第五十二話 銀の猛攻
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「今ならはっきり見える。その周りに浮いている奴が、お前の司る火薬というわけか」
具現化された爆弾はふたつで、目玉がひとつだけで触手がついているものと、ひとつの目玉と鋭い牙に、頭には導火線が、下には触手がついた、とても不気味な物体で、それを鴉は、蔵馬を襲うように向かわせた。
それでも蔵馬は冷静で、髪の中から二本のバラを取り出し、不敵に笑うと、向かってくる爆弾に投げつけた。
ふたつの爆弾は、蔵馬にあたる前に爆発して消えてしまう。
「なるほど。支配者級(クエストクラス)の妖怪が相手なら、南野秀一の姿では、まだ歯が立たないわけだ」
「まだ…だと…?くくく、負けたときの言い訳か?妖狐(いま)の蔵馬(おまえ)でも、私には勝てない」
「フンッ…」
「ためしてみるか」
鴉は、また新たに爆弾を創り出した。
今度のものは、丸い体に鋭いひとつの目、コウモリのような翼が生え、頭には導火線がついた爆弾だった。
第五十二話 銀の猛攻
鴉の周りに浮いている、複数いる爆弾は、鴉が右手をあげてふり下ろすと、蔵馬に向かっていった。
しかし、蔵馬はそれをあっさりと跳んでよけたので、爆弾はお互いにぶつかって爆発した。
それから次々に爆弾が蔵馬に襲いかかっていくが、それすらも、軽々とよけていく。
「トレースアイ…追跡爆弾。私の妖気でできた亜生物体だ。イメージを物質化できるのが、支配者(クエスト)の力」
蔵馬は爆弾を宙でよけながら、不敵な笑みを浮かべる。
「オジギソウという植物を知っているか?振動や接触、火気に反応して葉が閉じる、南米産の多年草だ」
「園芸に興味はない」
着地すると、周りにはたくさんの爆弾が浮いており、蔵馬をかこんでいた。
「囲まれたぞ。絶体絶命というやつだ」
「それはどうかな?」
蔵馬は不敵に笑いながら、小さく魔界の呪文を唱えた。
すると、蔵馬の足もとから太い蔓のようなものが現れ、それにより、周りに浮いている全ての爆弾は爆発し、辺りは煙につつまれた。
煙がはれると、そこには、見たことのない不気味な魔界の植物が召喚されていた。
「魔界のオジギソウは気が荒い。動くもの、火気をはらむものには、自らおそいかかる。
女……死にたくなければ、動かないことだ」
それは、まさに鴉に対抗するために召喚されたようなもので、説明を終えると、樹里に警告した。
「はーい」
警告を受けた樹里は、小さく返事をし、カチコチに固まってしまう。
一方オジギソウは葉を開き、今にも鴉に襲いかかりそうな雰囲気だった。
「どうやら鴉(おまえ)を、敵として認めたようだ」
その言葉が合図のように、オジギソウは鴉を襲い始める。
鴉はその攻撃を、間一髪のところでよけていった。
息つく暇もないほどに、次々と襲いかかってくるが、それでもなんとかよけていく。
「おーーっと、完全に攻守逆転!!一転して、鴉選手が大ピーーンチ!!」
「そいつからは逃げられんよ」
そう言われても、オジギソウから逃れるために走っていくが、鴉が走っていった方向にオジギソウが現れ、行く手を阻んだ。
「ちっ」
それを見た鴉は舌打ちをする。
目を向けた方にいる蔵馬は、不敵な笑みを浮かべたまま、鴉を見ていた。
「ふっ……勝ったな」
「ふたにやきクラブだかなんだか知らねーが、これで決まりだい!!」
「支配者級(クエストクラス)だ。ついに耳まで悪くなったのか?」
「なにィ!?とにかく、妖狐に戻っちまえばこっちのもんだ!!」
「(だと……いいがな…)」
桑原は、この試合はもらったと思っているが、飛影と瑠璃覇は、一抹の不安を感じていた。
リングではオジギソウの攻撃が続いており、鴉はそれをすれすれのところでよけていく。
そして、応戦するために爆弾を創り出し、一本のオジギソウに向けて投げつけ、なんとか撃退する。
爆弾を投げつけたことで、今のオジギソウは炎につつまれた。
だが、リングに着地した直後、後ろから、炎につつまれたはずのオジギソウが再び襲いかかってきた。
「奴らには感情があるからな。怒らせるのはマズいぞ」
蔵馬が言ったことを表すかのように、攻撃をされて怒ったオジギソウは、鴉に襲いかかった。
それを見た鴉は、目を大きく見開く。
そして蔵馬は、試合開始前の鴉と同じように、右手の人差し指を頭に当てた。
「はんぱな攻撃は逆効果だ。BANG」
わざとらしく、鴉と同じようにこめかみを撃つまねをすると、ひとつのオジギソウが鴉をとらえた。
オジギソウが締め上げるように持ちあげると、鴉は苦しそうにし、オジギソウの締めつけによってマスクがはずれ、同時に血を吐き出す。
そのあと、他のオジギソウ達も、最初に鴉をとらえたオジギソウにかぶさるように、鴉を包みこんだ。
「うむ。思ったよりあっけなかったな。もう2~3分、遊んでもよかったか」
「こ、これはすごい!!あっというまの決着です!!変身してからの蔵馬選手、格が違うと言うか、まさに圧倒的でした!!」
「よーっしゃ。すげーぜ、蔵馬!!15分どころか、5分とかからず倒しちまった!!」
「よォし、まずは1勝!!」
「いやぁ~~、妖狐蔵馬。それにしてもすごい強さだ……」
喜んでいる幽助達だったが、飛影と瑠璃覇だけは、冷静にリングの上を見据えていた。
「フッ」
蔵馬は、オジギソウにとらえられた鴉を見て笑うと、背を向けて歩き出した。
そして、蔵馬が通りすぎると、リングで腰をぬかしたままだった樹里が立ち上がる。
「鴉選手、戦闘不能とみなし蔵馬選手の勝利です!!」
樹里が蔵馬の勝利を宣言した時だった。
オジギソウが下にさがってきたと思うと、突然爆発したのだ。
「何!?」
その爆発を見て、蔵馬だけでなく、瑠璃覇達も驚く。
「だれが戦闘不能だと?」
「あぁ。ちゃ、ちゃ、ちゃいます。私のまちがいです!!まちがえました!!試合続行しまーす!!」
オジギソウの中から出てきた鴉は、あれだけ締めつけられたにも関わらず、ほとんど無傷の状態だった。
「気に入ったぞ蔵馬。ますます殺したくなってきた」
鴉はニヤリと怪しげに笑うと、深く息を吸いこみ始める。
すると、鴉の妖気が高まっていき、髪の色が金色に変わった。
「か…鴉選手の髪の色が変わりました。私の目にも、鴉選手の妖気が強力になっていくのがわかります!!」
「な、なんだよ?何が起こってるんだ?」
「くる……」
「あ?だから何が?」
「口から、体内に火気物質を集めてやがる。ヤツの体全体が爆薬庫みたいなものだ」
瑠璃覇が言った意味がわかっていない桑原に、飛影が説明をする。
「なんだって!?」
「多分、両手が起爆装置だ。構えとけ、まきぞえをくうぞ」
飛影がそう言うと、幽助達はびっくりしてあわてる。
「くくく、死ね!!」
妖力が高まった鴉は、電気のような妖気を手に集中させると、高く跳び上がる。
そして、笑いながら、蔵馬に向かって急降下していった。
それから蔵馬の前で爆発が起こると、あまりのすさまじさに、会場の壁の一部が破壊された。
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