第三十七話 蔵馬、大ピンチ
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「お前は頭が切れる…。しかも用心深く、奥の手をいくつもかくしている。妖気が使えないとはいえ、近づくのは危険とみた…。撃ち殺すことにしよう!!」
凍矢は手に妖気を集中させると、いくつもの、金平糖のような形の氷の粒を作り出し、それに息をふきかけた。
「魔笛霰弾射!!」
すると、息をふきかけられた氷の粒が、弾丸のように蔵馬に襲いかかってきた。
第三十七話 蔵馬、大ピンチ
「うあっ」
体が重く、妖気が封じられた今の状態では、よけるのは難しく、氷の粒は、蔵馬の腕や足にあたり、血しぶきをあげた。
その間にも、凍矢は魔笛霰弾射を撃ち、蔵馬はそれをよけようとするが、先程と同じように手足を撃ちぬかれた。
「(……ダメだ。妖気なしで、戦える相手じゃない)」
早くもやられっぱなしなので、今の状態では、勝つのはきびしいと判断する。
「ぐっ」
だが、頭ではわかっていても、体がついていけないのが、今のきびしい現状だった。
考えている間にも、また魔笛霰弾射があたり、蔵馬はリングに倒れる。
「(なんとか…なんとか呪縛を解かなくては)」
けど、なんとか呪縛を解く方法はないかと模索しながら、その場を立ち上がろうとした。
「そ、そうだ」
蔵馬はひとつの策を思いついた。
「(この呪縛が、血の化粧で作られているなら…)」
それは、自分の血で画魔の化粧を落とすというものだった。
その策を実行するため、蔵馬は服を開くと、自分の血で化粧を洗い始めた。
「フ…。血で血を洗うか……。考えたな」
体を洗うと、今度は腕を洗った。
死の化粧をほどこされたところを洗うと、蔵馬はバラを武器化しようと、妖気を集中させる。
「くっ……」
けど、妖気を出すことはできず、バラの武器化をすることもできなかった。
「だがムダだ。そんなことで、呪縛が消える程度の妖力の持ち主じゃないよ、画魔は。戦ったお前が、一番よく分かっているだろう。
残りあと5分!!画魔の妖力が消えない限り、お前の妖気は、外には出せないのさ!!」
「あうっ」
再び凍矢が魔笛霰弾射を撃つと、それはまた、蔵馬の体に命中した。
「ダウン!!」
今の凍矢の攻撃で、蔵馬は再びリングに倒れるが、ふらつきながらも、なんとか起き上がろうとした。
「(妖気を外に出せない………?
………そうか。あったぞ、妖気を使う方法が、たったひとつ)」
蔵馬は、どうやって相手を倒そうか、次の策を考えていた。
そして、考えた末に、たったひとつだけ方法を思いつき、その場を立ちあがる。
「く…蔵馬選手、立ち上がりました!」
「………お前は恐ろしい奴だ。オレが狙った急所を、その体で全てよけている。よけながら、オレに勝つ方法を考えている」
「もうひとつだけ聞きたい。表の世界でなにをする」
「………わからない。まずは光だ」
「そうか」
話している時、凍矢は蔵馬の状態に気づいた。
「(まずいな。呪縛がそろそろ切れる時間だ。どんな深手を負っていようと、奴に妖気を使わせるのは危険だ。
それならば、接近戦で確実に)
殺す!!」
それは、もうあと少しで画魔がほどこした呪縛がとけてしまうというものだった。
それなら、今度は接近戦で確実に殺そうと、凍矢は右手に氷の剣を作り出した。
「凍矢選手、氷の剣を出しましたーーー!!一気に決着をつける気でしょうか!!」
「妖気の使えない素手のお前に、この剣逃れる術はない!!」
凍矢は剣で蔵馬を倒そうと、蔵馬に向かって走ってきた。
蔵馬もまた、凍矢の攻撃をよけるために走り出す。
凍矢は蔵馬の後を追いかけ、蔵馬の横にならぶように走った。
「くらえーー!!」
そして凍矢は、氷の剣で蔵馬を切るために、蔵馬にとびかかった。
次の瞬間、体を切り裂く音があたりに響く。
だがそれは……蔵馬が凍矢に氷の剣で刺された音ではなく、シマネキ草のツタが伸びて、左腕に生えたシマネキ草は凍矢の氷の剣に巻きつけて止め、同時に右腕から生えたシマネキ草が、凍矢の腹を貫通した音だった。
「傷口から……植物が……!?お前…自分の体にシマネキ草の種を…!!」
「妖気が封じられて外に出せないならば、体の中を使うしかないだろう」
「たいした………奴だ…」
今の攻撃で決定的ダメージが与えられ、凍矢はリングに倒れた。
「逆転ダウーン!!カウントをとります!!」
凍矢がリングに倒れると、小兎はカウントをとり始めた。
「く……」
「7、8」
凍矢は、なんとか必死に立とうとした。
「10!!蔵馬選手、ふたり勝ち抜きです!!」
しかし、ダメージが大きくてうまく起き上がれず、蔵馬の勝ちとなった。
「お前の勝ちだ。殺せ」
「断る。キミ達が、光の後に求めているものを知りたい……。なにより…正直なところ、オレのダメージは、キミより…大きい…」
だが、大きなダメージを負ったのは凍矢だけではなく、蔵馬も同じで、話し終えると、蔵馬の腕は力なくだらりと下がり、そのまま目を閉じた。
「蔵馬ァーーーー!!」
「蔵馬っ!!」
その様子を見て、幽助と瑠璃覇は、蔵馬の名前を大きな声で叫んだ。
「やったぜェーー。まずは一匹ィ」
「残りはあと四匹だぜ」
同時に、観客席からは大歓声があがった。
「蔵馬…!!まさか…」
まさか…と思った。
一方で、テントの中では、瑠璃覇が結界をやぶろうと手を伸ばす。
「おやめなさい。ヘタに動けば、ケガをしますよ。それに、もがいてもムダだと言ったはずです」
けど、そこを瑠架に止められる。
「それがなんだ?」
「なんですって!?」
「私にとって今重要なのは、蔵馬が生きてるかどうかで、そんなことではない。
それに…魔界屈指だと?笑わせるな。貴様ごときハンパ者が、魔界屈指などという言葉を、使っていいはずがない」
「なっ…」
そんなことは瑠璃覇にはどうってことなく、更に嫌味を言われれば、瑠架の顔はひきつった。
リングの方では、小兎が蔵馬の生死を確認していた。
近づくと、蔵馬が微かに息をしているのが確認できた。
「く、蔵馬選手生きています!!かろうじて…立っているのが、精一杯の状態で」
「なにィィィ」
「しぶてェ野郎だぜ」
それを聞いた観客達からはブーイングの嵐だったが、瑠璃覇と幽助はほっとしていた。
「ビックリさせやがって。よっしゃ、審判!!交代だ!!後はオレがやるぜ!!」
「おっと、そいつはできねェな…」
「何?」
そこへ、全身傷だらけの大男が現れた。
「こいつは、まだ立ってるじゃねェか。さぁ、次はこの爆拳様が相手だぜ」
「バカ野郎。蔵馬はもう戦えねェんだ。後はオレがやる!!」
「こ…交代を認めます!!」
「なにィ。ふざけんじゃねェェ」
「続けろォ。奴を殺すまでやれーー」
「続行」
「続行」
「続行」
「続行」
小兎が交代を認めれば、観客席からは再びブーイングの嵐がおきた。
《大会本部より命令です!!交代は認めません!!》
「何!?」
《第三試合、蔵馬VS爆拳!!始め!!》
「ぐ……っ」
だが、非情なアナウンスが会場内に響き、蔵馬は試合続行となった。
テントの中では、瑠璃覇と飛影がそこから出ようとした。
「おとなしくしていて下さいませ。私の結界に下手に触れただけで、大ケガをしますわ。先程も、あなたには申したはずですよ」
だが、またしても瑠架に止められる。
そんな瑠架を、二人はいまいましそうに見た。
「ヘヘヘ。お前は審判失格だとよ」
爆拳は、後ろから小兎の服をつかみあげると、場外へ放り投げた。
「そいじゃいっちょ、楽しませてもらうぜ」
小兎がいなくなると、爆拳は蔵馬の方を向き、蔵馬を殴りとばした。
何も抵抗できない蔵馬は、リングに、力なく仰向けに倒れた。
「ヘっヘっ、こいつはいいサンドバッグだぜ」
爆拳は蔵馬のところへ歩いていき、蔵馬の前に立つと、楽しそうに笑う。
「ほーらよっと」
そして、倒れて動かない蔵馬を蹴りとばす。
「蔵馬選手、ダウンです!!爆拳選手、はなれて!」
「なんだと!?」
「あ…あ…あの…カウントをとります。
1、2」
「おいおい、笑わせんなよ。10カウントダウンで観客が納得すると思うか?」
「7、8」
カウントを数えている最中だというのに、爆拳は蔵馬に近づいていく。
「ナイ…え?」
「なにっ!!」
そして、蔵馬に手をのばし、胸ぐらをつかみあげた。
「くくく、これでダウンじゃねェぞ。試合はまだ続く」
胸ぐらをつかみあげると、そのまま蔵馬の腹に拳を一発くらわせた。
「やめろォーー!!」
幽助が叫ぶのもむなしく、爆拳は蔵馬の顔を何度も殴ると、最後に裏拳をくらわせた。
そのことで、爆拳がつかんでいた蔵馬の服はやぶれ、その勢いで蔵馬はリングに倒れると、頭から血を流す。
だが、それでもやめる気配のない爆拳は、愉快そうに笑っていた。
「ス…ストップ!!これ以上続けると、蔵馬選手の命にかかわります。カウントをとります」
「司会は黙ってろ!!」
「ああっ」
そこへ、小兎が二人の間にわって入り、爆拳を止めるが、爆拳は平手で、小兎をリングの外へ殴りとばした。
「命をうばうためにやってんだよ!!」
邪魔者はいなくなり、爆拳は蔵馬に近づいていき、また蔵馬の胸ぐらをつかみあげる。
「とどめだァ!!顔面グズグズにしてやるぜェェェエーーーー!!」
「や……ろォ…」
とどめをさすために、爆拳は蔵馬に殴りかかった。
爆拳の拳が、もうあと少しで蔵馬の顔に届く。
その時だった…。
ボンッ
「!?」
突然、何か爆発したような音が、会場内に響いた。
何事かと、音がした方へ注目すれば、それはテントの方から響いたもので、見てみると、テントの屋根には穴があいていた。
空中にはひとつの影が跳んでおり、その影は、空中で回転しながら、蔵馬と爆拳の前に降り立った。
そしてその影は、着地したことで下に向いた顔を、ゆっくりと上にあげる。
「……殺すっ…!!」
それは、銀色の長い髪に、狐の耳としっぽをもつ妖怪。
瑠璃覇だった……。
爆拳に向ける瑠璃覇の鋭い双眸は、殺意と敵意に満ちあふれており、今にも爆発しそうな雰囲気だった。
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