第三十話 炎の秘技
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「浦飯チーム、蔵馬の逆転勝利!!これで、1対1の五分となりました!!」
呂屠の戦闘不能が確認されると、蔵馬の勝利が宣言された。
「安心しろ。使い魔は、御主人様が死んだと同時に逃げ去った」
「!」
邪眼で志保利の様子を見ていた飛影は、蔵馬が戻ってくると、見ていたことを告げる。
「気づいていたのか…」
「バカな野郎だ。あれは、殺してくれといってるのも同じ作戦だ」
「人質をとるなら、もうちょっと頭を使わないとな」
「中堅、前へ!!」
瑠璃覇と飛影が話していると、次の試合を開始するため、小兎が声をあげた。
すると、今まで以上の歓声があがる。
「是流だ。是流が、早くも出てきたぜーーーー!!」
それは、是流がリングに上がってきたからだった。
「浦飯チーム。中堅前へ!!」
「………やつが大将じゃないのか」
「じゃ、あとのふたりは、もっと強いのかよ!?」
「いや……ヤツが、あの中で一番強いのは間違いない。ふざけた奴等のことだ。順番も適当に決めたんだろうぜ。
オレが行く。あいつは昨日なめたマネをしてくれたからな」
飛影は首に巻いているスカーフをはずすと、リングに上がっていった。
第三十話 炎の秘技
「だれが出ても是流のエジキだぜーーー!!」
「さっき見せたすげェ妖気なら、敵なしだァーーー!!」
観客席は、今度は是流が戦うということで、今まで以上に盛り上がり、早くも勝利気分であった。
「火の妖気、火炎術者か……」
「!」
「コップの切り口を見たぜ。鋭い刃で切ったように見えるがはしが少し溶けていた…………。技が荒いな」
「………それがどうした?ネズミ臭い邪眼師ごときに、とやかく言われる覚えはない」
「始め!!」
小兎が試合開始の合図と出すと、是流は炎を出した。
「スミクズにしてやる…………」
「うおっ、出しやがった。信じられねェ妖気だぜ!!これは……」
「どうだ!?声も出まい。ネズミには一生ねり出せん妖気だろうが」
是流は手に炎を出すと構えをとり、飛影を挑発する。
「ごたくはいい。こい」
けど、飛影は挑発に挑発で返した。
だが次の瞬間、是流は一瞬にして飛影との間合いをつめると、飛影の腹を腕で貫いた。
同時に、飛影の体が燃え上がり、是流の手からぬけると、是流は今度は、拳から炎を放ち、とどめをさすように炎を浴びせた。
「な…。一瞬で」
あまりの早さに、瑠璃覇以外全員目を見開き、固まり、会場全体が静まりかえった。
飛影は炎につつまれ、ゆっくりとリングに落ちていく。
「く……笑止な…。相手にならんな」
勝利を確信した是流は、相手をバカにしたような笑みを浮かべ、飛影に背を向けて、もといた場所に戻ろうとした。
「いい腕だ。殺すにはおしい。……が」
だが、腹を貫かれ、是流の炎につつまれながらも、飛影はその場を立ち上がった。
「………オ…レの妖火に耐える程の…妖…気?ま…さか!!」
「オレと当たったのが運のつきだ。
喜べ!!貴様が人間界での、邪王炎殺拳の犠牲者一号だ!!」
飛影の額のバンダナが焼け落ち、邪眼が現れ、目が光ると、是流の炎は粉砕された。
「邪王炎殺拳……!!まさか、あれは人間界では使えない、正真正銘、魔界の拳のはず……」
「それより、今のあいつが…使えるのか!?」
魔界の出身である瑠璃覇と蔵馬は、飛影の口から、邪王炎殺拳という単語が出てきたことに驚いていた。
「今はまだ、オレ自身でコントロールしきれん!!だが、近いうちに完全な技にしてみせる」
飛影が手に妖気を集中させると、黒い炎が飛影の手をうずまいた。
「く…黒い炎……!!魔界の炎を召喚したというのか!!」
「右腕だけで十分だな。加減はできん……。気の毒だがな。
見えるか!?貴様の火遊びとは一味違う、魔を秘めた本当の炎術が…。
邪眼の力をなめるなよ」
「う……あ…!!」
飛影から放たれる妖気と魔界の炎に、是流は恐怖し、その場から動けなくなった。
「こ……これは危険すぎます!!実況として不本意ではありますが、一時避難させていただきますーーー!!」
一方で小兎は、危険を察知し、リングから降りて避難をした。
「くらえーーー!!」
小兎がいなくなると、飛影は叫びながら右手を前に出した。
「炎殺黒龍波!!」
「!!」
飛影が叫ぶと、飛影の右手から黒い龍の形の炎が放たれ、是流に襲いかかっていく。
それは小兎の頭上を、すごい勢いで通過していく。
すべて通過すると、小兎はおそるおそるリングをのぞいてみるが、そこには飛影以外何も…誰もいなくなっていた。
「い、一瞬だ。まさに」
「あ……か…壁に」
瑠璃覇や蔵馬や桑原、小兎が目を向けた先にあったのは、焼きつくされ、壁に残った是流の影だった。
「し、信じられねェ」
蔵馬や桑原だけでなく、六遊怪チームの残りの二人も、驚きを隠せずにいた。
「全て焼きつくしてやった…。この世に残ったのは、あの影だけだ」
「……はっ。と…いうことは、カウントとっても無駄ですね。
し…勝者、飛影!!」
「っしゃー。ザマーミヤガレ!!スカッとしたぜ。これで2対1だ!!」
飛影の勝利が宣言されると、桑原はガッツポーズで喜んだ。
「―――と言いてえところだが、とてもそんな気分じゃねーぜ。飛影(ヤツ)は、いつ敵にまわってもおかしくない……。その上、あんなスゲー技が…。
う…」
飛影のすごさを目のあたりにした桑原は、飛影が戻ってくると、冷や汗をかき、顔がこわばった。
「くく、安心しろ。この大会が終わるまでは、こっち側にいてやる。オレの邪王炎殺拳も、カンペキではないからな」
飛影は桑原の前まで来て、桑原を見ると、桑原の心境を見抜いたように言った。
「ぜ…是流でさえ」
「あんなにあっさりと殺されるとは…」
「じ、冗談じゃねえ。オレ達は、もうぬけるぜ!!」
「楽に殺しが楽しめるって言うからきたんだ」
六遊怪側では、飛影と是流の戦いを見た牙王と威摩陣が、恐怖で逃げ出そうとした。
しかしその瞬間、何かが二人の上を通過すると同時に、二人の首がとんだ。
その通過した何かは、そのままリングに着地する。
「ウィ~~ック」
二人の上を通過したものの正体は、モヒカン頭の男だった。
「遊びは危ねーからおもしろいのによォ。しらけさせるマネしやがって。バカどもがよォ」
「酎!!」
男の名は酎といい、酎が現れると、鈴駒はうれしそうに酎の名を呼んだ。
「おい実況、不慮の事故でふたりが死んだ。この場合、どうなるんだったかな?」
「補充ができるのは、仲間がなん人死んでも、チームでひとりだけです。し、したがって、残った者だけで後は戦っていただきます!!」
「ん~~、ナイス。んじゃ、あっちチームの残りふたりはオレが相手をしていいわけだ」
相当酒を飲んだようで、酎が前を歩くと酒の臭いがただよったので、小兎は不快感を示していた。
「……?何故だ…。いやな気分だぜ。はるかに是流より妖気は小せぇのに、妙な不安感が…」
「よっと………」
桑原が言い知れない不安に襲われていると、今までずっと寝っぱなしだった幽助が目を覚ました。
「すげー酒の臭いだな。目がすっかりさめちまったぜ……」
「(………幽助も気づいたか…。あの男の奇妙な妖気に)」
「ヘイ、怖じ気づいたのか?ふたりいっぺんに相手してやってもいいぜー」
「(………是流とかいう奴より不気味だ。ふたりを殺したときにすら、殺気が感じられなかった…)」
「副将…前……」
「ハリーアップ!!オレは早いとこ優勝して、死ぬ程酒をいただきてーんだ!!」
「オレが行くぜ!体がうずいてしょーがねー。寝起きに軽く運動しねーとな」
「軽く………?」
幽助が言ったことに、酎はピクッと反応する。
「ようやく起きやがったぜ、ウラメシィィーー!!」
「人生最後の悪夢はこれからだぜェ」
「酎!!ヤツをぶち殺せーーー!!」
「ギタギタになぶり殺しちまえーー!!」
幽助がリングに上がると、観客席からは、幽助に対する罵声と酎に対する声援がとびかい、殺せコールが始まった。
「~~~~え、えれェ殺気だぜ。おまけに相手の妖気は得体が知れねェし…」
「カスの遠ぼえだ。本人はカエルのツラに小便だ」
「……うむ、大丈夫だよな。ムードは、実質的に、こっちが楽に全勝してるみてーなもんだからな」
「お前は負けただろ!」
「ぐっ…!瑠璃覇……お前、結構キツイな」
「事実だ」
瑠璃覇からの鋭い視線とツッコミに、桑原は胸がえぐられるような感覚になった。
飛影も瑠璃覇と同意見なのか、何も言ったりはしなかったが、桑原を横目で、何か言いたげに見ていた。
「(楽に……。いや、それは違う。是流の強さは本物だった。だからこそ飛影は、未完成の必殺拳を出さざるを得なかったんだ。
是流ほどの炎の使い手を焼き尽くす、魔界の獄炎。召喚した飛影の体も、無事では済まない)」
『右腕だけで十分だな…』
「(………右腕を………犠牲にしたんだ。
あの右腕は、もう使えないだろう…。
そして、是流とは全く別の……なにかわからないが、不安だけをかきたてられるような、ヤツの奇妙な妖気…。
ヤツは要注意だぞ、幽助)」
一方で、蔵馬は桑原の言ったことを、心の中で否定していた。
そして、酎がヤバイ相手なのだということも見抜いていた。
「軽い…運動とか言ったな」
幽助が言ったことを繰り返すと、酎は一瞬で小兎の後ろに移動し、マイクを奪った。
「え」
「借りるぜ。あーーあーー」
「ニャ…いつのまに…」
「戦う前に………ひとつ!!貴様に言っておく!!」
マイクを持つと、酎は幽助を指さして何やら宣言しようとしていた。
「オレが弱いのは、ジャンケンだけだ!!ケンカは強え!!本当に強えぜ!!」
しかし、言ったことは意味不明で、何を言いたいのか、さっぱりわからなかった。
「えーーーーー、今のコメントを説明させていただきます。六遊怪は、メンバーの順番と補欠を、ジャンケンで決めたというエピソードがあり…」
小兎は予備のマイクを取り出すと、酎が言ったことの説明を始めた。
「したがって、補欠とは名ばかり!!実力でいえば…六遊怪でNo.1!!と言っているのです!!」
「その通り!!」
「~~~酎のヤロー。ま~~た、悪酔いしてんな」
「………」
「バカか」
「バカなんだろ」
今の発言に、鈴駒だけでなく、瑠璃覇、桑原、蔵馬の三人も呆れていた。
「わかったわかった。さっさとやろーぜ」
一方、酎の発言と小兎の説明に、呆れたりびびったりするどころか、幽助は逆に、わくわくした顔で笑っており、ウズウズしながら上着をぬいでいた。
「あ!!てめーおれの強さを信じてねーだろ。油断してるヤツに勝っても、おもしろくねーんだよ。
いいか、先に言っておく!!オレの技は、酔拳だ。酔うほどに強くなる!!その不規則な動きで不意をつかれたり、油断した敵を翻弄する拳だ!!
いいな!?なめてかかるなよ!!」
「だめだあいつ」
「わざわざ自分の技をあかすなんて……とんでもないバカだな…」
あまりのバカさ加減に、鈴駒はずっこけ、瑠璃覇は呆れながら毒づいた。
「めでたいヤツだぜ。だけどよ、ただの酔拳じゃ芸がねーな。オメーにしかできねー、とっておきの裏技がある」
「!」
「でなきゃあ、おもしろくねーよなぁ?」
「………いい目だ。ひさしぶりに見れたぜ」
今までとは違い、急に酎の顔つきが真剣なものに変わる。
「楽しめそうだな」
まだ試合開始の合図が出されていないのに、酎は流れるように、横に移動した。
「始め!!」
観客席から殺せコールが起こる中、いよいよ、チームの勝敗をわける戦いが始まろうとしていた。
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