第十七話 疾風怒濤の戦い
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「地獄の部屋に招待するだと、あのデカネコ。とにかく、こっちに行ったぞ!!」
白虎が、自分が立っていた背後にある入口へと姿を消すと、幽助達も階段を上がって、入り口の中に入り、白虎がいるであろう場所を目指していた。
「う!?」
「ここは!?」
幽助達が進んだ先。そこは大きな空洞になっていた。
そこでは溶岩がぐらぐらと煮えたぎり、そこから、立っているだけしかできなさそうな、石でできた小さい闘技場のような足場が、きのこのように生えている場所で、その先の足場のひとつに、白虎が立っていた。
「げ……マジでこりゃ、地獄の釜だぜ」
「落ちたらひとたまりもねーぜ」
そこを目にした幽助と桑原は、白虎が言った通りの部屋を見て、顔が引きつっていた。
「くくく。ここがオレ様の遊戯室だ。いいながめだろう?下は見ての通り、落ちれば骨になるまでとかされる濃獄酸の風呂だ。さあ、度胸がある奴からでいい。降りてきて戦えい!!」
第十七話 疾風怒濤の戦い
「ヤロオ、死にぞこないが。ふざけた部屋に案内しやがって。
オレがとどめさしてやんぜ!!」
幽助は、自分が白虎と戦おうとするが、そこを桑原に肩をつかまれて止められる。
「ヤツの相手はオレだろーが」
「桑原」
「もういい。貴様はよく戦った。あとは幽助に任せて、体力を回復すればまた戦力になる」
「あとは任せて?ざけんじゃねー。タイマンは野球じゃねーんだぞ」
飛影に下がるように言われるが、それでも桑原は聞かなかった。
「リリーフ・エースにゲタあずけて、ベンチで麦茶なんてワケにゃいかねーんだよ。てめーのケツぐれーてめーでふくぜ」
それどころかますます熱く燃えたぎっており、引き下がることはなかった。
「ちっ、不合理な生き物だ……!」
「ああ言いだしたらてこでもきかねー」
「ガンコさは君といい勝負だ」
「どうした、おじけついたか」
「うるせーな。今行くから待ってろ、ボケ」
白虎の挑発にのり、今から下に降りて戦おうとした時だった。
ドカッ
「うがっ」
「「「!!」」」
突然、瑠璃覇が後ろから桑原の頭を殴って止めた。
そんなに威力はないのでダメージは小さいが、それでも痛いことには変わりなく、桑原は頭をおさえながら、後ろへ振り向いた。
「お前はやめておけ、桑原」
「瑠璃覇さん!?」
「私がやる…」
「な!?」
自分を殴った上、自分の代わりに戦うというので、桑原は驚きの声をあげる。
「飛影の言う通り、体力を回復させておけ。そういうのは勇気ではない。無謀というんだ」
「そんな…」
「それに、お前の戦い方は、正直目にあまる。見るに堪えん」
「え…」
「先程の戦いも、がんばってたけどいいとこ10点だ」
「じゅっ…!」
「相変わらず厳しいな、瑠璃覇は」
今の桑原とのやりとりを側で見ていた蔵馬は、苦笑いをする。
「パープル・アイの戦いが、この目で見られるとはな…。
おい桑原、やはりお前は交代しておけ」
「んなぁ!?」
「そういうことだ。お前は麦茶でも飲んでろ」
「うぅ…」
瑠璃覇と飛影の二人にせまられ、桑原は小さくなっていく。
「それに…私は、人間界に降り立ってからの15年間、ずっと人間の姿で、妖力をおさえたまま生活をしてきた。それが、どれだけストレスがたまるか……。蔵馬、飛影、同じ妖怪ならわかるだろう?」
桑原がどう答えようが、自分が戦う気満々のようで、瑠璃覇は足を一歩前に出す。
「桑原」
「ん?」
「私の戦いをよく見て、参考にしておけ」
顔だけ後ろに向けて桑原に言うと、顔を前に戻して、下へ舞い降り、足場の上に華麗に着地する。
「と言っても……瑠璃覇の戦いは、すごすぎて逆に参考にならないと思うけど…」
「しかし、生きる伝説とまで言われてる奴の戦いだ。見ておいて、損はないぜ」
「まあね…」
そこにいる、幽助、桑原、飛影、蔵馬は、これから起こる戦いを、固唾をのんで見ていた。
「フンッ。あの男が出ると思ったら、代わりに貴様が出るのか?」
「そうだ」
「わっはははは。笑わせるわ!この中で一番軟弱そうなツラをして、この白虎様に挑もうというのか?片腹痛いわ」
「…………」
「悪いことは言わん。他の奴と交代してもらうんだな。貴様ごときが、このオレ様に勝てるとでも…「思ってる」
「あ!?」
「だから、ここに降り立った」
白虎を見据える瑠璃覇は、まっすぐで、それでいて強さを兼ね備えていた。
「それに、度胸がある奴からでいいと言ったのはお前だ。それともお前は、女だからと怖気づくような奴なのか?」
瑠璃覇のその安い挑発に、白虎の眉はピクリと動く。
「まあ、結果は見えてるがな」
「何ィ!?」
「さっき、貴様が言った言葉を返そう」
瑠璃覇は、口元に軽く笑みを浮かべ、鋭い目を白虎に向け、口を開く。
「貴様ごときが、この私に勝てるとでも?寝言は寝てから言うんだな」
「うぬぅうう…。おのれっ………その言葉、後悔させてくれるわ!!」
苦虫を噛みつぶしたような表情を見せれば、何やら首に両手をそえて、何かを始めた。
「こおおおお」
白虎が妖気を集中させると、雷のようなものが白虎の口の周りで発生する。
「「「「!!」」」」
「おおお」
「!?」
「見せてやろう!!貴様に。オレ様の、最大奥義を……!!」
「最大奥義?」
「かぁ!!!!」
不適な笑みを浮かべると、口から雷のようなものをまとった光る球体を、吐き出すように飛ばした。
瑠璃覇に向けて飛ばされた光の球は、瑠璃覇に直撃し、足場が一瞬にしてチリと化した。
「瑠璃覇っ」
「おいおい、一発でやられちまったぞ!!」
幽助と桑原は、相手の攻撃があたったことであわてていたが、蔵馬はまったくあわててはおらず、不適な笑みを浮かべる。
「見たか。これぞ、鳴虎衝壊波。触れた物をチリと化す、超振動の雄叫びよ」
「体内で、分子破壊をも生じさせる、振動球を作り出せる妖怪がいることは聞いていたが、それが白虎か!!あの技からは、逃げるしか術がない!!」
「わはははは!!その通りだ!!だが、奴は今の一発で死んだ!!意気ごんでいたわりには、なんともあっけない最期だったな!!このオレ様と戦うには、100年早かったようだ!!」
あっさりと瑠璃覇を倒してしまったので、白虎は高らかに笑った。
「なるほど」
高笑いをしていると、後ろからありえない人物の声が聞こえてきた。
「ザコのわりには、まあ、それなりの技をもっているようだな」
白虎はおそるおそる後ろへ顔を向けると、自分の後ろの足場には、自分の鳴虎衝壊波でチリと化したはずの瑠璃覇がいたので、驚きの表情を見せた。
「瑠璃覇!」
「無事だったんだな」
瑠璃覇はやられてしまったと思っていた幽助と桑原も、ガッツポーズをして喜んでいた。
「しかし、動体視力はあまりよくないようだ」
当たったように見えて、実は素早く後ろに回りこんだことに気づいていなかった白虎を、クスクスと嘲笑う瑠璃覇に、白虎はカッとなる。
「今度はこっちから攻めてやろう」
瑠璃覇は風を起こすと、自らを宙に浮かせ、白虎より上に飛んだ。
「と…飛びやがった!」
「どうなってんだ?」
瑠璃覇が風を操ることは知っていたが、飛ぶことまでは知らなかったので、幽助と桑原は驚きの声をあげた。
「瑠璃覇は風を使う。風を操り、自らを宙に浮かせて飛ぶのは、造作もないことなんですよ」
「マ、マジかよ!?」
「やっぱ、瑠璃覇はすっげぇな…」
蔵馬から説明されると、二人はそれだけで感激していた。
「行くぞ…」
宙に飛んだ瑠璃覇は、技を繰り出すため、手の平に妖気を集中させる。
それを見ている幽助と桑原は、どんな技が出てくるのかと、生唾をのみこんだ。
「裂空斬(レックウザン)!!」
妖気を集中させた右手を前に出すと、そこからひとつの大きな風の刃を飛ばす。
風の刃は白虎の方へまっすぐに向かっていったが、白虎にぎりぎり当たらず、白虎の横を通りすぎ、白虎ではなく、白虎の前にある足場の柱を斬った。
斬れた部分は、かけたりつぶれたりしてない、綺麗に研いだ石の彫刻のようになっていた。
「はっははははは。どうやら、コントロールはヘタのようだな!!どんなにすごい技を繰り出そうと、当たらなければ意味がないわ!!」
自分のことは棚に上げておいて、大きく笑う白虎だが、瑠璃覇はそんなものは意にも介しておらず、次の技を繰り出すために、今度は白虎よりも下の柱のあたりまで移動し、宙を飛びながら移動を始めた。
「すっげえ技じゃねーか!飛んでてあんなすごいの撃ったってのに、全然疲れた表情を見せねーし。やっぱすげえぜ、瑠璃覇は」
「いや、あれは基礎中の基礎。小手先の技だ」
「え!?」
「あんなスゲーのにか?」
「生きる伝説とまでされた奴の実力が、あの程度ではあるまい」
蔵馬は幽助の言うことを否定する。ずっと一緒にいたから、本当の力がどんなものかわかってるからだ。
飛影もまた、瑠璃覇とは今回初めて会ったが、それでも魔界の出身で、瑠璃覇のことは聞いたことがあったので、伝説と称される妖怪の実力が、この程度のはずはないと否定をした。
そんな二人の言葉を聞き、幽助と桑原は、ますます瑠璃覇の戦いに釘づけになる。
「鳴虎衝壊波!!」
その間にも白虎の攻撃は続くが、瑠璃覇は空中を移動しながら、あっさりと白虎の攻撃を避けていく。
「かっ!!!かっ!!!!」
白虎は白虎で、瑠璃覇を亡き者にしようと、鳴虎衝壊波を撃ち続けた。
しかし、どんなに撃っても、瑠璃覇はその攻撃を、全てあっさりと避けてしまう。
「千風刃(センプウジン)!!」
そして、瑠璃覇は瑠璃覇で違う技を放った。技を放ってる時の瑠璃覇は、戦うのが楽しくてたまらないと言った感じの顔をしていた。
今度のは、先程の裂空斬と同じ風の刃だが、裂空斬よりも一回り小さく、いくつあるかわからないくらい多かった。
だが、その風の刃は、またしても白虎や白虎の足場をはずし、周りの足場に当たったり、どこにも当たらなかったりして、攻撃をはずしてしまう。
「ははは、またはずれだ。いい加減あきらめるんだな!!貴様は、絶対にオレ様には勝てないぞ!!」
しゃべりながらも、連続で何発も撃った鳴虎衝壊波は、ほとんどが足場に向かって飛んでいったが、たったひとつだけ、瑠璃覇に向かって飛んでいった。
「今度こそ避けきれまい!!」
あとちょっとで瑠璃覇に命中しそうなので、白虎は愉快そうにしていた。
「あたっちまうぅ!!」
「あぶねェ、瑠璃覇!!」
逆に幽助と桑原は、心配そうに叫んだ。
ゴォオオ!!!
「!?」
だが、命中する直前で、瑠璃覇は自分の周りに風の結界をつくり、鳴虎衝壊波を防いだ。
「おのれ!!ちょこざいにも、結界をはれるのか。ナマイキな!!」
「戦いにおいてもっとも大切なのは、妖気のコントロールだ。そして、それと同じくらい大切なのは、攻撃をあてることではなく、己の身を守ること。己の身が無事で、初めて攻撃ができるからな。このくらいはあたり前だ」
「ぐぬぅ……」
結界をはれるのは当然という物言いをする瑠璃覇に、白虎は奥歯を噛みしめ、くやしそうな顔をした。
その間に、瑠璃覇は近くの、まだ残っている足場に降り立つ。
「しかし!!勝つのは、このオレ様だ。逃げまわっているだけでは、オレ様を倒すことはできん。貴様はいずれ、この鳴虎衝壊波で倒される運命よ」
白虎は強気な態度で、長い針のような武器を取り出した。
その表情は、まだ自分が優勢であると思っている顔だった。
自分が今、どのような状況にあるのかも気づかずに…。
「泣き叫べ。命ごいをしろ!!クソションベンもらしてみせろ!!慈悲深いオレ様の気が変わるかもしれんぞ!!」
白虎は叫びながら針を投げつけるが、瑠璃覇はそれを、体を横にずらして軽々と避けた。
それを見た白虎は舌打ちをする。
「白虎……貴様は確かに慈悲深いな…」
「ん?」
「こんなにも容易く、罠にはまってくれるのだから」
「貴様、何を言ってやがる」
「やはりお前はバカだな…」
「あ!?」
「私が、ただ逃げまわっていただけとでも?」
「なんだと!?」
意味のわからない瑠璃覇の言葉に、白虎は苛立ちを隠すことなく怒鳴る。
「お前……鳴虎衝壊波は、触れたものをチリと化すとか言ってたな」
「それがどうした?」
「お前のそれは、確かに触れれば、物をチリと化すことができるようだ…。しかし、その球体が命中しなければ意味はない」
「? 何が言いたい」
まだわかっていない様子の白虎に、瑠璃覇はニヤッと、意味深に笑った。
「私はそんなことしなくとも……」
そう言って、腕を体の前に持ってきて
「一瞬でっ……すべてをチリと化すことができる!」
パチンッという音を立てて、指を鳴らした。
それと同時に、白虎と自分が立っている以外の足場が、白虎が今まで鳴虎衝壊波で破壊して残った足場の柱も含め、一瞬でチリと化した。
「「「「!!」」」」
それを見ていた、蔵馬以外の人物……特に白虎は、驚きの表情を見せた。
「風化の術」
瑠璃覇はそう言いながら、勝ち誇った笑みを白虎に見せる。
「風化の術?」
「なんじゃそりゃ?」
けど、当然瑠璃覇の戦いを今まで見たことがなかった幽助と桑原は、よくわかってない様子だった。
「風化の術とは、文字通り、物を風化させる術なんだ。生き物以外なら、岩でも鉄でも、なんでも…。瑠璃覇の手にかかれば、この城は容易く崩れ落ちるだろう」
「んげっ!マジかよ…」
「あいつ、けっこーえげつねー技使うんだな」
蔵馬から説明をされると、幽助と桑原は、顔を青くしたり引いたりしていた。
「だが、あれが奴の力のすべてではあるまい。極限なまでに、力をおさえてやがるな」
「ああ…」
「更に言えば、奴は本気ではなかった。今までの攻撃や行動はすべて、風化の術とやらを発動させるまでの、遊びだったというわけか」
「まあな。瑠璃覇は、相手の力量を瞬時に見極め、相手のレベルに合わせて使う技を選ぶ。風化の術を使わなくとも勝てただろうが、今回は敢えて使ったんだろう。その証拠に、裂空斬を一番最初に放った時、白虎にも、白虎の足場にもあてなかった。それに、瑠璃覇の力なら、いちいち技なんか使わなくても、風で白虎を持ち上げて、そのまま濃獄酸の中に落とせばいいだけだからな」
「つまり、奴にとって白虎は、小手先程度の技すら必要なかった相手だったと…。そういうことか?」
「そうだ」
飛影と蔵馬の会話を聞き、改めて瑠璃覇の強さを知った幽助と桑原は、瑠璃覇を凝視した。
「さあ、もう貴様に跳び移れる場所はないぞ。観念するんだな」
「うぬぬぬぬぬ…」
「身のほどをわきまえろ、三下。貴様が私に勝とうなど、所詮無謀なんだ」
「なんだと!?」
「貴様の敗北は、私が貴様の相手になった時点で、すでに決まっていたんだよ」
瑠璃覇は白虎を見下すように見ると宙に飛び、自分が乗っていた足場も崩す。まるで、白虎のすべての退路を断つように…。
「ほざけ!!ここからでも、オレの鳴虎衝壊波で、貴様などコナゴナに…」
「まだ戯れ言を…」
白虎の強がりに、瑠璃覇は忌ま忌ましそうに表情を歪める。
「貴様の遠吠えは聞きあきた。今……楽にしてやる」
目を細め、鋭く睨むと、瑠璃覇は手を後ろへ引いた。
「裂空斬!!」
そして、勢いよく前に手を出すと同時に、大きな風の刃を白虎に向けて放った。
しかし、それは白虎には当たらず、白虎の足場を支えている柱に当たった。
ななめに切れたそこは支えを失い、あっという間に崩れ落ちる。
「くそっ」
当然、その足場に立っていた白虎も落ちていくが、濃獄酸の中に落ちたらひとたまりもないことは、自分が一番よくわかってるので、なんとか落ちないようにしようと、まだ残っている柱をとっさにつかんだ。
「!!」
だが、つかんだ途端に柱は崩れた。瑠璃覇は、そこにも風化の術をかけていたのだ。
「あああああああっ!!!!!」
もう、なす術もなく、ただ落ちるしか選択肢がない白虎は叫んだ。
それを見ていた蔵馬と飛影は冷静なままだったが、幽助と桑原は、冷や汗をかき、口を大きくあけていた。
「ぎゃああ」
そして、あっという間に濃獄酸の中に落ちてしまい、そのまま下へ沈んでいった。
「わかったか、桑原」
白虎が濃獄酸に落ちると、瑠璃覇はいきなり桑原に話しかける。
急に話しかけられたので、桑原は瑠璃覇の方へ顔を向けた。
「力や技を、ただ相手にぶつければいいってものじゃない。周りをよく観察して、利用するんだ」
背を向けていた瑠璃覇は、しゃべりながら4人の方へ顔を向ける。
「確かに……白虎自身には、一度も攻撃してなかったな、瑠璃覇の奴」
相手に攻撃をあてずに、あっさりと倒してしまったので、幽助は感心していた。
「それより、足場がすべてなくなってしまったぞ。一体どうする気だ?」
「それについては、心配いりませんよ」
足場がなくては、いくら優れたジャンプ力をもってる飛影でも、反対側に渡ることはできないので、悩んでいると、蔵馬は余裕の表情で笑っていた。
蔵馬がそう言うと、瑠璃覇は蔵馬達の方へ手を向け、4人の周りに竜巻を発生させた。
蔵馬達を包みこんだ竜巻は、その場から消えると、今度は反対側の出入口の前に発生し、竜巻が現れると同時に蔵馬達が現れた。
「うおおおおお!!なんだこれ?さっきまで向こうにいたはずなのに、竜巻が現れたと思ったら、いきなり反対側に渡ったぞ!!」
この体験は初めての幽助は、一瞬で反対側に移動したことで興奮していた。
「風を周りに発生させて、一瞬にして別の場所に行くことができる。瑠璃覇の移動術です」
「マジかよ?すっげぇえ!!」
蔵馬が説明すると幽助はますます興奮し、二人が話していると、瑠璃覇が4人のもとへ飛んできた。
「おお、瑠璃覇。やったじゃねえか!」
「…まあな」
幽助は興奮しながら喜んでいたが、瑠璃覇の反応は冷めていた。
「瑠璃覇!」
けど、幽助は大して気にしていない様子で、右手をあげて瑠璃覇に近づけた。
「……なんのマネだ?」
「なんのって……冷めてんな~。とりあえず、右手出せよ」
「?」
意味がわからず、幽助に言われるままに右手を出した。
パァン
「!」
すると、幽助は自分の右手を瑠璃覇の右手に合わせ、ハイタッチをした。
「……っ…お前……いきなり何をする…」
「何って……。勝利を喜ぶためのハイタッチだぜ」
「お前……自分のバカ力を考えろ」
幽助に結構勢いよくタッチされたので、瑠璃覇の手の平は若干赤くなっていた。
ジンジンとした痛みが手の平に広がり、その痛みで眉間にしわをよせて、どこか不機嫌そうに顔を歪めていた。
「大体、勝利を喜ぶだと?理解に苦しむな。他人の勝利を喜んでどうする?自分の脅威となるかもしれないのに…」
「? 別におかしいことねーだろ。仲間の勝利を喜ぶのはあたり前じゃねーか」
「!?」
しかし幽助は、そんな瑠璃覇の表情も疑問も、大して気にすることなく、あたり前のように言った。
あたり前に言った幽助だが、それが瑠璃覇にとっては、とても衝撃的なことだったのだ。
「………お前は……やはりバカだな」
「へ?」
「バカの上に大がつく。大バカの大将だな」
「んなぁ!!」
幽助に悪態をつく瑠璃覇だが、その顔はほのかに赤くなっていることを、蔵馬は見逃さなかった。
「まあとにかく、これで残りは二匹だ!!」
なかなかに幸先いい感じなので、幽助は喜び、一行はその先へと進んでいった。
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