第三十三話 激闘!!三対三
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次の日…。
試合当日の早朝。午前6時……。
島では、ホテルを中心に、風がうずまくように吹いていた。
ホテルの屋上には瑠璃覇がいて、瑠璃覇はそこで、妖力のコントロールの特訓をしていた。
この風は、瑠璃覇が操っていたものだったのである。
すると、突然屋上の扉が開いたので、瑠璃覇は閉じていた目をゆっくりとあける。
「蔵馬と飛影か…」
そこへやってきたのは蔵馬と飛影で、瑠璃覇は彼らに背中を向けたまま、静かに二人の名前を呼んだ。
「相変わらず、鋭い身体能力だな」
背中を向けたままなのに、ここに来たのが自分達だということを言い当てたのは、またすぐれた耳や鼻で探ったのだろうとわかった蔵馬は、ほめながら、飛影とともに瑠璃覇のもとへ歩いていく。
「なんの用だ?わざわざ、そんなことを言うために来たわけじゃないだろ」
「ああ…」
瑠璃覇が後ろへ振り向けば、蔵馬と飛影はすぐ前まで来ていた。
「飛影の腕を、見てやってほしい」
なんとなくは予想をしていたが、想像していた通りの蔵馬の言葉に、瑠璃覇は軽くため息をつく。
「私に…あの技を使えと?」
「そうだ」
「これが、毒や幻覚なら治すことは容易だ。だが、飛影の場合は、己の妖力の未熟さゆえに招いたものだからな…」
妖力が未熟と言われると、飛影はムッとして、瑠璃覇を睨みつける。
「治る可能性は、五分五分だ。しかし、治る可能性があるというだけで、治らない可能性もある。それでも受けるか?」
けど、瑠璃覇はまったく気にすることなく、話を続けた。
瑠璃覇が真剣な目で話せば、飛影もまた、真剣な目で瑠璃覇を見た。
第三十三話 激闘!!三対三
それから話が終わり、部屋に戻った瑠璃覇は、時間になると、幽助、桑原とともに、会場へと向かっていった。
蔵馬と飛影は、話が終わるとどこかへ行ってしまった。部屋にもおらず、試合時間が近くなっても姿を現さなかったが、瑠璃覇達は、蔵馬と飛影が来ると信じ、会場へ行った。
「ん?」
「おう、一回戦突破、御苦労だったな」
会場につき、闘技場までの道を歩いていると、そこへ一人の青年が現れた。
「ん?その声、そのマヌケなおしゃぶり。ひょっとして」
「左様、びびれ」
「やっぱコエンマかーー!?」
目の前にいるのは、Jrという額の文字やおしゃぶりをのぞくと、どこをどう見てもコエンマには見えない、背の高い青年だった。
今までは、3等身もない子供の姿しか見たことがなかったので、初めて見る人間界バージョンに、幽助はかなり驚いた。
「年寄りだから、若作りでもしたのか?」
「違うわ!!」
「人間界ヴァージョンもいいが、口のもんはなぜとらん」
「ほっとけ」
相変わらずの瑠璃覇の嫌味と、幽助の疑問に、コエンマは激しくつっこむ。
「今回はワシも、ただの傍観者のひとりではあるのだが…なにか力を貸したいと思ってな。
以前、お前に卵を渡しただろう」
「オレの卵?」
「お前が生き返るためにかえすはずだった、霊界獣の卵の話だ!!」
「おお」
「おおじゃないっ!!さぞ、気になってただろうと思ってりゃ、このザマだ…。
前に言ったが、お前は、肉体と魂の波長の関係上、予定より、早く生き返らせねばならなかった。そのため、卵はかえることなく、実は今、霊界に戻してあるのだが、それでも、少しずつお前の心の栄養を受けながら、成長しているのだ。
結論から言おう。卵はもうすぐかえるぞ。生まれてくる霊界獣は、きっと、お前の助けとなってくれるはずだ。
数日の内に、卵はかえる!」
「そっかー。首を長くして待ったかいがあったぜ」
「調子のいい……。
――ところで幽助、幻海師範には、一体どこまで習ったのだ?ワシは、てっきり仙法まで教わったと思ったが」
「霊光波動拳の基礎の続きだけだぜ。やったのはよ。霊波動(霊気の流れ)を、瞬時で爆発的に高める訓練と、それを一点に集中する訓練」
それを聞いて、コエンマは呆れた。それと同時に、基本中の基本しか習ってないので、実戦での成長を期待する意味では、あの偏ったトーナメントは、むしろ都合がいいとさえ思い始めていた。
「よし!!その霊界獣を拝むためにも、負けられねーな!!」
幽助は、今の今まで霊界獣の卵のことを忘れていた上、今は霊丸すら使えないことも忘れているようなので、側にいた桑原は呆れていた。
それから三人は、二回戦を戦うためにリングまで行った。
しかし……。
「おい、ありゃどーゆーことだ」
「両チームとも、人数が足りねーぞ」
自分達のチームだけでなく、相手チームの人数も足りなかった。
蔵馬と飛影は、試合の時間になっても、まだ会場に姿を現さなかったのだ。
まさか……相手チームのメンバーに、妨害工作をされているとも知らずに……。
「こいつあ驚いた!!あいつら全部、夢の中に出てきた奴、そのまんまだぜ!!」
「(夢?)」
その中で桑原は、驚いた顔で相手チームを見ていた。
けど、当然それは桑原本人にしかわからないことなので、瑠璃覇はなんのことなのかと思っていた。
「時間です!! 両チーム、前へ!!」
結局、どちらも人数がそろわないまま時間となり、両チームはリングへ上がった。
「ヒョヒョヒョ、こいつは奇遇だ。しかし、戦いを重ねれば、いつかは人数も減る。その、シミュレーション戦だと思えばいい。どうかな、3対3で決着をつけるというのは」
「………それでかまわねーが。テメーは高見の見物か?」
「ヒョヒョ。ワシはあくまで、補欠のチーム顧問じゃよ。戦うのはワシのかわいい実験材料(モルモット)じゃ」
今の発言で、イチガキの言うモルモットというのは、後ろに控えている三人の男達のことだというのがわかった幽助は、軽くイチガキを睨んだ。
「人間は、実に楽しい研究対象(オモチャ)じゃよ。妖怪のワシが言うんじゃから間違いない。君ら人間は優秀じゃよ。感傷や理性といった、くだらんタガをはずしてやれば、実に優秀な殺人機械じゃ。
ワシの夢は、最強の生物兵器を創ること!!なにも恐れず、なににもとらわれず、我が意のままに動く、完ペキな殺りくマシン。
その試作品が、あの3体だ。手に入れるのに、ちょっと細工をしたがね。
ただの機械ではつまらんからのォ。この大会はロボットは参加禁止だし」
「テメーの話はもういいぜ」
イチガキのゲスな話に、幽助はハラワタが煮えくりかえっていた。
「ワシは、キミ達にも、非常に興味があるのだよ。そっちの女は妖怪のようだが、自ら人間に味方をする妖怪というのにも興味ある。どうかね、スリリングにする意味でも提案だが、ワシらが勝ったら、キミらの肉体をいただきたい。むろん、死体でもかまわんよ。ワシが脳ミソを作ってやるからのォ」
「………オレ達が勝ったら、てめーはぶち殺すぜ」
「ヒョーッヒョッヒョ。よかろよかろ」
ぶち殺すと言われながらも、イチガキは余裕で大きく笑う。
何故なら、それはすべてイチガキのシナリオシミュレーション通りで、蔵馬と飛影なしで幽助達が勝つ確率はわずか2%という数字をたたき出していたからだ。
「こちらからも、ひとつ提案がある。この試合6人バトル、つまり一回でケリをつけたい」
そこへ、今度は瑠璃覇が提案を出してきた。
提案をされると、イチガキは頭の中で計算をする。
「ヒョヒョ。よかろう!」
それは自分のチームの勝率が99.95%という、聞いてみれば、幽助達にはとても不利な数字だった。
イチガキは相手が墓穴をほったと、不敵な笑みを浮かべる。
「(瑠璃覇の提案は正解だ。浦飯が霊丸を使えねェ以上、オレと瑠璃覇でカバーして、一発大逆転にかける方が、チャンスがある)」
一方で桑原は、瑠璃覇の提案は正解だと思っていた。
何故なら、幽助はこの前の六遊怪チームとの試合で、酎と戦った時に、霊丸の連射という高等技術を使ってしまったため、霊丸が撃てない状態だからだ。
それは今でも続いており、完全に霊力が回復していないので、一対一の対決では負けてしまう可能性があるからだった。
そのことについては、瑠璃覇は、特に何も知らされてはいなかったが、幽助と酎の試合を見ていたのと、幽助の霊気を探って簡単にわかったので、先程のイチガキへの提案も、今の霊力では霊丸が撃てず、試合に負けてしまうだけでなく、重傷を負ってしまう可能性があると予想したからだった。
「それにしても、聞けば聞く程夢通りだ…。しかし…まさか、そんな事が」
「どういうことだ?」
「実は……」
桑原は、寝ている時に夢で見たことを瑠璃覇に話す。
あの三人は、とある武術家の弟子達だった。
けど、その師匠が病で倒れ、ひどくやっかいな病気で、治すには7千万円という莫大な金が必要なのだが、そんな金は、とてもじゃないが、自分達には早急に作れる金ではないので、それを悔しく思っている。だが、どうしても治したい。
そこへ、あのイチガキが現れ、自分の条件をのんでくれるなら、師匠の病気をただで治してもいいと言ってきた。
三人はその話にとびつき、師匠の病気が治るなら、どんな条件でものむと言った。
その条件というのは、今そこにいる三人の男達に、実験につきあってもらうというもの。
そんな夢だった。
「………なるほどな…」
「瑠璃覇……なんかわかったのか?あの三人のこと、知ってんのかよ?」
「あんな奴らは知らんな。私の人間の知り合いは、お前と幽助だけだ」
「じゃあ…」
「昨日、あの三人の試合を見た。あいつらは、とても自分の意志で戦っているようには見えない。まるで機械のようだった。
そして……イチガキのあの発言…。もしかしたらあいつらは、ただ操られてるだけなのかもしれんな…」
「じ、じゃあやはり!!あの3人は、実験とやらで洗脳されて、自分の意志とは関係なく戦わされているのか!!」
「始め!!」
瑠璃覇と桑原が話している間に、試合開始の合図が出され、それと同時に、相手チームの三人はいっせいにとび出していき、それぞれ構え、幽助達に立ち向かってきた。
「ハウンドクロー!!」
まず、最初にしかけてきたのは、額に傷がある男・梁だった。
「(左腕で受けて、ケリくれてやる!!)」
相手の攻撃方法を見ると、幽助はその対処法を即座に考えた。
「後ろへ跳べ!!」
だが、瑠璃覇は接触しない方がいいと言うように叫ぶ。
二人はどういうことかと思ったが、素直に警告を聞いて後ろへ跳んだ。
すると、梁がリングにふれると、リングに大穴があいた。
そして、二人が跳んだところをねらって、みつあみの男・魁が何かを振り回し、幽助と桑原をふきとばす。
「み、見えねえェなにかがぶん殴ってきやがった!?しかし跳んでなきゃ、あいつの、これまた見えねェ手形につぶされてるとこだったぜ」
「霊気というのは、洗練すれば、その姿を見えないようにすることも可能だ」
「ということは、あいつらの見えない攻撃も、霊気の力だってのか?」
「そうだ」
「んなバカな!!オレ達だって、霊力があるんだ。なんで見えねェんだよ!?」
「お前達の霊力が弱いんだよ。今のお前達に、あの二人の霊気を見ることはできないな」
「なにィ!?」
「そ、それじゃどうやって戦えっつんだ!!」
「霊力をあげることだな。だが、そんなのは今この場で、すぐにできることじゃない。とにかく、霊気が見えない今、お前達は、不用意にあいつらに近づくな。危なくなったら叫ぶ」
「ありがたいぜ、瑠璃覇」
「サンキュ!」
瑠璃覇に警告されると、二人は瑠璃覇に礼を言い、二人に礼を言われると、瑠璃覇は微かに微笑んだ。
その間にも、相手はこちらに走ってきて、目が前髪でかくれて見えない茶髪の男・円は、輪の形をした鋭い霊気をとばして攻撃をしてきた。
その攻撃を三人は避けるが、幽助と桑原は、一緒に走ってきた魁の霊気の攻撃でふっとばされてしまう。
更にそこを、梁が追いかけてきて、幽助にハウンドクローを喰らわせようとした。
「しまっ………」
「幽助っ!!」
しかし、そこへ瑠璃覇が間に入り、風の壁を使って攻撃を防ぐ。
「瑠璃覇…」
「ぼけっとするな!!」
「お、おう…。すまねえな…」
幽助はなんとかことなきを得た。
一方梁は、風の壁にはじかれたことで後ろへふっとんでいくが、すぐに体勢を立て直した。
「コロス… コロス」
「くっ」
しかし、円と魁が三人のもとへ、武器を構えて走ってきた。
「くそォ、目ェ覚ませ!!オメーら自身が望んだ戦いじゃねーんだろ!!」
「コロス…」
「コロス コロス」
桑原が必死に呼びかけるも、二人は瑠璃覇達を倒すために立ち向かってきた。
「つゥ!!」
円が投げた刃で、桑原は腕と肩をかすってしまう。
彼らは、本当に殺人機械のようだった。
それもそのはず。
彼らは、操血瘤というイチガキが発明した装置によって、本当に、狂悪な殺人鬼に人格変換させられているからだった。
「くっそォ!!」
「本当に倒さなきゃなんねーのはこいつらじゃねーのに…!!」
「コロス!!」
幽助と桑原は戸惑っていた。
本当に倒すべきは、リングの外で見物しているイチガキ。それがわかっているからだ。
その間にも、魁が攻撃をしようと襲いかかってきた。
しかし、そこを瑠璃覇に蹴られて妨害される。
そして、そのまま流れるように、他の二人も蹴りとばした。
けど、彼らはうまく着地して体勢を立て直し、瑠璃覇は幽助と桑原を背にして、三人の前に着地をした。
「まったく…。何を迷っている、貴様ら…。迷いは隙を生み出し、隙は死をまねく。いついかなる時も気をひきしめろ。手加減して、お前達が負けて死んだって、あいつらが救われるわけじゃないんだぞ」
瑠璃覇に説教されると、もっともな言い分に、二人は二の句が告げなくなる。
その時だった。
突然、イチガキチームのメンバーの妖怪が、空から降ってきたのだ。
妖怪は空からふってきて、リングを一回バウンドすると、そのままフェンスに激突する。
「な、なんと、今度は空から、Dr.イチガキチームのメンバーがふってきました。そのままフェンスに激突ーーー!!」
そして、今度はひとつ目の、妖怪のような顔立ちのロボットがふってきた。
ロボットがふってくると、今度は飛影と蔵馬が降りてきた。
「飛影!!蔵馬!!」
「今投げた奴から、話はすべて聞いたぜ」
「その3人が、高名な武術家の愛弟子であり、恩師の病を治してもらうことを条件に、実験に身をまかせたこと。もちろん、殺人機械にされるなど、夢にも思わずに」
「………これでハッキリしたぜ!!」
「さらに、その恩師の病気さえ、そこのイチガキがしくんだワナだったということもな」
「な」
「に」
「(やはりな…)」
イチガキの非道な行いに、幽助と桑原は怒りを露にし、瑠璃覇は冷静に、蔵馬が言ったことに納得していた。
だが、イチガキは自分の悪行がばれたというのに、不敵な笑みを浮かべていた。
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