第三十九話 風と霊気の一騎打ち
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小兎が五試合目の試合開始の合図を出すと、いきなり観客席から大歓声がおこった。
「陣がやっと出てきたぜーー」
「陣が出りゃこっちのもんだァーー」
それは、あの風使いの陣が出てきたからだ。
陣が出てきたので、一気に興奮した観客席からは、再び殺せコールが始まった。
「うるせェなや。やりたきゃ、自分らでやれっちゃ」
しかし、陣はそれをわずらわしそうに感じていた。
「ホレホレ、これ見てけろ」
いきなり陣が声をかけ、自分の耳を指さしたので、まだ怒りがあった幽助の顔はくずれた。
「耳がピーンととがってるべ?オレな、コーフンしたり、ワクワクすっとこうなるんだ。いや~~~、こんなビンビンになったの、久々だわさ。
あ、それがらオメが爆のヤロぶっとばした時、スカッとしたんだ、オレ。正直言って、あいつの不実さには、ほとほとあいそがつきてたからよ。
あ、これ吏将にはナイショな」
「ぷっ」
陣のひょうきんな接し方に、幽助は思わずふき出してしまった。
「―――ちっ、すっとんきょうな野郎だなオメー。怒りにまかせてぶっとばしてやろーと思ってたのに、毒気ぬかれちまった」
「あいつはあいつ、オレはオレだ。ギスギスした気持ちのまんまやりあっても楽しくねーべ?せっかく体はってんのによ」
激しい風が陣を包むように吹きあれ、その風で陣は宙に浮いた。
「なんと!!風を操り、自らを宙に浮かせてます!!」
「すげェ………ぜ。瑠璃覇と同じだ…。怒りなんざ、完全にふっとんじまった。よーーし、力比べをしよーじゃねーか。さあ、おっ始めよーぜ!!」
「始め!!」
もう、爆拳の時の怒りなんて完全になくなってしまった幽助は、いつもの調子を取り戻し、ただ純粋に戦いたいという気持ちで、陣に挑もうとしていた。
第三十九話 風と霊気の一騎打ち
試合開始と同時に、幽助はいきなりとび出していった。
「シュッ」
間合いをつめ、陣に殴りかかったが、陣は風を操り、上空へと飛び上がったので、幽助の拳は空を切った。
「高ーーーーーーーーーーーーい!!陣選手、まるで、ロケットの様に飛び上がったァーーー!!
しかもおりてきませーーん」
陣は会場のはるか上まで飛んでいくと、試合そっちのけで、空から島全体を見渡した。
「ここの風は、元気がいいだなァ。
――――いい島だ………」
そして、風の心地よさと島のよさを肌で感じていた。
「この島は、必ずオレがいただくだ」
下を見ると、そこでは幽助が、「てめー、おりてきやがれ」と叫んでいる。
「オメばぶっ倒してな!!」
「きやがれ!!」
「陣選手、垂直急降下で突っ込んでくるーー!!」
陣は幽助を倒すべく、急降下してつっこんでいった。
「あァーーー!!なんと空中旋回しましたァーーー!!」
だが、直接幽助のもとへいくのではなく、空中旋回して幽助の背後に回りこみ、パンチを喰らわせた。
けど、幽助もただ殴られるだけでなく、陣にひじ打ちと蹴りを喰らわせようとしたのだった。
「ぐわっち」
しかし、攻撃は陣にあたらず、幽助は殴りとばされ、リングにたたきつけられた。
「(こいつ…。あの体勢から、ひじ打ちとケリを入れようとしやがった…)」
「っつ~~~。すんげェパンチだぜ。存分に楽しめそうだな」
「風使い陣選手。飛翔術を用いての見事な先制攻撃!!しかし、圧倒的不利な体勢から反撃しようとした浦飯選手。転んでもただではおきません!!」
「あの体勢から攻撃しようとすっとはなーーーー。くえねェ奴だな」
「オメーのパンチもけっこう効いたぜ。ふんどししめてかからねーとな」
やられたり、やられそうになりながらも、それでも陣と幽助は、お互いうれしそうに笑っていた。
「ほめるのは、ちっとはええぞ」
そう言って陣は、右手首を軽く動かした。
「むん」
右手首を動かすと、付け根のところから腕を回転させ、最初はゆっくりだったのが段々と早くなっていった。
「じ、陣選手。自らの手で、なんと竜巻を作り上げましたー!!」
そして、陣の腕には小さな竜巻ができた。
「修羅旋風拳」
それは、陣の技のひとつだった。
「(あいつは、自らの腕につくるのか…。ああいう使い方は初めて見るな…)」
それを瑠璃覇は、同じ風属性の妖怪だから興味があるのか、先程までの戦いよりも真剣に見ていた。
「いっくぞーーーー!!」
腕に竜巻を作りだすと、陣はまっすぐにつっこんでいき、竜巻ができてる方の腕で、幽助に殴りかかった。
「くっ」
幽助は陣の攻撃を、間一髪でよける。
「おおおおお!?」
だが、それでもかすかにあたってしまい、場外へふっとばされた。
「かすっただけですっとばされちまった!!まともにくらったらどうなっちまうんだ」
場外にふっとばされた幽助は、あと少しで壁にあたりそうになる。
「ふむ」
けど、幽助は壁にあたる寸前で、うまく体を反転させてフェンスにつかまり、激突をさけた。
「浦飯選手。体をうまく反転して、激突をさけました!!」
「!!」
「が、しかし―――!!」
壁に激突するのをさけられたのはいいのだが、陣は幽助のあとを追ってきた。
「陣選手、後を追っているーー!!」
幽助の後を追ってきた陣が、幽助がいるところを殴れば、一瞬で壁が粉砕され、その付近にいた妖怪がふっとんだ。
「なるほど、ああなるわけね。シャレになんねー」
「ん~~、いい反応してるだ」
なんとかよけたものの、今の技が自分にあたってたらと思うと、幽助はぞっとした。
一方で陣は、自分の技を幽助がよけたので、楽しそうに笑い、耳がピクピクと動いていた。
「間一髪。壁をけって、浦飯選手危機を脱出」
「そんでこそ、倒しがいがあるだ」
今の攻撃で、腕の竜巻は消えてしまったので、陣はもう一度作ろうと、腕を回そうとした。
「させねーーー!!」
それを阻止するために幽助は走っていき、陣にパンチを連打した。
「…………すっ、すいません。速くて見えませーん。ど、どうやらお互い、パンチと防御の応酬をしている模様です!」
「お お! お!!」
素早く繰り出されるパンチを、陣は手で防御していた。
だが、幽助が何度かパンチを繰り出すと、そのうちの一発が陣の腹部にあたった。
「ぐ え」
そして、あまりの痛さに陣は動きが止まる。
「チャンス!!」
そこを狙って、幽助はとどめの一撃を喰らわせようとした。
しかし、陣はまた上空に飛び、エスケープをする。
「~~~~くっそ。また上か!!」
「陣選手、空中へエスケイプ!!場外ルールでは、円闘場以外の地に、体の一部が触れている場合に限り、カウントをとることになっています!つまり空中は場外にならず、カウントはとりません!!」
「げっほげほ。きっつ~~~~。なるほど。このパンチくらったら、爆拳じゃひとたまりもねーわな」
上空に逃れた陣は、お腹をおさえて苦しんでいたが、上空へ逃げたのもつかの間、幽助が霊丸を撃ってきた。
「上空に逃れ、ホッとした油断をついての霊丸ーー!!これはとらえたかーーー!!」
「(カンペキ!)」
霊丸はまっすぐ陣に向かっていってるので、これで倒せると思った。
「爆風障壁」
だが、陣はすさまじい風を起こし、霊丸の方向を変えてしまった。
とらえたと思ったのに、思わぬ展開になり、幽助は驚きをかくせないでいた。
「か、風で!!突風で霊丸の方向を変えてしまいましたーーーーー!!すさまじい風の力!!おそるべき風の使い手!!」
「風のヨロイが、オレを守ってくれてるだからな。オレに霊丸を当てることはできねーよ」
霊丸を防御した陣は、得意気に笑っていた。
「勝負あっただかなーー?」
「ぐ……!!」
陣は再び竜巻を作ろうと腕をまわしはじめ、今ので幽助は顔をゆがめた。
「あのバカ……」
それを見ていた瑠璃覇はあきれていた。
誰だって攻撃をされれば防御はするし、何よりこの形の防御術は、以前四聖獣の白虎との戦いで、瑠璃覇がやっていたからだ。
「おい、瑠璃覇ァア!!」
あきれていると、突然幽助は、瑠璃覇に怒鳴るように声をかけてきた。
「なんだ?」
けど、瑠璃覇は冷静に返す。
「お前、うそつきやがったな!?」
「ハァ!?」
けど、次にいきなりうそつき呼ばわりされたので、瑠璃覇はわけがわからなくなった。
「お前…さっき、相手は竜巻をおこすか突風を起こすかの、どっちかだと言っていたじゃねーか。それにあいつ、お前が使う技とちげーじゃねーかよ!!」
「なっ!!バっ、バカか貴様は!!私がいつ、相手の技が、竜巻を起こすか、突風を吹かせるかのどちらかだと言った!!それに、いつ私とあいつの技が同じと言った!!
いいか。同じ属性でも、その妖怪によって使う技は違うんだ。六遊怪チームの是流と飛影。さっき、蔵馬と戦っていた凍矢と、四聖獣の青龍が違ったようにな!!
大体、お前と桑原が、一番いい例だろう!!」
「あ……」
「まったく…」
話の流れで、なんとなく相手の技が、竜巻をおこすか突風を吹かせるかのどちらかだということと、陣と瑠璃覇が同じ技を使うと思っていた幽助は、瑠璃覇に言われるとようやくそのことに気づき、瑠璃覇は更にあきれた。
「とにかく、さっきのアドバイスをもう一度よく思い出せ。勝つ方法がないわけじゃない」
「……ああ…」
うなずいた時の幽助の目は、もうその方法に気づいてるという目だった。
それを見た瑠璃覇は、軽く笑う。
その間にも、陣は再び右手に竜巻を作り出していた。
「ケリつけてやるだ!!」
陣はまっすぐに幽助に向かっていくが、幽助は微動だにしなかった。
「浦飯選手、微動だにしませんーー!!まさか覚悟を決めたのかーーー!?」
しかし、陣が修羅旋風拳を繰り出した瞬間、幽助は霊丸の構えをとった。
陣がパンチを繰り出す瞬間を狙って、敵に接触して霊丸を撃とうという考えだった。
「ま、まさか!?」
「そうだ。それでいい、幽助…」
「さあ、どっちが頑丈(タフ)かな!?」
幽助が霊丸を撃つと、幽助の霊丸と陣の修羅旋風拳がぶつかり、すさまじい爆風が起こった。
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