第五十一話 幻の六人目
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決勝戦開始前。
会場は、たくさんの観客で埋まっており、選手入場の扉の前では、浦飯チーム。反対側の扉では、戸愚呂チームが待機していた。
「幽助、幻海師範の…代わりの6人目はどうなっているんだ?」
「実は、もう先にきてる」
浦飯チームが待機してる場所では、蔵馬が6人目について幽助に聞いていた。
「なんだ。やっぱ、バーサンこれねーのか。まあ、幽助に全てたくしたとは聞いてたが、それが原因で、力が全部なくなっちまったってわけか」
「やれやれ。めでたいヤローだ」
「あ!?なんだコノ、てめーは」
幻海がいないわけを、まったく気づいていない桑原に、飛影が呆れたように毒づけば、いつものように、桑原は飛影を睨みつけた。
「皆さん、大変長らくお待たせしちゃって、ゴメンナサーイ」
「お」
「浦飯チームの入場でーーす!!」
突然外から樹里の声が響くと、いよいよ決勝戦が始まるのだと、全員真剣な顔になり、緊張が走った。
第五十一話 幻の六人目
「のこのこやって来やがったぜーーーー」
「死ね死ね死ね死ねーーー!!」
「こらァーーー人間!!」
「てめェら全員死ぬ方に、全財産かけてんだーー!!」
「オレ達のためにくたばれァーーーー」
毎度のことではあるが、浦飯チームが入場してくると、観客から激しい罵声をあびせられた。
「続いて、戸愚呂チームの入場でーす」
そして、次に戸愚呂チームの入場門が開き、戸愚呂チームが入場してきた。
「っしゃあーーーー殺れ殺れ殺れ殺れ」
「オレ達が許す。ぶっ殺せーーー!!」
浦飯チームの時とはうって変わり、戸愚呂チームが入場してくると、罵声は声援へと変わる。
「みなさん、お静かにお願いしまーす。
えーー、大会ルールによりますと、決勝戦は一対一で戦うこと!5戦行い、先に3勝したチームの勝利となります!!
どちらのチームも、戦いによって死人が出てない以上、5人での参加。補欠がいる場合は、補欠もふくめた全員参加が条件となります」
両チームが入場してくると、樹里はルールブックを取り出し、それを見ながら決勝戦の説明をした。
「おい、一体だれが6人目なんだよ!?陣か、酎か」
「まさか、あのヤロー、逃げたんじゃねーだろな」
「えーー、早くもアクシデントが起きております。先の見えない両者の戦いを、暗示するかの様であります」
いきなり壁にぶちあたり、戦いが始まらないので、観客からはブーイングの嵐が起こった。
「ならば呼びましょーか」
戸愚呂がそう言うと、自分が入場してきたゲートが開き、そこからは左京が出てきた。
「おお?やつは、戸愚呂チームのオーナーじゃねーか」
「あいつ、戦えるのかよ!?」
左京はどう見ても戦えそうにないので、左京に対し、観客達は不安の声をあげる。
「戦う?カンちがいしてもらってはこまる。私は一番見やすい場所で、浦飯チームの死を見届けたいだけだ。大将の私までまわってくる可能性は、0だ」
「おーーっと、早くも勝利宣言!!」
「それを聞いて安心した」
左京が勝利宣言をすると、今度は浦飯チームの入場ゲートから、コエンマが現れた。
「コエンマーーー!?」
「もったいつけやがって」
「本来、我々霊界を統治する者は、直接下界にかかわれん。しかし、場合が場合だけに、ワシも参加せざるを得んだろう。
………もし万が一、ワシに戦う機会がまわってきたら……」
コエンマはマントをめくると
「いつでも、逃げる準備はできてるからな」
背中にしょっている脱出ロケットを見せた。
「~~~なんだコイツ」
「はじめから期待しとらん」
そんなコエンマを見て、瑠璃覇、桑原、飛影は呆れていた。
「ちょっと待ったーーー!!幻海選手がいる以上、選手の交代は認められませんよ」
「………幻海は………」
幻海の名前を出され、幽助はどう説明しようかと、言葉をつまらせる。
「かまわんさ」
すると、そこへ助け舟を出すかのように、左京が口を開いた。
「見たところ、ほとんど霊気も感じない。おかざりの人数合わせと言ったところだろう」
「ふ……よくぞ見抜いた」
「いばんな」
敵である鴉に卑下されたというのに、言われたことを肯定したコエンマに、桑原は激しくつっこむ。
こうして、決勝戦にのぞむ選手が決まった。
「さあ、ようやく決勝にのぞむ選手が決定いたしました。はたして、優勝は戸愚呂チームか?それとも、浦飯チームか?今まさに、歴史的一戦が始まろうとしています!」
試合開始のブザーが場内に鳴り響き、会場は歓声につつまれた。
ブザーが鳴り響くと、鴉は蔵馬を見ながらこめかみに人差し指をあて、BANG!と言いながら、銃で撃つマネをし、蔵馬を挑発した。
「よし。私が行こう」
瑠璃覇は、一昨日の戸愚呂チームの準決勝戦を見た後の時のことを、蔵馬から聞いており、蔵馬を殺されてなるものかと思い、自分が戦おうとした。
「待て、瑠璃覇」
「ん?」
「オレが行く」
けど、そこを蔵馬に止められる。
蔵馬は殺気がこもった顔で鴉を睨みつけ、リングに向かって歩き出した。
「蔵馬?」
「あいつは……オレが倒す…!」
蔵馬の異様な雰囲気を感じとり、そのことに関しては何も言わない瑠璃覇だったが、すぐに腕をつかんで蔵馬を止めた。
「何?」
「あまり……こういうことを言いたくはないが………今のお前とあいつをくらべると……」
「わかっている」
瑠璃覇が言ったことを肯定しながら、蔵馬は自分の腕をつかんでいる瑠璃覇の腕を、つかまれていない方の手でつかんだ。
「それでも……この試合は、オレがやらなきゃならない」
「でも……」
「大丈夫、必ず戻ってくるさ。明日も、明後日も、その次の日も、変わらず瑠璃覇の隣にいるために…」
その言葉に、瑠璃覇はにこっと笑う。
「約束だ」
「ああ…。約束、蔵馬…」
そして、二人はお互いに抱きしめあい、その姿を、コエンマがジッと見ていた。
二人は離れると、蔵馬はリングに向かって歩き出した。
「暗黒武術会決勝戦!!第一試合!!戸愚呂チーム、鴉選手!!対する浦飯チームは、蔵馬選手!!」
名前を呼ばれると、鴉と蔵馬は、リングへと歩いていく。
リングへと歩いていく蔵馬を見た桑原は、蔵馬に駆け寄って行った。
「お、おい蔵馬、鈴木にもらったあの薬、使う気か?」
「ああ、2分ほど前に飲んだ」
「えっ?」
「なん度かためしてみたが、液体で使うと効き目があらわれるまで、少し時間がかかるんだ」
「ゲェッ!!何度かって……じゃあ、ここへ来る前にも飲んでみたのかよ!?」
「実戦でいきなり使うほど大胆じゃない」
クスッと笑うと、リングにとびあがった。
「だ、大丈夫なのか?」
「鈴木の言っていたことは本当だった。一口飲むだけで、15分くらいは元の姿に戻れる」
桑原に説明すると、蔵馬は目の前にいる鴉を鋭く睨みつける。
「奴を倒すには、充分な時間だ」
そして、リング中央まで歩いていくと、鴉と対峙した。
「さぁ、いよいよ第一戦開始です。会場内は、ほとんど戸愚呂チームの、鴉選手の応援一色です!!」
「なに言ってんの。ちゃんと浦飯チームの応援もいるわよーー」
「蔵馬くん、がんばってーーーー」
小兎の言う通り、周りは鴉の応援ばかりだが、小兎の言葉を否定するように、上の席にいる螢子達女性陣が、蔵馬の応援をしていた。
「それでは第一試合、鴉VS蔵馬。始めっ!!」
樹里の口から試合開始の合図が出ると、蔵馬は構えをとる。
「そのままでいいのか?」
試合が始まった途端、意味深なことを言って挑発する鴉を、蔵馬は鋭い目で睨む。
「あの時……オレの力の片鱗を見たはずだ。それを承知で、むざむざと殺されにきたわけじゃないんだろ?」
「じきにかわるさ。貴様を倒すためなら、なんにでもなってやる」
「フッ。期待しよう」
不敵な笑みを浮かべた鴉は、右手をあげて、その右手に妖気をさせた。
「(あれは……!!)」
その瞬間、鴉の妖気……もとい、鴉の力の正体が、瑠璃覇の目にははっきりと見てとれたが、他の浦飯チームのメンバーにも、そして肝心の蔵馬にも見えてはいなかった。
鴉が妖気を集中させると、対して蔵馬は、右手に無数のバラの花びらを生み出し、その花びらで自分を守るように周りに舞わせた。
「(確かにやつはすごい。この姿では、どうやっても勝ち目はないだろう。だが、妖狐の姿に戻れば勝機はある。そのためには時間をかせぎ、距離をとって闘う必要がある。やつに…鴉に触れられるのは、絶対にさけなければ)」
蔵馬は、妖狐の姿に戻るまで時間かせぎをし、鴉に触れられないように、距離をとって戦おうと考えたのだ。
「風華円舞陣!!」
しかし、鴉はまったくちゅうちょせず、蔵馬に向かって前進していく。
「おーーっと鴉選手。全くちゅうちょせず、前進します!!」
だが、一枚の花びらが鴉の右頬をかすり、そこには小さな切り傷ができ、赤い血が少量ではあるが流れる。
「刃のようにとぎすまされた、花びらの布陣か……。なかなか華麗だ」
それでも傷はすぐに消え、鴉は一度立ち止まるものの、気にすることなく、すぐにまた歩きだした。
「しかし脆弱だな。もろく…弱く…そして、はかないものだ……」
「(おかまいなしか。のぞむところだ。風華円舞陣は、その領域を侵す、全てのものを切り刻む!!)」
無数の花びらが鴉に向かって行ったが、その瞬間、花びらは鴉にふれる前に全て爆発してしまった。
「なにィ」
花びらにふれてもいないのに爆発を起こしたことに、蔵馬は目を見開いて驚いた。
「(ばかな!!奴は……花びらにふれてはいなかった!!)」
「くく…。お前は私の力をかん違いしているのではないか?さわった相手の体内に妖気を送りこみ、内部破壊をおこす…とでも考えているのではないのか?」
「(ち、ちがうのか………)」
「お前には私の妖気の本体が見えていない。すなわち、それは私とお前の妖力の差だ。もう一度聞く。そのままの姿でいいのか?」
鴉は跳躍すると瞬間的に蔵馬の視界から消え、一瞬で蔵馬の横に移動して攻撃をした。
鴉は蔵馬に向けて手を出すが、蔵馬はなんとしても鴉にふれられるのはさけなければと思っているため、その攻撃をよけていく。
何度かよけていくと、今度は蔵馬がその場を跳躍する。
「ローズウィップ!!」
そして、ムチを作り出すと、自分の方へ走ってくる鴉に向けて振り下ろすが、鴉はムチの方に手を向けると、ムチは鴉に届く前に爆発してしまった。
「くっ……」
「実力の違いを知りながら、まだあきらめないとは……健気だな。やはり私は、そんなお前が好きだ」
そう言うと、鴉は再び蔵馬に向かって走っていく。
「だが、好きな者に、どんなに愛情をそそいでも、いつかは老いて死んでゆく…!
ならば、私の手で殺してやる。私はいつもそうしてきた!!」
「くっ…」
「愛する者が私の手にかかり死ぬ時、たまらなく快感を覚える」
「オレには瑠璃覇がいる。死ぬわけにはいかない。明日も…明後日も…その次の日も…オレは……瑠璃覇とともに生きる…!!」
それを聞いた鴉は、不快感を示すように顔をゆがめる。
そのまままっすぐ走ってきて、また何度か攻撃をするが、それも蔵馬によけられてしまう。
「(おかしい…。もう、妖狐に戻っていいだけの時間はたった…!!)」
蔵馬は攻撃をよけながら、なかなか妖狐に戻る気配がないので、疑問に思っていた。
そのことを考えていると、鴉は一瞬で蔵馬の視界から消え、跳躍すると、まっすぐ手を伸ばして攻撃をしてきた。
蔵馬は間一髪でよけたので、鴉の手はリングを軽く破壊するだけだった。
だが、後ろに跳んでよけ、着地した瞬間に、蔵馬の左腕が爆発する。
「ぐっ~~!!」
「くくく。今私は、お前に触れてはいなかったぞ」
優越感にひたるような目で見下ろす鴉を、蔵馬はふしぎそうに見た。
「蔵馬!!」
「くそ!!どーして戻らねーんだ!?やっぱりあの薬、不完全だったのか?」
「薬?」
「そんなはずはない。私は戻る瞬間を、この目で何度も見ている。だけどおかしい…。いつもは大体5分くらいで戻っていた。もうとっくに5分はすぎている。それなのに……何故…」
蔵馬だけでなく、リングの外にいる瑠璃覇も桑原も、蔵馬がなかなか妖狐に戻らないことを、ふしぎに思っていた。
一方、リングの上では、ひざをついている蔵馬に向かって、鴉が笑いながら右手をあげた。
もちろんそれは攻撃をしようとしていたので、それを見た蔵馬は、左腕をおさえながら走り出した。
しかし鴉は、跳んで蔵馬の頭の上を越えていくと、蔵馬が走っていく方向へ降り立った。
そして、鴉が着地すると、蔵馬の右足が爆発する。
「うわあああああっ!!」
突然きた痛みに蔵馬は悲鳴をあげた。
何故、ふれていないどころか、跳躍して自分の頭上を越えただけなのに、爆発したのかわからない蔵馬は、左腕をおさえながら鴉を見る。
「よし、ヒントをやろう。お前が妖気で植物を支配できるように、私もあるものを支配し、しかも創り出すことができる。それは、今私の右手にある。――と言っても、お前には見ることもできまい」
「くっ…」
「おしゃべりもあきた。そろそろ死ぬか?」
ケガの苦痛と、鴉との妖力差、妖狐に戻らない疑問、鴉が支配してるものが見えないことに、蔵馬は顔をしかめた。
「蔵馬……」
自分には、鴉が支配するものが見えている。しかし、蔵馬には見えていない。そんな危機的状況に、蔵馬のために何もすることができないので、瑠璃覇は歯がゆい思いをしていた。
「最後に、私の支配している精神的物体をお前にも見えるように、より強く具現化してやる」
鴉は右手に妖気を集中させると、鴉の右手ににぎられていた物が、徐々に現れ出した。
「な……」
それは爆弾だった。
「爆弾だ」
鴉は高く跳びあがると、右手に持った爆弾を蔵馬に投げつける。
その爆弾は、蔵馬の前で爆発した。
「蔵馬あっ!!」
「蔵馬ーー!!」
それを見ていた瑠璃覇と幽助は、蔵馬の名前を叫ぶ。
爆発の影響で、熱風と煙がリングを覆い、その爆風と煙の中から、鴉が跳躍して出て来た。
「すごい爆発です。はたしてリング上で、何が起きているのか、ここからではよく確認できません!!」
「蔵馬は!?」
鴉は出てきたが、肝心の蔵馬がまだ出てきていないので、幽助達は心配そうにリングを見ていた。
「!!
これは…」
「なんだ?どうしたんだ?瑠璃覇!」
だが、その時瑠璃覇は、あるひとつの気配を感じとった。
「痛っ…」
煙の中から出てきた鴉は、煙の中を睨むように見ていると、右手に違和感を感じとり、右手に目を向けた。
その右手からは血がしたたり落ちており、一輪のバラが刺さっていたのだ。
「……味なマネを」
不快そうに顔をゆがめ、鴉が右手に刺さったバラの花を引き抜くと、別の妖気が会場に充満し始めた。
「(なんだ…?この妖気は…)」
その正体がわかってる瑠璃覇は、うれしそうに顔をほころばせ、初めて感じる強大な妖気に、幽助は冷や汗をかいた。
「こ、これはもしや、裏御伽チーム戦と同じ現象…」
小兎がそう言うと、煙がはれ、中から妖狐となった蔵馬が姿を現した。
「きわどかったな。南野秀一の体じゃ、コナゴナだった…」
「やはり出ましたァ!!妖狐蔵馬!!」
「よっしゃ。間一髪!!」
「よかった…。蔵馬」
「あれが……蔵馬なのか?」
「そうだ。極悪非道の盗賊妖怪、妖狐蔵馬だ」
「フッ…」
妖狐の姿を見て、瑠璃覇と桑原と飛影はうれしそうに笑い、瑠璃覇はうれしそうに笑うと同時に、自分も妖狐の姿に戻った。
「爆弾を創り出すか…。妖怪の中でも、支配能力を持つ階級……支配者級<クエストクラス>とあえたのはうれしいが…お前は、殺すぞ」
指についた自分の血をなめとると、蔵馬は不敵な笑みを浮かべ、挑発した。
それは、南野秀一の時以上に鋭い目だった。
「フン…。死ぬのは……貴様だ」
蔵馬の挑発を挑発で返し、鴉は新たな爆弾を創り出した。
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