第三十八話 怒りと愛情
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「だ…誰?あの人…」
観客席の方には、螢子、ぼたん、静流、温子の四人がいて、突然出てきた見たことのない人物に、螢子は疑問を抱いていた。
「あれは、あの子だろ?あの、瑠璃覇っていう茶髪の女の子」
「えぇっ!?あの人、銀さん?でも、銀さんは茶髪でしょ?あの人は、なんだか白っぽい髪だし…」
静流は、瑠璃覇が最初から妖怪だとわかっていたので冷静だったが、螢子は初めて見る銀髪の瑠璃覇を、信じられずに凝視していた。
「瑠璃覇ちゃんの正体は、妖狐さ」
「妖狐?」
「妖狐ってのは、何百年も生きた狐が妖怪化したものさ。だから、あれが瑠璃覇ちゃんの本来の姿なんだよ」
「妖怪?銀さんが…?」
六遊怪チームとの戦いの時、瑠璃覇の姿をここで見た時も驚いたが、実は瑠璃覇が妖怪だと知り、螢子は更に驚く。
「あれは……まずいね…」
「え?どういうことですか、ぼたんさん」
「瑠璃覇ちゃん、蔵馬がやられて、相当キレてるみたいだよ。ひと波乱ありそうだね」
「え…!?」
説明されると、螢子はこれからどうなるのだろうと、固唾をのんで見守った。
第三十八話 怒りと愛情
「おい……あいつ、おかしくねえか?」
「今までと雰囲気がちげェぞ」
一方周りの妖怪達も、今までと違う雰囲気の瑠璃覇を見てざわつきだす。
「ん?見ろよ、あいつ。銀色の髪の毛に……紫色の瞳………それに……妖狐…。妖狐じゃねェのか!?あいつ!!」
「……て…ことは…」
瑠璃覇の特徴をとりあげていくと、ひとつの結論に至った。
「うわぁあああああっ!!パープル・アイだァァァア!!」
「何!?あいつが、あの…?」
「あの……生きる伝説と言われ、魔界屈指の実力者と名高い!?」
「とっ……とんでもねェ奴が、浦飯チームにいたもんだぜ…」
それは、瑠璃覇の正体がパープル・アイだということで、瑠璃覇の素性を知った観客達は、顔が青ざめていき、びびり、さわぎたてた。
一方、こちらはVIP席。
「まずいな」
「え、何がですか?コエンマ様」
そこは、浦飯チームのオーナーであるコエンマがいる席で、瑠璃覇が妖狐の姿に戻った上、怒りと殺意と憎悪に満ちあふれているとわかったコエンマは、冷や汗をかきながら、リングの方を見ていた。
けど、一体何がまずいのかさっぱりわからないジョルジュは、疑問符を頭に浮かべる。
「バカモンが!!お前はそんなこともわからんのか!!」
「ごめんなさァーい」
「今、爆拳とかいうあのバカは、蔵馬をいいようになぶり、攻撃してたんだぞ。蔵馬の命をおびやかすことをしていたんだ。
考えてもみろ。蔵馬が行動理由である瑠璃覇にとって、あの行為は絶対に許せないものなんだぞ。
瑠璃覇は絶対に、あの爆拳を殺す。たとえ、大会本部やこの島の妖怪を、すべて敵にまわしてでもな」
「そ、そんなぁ…」
コエンマの予想に、ジョルジュは冷や汗ダラダラだった。
「あ、でも……コエンマ様が止めに入ればいいんじゃないですか?だってコエンマ様は、浦飯チームのオーナーなんでしょ?」
「あいつがわしの言うことをきくか!!あいつは霊界が嫌いなんだぞ!!
それに、例えきくとしてもだ。蔵馬の危機だという時に、誰かのいうことをきくような奴じゃないぞ、瑠璃覇はな」
「じ、じゃあ…どうするんですか!?」
「……神に祈るしかあるまいな…」
もうどうしようもない今の状況に、ジョルジュだけでなく、コエンマも冷や汗ダラダラで、心臓がとび出そうなくらいに胸をドキドキさせ、会場の様子を見守っていた。
場所は再びリングに戻る。
「その手を離せ……」
瑠璃覇は、鋭い刃のような目を爆拳に向けながら、爆拳のもとへ歩いてきた。
「なんだと?もういっぺん言ってみろ!!」
「その手を離せと言っている…!!」
強気に返す爆拳だが、そんなことでひるむ瑠璃覇ではなく、同じことを繰り返した。
だが、爆拳は瑠璃覇が言うことを聞き入れることなく、蔵馬の胸ぐらをつかんだままだった。
「いいか、次はないぞ。その手を離せ…」
「う……い、いいのか?今オレに手を出せば、こいつの体中の骨という骨がくだけるぞ」
「頭の悪い奴だな」
あまりに愚直な発言に、瑠璃覇は腹立たしげに顔をゆがめる。
「そんなことをしたら、貴様の命がなくなると言ってるんだぞ」
「だ……だからなんだ?そんな脅しに、この爆拳様がびびるとでも思っているのか!?」
「そんなに早く死にたいのか?貴様…」
「ぐっ……」
何を言っても、愚直な発言はまったく変わらないので、瑠璃覇は爆拳を先程よりも強く睨みつけると、爆拳は冷や汗をかき、たじろいだ。
「まったく…。これだから、実力差がわかっていないバカは困る。礼儀というものがかけてるんだからな…。下っ端というのは、くだらん見栄とプライドで、自分を死に追いやるのが好きだな…」
「うぅ…」
「それに……命をうばうためにやっている…だと?おもしろい。やってみろ。
だがその瞬間……貴様の首は、永遠に胴体と別れることになるぞ…!!」
「うぐ……」
瑠璃覇が言っていることは、冗談ではなく本気だった。そんな瑠璃覇の殺意を感じとった爆拳は、一瞬動けなくなった。
「もっ……もし、ここでオレに手を出せば、大会本部や、この島中の妖怪達が黙っちゃいないぜ」
そう……瑠璃覇は、いくら大会本部の罠とはいえ、欠場扱いになった身。どんなに汚いとはいっても、ルールはルールなのだ。
ここで爆拳に手を出せば、ルール違反で失格で負けになる上、大会本部やこの島にいる妖怪達を、すべて敵にまわしてしまうことになる。
爆拳は、最後の手段とでもいうように、瑠璃覇に言い放った。
「だからなんだ…?」
だが、瑠璃覇にそんなものは通じなかった。
「そんなのはどうでもいいこと。私にとって今重要なのは、蔵馬が無事かどうか、ただそれだけだ。貴様は、戦えない無抵抗の蔵馬を、散々いたぶり、傷つけた。ただですむとは思っていまいな?」
瑠璃覇にとって、戦いは日常茶飯事。
それに、そうでなかったとしても、蔵馬の命をうばおうとしたこの爆拳を、瑠璃覇が許しておくはずがなかった。
「それに、この島中の妖怪と言っても、ザコ妖怪しかいない。そんなものは、まったく苦ではない。うっとうしいのは確かだがな……」
ついでにいえば、魔界屈指とまで言われるほどの実力をもってる瑠璃覇には、この島に存在する妖怪はザコでしかないので、手間どったりびびったりはしないのだ。
「蔵馬が殺されてしまう腹立たしい気持ちと……この島中の妖怪すべてを相手にしなくてはならない、わずらわしい気持ち……。今、この瞬間量りにかけて、一体どちらが重いかという……ただ、それだけの話だ」
そう言うと、瑠璃覇は風を起こした。
今にも攻撃しそうな雰囲気に、会場に緊張が走る。
「答えは聞くなよ。わかりきっていることなんだからな……」
そう……蔵馬が殺される方が何よりも嫌だ。蔵馬を危害を加える者はすべて排除する。瑠璃覇の、その鋭い紫色の瞳がそう言っていた。
「う……そ、そうなる前に……」
爆拳は、かなり冷や汗をかいており、体が硬直していた。
けど、なんとか脳に指令を送り、腕を動かし、拳をにぎる。
「そうなる前にっ……こいつをぶっ殺してやるぜェェェエエーーーー!!!!」
そして、蔵馬の顔をめがけて拳をふるった。
それを見た瑠璃覇は、風の技を出そうとする。
「やめろ爆拳!!」
だが、突然敵チームの大将が声を上げ、爆拳を止めた。
その声に、爆拳だけでなく、瑠璃覇も手を止める。
「吏将!なぜ止めた」
「……殴れば、お前はやられていた。後ろを見ろ」
吏将に言われて振り返ると、そこでは、幽助が霊丸を撃とうと構えていた。
「そこの女だけじゃない。奴も本気だ。大会ルールを無視して、この会場の妖怪全てを相手にすることになっても、霊丸を撃っただろう…。我々の目的は、勝ち残ることだ。無駄な殺し合いをする必要はない」
「ケッ、甘いぜ吏将。いや、凍矢も画魔も陣もだ。邪魔な奴は、全部殺せばいいんだよ」
吏将に対しては強気な態度だが、再び幽助を見ると、怒りの形相で睨んでいたので、びびって冷や汗をかいた。
更に横から殺気を感じ、そちらを見てみると、瑠璃覇が怒りと殺意と憎悪がこもった目で睨みつけており、爆拳はその目に固まってしまう。
「まあいい。こいつは返してやる!!」
二人の眼力にひるんだ爆拳は、蔵馬を放り投げた。
「くっ…」
蔵馬はリングの外に投げられ、あとちょっとのところで地面に直撃しそうだったが、ギリギリのところで瑠璃覇の風に助けられ、それはまぬがれることができた。
「蔵馬選手、戦闘不能とみなし、爆拳選手の勝ちと致します」
小兎が爆拳の勝利を宣言すると、電子パネルには、爆拳の方に〇がつき、観客達は盛り上がりを見せた。
一方VIP席では、なんとかことなきを得たので、コエンマがほっとしていた。
「蔵馬…」
瑠璃覇はもう一度爆拳を睨むと、蔵馬のもとへ走っていき、幽助もまた蔵馬のもとへ行き、蔵馬を抱き起こす。
「……蔵馬」
「蔵馬っ!!!」
「瑠璃覇」
「ああっ…」
血だらけ、傷だらけで、意識不明の状態の蔵馬を見て、瑠璃覇は悲痛な声をあげる。
幽助は蔵馬を抱き起すと、お姫さま抱っこをしてリングの下まではこんでいき、そこに寄りかからせる。
瑠璃覇も幽助の後に着いていき、力なくリングに寄りかかる蔵馬を、心配そうにみつめた。
「瑠璃覇……蔵馬のことを頼むぜ…」
「ああ……」
それだけを言うと、幽助はリングにあがろうとその場を立った。
「幽助!」
けど、そこを瑠璃覇に止められる。
幽助は無言のまま、瑠璃覇の方へ顔を向けた。
「あとは…たのむ…」
「わかってる。まかせろ」
短い言葉ではあったが、それだけで瑠璃覇が何を言いたいのかわかった幽助は、瑠璃覇が言ったことを了承すると、戦いに挑もうと、再びリングの方に顔を向けた。
リングに顔を向けると、爆拳を鋭い目で睨みつける。
「なんだ、その目は?そんな目で、オレがひるむとでも思ってんのか?オレを誰だと思ってんだ!!」
「そんなに早く死にてーのか?」
そう言って幽助がリングにあがると、試合開始のブザーが鳴った。
幽助は爆拳の前まで歩いてくると爆拳を睨み、爆拳もまた、幽助を睨みつけた。
「第四試合!!浦飯VS爆拳。始め!!」
そして、幽助がリングの中央まで歩いてきて、爆拳と向かい合うと、幽助と爆拳の試合が開始された。
一方リングの下では、瑠璃覇がハンカチを取り出して、蔵馬の血をぬぐっていた。
「瑠璃覇…」
「蔵馬…!!」
血をぬぐっていると、蔵馬がゆっくりと目をあけ、瑠璃覇の名前を呼んだ。
「蔵馬、大丈夫か?」
「ああ、なんとかな…」
「……すまないな」
話していると、何故か突然瑠璃覇が謝ってきたので、蔵馬は疑問符を浮かべた。
「私の力では、そのシマネキ草を枯らすことはできない。枯らさなければ、治癒能力を使えない。だから、今すぐ傷を治すことはできない」
それは、瑠璃覇が謝るようなことではないのだが、それでも謝ってきたので、蔵馬は口をあけたまま固まった。
「大丈夫。オレは平気だ。そんなことより……また、瑠璃覇に心配をかけた。それに、またかっこ悪いところも見せてしまった」
そう返されると、瑠璃覇は優しく微笑んだ。
「いいんだ。蔵馬が好きなだけだから…。それよりも……蔵馬が無事で…本当によかった…」
そして、蔵馬の傷に響かない程度に、優しく抱きしめた。
一方リングの上では、爆拳が力んでおり、体中から大量の汗を流していた。
「どうした!?戦う前から、そんなに汗かいてハァハァしてよォ。もう降参か?」
「バカは呑気でいいな。くくくく。
修羅忍術・白煙の霧!!」
「なに!?」
爆拳が腕を上にあげると、体から白い煙が出てきて、会場を包んだ。
「消えた!?」
そしてその霧にまぎれて、爆拳は姿を消した。
「うっ!なんだ、このニオイ。汗くさ!」
「どうやら、自分の汗を大量の霧に変えられるようだ…」
鼻がきく瑠璃覇は、あまりの臭いニオイに顔をゆがめ、鼻をつまみ、同時にそれを少しでも軽減させようと、人間の姿になった。
「なんと爆拳選手、大量の汗を霧にかえて、身をかくしましたーー!!これでは浦飯選手、相手がどこから攻撃してくるかわからない!!」
小兎が状況説明をした時、幽助の横から爆拳の拳がとんできて、幽助の顔を殴りとばした。
その勢いで、幽助は後ろにさがってしまい、頬には殴られたあとができていたが、幽助はまったく動じていなかった。
「くくく。どうだ、手も足もでまいて。貴様も奴と同様、この霧使いの爆拳の手によって、サンドバックになる運命よ」
「……ヘっ、ヘヘヘ」
どこから攻撃してくるかわからない上、今しがた殴られたばかりだというのに、幽助は笑いだした。
「……?気でもふれたか。なにがおかしい」
「安心したんだよ。こんなしけたパンチじゃ、いくら殴っても蔵馬は殺せねー」
「む!!」
「それにてめェは、陣って奴より、数段弱いだろ」
「な……なにィ!!」
「こんな汗臭ェ霧は、奴の風になら、すぐふっとばされちまいそうだもんなァ。
てめェの芸は霧で身をかくし、後ろからぶん殴るだけだろ!?」
「ぬうう。だ、黙れ!!ガキめが、調子にのりおってーーーー。いきがったところで、貴様に風はつくれまい!!
一撃で、頭ガイ骨へし砕いてくれるわ!!」
幽助の挑発に頭に血がのぼった爆拳は、後ろから幽助に襲いかかるが、幽助は冷静なまま、霊丸を下に向けて撃った。
「ぐ!?」
霊丸で砕けたリングのカケラが、爆拳に向かってとんできたので、爆拳はそれを腕でガードする。
「や…奴め、爆風で霧を……」
さっきの霊丸は、爆拳を攻撃するためのものではなく、霧をはらすためのものだった。
だが目の前に、幽助はいなくなっていた。
「クソォ~~。や、奴はどこに消えた!?どこだァ!!」
「こっちだぜ」
姿が見当たらない幽助を探していると、余裕の笑みを浮かべた幽助が、爆拳の後ろに立っていた。
「こっちを向いてもいいんだぜ。オレのパンチはなァ、てめーみてーなヘナチョコじゃねーから、かくれなくたって、お前を一撃でぶち殺せる!!」
「何をォォ!!小僧ォォォ!!」
怒った爆拳は、振り向いて幽助に殴りかかっていき、幽助もまた、爆拳の脇腹に強烈なパンチをお見舞いした。
「がはっ!!」
あまりに鋭い痛みに、爆拳は殴られたところをおさえ、反吐を吐いた。
「はひょーーーはひょーーー。がっは…!ア…バラが……!!」
「へっ。油汗じゃ自慢の霧は出せねーのか?」
「ま、待て!!アバラがいかれちまったァア。もも、もう戦えねェよォオ」
「てめェ……戦えねェ蔵馬に、なにをしたか忘れたのか」
事実だけに何も言い返せず、爆拳の顔からは、更に大量の油汗が流れ出す。
「いや…。へへへへ。あの時は、オレもコーフンしててよォ。へへ。よ、よく覚えてねェんだよ。へ、ヘヘ」
苦しい言い訳をする爆拳に、幽助は口もとに一瞬軽い笑みを浮かべる。
「オレが再現して見せてやんぜ!!てめェの体でなァ」
しかし幽助は、爆拳の言い分をいっさい聞くことなく、まったくの躊躇も容赦もなく、全身にパンチを喰らわせた。
爆拳は全身の骨という骨が砕け、観客席までふっとんでいき、観客席とリングをへだてている壁を破壊した。
また、爆拳がふっとんでいったすぐ隣にいた陣は、楽しそうな…うれしそうな顔をしていた。
「場外!!カウントを数えます!!」
爆拳がふっとんでいき、リングの外に出ると、小兎はカウントを数え始めた。
まだカウントを数えてる最中ではあるが、幽助は自分のチームの待機場所へ歩いていく。
蔵馬のことが気がかりだったからだ。
「10!!勝者、浦飯!!
…あ?」
幽助の勝利を宣言するも、すぐそこに幽助はおらず、すでにリングを降りる寸前だった。
「幽助」
「勝ったぜ」
「ああ……すまないな」
そこへ、瑠璃覇が幽助に声をかける。
名前を呼ばれただけだが、それだけで、瑠璃覇が何を言いたいのかわかった幽助は、ニカッと笑って勝利を手にしたことを報告すると、瑠璃覇も満面の笑顔で微笑んだ。
今まで、笑ったといっても、せいぜい不敵な笑みか口角を軽くあげるだけのものだったので、今の瑠璃覇の笑顔を見た幽助は目を丸くする。
「瑠璃覇…。お前……今、笑ったな」
「え?」
「初めてお前の笑顔を見たぜ」
「え………え…?」
「お前、せっかく美人なんだからよ。もっと笑えばいいのによ。そうすりゃ、もっとキレイになるぜ」
「なっ…」
照れることをさらっと言う幽助に、瑠璃覇は顔を赤くした。
「蔵馬…」
瑠璃覇が顔を赤くしてると、幽助は、今度は蔵馬に声をかける。
声をかけられると、蔵馬は目を開けた。
「すまないな………。予定では、三人はオレで倒したかったが…」
「ケガは大丈夫か?」
「ケガよりも、自分で植えたシマネキ草がやっかいだな。魔界の植物だけに、枯らすのに時間と妖力がかかる。
まさに、自分でまいたタネだけどね」
「ゆっくり休んでていいぜ。残りふたりも、オレがきっちりカタをつける」
「油断だけはするなよ。
前の三人は、出てくる順番も強さもバラバラだったが、残るふたりは、確実に大将クラスだ」
「どんな奴が相手だろーが、負ける気はねー!!」
蔵馬に警告されると真剣な顔になり、再びリングにあがろうとする幽助。
「幽助」
けど、そこをまた瑠璃覇に止められたので、幽助は瑠璃覇に顔を向ける。
「次戦う前にアドバイスだ」
「アドバイス?」
「もし、次に出てきたのがあの風使いの陣だったら、風には気をつけろよ。風は周りのすべてを巻きこむ属性だ。もちろん相手の技にもよるがな。私の裂空斬のようなものだったらそうはならないが、突風などの風は、あっという間に吹き飛ばされてしまうぞ。
だから、竜巻だったら、中心に穴があるからそこにとびこめ。もしも飛ばされたら、周りのものをうまく利用して、なんとしても下に足をつけるな。
そしてもうひとつ…。もしどうしようもなくなったら、霊気を相手の技にぶつけろ。相手のレベルにもよるが、技は、妖気や霊気を高めてぶつければ、粉砕されることもある」
「そっか。サンキュー、瑠璃覇。
んじゃ、行ってくるぜ」
「ああ」
幽助が笑ってお礼を言えば、瑠璃覇も笑顔で返事を返す。
その笑顔は、幽助を信頼しているという顔だった。
「続いて、第五試合!!」
そして、幽助がリングにあがると、次の試合の開始の合図が、小兎の口から告げられた。
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