第三十二話 一回戦突破
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「ナイフエッジ・デスマッチ」
酎は取り出した2本のナイフを、リングの板1枚分くらいの感覚で、地面に突き刺した。
「地面にナイフを2本ぶっ刺しやがった。一体なにをする気だ」
地面に刺さったナイフを見て、どんな風に決着をつけるのだろうと、桑原は疑問を抱いた。
「クツをぬいで、右足をナイフの前にしてふんばりな」
酎にそう言われると、幽助は言われた通り、クツをぬいで右足をナイフにくっつけ、足を開いた。
「そのナイフが死の境界線だ。この線を越えないことが唯一のルール。破った場合は、死をもって償うこと。
実況!合図をたのむぜ」
「あ、はい」
「使うのは肉体のみ!!ぶちのめした方の勝ちだ!!」
第三十二話 一回戦突破
「ナイフエッジ・デスマッチ」
それを聞いた鈴駒は、これは酎の無敗の決闘法であり、肉弾戦でも酎には強力な武器があるということで、これは勝てると確信した。
そして、その様子を見ていた会場中の者達は、固唾をのんで、その試合の行く末を見守っていた。
「始め!!」
小兎が合図をすると同時に、二人は殴り合いを始めた。
幽助が酎の腹に一発決め、同時に酎も幽助の顔に一発決めた。
腹を殴った後、幽助は酎の顔を、腹を殴った方の手とは逆の手で殴る。
けど、酎も負けじと幽助の腹に、強烈な一撃をお見舞いした。
そのせいで、後ろに下がった右足はナイフにめりこみ、足からは真っ赤な血がふき出した。
「らあっ」
酎はその隙をねらって、また幽助に殴りかかるが、幽助はそれをよけた。
「おららららららあ」
そして、酎の体に、連続でパンチをお見舞いした。
酎が幽助の顔を殴り、かと思えば、今度は幽助が酎の顔を殴る。
とにかく、防御も考えることなく、ただひたすら殴り合っていた。
逆に言えば、二人はもうそれしか攻撃方法がなかったとも言える。
殴られるたびに血が吹きだし、ナイフで足が切れ、それによってまた血が流れ、もう二人は、血だらけの状態であった。
しかし、いくら殴り合っても、なかなか決着はつかなかった。
「あ…う」
ケンカ好きの桑原も、二人の戦いぶりに、少し引き気味になっていた。
「け、決着がつかねェぜ………!!化け物か、あいつらは」
「いや…。二人とも、チャンスをねらってるんだ。相手の隙をうかがっている。相手が隙をつくった時が、絶好の機会。その時決着はつく。勝負は一瞬だ」
桑原はわからなかったが、瑠璃覇は二人の考えや今の状況をわかっていた。
その時、酎のパンチが幽助の頬に炸裂し、幽助の体がぐらついた。
「うっ」
どう見ても幽助が不利になっているので、桑原はヤバイと思った。
「!! 今だ。くらえィーーー!!」
酎はそのチャンスを見逃さず、幽助に向かって頭突きを喰らわせようとした。
「出たァ。酎のヘッドバット!!これで決まりだぜ!!」
鈴駒は酎の必殺技を見て、もう酎の勝利は確実だと思った。
しかし、幽助はぐらついた体を止めると、酎と同じように、勢いをつけて頭突きをかました。
会場に鈍い音が響き渡ると、酎の額からは血がふき出し、そのまま倒れていった。
酎の頭突きの威力は相当なもののようで、その証拠に、酎の頭があたったリングはヒビが入っていた。
「や…やった……のか?」
「へへ…イヤなヤローだ。切り札までいっしょだったぜ…」
「3、4、5」
幽助は、酎と同じように額から血が流れていたが、無事のようだった。
「8」
一方で、酎がダウンしたので、小兎はカウントを数えていた。
「10!!勝者、浦飯!!よって、3-1で浦飯Tの勝利です!!」
酎はカウントを10数え終えても起き上がることはなく、そのことで勝敗を決し、幽助及び浦飯チームの勝利が宣言された。
「よっしゃあーーー!!一回戦突破だぜーーー!!」
自分達の勝利が宣言されたので、桑原はとてもうれしそうに、歓喜の声をあげた。
「酎!
あっちゃ~~~~。完全にダウンしてる」
リングの方では、倒れた酎を心配した鈴駒が、酎のもとへ駆け寄っていく。
「し、信じられね~~~。石盤ぶち割る酎の鉄頭だぜ。それをぶっ倒す、生身のヤローがいるなんて」
「よォボーズ」
「!! はいっ!!」
自分が強いと信じて疑わなかった酎が倒され、信じられずにいる鈴駒。
その時、その酎を倒した幽助が声をかけてきたので、鈴駒はビクッとなった。
「目ェ覚ましたら言っとけや。またやろうぜってな」
「は、はいよ(バトルマニアどころじゃねェ。クレイジーだ)」
こんなに血だらけでボロボロになったというのに、それでもさわやかないい顔で、鈴駒に伝言を頼む幽助。
幽助にびくついた鈴駒は、自分の理解を超えているというのもあり、返事をするのが精一杯といった感じだった。
「くそ~~。てめェら、口先だけじゃねーか」
「せっかく応援してやったのによォ」
「フヌケがァ。負け犬は死ね!!」
「殺せ」
「殺せ」
「役立たずが。くたばれ」
「殺せ」
「六遊怪だと。笑わせんな」
「カケ金返せ、バカ野郎」
「鈴駒も酎も殺せ!!」
「ぶっ殺すまで続けろーーー!!」
「殺せ殺せ」
「オレ達がとどめさしてやるぜ」
「くたばれァーー!!」
浦飯チームの勝利と六遊怪チームの敗北が決定すると、結果に納得のいかない観客達がさわぎ始めた。
「勝手なやつらだぜ。さっきまで、あれだけ肩入れしてたくせによォ」
「そんなもんだよ。ザコってのはな」
「ケッ、勝手にほえてろ。お前らはこわくて、おりてもこれないくせに」
六遊怪が負けた途端、あっさりと手の平を返したので、自分達のことじゃなくても桑原は頭にきていた。
「うるせェェェーーーー!!!!」
すると、突然幽助が大声で怒鳴った。
それは会場内にビリビリと響くもので、観客だけでなく、鈴駒もびっくりしていた。
そして、そのことで、あまりの気迫に会場が静まりかえった。
「ぐだぐだ言ってねェで、おりてこいや、コラァ。文句あんなら、オレが相手だ。とことんやってやんぜ」
「オレらだ、オレら」
幽助は挑発するように指を下に向け、他の浦飯チームのメンバーも客席を睨みつけた。
「ぬうう」
挑発的な幽助に、観客達は悔しそうに歯を噛みしめた。
「浦飯……」
一方鈴駒は、敵である自分達をかばうような幽助の発言に、ちょっと感動したような目で幽助を見た。
鈴駒のそばにいる酎も実は気がついており、うっすらと目をあけていた。何やら、幽助に対して思うことがあるようだったが、一言も発することはなく、そのままでいた。
「調子づきやがって、人間がァ」
「楽しみが2回戦にのびただけのことよ!!」
下に降りる勇気はないが、それでも納得のいかない妖怪達は、強がってまたヤジをとばす。
その、観客席への出入り口付近……。
そこには、戸愚呂兄弟がいた。
そばには、黒い長髪の男も立っている。
「…………鴉、どう見る?ヤツが浦飯幽助。やがて、我々と戦うであろう相手だ」
「………それまで勝ち残れるかな……」
試合の全貌を見ていた三人。
戸愚呂弟が鴉に意見を求めると、鴉の口から出てきたのは、とてもきびしいものであった。
「奴は………致命的なミスを犯した。霊丸はもう使えまい………」
それは、先程の酎との戦いを見て、幽助のミスを見抜いたからだった。
次の日……。
大会2日目。
幽助達は、それぞれ行動を別にし、次の戦いにそなえていた…。
「勝者、M-3号。よって、3-0でDr.イチガキチームの勝ちです!!」
会場では、浦飯チームとは別チームの試合が行われており、Dr.イチガキチームが勝利を手にしていた。
「ヒョヒョヒョ、御苦労」
敵を倒した男は、もとの場所まで戻っていき、今の試合でとった相手の首を投げすてる。
そして側では、白衣を着た妖怪が不気味に笑っていた。
勝敗は決した。
負けたチームの一人はほっとしていたが、もう一人のメンバー……ひとつ目の、大きな牛の妖怪は納得いかず、リングにあがって彼らに勝負を挑んだ。
すごい勢いで向かっていく牛の妖怪だが、三人の男はそれぞれ霊気を操り、目が隠れた男は輪の武器で左腕を切り落とし、先程戦っていた男は右腕をつかみ、えぐるように攻撃をした。
牛妖怪がその攻撃に悲鳴をあげていると、みつあみの男が牛妖怪の前にやってきて、何かを振りおろして、牛妖怪の頭と体をつぶした。
牛妖怪の頭はなくなり、体は半分縦に裂けた。
みつあみの男が何をやったのかまるでわかっていない観客達は、何がなんだかわけがわからず驚いていた。
「ひょーーっひょっひょ。浦飯らと当たるのが楽しみじゃ」
またしてもあっさりと倒したので、男はまた不気味な笑みを浮かべた。
「あいつら……人間だな…」
「ああ…驚いたな…。あの3人があやつったのは、まさしく霊気。ゲスト以外で人間が出てくるとは。………おそらく、本人の意志で戦っているのではないだろう」
「なんか……臭うな…」
その試合を、瑠璃覇と蔵馬は会場の屋根の上で観戦しており、今戦っていた3人の男のことを見ていた。
試合が終わると彼らは帰っていき、電子掲示板に、昨日と今日の試合で勝ち残ったチームの名前が表示される。
「さて、本日の第4試合。一回戦最後のカードです」
小兎がそう告げると、瑠璃覇と蔵馬はハッとなり、リングの方に注目する。
「この勝者で、ベスト8が全てそろいます。そこで、あらためて公正な抽選を行い、最後の組み合わせが決定します!!
さあ、出ました!!前回大会優勝の、戸愚呂チーム登場です!!」
次の試合は、魔界狂戦士チームVS戸愚呂チームで、戸愚呂弟は選手入場門から出てくると、リングまで歩いてきた。
「対するは、魔界狂戦士チーム!!」
次に、戸愚呂弟よりも、やたらでかくガタイのいい男が5人入場してきた。
彼らは、戸愚呂チームは戸愚呂弟しかいないことに疑問を抱く。
そんな中、戸愚呂弟が、この試合は自分一人でやりたいと言いだすと、一度優勝したくらいでうぬぼれている。1対5でコナゴナにしてやると笑いとばした。
小兎の合図で試合が開始され、いきなり魔界狂戦士チームの一人がハンマーで殴りかかってくると、戸愚呂弟は45%になり、今殴りかかってきた奴だけでなく、側にいた別の妖怪の体や頭を拳でつきやぶり、合計4人も一瞬にして倒してしまう。
「今日はでかい奴の厄日だね」
戸愚呂はニヤっと笑うと、相手チームの中で一番でかい、自分の体の倍以上もある大きな妖怪の体を、一撃でまっぷたつにした。
「し、勝者戸愚呂!!よって8チーム目は、戸愚呂チームに決定です!!」
戸愚呂の圧倒的な強さに、観客席からはすごい歓声が上がった。
「(強い……!!)」
そして、今の試合を見ていた蔵馬は、戸愚呂弟の強さを実感した。
この試合でベスト8が出そろい、公正な抽選の結果、試合の組み合わせが決定し、トーナメント表が配布された。
「さすがオレ達ゲストだな…。すげー扱いだ」
「どう見ても、戸愚呂チームとオレ達の位置は決まってたとしか思えん」
「当然だ。オレは、抽選にすらよばれてねェ!!」
その組み合わせは、戸愚呂チームと戦うには、浦飯チームは3勝しなければならない、もっとも試合数が多いもので、戸愚呂チームは、1回戦って勝てば優勝決定戦に進めるという、明らかに公正ではないものだった。
いよいよ、2回戦が始まる…!!
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