第四十六話 死々若丸の妖技
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蔵馬の勝利が宣言されると、死々若丸は今いるとこから跳んで、リングの上へ着地した。
「役立たずの上に裏切りか…」
死々若丸はリングにあがると、裏浦島に刺さった刀を抜き、鞘に収めた。
「まあ…幻魔獣程度が、あの妖気を見せられては致しかたあるまい。
さあ、試合を続けようか」
死々若丸はサイコロを放り投げる。
出た目は、自由と死々若丸だった。
第四十六話 死々若丸の妖技
「さあ、サイの目は、裏御伽チーム・死々若丸選手。浦飯チーム、自由と出ました」
「フ…。やっとオレの出番か。
さあだれだ?最初に死ぬのは」
自信満々といった感じの顔で、死々若丸は浦飯チームに問う。
その時観客席では、いきなりくす玉が割れた。
「きゃーーーー!!若様ぁあーーーー!!」
そしてその後、死々若丸を呼ぶ、女独特の黄色い声が会場に響き渡る。
周りを見てみると、たくさんの女妖怪達が、死々若丸命と書かれた旗をかかげていた。
「若様、がんばってーー」
「浦飯Tなんか殺っちゃってちょうだーい」
「あ、でもでも、蔵馬ちゃんは殺さないでほしいー!!」
「あ~~、浮気者!!」
この女妖怪達は死々若丸のファンで、死々若丸が出てきたので、歓声をあげたのだった。
だが、一人だけ蔵馬を贔屓にした妖怪がいたので、瑠璃覇は声がした方を睨んだ。
「え~~…。大会も準決勝に突入し、それぞれにファンがついているもようです。華やかで非常にいいですね」
と言いながらも、どこか苦笑いを浮かべる小兎だった。
「うるせー、うかれ女どもが。闘いの場をなんと心得ていやがるんだ、全く」
「おい、そこの失敗ヅラ」
桑原が女達に怒鳴ると、突然リング上から、死々若丸が桑原に指をさしてきた。
「え…オレのことか?」
死々若丸の指はどう見ても桑原をさしているのだが、まさか自分だとは思っていない桑原は、疑問符を浮かべながら自分を指さした。
「そうだ、お前のことだ。そろそろどうだ?つっ立ってるだけじゃヒマだろう」
「クッ…。だれが失敗ヅラだ、コラァ!!」
あっさりと挑発にのった桑原は、リングに上がろうとする。
「うまい」
「敵ながら、的確な表現だ」
「なかなかするどい観察力だな」
「キャイーン」
死々若丸の発言に、飛影、蔵馬、瑠璃覇は納得し、三人の反応に、桑原はリングに上がろうとした時に、後ろにずっこけた。
「やるのはオレだ。あいつらの中じゃ、一番歯ごたえがありそうだ」
「いや…オレが行く。お前は決勝で、妖気をベストに戻す事を考えろ」
「オレに勝つ気でいるとは愚かな」
「蔵馬、奴と戦って、さっきの煙の秘密を聞き出したいんだろ。だが、邪念に足元をすくわれることもある。オレにまかせろ」
「何を言ってるんだ。お前達はもう出ただろ。私はずっと退屈してたんだ。それにそういうことなら、なお更私が出て、あいつから煙の秘密を聞き出してやる。コテンパンにたたきのめしてやろう」
「待て待てい!!ああまで言われちゃ黙ってられん。あいつはオレが直々に折りたたむ!!」
三人が言い争っていると、桑原が負けられないとばかりに、ズイっと前に出る。
「待て、オレがやる」
「いや、オレだ」
「私だと言っている」
「オレ様だ!!」
四人は互いに譲らず、睨み合った。
彼らの間には、バチバチと火花が散っている。
「………ここは、平和的に、ジャンケンで決めましょうか」
「いいだろう…」
「よっしゃー!!ここは平和的に、ジャンケンで決めっとすっか」
「ジャンケン?なんだそれは」
蔵馬の提案に、瑠璃覇と桑原はそれにのり、特にジャンケンが得意な桑原はのりのりであったが、飛影だけジャンケンを知らず、三人に聞き返す。
「なんだ!?飛影、ジャンケンも知らねェってか」
「き、貴様…。だからなんだ、それは?」
「人間界の遊びですよ。これがグー。で、これがパー。これがチョキ」
桑原にバカにされ、苛立った飛影が強く聞き返せば、蔵馬は飛影の目の前で、実際にやりながら説明をした。
「フン、くだらん」
「できるのかァ?」
「あたり前だ」
「おーーし。初心者はグーしか出しちゃいけねーんだぞ」
「そうか」
「桑原君!ウソを教えないよーに」
自分が勝ちたいからなのか、飛影にウソを教える桑原を蔵馬はとがめ、そんな桑原を、瑠璃覇は冷やかな目で見ていた。
「ジャンケンポン!!」
さっそく始めたジャンケン。
出した手は、瑠璃覇、飛影、蔵馬がグーで、桑原ただ一人がパー。
桑原の勝ちだった。
「うっしゃ!!オレの勝ちだ」
「待て!!貴様、今のは遅出しだぞ」
「うっ。て、てめェ、初心者のくせに、なんでそんな専門用語を…」
「邪眼の力をなめるなよ」
しかし、今の勝ちは桑原がズルをしたために得たもので、桑原の不正に、飛影は目を光らせ、睨みつけた。
それから、もう一度仕切り直してジャンケンを始めるが、なかなか決着はつかずじまいで、あいこをくり返していた。
「あいこで……しょ」
だが、数十回もあいこが続いた後、瑠璃覇、飛影、蔵馬がチョキ。桑原ただ一人だけがグーを出し、決着がついた。
「いよーーし!!オレの勝ちだァ!!」
ジャンケンに勝った桑原は、両手をあげて喜んだ。
「「チィ…」」
「く……」
結局、なんだかんだで桑原が勝ってしまったので、瑠璃覇と蔵馬と飛影の三人は、悔しそうな顔をした。
「さあ、浦飯チーム。数十回のあいこの結果、桑原選手の出場に決まりました。
一方、死々若丸選手も戦闘準備完了!!」
「ジャンケンの強さは折り紙つきよ!!」
「待ちくたびれたぞ」
「キャーー若様!!アイツなら遠慮はいらないわ!!さっさと殺っちゃってよ」
「おのれ、勝手にほえてろ。こっちは量より質でェ。雪菜さんが、この会場のどこかで見守っていてくれる限り、オレは勝つ!!」
桑原は気合をいれると、リングへとあがっていく。
その雪菜が、この会場のどこにもいないことを知らずに…。
「一瞬で決めてやろう。その顔、長く見るには耐えにくい」
「おんのれ、世紀の美男子をつかまえて…………」
「それでは第4試合、死々若丸対桑原、始めっ!!」
樹里が高く手をあげると、桑原と死々若丸の試合が開始された。
「刺し身みてーにしてくれる!!」
死々若丸の発言に激怒した桑原は霊剣を出し、先手必勝とばかりに、死々若丸に斬りかかっていく。
だが、死々若丸はそれをあっさりとよけ、持っている布を桑原に投げつけると、布は桑原に巻きついた。
「なんじゃこりゃあああ!?」
布が桑原に巻きつくと、桑原の姿がリングから消えてしまった。
「桑原君の………霊気が消えた」
「こ、これは場外……?カウントに入っていいのかしら?」
「無駄だな。見ての通り消してやったからな。どこへ行ったかはオレにもわからん。行き先はこいつに聞いてくれ。闇アイテム、死出の羽衣にな……!
世界の果てか魔界か、または異次元か…。まァおそらく、ロクな場所には行ってはいまい」
「桑原選手行方不明により、死々若丸選手の勝利でーーす」
桑原は会場からいなくなってしまったため、死々若丸の勝ちが決定した。
「きゃああーー。若様が勝ったあーー」
「若様ーーー!!こっち向いてェ」
死々若丸が勝ったことで、死々若丸のファンから黄色い歓声が沸き起こる。
更に、彼女らの要望に応え、死々若丸が振り向くと歓声が高まり、失神する者までいた。
「やったァー。まずは一匹ィ!!」
「その調子で、残り3匹もぶち殺せーーー」
「今度は、オレ達にも見えるように八つ裂きにしてくれよーー」
他の観客達も、桑原がいなくなり、死々若丸が勝つと、歓声をあげた。
「フフフフ。次は観客のリクエストに答えようか…」
観客席から歓声が起こる中、死々若丸はサイコロをふった。
サイコロが止まると、浦飯チームは瑠璃覇の目が、裏御伽チームは自由の目が出た。
「やれやれ、ようやく私の出番か」
ずっと観戦の身だった瑠璃覇は、待ちくたびれたと言わんばかりにため息をつき、リングにあがった。
「こちらはオレがやる」
そう言って、死々若丸はリングの上に残ったまま、瑠璃覇と一戦を交えようとしていた。
「それでは第5試合、死々若丸対瑠璃覇、始め!!」
瑠璃覇がリングにあがり、死々若丸の前まで来ると、樹里から試合開始の合図が出される。
「行くぞっ」
試合開始の合図が出されると、死々若丸は腰の刀を抜き、連続攻撃をしかけた。
しかし、瑠璃覇はそれを完全に見切っており、必要最小限の動きであっさりとよけていく。
「オレの動きを見切り、難なくよけていくとはやるな。さすがは、魔界屈指の実力者、パープル・アイといったところか?」
話しながら剣を振り下ろし、瑠璃覇をまっぷたつにしようとするが、瑠璃覇はそれを指でつかんで止める。
「何!?」
そして、そのまま風の刃をいくつも放ち、死々若丸を撃破する。
「きゃああああ!!」
「若様ぁあーーー!!」
「いやああ!!」
死々若丸は傷だらけになり、そのまま後ろへ倒れ、それを見たファンからは悲鳴があがった。
「貴様の技を見破るなど造作もないこと。あまりにもわかりやすい。桑原よりは早かったが、それでもまだまだだな」
「くっ……」
「もうやめておけ。勝負は決した。お前の剣技では私をとらえられないし、さっきの技は、私には通用しない。今は様子見で加減をしたが、次は本気であてるぞ」
「言ってくれるな…」
何気に自分の方が強いと言われ、死々若丸は苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
「確かにお前は強い。さすが伝説と言われているだけのことはある。だが、そんなことで引き下がるオレだと思っているのか?貴様があの有名なパープル・アイだとわかってる以上は、ますますやめるわけにいかん。貴様ほど有名な奴を倒せばハクがつく。名前だけでも殺す価値があるというものだ」
死々若丸は、次の攻撃をするために、剣の柄に手をかけた。
「そして、貴様は強い上に美しい…。
どうだ?蔵馬などやめて、このオレの女にならないか?」
死々若丸に求愛されると、瑠璃覇は心の底から迷惑そうな顔をする。
「きゃああーーー!!若様ああーーー!!」
「何よ、あの女ぁ!!」
「いやああ!!そんな女なんかにぃい!!」
同時に観客席からは、ファンの悲鳴と嫉妬の声が飛び交い、瑠璃覇は更に迷惑そうにする。
「私は蔵馬以外の男には興味がない。蔵馬以外の男は、道端の石ころにしか見えないんでな」
「……フッ…。言ってくれるな…」
死々若丸が柄をひっぱると、真ん中から肝のようなものが現れ、真ん中にある袋状の部分は不気味な顔のような形をしていた。
「むっ」
「なんだ、あの剣は」
「闇アイテム、魔哭鳴斬剣!!持つ者の命さえ危うい、死神を呼ぶ刀……。冥土の旅のはなむけに見せてやろう!」
「あの刀は要注意だぞ…。むしろ、死々若丸自身よりも、まがまがしい妖気を発している」
蔵馬だけでなく、瑠璃覇も刀の妖気を感じとっており、何がきてもいいように構えをとった。
「行くぞ!!」
死々若丸は、自分の周りに、刀でリングに半円を描いた。
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