第二十六話 地獄の島への旅立ち
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暗黒武術会。
闇の力を使い、富を築いた裏社会の富豪や実力者達が、それぞれ5名の魔性の最強メンバーを集め、バトルを繰り広げる、史上最悪の格闘技戦である。
この大会には、"ゲスト"として、闇の世界に深くかかわり、裏社会の人間にとって邪魔となる人間が強制的にエントリーされる。
拒否することはすなわち、己の死を意味する。
生き残る術はただひとつ――
勝つことである。
今大会の"ゲスト"は
浦飯幽助
桑原和真
瑠璃覇
蔵馬
飛影
この5名である!!
第二十六話 地獄の島への旅立ち
とある海辺……。
そこには、風が吹く音と波の音が響いていた。
月明かりの下、断崖とも言える場所のすぐ側の森の中。
いくつもの火の玉が浮かび、その周りには数えきれないほどの妖怪がおり、火の玉をかこむように立っていた。
「くくく。この日がくるのを、待ち望んでいたぜ」
「おおっぴらに本当の姿で暴れられるうえに」
「勝てば、望むものは自由ときている」
「優勝したら人間1000匹くらいいただこうぜ」
「今からよだれが止まらねェ」
彼らはみんな、暗黒武術会に出場する妖怪で、自分の力に自信をもつ者や、もうすでに優勝した気でいる者さえいた。
「ケッ。勝つのはオレ達だ。命が惜しけりゃ、今のうちに帰るんだな」
「そのセリフ、そっくり返すぜ」
「…………それにしても、人間くせーぜ……」
「ケケケ。てめーら、わざわざ喰われにきたのかァ?」
そう言って、妖怪達が目を向けた先には、瑠璃覇、蔵馬、桑原、飛影の姿があった。
挑発されるが、四人は意にも介しておらず、そこに立っていた。
「浦飯のヤロー、おせーな。なにしてやがるんだ。結局、最後のひとりのメンバーも決まってねーし」
「人の心配より、お前はどうなんだ!?少しはマシになったのか」
「ヘッ、見てのお楽しみってやつよ!!蔵馬と瑠璃覇との秘密特訓、見せてやりたかったぜ」
散々、瑠璃覇と蔵馬の二人にボロボロにされていたのに、桑原は自信満々で飛影に返す。
「(この大会で勝ちまくって、闇の世界に名をとどろかせてやる!!オレの名前を聞いただけで妖怪どもがびびって、雪菜さんに近づけねーくらいにな)」
そして、桑原は一人、心の中で強く決意をしていた。
「お集まりの皆さん。そろそろ出航の時間でごぜーます」
そこへ、左目に眼帯をし、あご髭をたくわえ、黒い長めの帽子をかぶり、右足が義足で左手がフックという、パイプをくわえた男がやってきた。
「おい、もーちょっと待てよ。ゲストのひとりが遅れてんだ」
しかし、まだ幽助が来ていないので、桑原は焦って男に頼みこんだ。
「ヘッ、その場合は逃亡とみなし、刺客をさしむけるルールでごぜーますな」
だが、男は全く聞き入れることはなかった。
「よー。ワリィワリィ」
すると突然声が聞こえてきたので、瑠璃覇達をはじめ、そこにいた妖怪達全員が振り返ると、そこには幽助と、背の低い覆面をした、男か女かわからない人物がいた。
「待たせたな…」
「てめー、おせーぞ浦飯!!」
ようやく来た幽助に、桑原は噛みつくように文句を言う。
「ウラメシ………?」
「乱童や朱雀を倒した、あの有名な…」
「奴を倒せば、一気に名があがるぜ」
桑原の口から出た「浦飯」という名前に、妖怪達はさわぎだし、闘争心をむき出しにした。
「なにせ体中がガタガタでよォ」
「おいおいフラフラじゃねーか。大丈夫かよ」
幽助はフラフラとした足どりで、近くにある木に手をつきながら桑原のもとへ歩いてくる。
「………幽助」
そこへ飛影がやって来て、いきなり幽助に、剣で襲いかかってきた。
けど、幽助はそれを軽く体を動かすだけで、あっさりと避けてしまう。
飛影はその後も何回か斬りつけるが、幽助はそれを見極め、すべてかわしていく。
「?」
「?」
「なんだ?」
「なにをやってやがるんだ」
二人の動きは、周りの妖怪達にはまったく見えていなかった。
「………は……はええ…。目で追っかけてんのがやっとだとォ…」
一方で、桑原は目を動かしながら、二人の動きを追っていた。
ギリギリではあるが、桑原には二人の動きが見えていたのだ。
そして、桑原が驚いていると、幽助は剣を、指でつかんで止めた。
「………ふう…。ずい分物騒なあいさつだな」
「……フ。どこで、なにをしてきたのかしらんが、少しはできるようになったな」
自分の動きについてきた上、剣を指で止めた幽助に、飛影はうれしそうな顔をした。
「少しだとォ…………ちくしょオ、ぶっちぎりで強くなっちまってるじゃねーかよ」
「………大丈夫。今の動きが見えてるなら、君も充分成長している」
「そうだな。前よりはマシになったんじゃないのか」
同じ期間を修業したのに、自分よりもずっと上にいってしまってる幽助に、桑原はくやしそうにする。
けど、そこを蔵馬と瑠璃覇がフォローした。
「ところで………まさか、あそこのチビが、6人目のメンバーなのか」
「え」
飛影に言われて、桑原が目を向けた先には、覆面をした、男か女かわからない背の低い人間がいた。
「なにー?こいつ!?あんまり小さいから気づかなかったぜ。大丈夫かよ。くしゃみでもしたら、フランスまでふっ飛んでっちまうじゃねーか!?」
「………」
「安心しろ。最強の助っ人だぜ」
「う~~む。今イチ納得できん」
「かまわん。オレと幽助だけでも充分だ」
幽助が自信をもって断言しても、桑原は納得できず、飛影は飛影で、不敵な笑みを浮かべていた。
「んじゃ、出発しますぜ。首縊島までは、約2時間………」
どこか雲行きが怪しくなってきた中、首縊島へ向かう船は出航した。
船に乗りこむと、全員思い思いの場所に行き、各々好きに過ごしていた。
そして瑠璃覇達は、妖怪達から少し離れた船のヘリにいた。
幽助はヘリに背をあずけて眠っており、飛影はヘリの上に立ち、蔵馬と桑原はヘリにもたれながら立っており、瑠璃覇はヘリの上にすわり、覆面はヘリに体をあずけず、少し前に立っていた。
「それにしても、殺風景な船だな」
「観光に行くわけじゃないからね」
飛影が愚痴をこぼすと、蔵馬はそれをあっさりと返す。
「そーだけどよ。飯くらい出してもいいんじゃねーのか?こっちは腹ペコだぜ」
けど、飛影に続いて桑原まで愚痴をこぼしてきた。
「ところで瑠璃覇、おまえさっきから何やってんだ?」
ヘリに腰をかけている瑠璃覇は、さっきから黙ったまま、風を手の上で操っていたので、それを疑問に思った桑原は瑠璃覇に問いかける。
「妖気と力のコントロールだ。前にも言っただろ?戦いにおいて、もっとも大切なものは、妖気のコントロールだって…」
「いや……覚えてるけどよ。だからって、なんでこんなところでまで……」
桑原がそう言った時だった。
「あー、皆さんご静粛に」
操舵室の上に立っている船長から、声がかかった。
「船が島へ着くまでの間、宴会のかわりといっちゃなんですが、ちょいとした余興をとり行いたいと思いやす」
「おぉ!ディナーでも出してくれんのかな?」
「これからこの船の上で、武術予選会を行いやす」
船長の今の言葉に、船の上は一気にざわめき始めた。
「なに?」
「武術予選会だと?」
「しかも、こんな船の上で?」
「一体どこで戦うんだ?」
当然瑠璃覇達も、船長が言ったことを疑問に思った。
すると、突然船が揺れだした。
「おわ!!じじ…じ、地震だ!!」
「バカめ。船の上で地震など起こるか」
「見ろ!」
蔵馬が揺れの正体に気づき、指をさすと、そこでは船の真ん中が割れ、闘技場がせりあがってきた。
「なんだありゃ」
普通の船にはない設備が出てきたので、桑原は驚くばかりだった。
「ここが、戦いの場でやんす」
「ほう、闘技場だったのか」
「船の上の闘技場か。なかなか、しゃれてやがる」
「実はすでに、トーナメントに出場する15チームは決定し、島で待機しておりやす。この船上にいる中で、参加できるのは、たったの1チーム!!」
思いもよらない船長の言葉に、妖怪達は口々に文句を言いだす。
「くそっ、オレ達ゲストじゃねーのかよ。なんて扱いだ」
「ゲストだからだよ」
「これが奴らのやり方だ」
こっちでは桑原を文句を言っていたが、瑠璃覇と飛影はあっさりと返した。
「チームの中で、最強と思われる人物を選んでくだせェ。あの上で戦い、残った1名のチームに、決勝トーナメント出場の権利を与えやす」
「よし、やったろーじゃねェかァ。このオレ様が、どんだけ強くなったか、見せつけてやんぜェ!!」
桑原はなんだかんだ言いながらも、手をバキバキと鳴らし、自分が戦おうとした。
その時、桑原の後ろに、すごい大きな足音が響いたので、桑原は後ろへ振り向いた。
「ぐふふふふ…。おもしれェ準備運動だ。どーせ優勝するつもりだしな」
「まあ、小手調べにはもってこいだ」
「一度に、何匹もの妖怪を始末できるのが、こりゃうれしいかぎりだ」
後ろには桑原よりもはるかにでかい妖怪が三匹おり、彼らは自信に満ちあふれた顔で笑いながら、闘技場で向かっていった。
彼らの巨体を見た桑原は、先程の自信はもうすでになく、すっかりたじろいでしまっていた。
「あいつらとバトルロイヤルってかァ!?集中的にねらわれたら、どんなに強くてもイチコロじゃねーか。
よーし浦飯、まかせた。特訓の成果を見せてやれ」
そして、先程とはまったく違うことを言う桑原は、幽助に出てもらおうとした。
「!?
う、浦飯!!」
「くかー」
「おい、なに寝てやがるんだオメーは。大将がそんなのん気でどーする。起きろ。出番だってーの」
しかし、幽助は熟睡しており、桑原は幽助の胸倉をつかんで激しく揺らしていたが、幽助はまったく起きる気配はなかった。
「………よほど、すさまじい特訓をしたんだろう。体力と霊力を回復するため、ひどく深い眠りに入っている」
「なにィーー!?
じゃ、一体だれが行くんだ!?」
「………」
「!?」
代表者を決めかねていると、覆面が闘技場へ足を進めていく。
「…………おもしろい。奴がいく気だぞ。どれほどの実力があるか、見物させてもらおう」
「あいつが負けちまったらどうすんだよ。オレ達、出番なしでとんぼ帰りかよ」
「そのときは、オレ達でこの船のやつら、皆殺しにすればいいだけの話だ。そうすれば、だれも文句いう奴がいなくなるだろ?」
「私も飛影に同意見だな」
「なっ……」
飛影の怖い発言と、それに同意した瑠璃覇に、桑原は顔が青ざめる。
「では、始めィィ」
すべてのチームの代表者が決定し、闘技場にあがると、船長が試合開始の合図を出した。
試合開始の合図を出すと、全員が覆面の方に向く。
「くくく。まずは、一番弱そうな奴から」
「順々に殺していこうか」
彼らが言う弱そうな奴とは、もちろん覆面のことだった。
全員の意見が一致し、彼らは構えをとった。
「まずはてめェだーーー!!」
「コナゴナにくだばれェ」
そして、構えをとると、いっせいに覆面に襲いかかっていった。
「ゲェーー。やっぱり集中攻撃だーーー!!
あんなスミッコにいるから、逃げ場すらねーー!!」
普通なら、こんな大人数にいっせいに襲いかかられては、ひとたまりもないだろう…。
しかし覆面は、拳をかまえると、霊気を弾丸のようにとばしただけで、すべての妖怪をふきとばしてしまった。
覆面の戦いを見ていた瑠璃覇達は驚き、その間にも、ふきとばされた妖怪達は、海の中に落ちていく。
「決勝トーナメント16チーム目はァ、ウラメシチームに決定!!」
船長は舌打ちをしながらも、浦飯チームの勝利を宣言した。
「あ…あれは幽助のショットガン。あ…あいつは一体……?」
桑原は、何がなんだかわからないといった様子であるが、瑠璃覇だけは軽く笑みを浮かべていた。
「………フ。幽助がなんの心配もなく、ぐっすり眠れる理由がわかるね」
「くぁーー」
蔵馬が目を向けた先には、未だにのん気に寝ている幽助の姿があった。
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