第四十二話 休息
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Dr.イチガキ戦の勝利に喜ぶ間もなく、地獄の連戦となった魔性使いT戦。
大会本部の汚い工作もあって、勝負は吏将と重傷の桑原との一騎討ちとなったが…!!
結局、(一方的な)愛の力で桑原が圧勝。最後をしめくくった!!
「浦飯チーム、準決勝進出決定!!」
桑原が勝ったことで、浦飯チームの勝利が宣言された。
そのことで、まだテントの中にいた飛影は解放され、浦飯チームは退場していく。
結界を解いた瑠架は恐怖を感じていたからか、全身で呼吸をし、涙目になりながら、自分の命があることに安堵していた。
第四十二話 休息
そして数時間後…。
瑠璃覇、蔵馬、飛影の三人は、二回戦の試合を見に来ていた。
どのチームが、自分達の対戦相手になるかを確かめるためである。
大きな電子掲示板には、裏御伽チームと獄界六凶チームの名前が表示されている。
勝利を意味する〇は、全て裏御伽チームの選手の方についており、その様子に観客達はざわついていた。
「ホホ…。勝ちは、ワシらに決まったわけじゃが、まだやるかね?」
「ギクリ」
「じ、冗談じゃねェ」
「とてもオレ達じゃかなわねェよ。決勝に残るのはあんた達しかいねェ」
「フ」
相手の選手にそう言われると、水色の長髪の男は軽く笑う。
「決勝?優勝の間違いだろ?」
彼は自信満々に言うと、瑠璃覇達がいる、観客席の出入口の方を向く。
「次はあんた達だぜ」
そして、挑発するように瑠璃覇達を指さした。
「笑わせるぜ」
自分に対して大きなことを言う男に、飛影は相手を見下すような目で言い放った。
「なんだ、来てたのか」
「やあ」
そこへ後ろから声がしたので振り向くと、幽助と桑原と覆面がやって来た。
「一応、次の対戦相手の試合を見ておこうかと思ってな」
「もう終わったよ」
「何ィ!?」
桑原が驚いてリングを見ると、倒された妖怪が倒れており、小兎が今度行われる準決勝の案内をしていた。
「し、信じられねェ。オレ達がこっちにくる5分の間に、決着をつけたってのか。その、裏御伽チームってのは」
「正確には2分だ」
「とるに足らん。相手が弱すぎただけだ」
「ああ、あいつらはただのザコだ」
「どーでもいいが、頭の上のふざけたものはなんだ?」
「説明したくもねー。
ところで蔵馬、ケガはいいのか?」
「ああ。瑠璃覇が治してくれたから、だいぶよくなった」
「そっか!よかったよかった」
「フン…。やせ我慢はよすんだな」
「ガマン強さは、貴方といい勝負でしょ」
「う……」
シレっとして言う蔵馬に、事実だけに、飛影はぐうの音も出なかった。
「そーだ!!蔵馬よ、雪菜さんの治療をうけろよ。彼女と瑠璃覇の治癒能力と、お前の薬草あわせりゃ、鬼に金棒だぜ」
桑原の口から雪菜の名前が出ると、飛影はぴくっと反応をした。
「実はよ、彼女、兄貴を探しにきたそうでなーー。この大会が終わったら、オレも探すの協力するんだ!!」
「ふ~~ん。それは大変だ。飛影!!オレ達も手伝おうじゃないか!」
「オレも手伝うぜ」
「私も手伝ってもいいぞ」
「貴様ら…」
瑠璃覇、蔵馬、幽助の三人が、わざとらしく言えば、飛影は怒り、肩をわなわなと震わせた。
けど、そんなことは気にとめていない三人は、笑いをこらえるのに必死だった。
「あれ?何?この空気。え?君達、あれじゃ…ないのかな?なんか知ってて、オレだけに内緒にしてんじゃないのかな?」
「なーーんもかくしてねーよな?な?な?」
「なんか秘密が臭うな」
自分が恋焦がれている雪菜の兄が、実は、よりによって飛影だという事実を知らないのは桑原だけ。しかも飛影は、自分と雪菜が兄妹だということを知られたくないので、何も言えないこの状況に、三人は笑いをこらえるのに必死だった。
「ハハハハハ。
ん?」
このやりとりに笑っていると、幽助は隣にいる覆面が、自分を睨むように見ていることに気づいた。
「な、なんだよ?」
幽助に問われるも、覆面は黙って目を伏せるだけだった。
その時、観客席から歓声が上がった。
向かい側に、いつのまにか戸愚呂チームのメンバーがいたのだ。
双方睨み合い、会場内に緊張が走る中、観客達の戸愚呂コールが会場中に響く。
そして、戸愚呂弟は幽助を指さすと、次に自分の喉をとんとんとたたいた。
《上がってこい…。ここまでな…………》
そう…戸愚呂弟は、幽助を挑発していたのだ。
《ぶったおす!!》
それに対して幽助は、自身の首まで、親指を立てた拳をもってくると、親指で首を切るようにして横に動かし、そのまま親指を下に向けた。
それを見た戸愚呂は軽い笑みを浮かべると、踵を返して、後ろの出入口へと消えていった。
「…………ま…まじかよ!?前は気づかなかった。奴等、妖気は抑えてるはずだ!なのに、ちくしょお…………!!オレは本当に、あんなとんでもねェ奴と戦ったのか!?」
「戸愚呂の恐ろしさがわかるのは、オメーが強くなったからだ、桑原。敵の強さがわかるのも強さのうち。あのヤローの受けうりだがな」
「おいおい、オレ達を忘れてんじゃないか?」
幽助が桑原に話していると、彼らが立っている左側の通路から、先程戦っていた裏御伽チームが、不敵に笑いながら歩いてきた。
「裏御伽チーム!」
「えっ?じゃあ…」
「次の対戦相手だ」
相手が敵とわかると、幽助は強く睨みつける。
「黒桃太郎だ」
「魔金太郎」
「裏浦島」
「死々若丸」
「そして、怨爺じゃ」
裏御伽チームは、各々自分の名前を名乗った。
「がん首そろえて、なんの用だ?いくら頭下げても、明日の試合、手加減はしねーぜ」
「正義の味方気取りか?ヘドが出るぜ」
「「あぁ?」」
黒桃太郎が、噛んでいたガムを吐きすてながらケンカを売れば、幽助と桑原は、また更に強く睨みつける。
「覚悟しとけ。お前達は、オレ達の名を轟かすための踏み台だ」
「眼中にねーんだよ」
「ヒョットコがよ」
死々若丸が宣戦布告をして去ろうとすれば、幽助と桑原の言葉に歩みが止まる。
「名を売りたきゃTVにでも出ろよ、色男」
「今の言葉、必ず後悔させてやる。必ずな………」
「ひひひ」
幽助が更に挑発すれば、死々若丸は変化して角を出し、幽助を指さして挑発すると、今度こそ去っていった。
「けっ、敵じゃねェ。戸愚呂達とは比べものにならねー程、妖気を感じねェ」
「…………幽助」
「!?」
彼らが去っていくと、覆面が、突然幽助に小さく声をかけた。
「話がある…」
声をかけられると、幽助は覆面を見たまま固まった。
「お…おい」
覆面はそれだけ言うと、そこから立ち去っていく。
「今の声は……」
聞き覚えのあるその声に信じがたそうにした幽助は、覆面の後についていった。
そして、残されたメンバー達は、次のチームの試合が終わると、ホテルへ戻っていった。
それから時間が経ち、天気は雨となった。
瑠璃覇、蔵馬、桑原の三人は、部屋のソファにすわりながら、ババ抜きをしていた。
「浦飯の奴、ホテルにも帰ってねーし。一体どこ行っちまったんだ?」
「ほんとに…」
けど、部屋の中に幽助と覆面の姿はなかった。
二人はどこかへ行ったっきり、ここには戻ってきてなかったのだ。
「しかし、なんだかんだ言っても次は準決勝だぜ」
「準決勝からは、闘技場が他へ移るらしいからな。状況は、より厳しくなると見て、間違いない」
ババ抜きをしながらも、三人はとても真剣な顔になっていた。
飛影も、トランプには参加せず、窓際にすわって土砂降りの雨を眺めているだけだったが、その表情はとても厳しいものだった。
「上等だぜ。矢でもトマホークでも持ってきやがれってんだぃ!!」
気合い充分な桑原だが、そう言いながら、蔵馬から引いたカードはババだった。
ババを引いてがっかりしている間に、次の順番である瑠璃覇が、桑原が持っているババでない方のカードを引き、自分の手持ちのカードと今引いたカードが同じ数字のカードを二枚すて、残り一枚のカードを蔵馬に渡した。
「私の勝ちだな」
「ぐっ……」
桑原がへこんでいる間に、蔵馬は瑠璃覇から引いたカードと自分の手持ちと同じ数字のカードをすて、残った一枚を桑原に渡した。
「オレもあがりです」
「くっそぉお~~。もう一度だ!」
「はいはい」
負けず嫌いな桑原は、自分が負けてしまったことで燃えあがり、再度二人に勝負を挑むと、瑠璃覇は、しょうがないなこいつ…とでも言うような、優しげな顔で返した。
すると、突然ドアが開き、両手いっぱいに、お菓子やお酒やジュースを抱えた女性陣が入ってきた。
「じゃんじゃじゃーん」
「遊びに来たよーーー」
「っだよ、キミタチ。真剣(シリアス)に話してるときに」
「オイオイ、手の中のトランプは何だい?」
「キズはその後、大丈夫ですか」
「あ!!もうヘーキっす!!いっしょにやりませんか!!」
自分と雪菜に対する、あからさまな態度の違いに、ぼたんは桑原を睨みつけた。
「準決勝はあさってでしょ!?もー、今日はバンバン飲むわよォ」
そう言ってる温子は、もうすでにできあがってるようだ。
「特にあんたは、この世で最後の宴になるかもね」
「血がつながってるとは、思えねー言いぐさだな」
実の弟だというのに、静流は辛辣で不吉なことを、ニッと笑いながら桑原に言う。
女性陣が来たことで、トランプをくばり直し、今度は女性陣も交えてトランプをすることになった。
「楽しいですよ。一緒にやりませんか?」
「やらん。キサマは適応力がありすぎる!」
蔵馬は飛影を誘うが、飛影は全力で断った。
「そう…。じゃあ、瑠璃覇は?」
「私もいい…」
「そっか」
飛影が断ると、蔵馬は今度は、いつの間にかすみの方に行き、そこにあるイスにすわりこんでいる瑠璃覇を誘うが、瑠璃覇はあっさりと断った。
「え…。瑠璃覇さん、やらないんですか?」
一人すみに行った瑠璃覇に、螢子はその場にすわりながら話しかける。
「一緒にやりましょうよ、瑠璃覇さん」
「遠慮する…」
「なんでだい?さっきまで、桑ちゃんと蔵馬とやってたんじゃないかい」
「そうですよ。ね、やりましょうよ」
「そうそう。たまにはハメはずそ」
「みんなでぱーっとやろうじゃないの」
そっけなく返したのに、螢子やぼたんだけでなく、温子や静流まで誘ってきたので、瑠璃覇は戸惑った。
「さあ、瑠璃覇さん」
そして、雪菜が近くに来て、瑠璃覇の手をにぎれば、瑠璃覇は驚いて目を大きくあけ、その場に固まった。
けど、少しだけ固まっていたが、すぐに覚醒して手をふりほどく。
「私………もう寝る……」
そう言うと、蔵馬達の前を横切り、自分の寝室へと戻っていく。
「あーあ、行っちゃった」
「何か……気にさわることでもしたのかしら?私達」
「いえ、そうじゃありませんよ」
ぼたんが残念そうにし、温子がふしぎそうにしていれば、横から蔵馬が、温子が言ったことを否定した。
「瑠璃覇は大勢が苦手なだけです。人間でも妖怪でも、なれてる相手じゃないと、どう接していいかわからないだけですから」
「あら、そうなの」
蔵馬に説明されれば、温子はあっさりと納得した。
「そういえば、今日の戦いで見たんですけど、瑠璃覇さんて妖怪なんですよね?」
「そうだよ」
「そうそう。生きる伝説にもなってて、すんげー強いらしいんだ。オレもいつか、戦ってもらうんだ」
螢子が問い、蔵馬が短く返すと、桑原も得意気に瑠璃覇のことを話した。
「魔界屈指ともいわれる実力の持ち主で、魔界では盗賊をやっていたんだ」
「そうなんですか…。そういえば瑠璃覇さん、素敵なネックレスつけてましたよね。ひょっとして、それも盗賊をやってた時のものなんですか?」
「ああ、あれは……まあ……そうかな…」
「瑠璃覇ちゃんがつけてたのは金鈴球だね。氷泪石の何十倍もの価値がある宝石で、人間界では、一生遊んで暮らせるほどの金額だって聞くよ」
「あの石一個で!?っひゃぁあ~~。やっぱ違うわ、魔界のものは」
瑠璃覇が、妖怪だという事実や、盗賊だったという事実より、金鈴球の価値の方に、温子は驚く。
「けど、めったに手に入らない宝石だっていうよ。それなのにみつけ出すなんて、さすが瑠璃覇ちゃんかね」
「いや、そうじゃない」
「へ?」
「…あれは……オレ達がまだ魔界にいた頃、オレが瑠璃覇にあげたものだ」
「蔵馬が…瑠璃覇ちゃんに?」
「ああ…。あれは、オレが初めて瑠璃覇に会った時、瑠璃覇に贈った、オレから瑠璃覇への……愛の証だ…」
そのことを話している蔵馬は、とてもなつかしそうに……瑠璃覇をとても愛しそうに想う目をしていた。
思い出されるのは、昔の自分と瑠璃覇の姿。
蔵馬はトランプで遊びながらも、そのことを思い出していた。
それは、今から1000年以上も前のこと。
1000年以上も昔、瑠璃覇が蔵馬と出会った時のことだった。
「パープル・アイ。これを……お前にやろう」
「なんだ?これは……」
蔵馬は懐を探ると、懐に入っていたものを、瑠璃覇の前に差し出した。
瑠璃覇は蔵馬が手を差し出したことで、手の平を上に向けて、蔵馬がくれると言ったものを受け取ろうとする。
瑠璃覇が手を出すと、蔵馬は瑠璃覇の手の上にそれを置いた。
それは、小さな巾着袋で、その中に入ってる物を取り出すと、シャラっという小さな音をたてて、瑠璃覇の手の上に収められた。
「これはっ…」
中身を見ると、瑠璃覇は驚いて目を見開いた。
「これは……金鈴珠!?」
手の平にあったのは、金鈴珠でできたネックレスだった。
「何故……極悪盗賊と言われたお前が、これを私に?」
この金鈴珠という宝石は、魔界ではかなり高価な宝石で、氷河の国の氷女が生み出す氷泪石よりも、何十倍もの価値があるもので、人間界では、一生遊んで暮らせるほどの価値があるものだった。
そんな高価な宝石を、新しく国を建てようと野望に燃え、盗賊稼業に勤しんでいる、妖狐蔵馬と呼ばれるほどの有名な妖怪があっさりと渡したことが、瑠璃覇には信じられないことだったのだ。
そして、瑠璃覇は驚くだけでなく、激しく困惑する。
自分も盗賊なので、それほどに価値のあるものは、是が非でも手に入れたいという気持ちはある。
しかしそれ故に、蔵馬もこんなにも高価なものを手に入れたいだろうという気持ちがわかるので、余計に驚きを隠せずにいた。
なので、本当にこの宝石を、自分が受け取ってもいいのかどうか、確かめるように蔵馬を見上げた。
「……いいのか?これを……私がもらっても……」
瑠璃覇は、今自分が心の中で思ってたことを、蔵馬に問いかける。
「ああ…。これは…オレからの贈りもの。オレが、本気でお前のことを好きだという証拠。オレの、お前への愛の証だ」
質問の意味を、その短いセリフから瞬時に理解した蔵馬は、あの極悪非道と恐れられた妖怪とは思えないほどの、やわらかな笑みを瑠璃覇に向けた。
その笑みを見ると、瑠璃覇はまた、先程とは別の意味で驚き、頬をほのかに染める。
それは…この金鈴珠のネックレスを蔵馬からもらった時から、1000年以上経った今でも忘れることのない、遠い昔の出来事だった。
その出来事を、瑠璃覇と蔵馬はなつかしそうに思い出していた。
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