第二十話 地獄団地での決闘
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幽助が乱童や朱雀を倒したというニュースは、妖魔街の住人達から、人間界に潜む妖怪達にも少しずつ広まっていった………。
多くは脅威を感じたが、なかには人間に敗れた朱雀らのふがいなさを嘲り、それにおびえていた自分自身に憤り、奮起しようとする者も少なからずいた。
弱肉強食が生きる術である魔物にとって、強い者を倒した者は恐怖の対象でもあるが、自分達がのし上がるための、新たな餌食でもある。
幽助は、そんな彼ら、頂点をめざす妖怪達にとって、格好のターゲットとなった…!!
第二十話 地獄団地での決闘
幽助が目覚めてから、更に数日後のこと…。
幽助はこの間の任務が原因で、全身筋肉痛にさいなまれながらも、学校に登校していた。
全身筋肉痛なのは桑原も同じで、友人にさわられると悲鳴をあげ、自分にさわるなと叫んでいた。
それから昼休みとなり、幽助と桑原は、桑原の友人の、沢村、桐島、大久保の三人から、自分らのニセ者が、累ヶ淵中の奴らを見境なく闇討ちしてるらしいという情報を聞かされた。
偽造の生徒手帳を落としたり、名前をさりげなく出して、二人だということを臭わせているという…。
かなりベタなことをしているのだが、累ヶ淵中の連中はそれを信じきってるというのだ。
そのことを聞いた二人はニセ者をたたもうと決意するも、体が治ってからと、悠長なことを言っていた。
けど、目には目を…という感じで、関係のない生徒までやられてるので、早いとこなんとかしないといけない聞いても、それでも二人は渋っていた。
そんな二人を見ると、累ヶ淵中の連中が本気で攻めてきたら、自分らでやるということを言い残して去ろうとする。
だが、そこを二人に呼び止められ、やる気になってくれたのだと喜んでいたが、二人はただ単に、筋肉痛で立つことができず、起こしてほしいがために呼び止めただけであった。
同じ頃、皿屋敷中から2駅離れた場所にある盟王学園では、瑠璃覇と蔵馬が屋上で、二人きりで仲良くお昼ご飯を食べていた。
しかし、瑠璃覇は急に気配を感じ、弁当箱を置いてその場を立ちあがる。
「コエンマ…」
そこにはコエンマが、宙に浮かんでいた。
「プライベートまで邪魔しに来るなんて、霊界の統括者とは、よほど暇人なんだな。なんの用だ?」
蔵馬と二人きりの時間を邪魔されて腹が立った瑠璃覇は、とげのある口調で、コエンマに嫌味を言った。
「お前は、いちいち嫌味を言わんと、話を進められんのか!?」
「安心しろ。お前限定だ」
「できるか!!」
瑠璃覇の冷たい対応に、側にいた蔵馬はひきつった笑みを浮かべる。
「それで、一体なんの用です?」
「おお、そうだな」
瑠璃覇だと、話がなかなか先に進まないと判断した蔵馬は、コエンマに問いかける。
瑠璃覇と違い、蔵馬の物腰やわらかい対応に、コエンマはどこかほっとした様子だった。
「実はな、二人に幽助と桑原の護衛を頼みたいのだ」
「何故だ?」
「霊気をあやつって日が浅い幽助達は、激しい戦いで霊気を放出した後、数日間はすさまじい全身の疲労と苦痛にさいなまれるからだ。
その間の幽助の力は、普通の人間以下。そこを妖怪に狙われたらいちころだ。
だから、歴戦の戦士である二人に、幽助と桑原の護衛を頼みたいのだ」
「お前はこの間、幽助達を援護しつつ、少しでも成長できるよう見守るようにと言わなかったか?その上で、更に私に頼みごとをすると?ふざけるなよ」
「う……。そ、それはそれ、これはこれじゃ。それにどうやら、今大変なことになってるらしいからな」
とげとげしい瑠璃覇の言葉に、コエンマは言葉をつまらせながらも本題にはいっていく。
「なんです?大変なこととは」
「うむ。実はな、幽助達のニセ者が出たらしいのだ」
「ニセ者?」
「うむ…。それで、そのニセ者は、累ヶ淵中学校の連中を闇討ちしてるようでな。ニセ者も累ヶ淵中学校の奴らも、まだ幽助達には手を出してないようだが、これだと、いつ幽助達にも危害が及ぶかわからん。
だから、幽助達を護衛してほしいのだ」
「そうだったんですね。
瑠璃覇…」
「……しょうがないな」
コエンマから一通り話を聞くと、蔵馬は瑠璃覇の名前を呼んだ。
それだけで、蔵馬が求めていることがわかった瑠璃覇は、ため息をつくと手を前にかざした。
すると、学校の周りだけでなく、皿屋敷市全体にすさまじい風が吹いた。
そして、風が吹いて少し時間が経つと、風がおさまっていく。
「…どうやら、その累ヶ淵中学校の奴らは、ニセ者から果たし状をもらったようだ。今、累ヶ淵公園に集まり出している。
あと、幽助達は、確かに全身がすさまじい疲労と苦痛にさいなまれているようだ。動くのも一苦労といった感じだな」
今のは、三大秘宝の飛影との戦いの時、瑠璃覇が幽助を探し出すために使った技だった。
瑠璃覇は今の技で、幽助と桑原、累ヶ淵中学校の生徒の動きを探ったのである。
「そうか」
「あと、飛影が公園から数百メートル離れた場所にいる。ビルの屋上だ」
「わかった。じゃあ行こうか」
蔵馬が言ってる意味がわかってる瑠璃覇は、再度ため息をつきながらも風を起こし、自分と蔵馬を包み、移動させた。
学校から数十メートル離れた、誰もいないビルの屋上に移動した二人は、行動を開始した。
「まずは、飛影のところに行こう。あと、瑠璃覇は常に累ヶ淵中学校の奴らの様子を探ってくれ。何かあったら教えてほしい」
「蔵馬は、相変わらず人使い荒いな」
「瑠璃覇限定だよ」
確かに人使いは荒いが、それは単に、瑠璃覇に甘えているだけであった。
ため息をつきながらも、蔵馬の言った通りにしてしまうのは、ほれた弱みだった。
その頃、累ヶ淵公園には、さっき瑠璃覇が言っていた通り、累ヶ淵中の生徒が集まっており、幽助と桑原を殺ると、いきり立っていた。
なんでも、二人から果たし状がきたらしく、それは今日の午後4時に、地獄団地跡に来いというものだった。
本当は、二人は果たし状など出してはいないのだが、すっかり信じきっている累ヶ淵中の奴らは、全面戦争だの奴らをぶっつぶしてやるだのと息巻いていた。
そして、累ヶ淵公園の木の影では、幽助と桑原のニセ者が、その様子をニタニタと笑いながら見ていた。
実は、この決闘を仕組んだのは、この二人組であった。
累ヶ淵中の連中には教えたので、今度は幽助達にも教え、つぶしあいをさせようという魂胆なのだ。
実は、この二人は人間ではなく半妖怪で、幽助を倒して、魔界にも人間界にも、自分達の名前をとどろかせようと企んでいたのだった。
「…ということだ、蔵馬」
「そっか。ありがとう」
瑠璃覇は言われた通り、ずっと技を発動させており、状況を蔵馬に知らせていた。
「あ、ここが飛影のいるところだな」
「それじゃあ行こうか」
話しているうちに、二人は飛影がいるビルにたどり着き、階段をあがって屋上に行った。
その頃、そのビルの屋上では、飛影が邪眼を使って、公園の様子を見ていた。
「……ち、バカが。くだらん連中だ。貴様ら三流魔に、幽助が倒せると思うのか」
なんだかんだと幽助を信頼している飛影は、相手を蔑みながら、邪眼を隠した。
『霊気をあやつって日が浅い幽助らは、激しい戦いで霊気を放出した後、数日間はすさまじい全身の疲労と苦痛にさいなまれるだろう…』
「…………」
『その間の幽助の力は、普通の人間以下だ。そこを妖怪にねらわれればいちころだろうな』
飛影はコエンマに教えられたことを思い出し、少し考えごとをしていた。
「くっ、くくく。おいおい。飛影、お前はなにを考えている?」
と、誰に言うでもなく一人ごとを言った。
「本当に……何を考えてるんだ?お前は…」
「物騒な連中が多くてこまりますね」
その時、後ろに蔵馬と瑠璃覇が現れた。
まさかいるとは思わなかった飛影は、目を丸くする。
「…………気配を断って近づくな。悪趣味な奴らめ」
「こちらにはなんの用で?」
「つまらん用事だ。お前らこそなんの用だ」
「霊界から、幽助達の護衛を頼まれたんだけど…。腹にうけた傷が治りきってないんでね」
「…あの時、瑠璃覇に治してもらっていなかったか?」
「ええ。ですが、なんだかとてもうずくんですよ。前に、だれかさんにやられた古傷と、同じ場所でして」
「………なにがいいたい」
遠回しな言い方だが、飛影は蔵馬の言おうとしていることがわかった。
しかし、素直にならないのが飛影だった。
「フン。お前ができなくとも、瑠璃覇がいるだろうが。それにオレは、霊界の言う通りに動く気などない。自由の身になるために、あえて手を貸してやっただけだ!!」
「……そうですか。
あ……確認しますが、ニセ者ふたりがしくんだ決闘は、午後4時・地獄団地跡ですよね」
「オレは行かんと言ってるだろ」
「幽助が、あんな三下妖怪にやられてもいいならね」
蔵馬のわざとらしく遠回しな言葉に、やはり飛影は素直になれなかった。
けど、それでも蔵馬はひょうひょうとして、そこから去ろうとした。
「あなたを破った人間なんですよ」
そして、とどめをさすような言葉を飛影に言い残すと、瑠璃覇と一緒に、扉を閉めて去っていった。
そんな蔵馬の後ろ姿を、飛影は睨むように見ていた。
屋上から去ると、二人は建物の外へ出た。
「それで、これからどうするんだ?」
「とりあえず、オレ達は先に、地獄団地跡に行こう。いずれ、幽助達も来るだろうからね。
瑠璃覇は、幽助達がその場所に来るまでの間、また、累ヶ淵中の奴らや幽助達、ニセ者の動向をつねに探っていてくれ」
実は、妖力をおさえている今の状態では、移動術と現状を把握する技を、同時に…しかも、つねに使い続けるのは大変なのだが、プライドが高い瑠璃覇の性格からして、絶対にその手の愚痴は言わないし、蔵馬はそれを知った上で言っているので、瑠璃覇は後ろから、少しだけ蔵馬を睨んだ。
それから、数十分経った午後3時。
皿屋敷中学校では、桐島、大久保、沢村の三人が重傷を負い、一年生に、累ヶ淵中学校の奴らから受けた伝言を聞いていた。
それは、4時に地獄団地跡に来いというものだった。
伝言を聞いた幽助はブチ切れて、ニセ者の前に累ヶ淵中学校の奴らをぶっ殺してやると息巻いて、桑原とともに杖をつき、体をひきずりながら、地獄団地跡へと向かって行く。
そして二人の後ろ、建物の影では、先程の半妖怪二人が、半妖怪のみで構成されたチーム・魔装束を率いてその様子を見ており、計画通りにいったと笑みを浮かべ、勝った方をぶっ倒して、今日からこの町の支配者だと、こちらはこちらで息巻いていた。
「どうやら、桑原の友人が奴らにやられたようだな。二人ともバカだから、すっかり累ヶ淵中の連中だと信じきって、地獄団地跡に向かってるぞ。
あと、この戦いをしくんだ半妖怪も、すぐ近くにいる。なんかザコをひきつれてるな」
「そうか。じゃあ行こう」
行こうと言っても、実際は歩いていくわけではなく、瑠璃覇の力をあてにしているので、瑠璃覇はもうため息をつく気にもなれず、何も言わずに風で自分と蔵馬を、地獄団地跡に移動させた。
風は、連中がいない、地獄団地の側にあるビルの上に吹き、そこから瑠璃覇と蔵馬が姿を現した。
二人はそこから下に階段で降りていくと、地獄団地跡まで行き、誰にも見つからないように、影に隠れてその場の様子をつねに見ており、いつ何があってもいいようにしていた。
それから少し経った、午後3時30分、幽助達が地獄団地跡に到着した。
「よくものこのここれたもんだな。アア!?浦飯よォ」
「調子はどうだ?」
「へへへ、立ってんのが不思議なくらいだ」
そこには累ヶ淵中の奴らがいて、二人が来るなりケンカ越しになり、側にある材木の影には、決闘を仕組んだ半妖怪二人組と魔装束が隠れていた。
「闇討ちついでに決闘申し込むとは、死ぬ覚悟できての事だろーな!?」
「ざけんじゃねーーーっ。呼び出したのはてめーらだろが」
果たし状は自分達が出したものではないので、当然幽助達は、累ヶ淵中の言ってることは、意味がわからなかった。
「それより、よくも三人やりやがったな」
「なんで直接オレ達にこねーんだ、コラ」
「なんだァーー!?わけわかんねェこと言ってんじゃねーーー!!」
「ぶっこいてんじゃねー、コラァ」
けど、当然相手は、闇討ちも果たし状も幽助達がやったことだと思ってるので、こちらも意味がわからずにいた。
「めんどくせー。どーせ手前ら死ぬんだよ。いくぞァラァア!!!」
「ちくしょー。たしかに、今日ばかりは勝つ気がしねーぜ」
「くそーーっ。体さえマトモなら、こんな数、屁でもねーのによォ」
まだ決闘の時間になっていないというのに、血の気が多いのか、考えるのが面倒なのか、累ヶ淵中の連中は、二人にいっせいに襲いかかっていく。
幽助と桑原も構えるが、体が悲鳴をあげているので、万事休すかと思った。
「(やりィー。おっ始まったぜェ!!)」
「(けけけ。さぁ、殺し合えぇーー)」
その様子を側で隠れて見ていた、この作戦の首謀者達は、自分達の思惑通りにことが運んだのでニヤニヤと笑っていた。
「ちょっと待ったァーーっ!!」
だが、突如両者の目の前を、二輪の赤いバラの花が舞い、お互いの動きを止めた。
「な!?」
「だれだ、テメーらは」
「蔵馬…!瑠璃覇…!」
思わぬ第三者の介入に、両者ともとても驚いていた。
「30分も前に始めるとは、気の早い人達だ。だが、お互い牙をむける相手が違いますよ」
「この戦いの全てをしくんだのは、そこにいるふたりだ!!」
瑠璃覇が指をさすと、全員半妖怪二人がいる方を見た。
自分達のことをバラされたにも関わらず、二人は余裕の顔で、幽助達の前にやって来た。
「フフン。とんだジャマが入ったが…こうなりゃしかたない」
「もともと、小細工を使わなくても、我が"魔装束"は、貴様ら両方を倒す力は十分にある!!」
「"魔装束"!?最近街荒らしてるチームかーーっ!!」
「てめーらが、糸引いてやがったのかーーーー!!」
幽助と桑原そっくりの格好をした二人は、自分達のことがバレたというのに、余裕の笑みを浮かべるほど、自信満々の態度だった。
「ふはは。その通りだ!!バカどもがァ」
「だが、もう貴様らは、完全に包囲されている!!さあ、出てこい最強の軍団よ!!」
片手を上げて、声を高らかに叫んだ二人だったが、誰も現れることはなく、全員の間に沈黙が流れる。
「「あれ?」」
手はず通りに出てこないので、二人はどうしたのだろうと後ろを見た。
「今呼んだのは、このゴミの山か?なんだコイツらは??迷宮城の養殖人間一匹の力にも値せんぞ」
「(弱すぎ…)」
そこには飛影と、飛影に倒された、魔装束に所属する半妖怪が山づみにされていた。
「ば…ば…かな………」
「我が最強の軍団が……」
もう、自分達に味方をする者は一人もいなくなり、計画が失敗したので、二人は顔面蒼白となり、冷や汗をかいていた。
「てめ~~…」
「「は、ははは」」
「覚悟は…」
「できてんだろォオなァア」
そして二人は、幽助と桑原、累ヶ淵中の連中に囲まれていた。
「はあああーーーーー」
「たっ、たっ、たしゅけて~~~~~」
泣いて命ごいをするが、自分達をはめた奴を許すわけもなく、容赦なく殴られ、蹴られ、リンチされたのだった。
半妖怪の二人は、ボコボコにされ、気絶させられたあげく、裸にされ、更にその服を燃やされた。
因果応報とは、まさにこのことだった。
「あーー…危なかったぜ。助かったよ」
「……ったく、こんな下らん連中にオレの手をわずらわせやがって。
いいか!!疲労状態だろうが、あんなカスに、お前が負けることはオレが許さん。そうなったら、そのお前に、一度のまぐれとはいえ、敗れたオレはなんなんだ。さっさと霊力のレベルをあげろ!!」
「ははは、まったくだ。これで、借りがふたつになっちまったな」
「ヤロオ、オレはもっとハンサムだぞ」
幽助が飛影に素直に礼を言えば、飛影は相変わらず素直じゃない態度で返した。
けど幽助は、そんなことは大して気にしていなかった。
「……ま、しかし、これからも世話になっちまうだろうな。よろしくたのむ!」
「……!」
痛む腕を上げて、幽助は飛影とあくしゅをかわそうとする。
「…………」
飛影もわずかに頬を赤くして、腕をあげる。
だが、飛影はあくしゅをかわすのではなく、ビデオテープを幽助の手に渡した。
「ビデオテープ!?なんだこりゃ」
予想外の出来事に、幽助は渡されたビデオテープを凝視した。
「霊界からの次の指令だそうだ」
短く告げると、「用はすんだ。これで自由の身だ。あーー、せーせーした」と言いながら去っていく飛影。
飛影の後ろでは、幽助がベタに大げさにずっこけていた。
.