばした。
「やった!!」
はねかえされた黒龍は、術師である飛影に向かっていき……
そして……
喰らった………。
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