第二十三話 戸愚呂兄弟
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幽助が魅由鬼を倒すと、三人は先に進んでいった。
「………それにしても、とんでもねー奴だな。本当の女だったらどうすんだよ」
「バカ。それだったら、うれしーだけじゃねーか」
幽助と桑原は走りながら、先程の幽助の行動について話していた。
「雪村にいってやろ」
幽助は笑っていたが、次に桑原の口から出た言葉により、変な汗をかき、顔が青ざめた。
「っだよてめー、関係ねーだろ」
「あっ、実はオレ、すげー欲しいCDあったんだよなぁあ」
関係ないと言いつつも、どこかあわてて、桑原の胸ぐらをつかむ幽助。
そんな二人の漫才のようなやりとりに、どこかついていけない瑠璃覇だった。
「「!!」」
その時、桑原と瑠璃覇は別の妖怪の気配を感じとった。
「危ねェ!!」
桑原は幽助をつきとばし、瑠璃覇はその場を跳んで、自分に向かってきたものを避けた。
「ぐっ……」
幽助は桑原がかばったため無事だったが、桑原は腕を何か鋭いもので斬られ、ケガを負ってしまった。
「二の角隠魔鬼参上!!」
それは、三鬼衆の一人の隠魔鬼だった。
今の桑原のケガは、隠魔鬼が手に装備している鉤爪で斬られたのが原因だった。
第二十三話 戸愚呂兄弟
隠魔鬼は自身がつけているマントをかぶると、姿を消した。
「くくく」
「なにィ!?マントをかぶったとたん」
「完全に消えやがった!!」
二人が驚いている間にも、隠魔鬼は三人の周りを高速で移動し、撹乱させる。
「(この程度の速さ……どうってことはない。しかし………)」
「桑原!!どこかわかるか!?」
「だめだ!!動きが速くて、妖気の方向がしぼれねェ!!」
「(幽助達には、まだちっときついか…)」
瑠璃覇にはなんてことはない速さだったが、まだ経験が浅い二人は苦戦していた。
「うあっ!!」
二人がうろたえていると、隠魔鬼は突然姿を現し、後ろから幽助の背中を斬りつけた。
「くそ!!逃げろ!!」
二人ともケガを負ってしまったので、一時撤退する。
「くくく。姿が見えなければ、どうすることもできまい」
幽助と桑原とは違い、隠魔鬼は余裕たっぷりの笑みを見せると、またマントをかぶり、幽助達の後を追った。
後を追っていくと、幽助達はまっすぐ進むのではなく、すぐそこにある角を曲がっていく。
「どこへ逃げようとムダだぁ」
隠魔鬼も幽助達の後に続いて、角を曲がろうとした。
「今だ、浦飯!!」
「やれ、幽助!!」
「!」
だが、曲がろうとした時、瑠璃覇と桑原の合図の後に、無数の拳がとんできた。
拳は壁にまで届き、無数の穴があいた。隠魔鬼がいる場所以外に…。
逃げ場がないほどに拳を打ちこまれたので、隠魔鬼は逃げようがなく、自分の体に拳が何発か命中した。
「前言撤回。数撃ちゃ当たるわ」
「な…ぜ……」
マントで姿が見えなかったはずなのに、自分に攻撃を命中させたことが隠魔鬼には信じらず、呆然として床にへたりこんだ。
「そのマントじゃ、妖気まではかくせなかったんだよ。くる方向とタイミングさえわかりゃ、テメーは敵じゃねー」
「瑠璃覇と桑原の合図で、オレが逃げ場のねーほどパンチうちこみゃ、いやでも命中するってことよ」
こうして、あっさりと隠魔鬼との戦いにも決着がつき、幽助と桑原は、また防犯カメラに向かってにやっと笑い
「あと1匹!!」
勝ち誇った顔で、人差し指を立てて宣戦布告をした。
その映像を見ていた垂金は、かなり悔しそうな顔をしていた。
そしてその側では、戸愚呂兄弟が戦闘の準備をしていた。
一方で、幽助達は先を急ぐため、屋敷の中を走っていた。
するとそこへ、三鬼衆の一人である三の角・獄門鬼が現れたが、獄門鬼は、幽助と桑原のキックであっさりとやられてしまった。
「っしゃあーーー!!」
「首洗って待ってろ、垂金ー!!」
獄門鬼を踏みつけ、勝ち誇った顔で、また防犯カメラに向かってポーズをとっていた。
賭けは、また左京の勝ちだった。
そして、いよいよ最後の賭けとなり、戸愚呂兄弟との対決となった。
垂金がどちらに賭けるのかと問えば、左京は66兆2000億円もの大金を、幽助達に賭けた。
それを聞いた垂金は冷や汗をかいたが、その賭けにのった。
彼らは最後の闘技場へ向かおうと移動をしはじめ、垂金は、坂下に雪菜をこっそり連れて来るように命じた。
「もう妖気は感じねェ。あとは、彼女の居場所を探して、垂金ぶっとばすだけだ」
獄門鬼を倒した幽助達は、雪菜を探すために、更に奥へ奥へと進んでいった。
「!!」
その時、桑原はひとつの気配を感じとる。
「待て!!妖気だ!!邪悪なもんじゃねー。きっと彼女だ!!」
それは、雪菜の妖気だった。
雪菜の妖気を感じとった桑原は、急に立ち止まる。
「やれるかどうか、念信してみる!!
……えっと、ああそういや、名前も知らねェ」
「「雪菜だ」」
「てめーも瑠璃覇さんも、なんで知ってんだ!?」
「ビデオの途中で出てったのはお前だろ」
「指令のビデオ、途中ですっぽかしただろが、お前」
自分が雪菜の名前を知らず、二人が知ってたのは、単にビデオを最後まで見てるか見てないかなのに、何故だと問う桑原に、幽助と瑠璃覇はつっこんだ。
《雪菜さん。あんた、雪菜さんだろ!!頼む、応信してくれ!!》
《……あなたは?》
《正義のヒーロー桑原和真だ。助けにきたぜ》
《お願い。早く逃げて!!》
助けに来たのに、救出の対象である雪菜に逃げるように言われ、桑原は大げさにずっこけた。
《垂金権造は、闇ブローカーを雇ったの!!あなた人間でしょう。勝ち目がないわ!!》
《へへへ、安心しな。そいつら、全部ぶっ倒した。あとはあんたを助けるだけだ》
《そんなはずないわ。……今、私のそばに、その人がいるのよ…》
《だとしたら、そいつはハッタリだぜ。ちっとも強力な妖気を感じねェ!》
「…………」
「とにかく、結界から出されたおかげで、場所はわかった!!いやだって言っても助けに行くぜ!!」
敵も倒したし、あとは雪菜を救出するだけなので、桑原ははりきって先に進んでいく。
「こっちだ」
「地下か!!」
雪菜の妖気をたどって、進んで行った先は地下だった。
「うげっ。なんだこりゃ!?」
「もっと奥だ!!」
途中、垂金が戸愚呂弟の腕試しに使った獣の死体が無残な姿で散らばっていたが、桑原はそんなことよりも雪菜のことが気がかりなので、特に気にすることなく、先へ進んで行った。
「ドアが閉まる!!」
「きっとそこだ!!」
奥へ進んでいくと、そこには一枚の扉があり、もう半分閉まりかけていることから、雪菜はそこにいるのだと推測した。
中に入ると、そこはドーム型の闘技場になっており、その部屋の奥には戸愚呂兄弟。そして、後ろの壁についたテレビには、B・B・Cのメンバー。更に、上のガラスの向こうには、垂金と雪菜がいた。
「………あいつが、最後の敵か」
「ちィィ。後ろのTVじゃ、ヒマな金持ちどもが見物してやがるぜ」
そのことが気にいらないのか、桑原はテレビがある方を睨んだ。
「たのむ!!たのむぞ~~、戸愚呂兄弟~~~!!」
ガラスの向こうでは、もう後がない垂金が、汗を流しながら見ていた。
《待ってな。すぐ助けてやるぜ!!》
「………」
桑原は雪菜をみつけると、うれしそうな顔をして、雪菜に、念信で自分の意志を伝えるが、雪菜は心配そうに見ていた。
「よく来たねェ。ま……お手やわらかにたのみますよ」
三人が来ると、戸愚呂弟は見た目に反して、丁寧にあいさつをした。
「けっ。やっぱり妖気はほとんど感じねェな。楽勝だぜ」
「………」
戸愚呂兄弟を目にした桑原は、余裕の笑みを見せるが、幽助はそうではなかった。
「いや…違う!!」
そして、桑原が言ったことを否定する。
「なんだかよくわからねェが、奴はすげえ強い気がしてなんねェ」
「そうかァ?」
「うまく言えねェが…肌に、ピリピリ感じるんだ」
「(私にとってはただのザコ…。だが、幽助と桑原には、まだこいつらの相手はちときついか)」
幽助は、戸愚呂弟の強い妖気を肌に感じていたが、桑原はまったくわかっていなかった。
一方瑠璃覇は、瞬時に相手の力量を見極め、自分にとっては下だが、幽助達よりは上だということを判断した。
幽助が言ったことに、戸愚呂弟がニヤッと笑うと、戸愚呂弟の肩にのっていた戸愚呂兄は服をぬぎ、高くあげた戸愚呂弟の指の先にのった。
そして、戸愚呂兄は後ろで手をくんで上にあげると、みるみる変形していった。
「なにィ!?
肩にのってたヤローが………!!」
「みるみる変形していきやがる!!」
「武態能力か…」
「その通り。兄者は体を武器化することができる…。武態といってねェ。その威力は、使う者の能力次第…」
「剣に変わったァーーーっ!!」
変形していった戸愚呂兄は剣に変わり、戸愚呂弟の手ににぎられていた。
「そしてェェーーーェ!!」
戸愚呂弟が叫ぶと服が引きちぎれ、筋肉が急激に発達したので、幽助と桑原は、驚きのあまり口をあけ、目を見開き、冷や汗をかいた。
「オレは、兄者の力を最大限発揮する筋力を持つ!!オレ達兄弟は、ふたりでひとつ!!」
「す、すげェ妖気だァ!!」
「これだけ離れてるのに、威圧感でつぶれそうだ!!」
さっきまでほとんど何も感じなかったのに、急に強力な妖気を感じたので、その威圧感に、幽助と桑原は押しつぶされそうだった。
その間にも、戸愚呂弟は三人の前まで走ってきて、剣を振りかざした。
「「!!!」」
戸愚呂弟は、すごい勢いで三人に斬りかかってきたが、三人はそれを跳んで避けた。
剣があたった床は、とても剣で切りかかったとは思えないほどに陥没し、床の破片が周りに散乱した。
「「(は、速え!!)」」
完全に避けたと思ったのに、今の一撃で幽助の服が切れ、そのスピードにも二人は圧倒されていた。
「くそ!!」
桑原は、素早く霊剣を出して応戦しようとするが、そんな暇も与えず、戸愚呂弟が剣を振り下ろしてきた。
「うおォォオーーーー」
桑原は、なんとかそれを受け止める。
「うっ…!!ぐぁあ」
しかし、あまりに強い力に、相手の剣を止め続けられるかどうか、微妙といったところだ。
それを見た戸愚呂弟は、不敵な笑みを浮かべると、剣を持ってない方の手で、素早く桑原の腹を殴った。
「桑原!!」
「桑原ァアー!!」
戸愚呂弟の攻撃をモロにくらってしまった桑原は、殴られた勢いのままふっとんでいき、壁に激突する。
「う……ゲホ…」
あまりの威力に、桑原は体が震え、骨が軋み、口から血を吐くほどだった。
「自ら後ろに跳んで致命傷だけはさけたか…。遺伝子操作のバケモノより、頭はまわるようだねェ」
実は、少しだがダメージを軽減させていた桑原に、戸愚呂弟は感心する。
「!!」
「くらいやがれェエーーー!!」
余裕の戸愚呂弟の隙をついて、横から幽助が霊丸を打つ。
「ざまァみやがれ、くそったれ。この至近距離なら…」
霊丸は、戸愚呂弟の頭に命中した。
そう思った。
「!?」
霊丸を打った時にあがった煙が引いていくと、戸愚呂弟の姿が見えてきた。
「け、剣がいつのまにか盾に…!?」
剣になっていた戸愚呂兄が、一瞬にして盾に変わっており、戸愚呂弟の腕に巻きついて、戸愚呂弟を守っていた。
「ガァ…ッ」
驚いている間に、幽助は殴り倒される。
それは、桑原と同じように、口から血を吐いてしまうほどの威力だった。
「ひとついい忘れたなァ。兄者が化けられるのは、ひとつじゃないんだよ…………」
桑原に続き、幽助も殴り倒した戸愚呂弟は、強者としての余裕の笑みを浮かべていた。
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