第四十三話 電光石火の早業
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そして次の日……。
以前までの戦いが行われていたところとは別の闘技場で、いよいよ準決勝が始まろうとしていた。
「皆様、大変長らくお待たせしました。私が、準決勝からの審判を勤めさせていただきます、樹里といいます。よろしく!」
暗い中、リングの中央にスポットライトが当たり、審判を照らしていた。
その審判は小兎ではなく、魚のひれのような耳の、竜のようなしっぽをお尻につけている、樹里という名の女性だった。
「さあ、いよいよ準決勝開始です。実況は、準決勝から実況に専念することになりました、小兎がお伝えいたします!!」
「まず、準決勝に勝ち残った4チーム、ベスト4を紹介したいと思います」
樹里がそう言うと、彼女の後ろにある電子掲示板の電源が入る。
「まずは五連邪チーム。
そして戸愚呂チーム。
続いて裏御伽チーム。
最後に浦飯チーム」
電子掲示板には、ベスト4の顔とチーム名が映し出されていく。
最初の3チームの時は、観客は普通の反応だったが、浦飯チームの紹介の時だけブーイングの嵐が起こった。
「以上の4チームです。そして、トーナメント表をご覧ください。準決勝第一試合は、浦飯チーム対裏御伽チームです。それでは、選手入場でーす」
樹里の合図で、それぞれのチームの入場ゲートにスポットライトがあたると、ゲートが開き、両チームの姿が現れた。
しかし、その中に幽助の姿はなかった。
第四十三話 電光石火の早業
「ん~~?どういうことだ。浦飯チームの人数が足りねェぞ」
「オイどーしたァ。逃げたかァ、臆病者!!」
浦飯チームには幽助がいなかったので、早くも観客達はヤジをとばしてきた。
「とうとう、幽助は戻って来なかったな」
「よっぽどの事情があるんだろう。とにかく、待つしかないな」
「待ってて、試合に間に合うかね…」
「あんなヤツら、浦飯がいなくてもヘじゃねェぜ!!行くぜ!!」
「フン…」
強気に出た桑原が先に歩き出すと、瑠璃覇達三人も、桑原に続いて、リングに向かって歩き出した。
両チームが入場すると、闘技場の天井の中央にある、円状についている丸い形のライトが点灯する。
そして、ライトがつくと、両チームはリングの中央までやって来た。
「ドーム内の照明がともされ、今まさに準決勝が開始されようとしています。しかし、どうしたことでしょう?浦飯チームには、肝心の浦飯幽助が姿を見せていません。これでは、飛影選手と蔵馬選手と瑠璃覇選手で、相手をしなければならなくなりますが…」
「バ…バカヤロー!!こんな奴ら、オレ一人で充分だ!!」
自分が除外されたことで、桑原は裏御伽チームを指さしながら、小兎に怒鳴った。
「フ…甘く見られたもんだな。浦飯幽助はどうした?おじけづいたか?」
「お前らじゃ役不足だとよ」
死々若丸が浦飯チームを挑発すれば、その言葉に桑原が挑発で返し、そのことで死々若丸が桑原を睨みつけ、両チームの間の空気がはりつめる。
「それでは、対戦方法を決めてください」
「ごたくはいい。さっさと始めるぞ」
「ケッ。威勢がいいな、ボウズ。一番手はお前か?」
「オレで最後だ。ひとりで十分だぜ」
黒桃太郎が、ニヤニヤと笑いながら飛影に問うと、飛影が挑発してきたので、黒桃太郎の顔からは笑みが消え、噛んでいたガムがわれた。
「最近のオレはキゲンが悪い。ストレスがたまっているんでな」
「フフフ。まあ、そういきりたつな。
それでは、こいつで対戦相手を決めないか?」
そう言って死々若丸が懐から取り出したのは、2つのサイコロだった。
「それぞれの名前を書いたサイコロだ。自由の目は選手を自由に選べる。目が出れば、なん度でも戦える。生きている限りな」
「ヒマなヤツらだ。勝手にしろ。幽助の目が出たら、オレが代わりにやってやる」
「それでは、それぞれのチームの合意が得られましたので、サイコロによる、一対一の対戦となりました」
「それじゃあ行くぞ!!」
死々若丸がサイコロをリングに投げると、出た目は、浦飯チームは飛影、裏御伽チームは魔金太郎だった。
「くっ、小細工が裏目に出たな」
「ケッ、口先だけのチビスケが」
「第一試合は、飛影選手対魔金太郎選手に決まりました」
対戦する選手が決まると、戦わない他のメンバーはリングを下りていく。
「始め!!」
リングの上にいるのが、飛影と魔金太郎だけになると、樹里の口から、試合開始の合図が出された。
「さあ、どこからでもかかってきなおチビちゃん。くくくくく」
「さあ、注目の立ち合いです。どちらが先にしかけるかー!?」
魔金太郎が飛影をバカにするように笑うと、飛影は剣を抜く。
「剣か、おもしろい」
飛影が自分の武器を見せるも、魔金太郎は余裕の笑みを浮かべていた。
「………勝負あったな」
「ああ……」
「?」
瑠璃覇と蔵馬は、今の状況をわかっていたが、桑原はまったくわけがわからず、疑問符を浮かべていた。
すると、飛影の服の下から、雫がしたたり落ちているのが見えた。
「? ケケケケ、どうした?びびって小便でももらしたのか?」
「めでたい奴だ。気づきもしなかったのか?」
「なにをわけわかんねェこと言ってやがる!?さあ、かかってきやがれ!!」
「もう行った」
そう言って見せたのは、魔金太郎の左腕で、魔金太郎の腕からは血が流れていた。
先程の瑠璃覇と蔵馬の会話は、これを意味していた。
「ああああ」
飛影に言われて、ようやく腕を斬られていたとわかると、魔金太郎は顔が青ざめ、叫び声をあげた。
「もうやめとけ」
飛影は左腕を放り投げると、踵を返してリングを下りようとする。
「おおおーー!!」
その後ろでは、魔金太郎が切られた方の腕を切られていない方の手で押さえながら叫ぶ。
「おのれェエ。貴様、よくもォォオ」
しかし、こんなことで降参するわけもなく、魔金太郎は右手に妖気を集中させた。
「魔唆狩拳!!」
すると、魔金太郎の右手がみるみる変形し、大きな斧になった。
「は!!!」
そして魔金太郎は、飛影に向かっていき、斧を振り下ろした。
「殺った!!」
魔金太郎は飛影を斧でまっぷたつにすると、ニヤっと笑う。
「残像だ」
「はい?」
だが、斬ったと思ったのは飛影の残像で、本人は魔金太郎の頭の上にいた。
そして、飛影は躊躇なく剣を頭に突き刺し、魔金太郎を倒した。
あまりにも素早すぎる動きに、桑原は目を点にし、口をあけて固まり、死々若丸も感心していた。
「る…瑠璃覇、お前……見えたか?」
「まあな」
飛影の早業もだが、その早業が見えていた瑠璃覇にも、桑原は驚いた。
「ダウン!!魔金太郎選手戦闘不能とみなし、飛影選手の勝利です!!」
「お、恐るべき早業!!実況のヒマもなく、飛影選手、敵を撃破!!」
「さあ、サイをふれ。またオレが出る気がするぜ」
「………あまりいい気になるなよ」
飛影が、挑発するように死々若丸を指さすと、死々若丸はサイコロを放り投げる。
リングに落ちたサイコロの出た目は、浦飯チームは自由の目、裏御伽チームは黒桃太郎の目だった。
「自由の目は、選手を勝手に選べる…。もちろんオレがやるぜ」
「第2戦は、飛影選手VS黒桃太郎選手!!」
飛影は周りと相談せず、勝手に自分が出ると宣言した。
「怨爺…。本当に奴は、黒龍波を撃たんのだな?」
「100%うたん」
怨爺は飛影の今の妖気を確かめるために、飛影の腕をじっと見た。
「うちたくてもうてんのさ。前にあの技を使ったときの後遺症が少々残っている上に、妖気も六分といったところだ。要するに、病み上がりのガス欠さな」
「なる程な」
「奴は生来の邪眼師ではないな。魔界の炎を人間界で飼いならすにしては、経験不足じゃ。とにかく、邪王炎殺拳最大の奥義、黒龍波はうてん。炎殺拳の中の他の技なら、今の奴でも使えるだろうが、お前なら十分耐えられる。飛影(ヤツ)の炎殺拳を、お前の体が記憶したとき、黒桃太郎、お前の勝ちさ」
「それを聞いて安心したぜ。黒龍波が使えねェあいつなら、ただのチビだ」
怨爺の視察に、黒桃太郎は余裕の笑みを浮かべて、リングにあがっていく。
「両者、前へ!!」
リングにあがると黒桃太郎は、そのままリングの上に立っている飛影の前までやって来た。
「魔金太郎を倒した位でつけあがるなよ。こいつには、闇世界の支配者(しゅじんこう)になるには、芸がなさすぎた」
黒桃太郎は魔金太郎に刺さった剣を抜くと、無情にも、リング外に蹴りとばした。
それを見た浦飯チームは、気にいらなそうな顔になる。
「オレは一味ちがうぜ。へへへ」
黒桃太郎は、引き抜いた剣を舌でなめた。
「いい剣だ」
「気に入ったなら貸してやる。レンタル料はお前の命だ」
「そうかい。ありがとよ」
黒桃太郎は剣を上下に振ると、何故か自分の、親指以外の左指をすべて切った。
それには、飛影、瑠璃覇、桑原、蔵馬だけでなく、観客達も驚いていた。
「い~~~~~~~ひひひひ。痛え~~。痛えぜェエ。こいつはよく切れる」
指からは血が噴水のように噴き出しているが、それでも黒桃太郎は笑っていた。
「バ……バカなんじゃねえのか?あいつ……」
自分で自分を傷つけている黒桃太郎を見て、桑原は呆れていた。
「いや……わざわざ自分で自らを傷つけるなんてマネ、普通はしないだろ。何かあるな…」
「え…?何かって……何よ?」
「それは知らん。だが……あまりいいことではなさそうだな…」
瑠璃覇はキャリアがある実力者だけに、言っていることは信憑性があり、先程とは逆に、桑原は妙な汗をかいた。
「ヒィヒィヒヒ。だが…これで、この剣の切れ味は記憶した!!」
黒桃太郎は、ベルトについている、黒い桃が描かれた丸いものをひとつ手に取った。
「裏御伽闇アイテム、奇美団子」
それは黒桃太郎が持つアイテムで、その奇美団子をにぎりつぶすと、煙のような妖気が出てきた。
「ふうふふふ」
黒桃太郎がその煙を吸いこむと、傷が塞がり、体中に獣の毛が生え、猿のような風貌に変化していく。
「武獣装甲其ノ一、魔猿の装」
変身した黒桃太郎からは、強い妖気があふれ出した。
「な、なんと。団子を食って大変身!!そのとたん、黒桃太郎選手から、強い妖気が放たれましたァ」
「始め!!」
「さあ、このナマクラ刀は返すぜ。もうオレには、こんなものは通用せん!!」
黒桃太郎は、借りていた剣を飛影に投げて返した。
「おもしろい」
それを飛影は、自分に刺さらないように、腕ではじいて受け取る。
「ためしてやるぜ!!」
刀を受け取ると飛影は飛び出していき、黒桃太郎の右腕に切りかかった。
しかし、腕には傷ひとつつかず、飛影の剣は折れてしまった。
それを見て、飛影だけでなく、リング外にいる瑠璃覇、蔵馬、桑原も驚く。
そんな飛影を見て黒桃太郎はニヤっと不敵な笑みを浮かべ、飛影は舌打ちをすると、上に跳んで攻撃しようとする。
「遅いなァ」
だが、飛影よりも黒桃太郎のスピードの方が上回っており、瞬時に飛影の横に移動すると、両手を組んで拳をつくると、そのまま下へたたき落とした。
「なっ…!!」
たたき落とされた飛影は、その勢いのままリングの外へふっとんでいき、壁に激突する。
「ば……馬鹿な」
飛影が殴られ、場外までふっとばされたことに桑原は驚きを隠せなかった。
「ふっとばしたぜ。飛影を………」
驚いてるのは、桑原だけでなく観客席の妖怪達もだった。
「フフフ」
そして、瑠璃覇達の反対側にいる死々若丸は、不敵な笑みを浮かべていた。
「強え!!」
「奴なら殺れる!!」
魔金太郎をあっさりと倒した飛影を、黒桃太郎はあっさりと場外へふっとばしたので、観客達はこれはもう勝てると思い、喜びの笑みを浮かべる。
.