第十四話 潜入、妖魔街
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瑠璃覇が、蔵馬の通う盟王学園に転校してからしばらく経った。
「(つまらん…)」
今は授業中なのだが、瑠璃覇は頬杖をつきながら、ぼんやりとした顔で黒板を見ていた。
「(指令がないから暴れられんし、あったとしても、メインで戦うのは幽助の上に、敵はザコしかいないし、人間界だから全力で暴れられないし…。なんか鬱憤がたまる)」
選考会以来、何事もなく平和であったが、それは逆に、瑠璃覇の力をもてあまし、退屈させていた。
「(しかも、蔵馬は霊界に呼ばれて、今日は欠席だし…。退屈なことこの上ない)」
更には、蔵馬は所用で霊界に行ってしまってるため、唯一の癒しと学校に来る理由がいないので、いつもよりも退屈そうだった。
「(まったく…。何か、刺激的でおもしろいことはないものか…)」
そう思いながら、何気なく窓の方へと顔を向ける。
「!!!!」
すると、そこにはぼたんがオールにまたがってこちらを見ていたので、瑠璃覇は思わず、席を立ちあがった。
「ん?どうした、銀。急に立ちあがって。具合でも悪いのか?」
しかも、今は授業中だったので、突然立ちあがった瑠璃覇を見て、周りの生徒はざわつき、先生は何事かと問いだした。
「え?ええ…まあ……。あの…保健室、行っていいですか?」
前を向いて教師と話しながら、瑠璃覇は外で風を巻きおこし、ぼたんを屋上まで飛ばした。
そのことでぼたんは叫び声をあげるが、誰一人として気づいていなかった。
「ん?ああ、構わんぞ。おい、保健委員、付き添ってやれ」
「いえ、いいです。一人で行けますから」
瑠璃覇はそれを断ると、静かに退室していき、廊下に出て教室の扉を閉めると、すごい速さで屋上へと向かっていった。
第十四話 潜入、妖魔街
瑠璃覇は屋上の扉を開けると、その先にいるぼたんのところまで歩いていく。
「もぉ~~~~~。いきなり何すんのさ?瑠璃覇ちゃん」
瑠璃覇が来るなり、ぼたんが口にしたのは、瑠璃覇に対する文句だった。
「それはこちらのセリフだ。いきなり何してるんだ?おまえは。あんな目立つ登場の仕方をして、誰かに見つかったらどうする気だ?」
「それどころじゃないんだってば!急を要するものなんだよ」
「急?」
ぼたんは、先程のことを弁明することなく、自分の用件を伝えようとする。
「実はね、幽助と瑠璃覇ちゃんに、指令が出たんだよ」
「指令?」
指令という単語が出ると、瑠璃覇は過剰な反応を示す。
「そう!実はね、妖魔街が霊界に、人間界への移住権を要求してきたんだよ」
「妖魔街の奴らが?」
「うん。それでそいつらは、人間界との境にはっている結界を解けって言ってきたんだよ。そして、魔回虫を数千匹人間界に放したらしいんだ。その魔回虫を全滅させるには、虫笛を奪って壊さなければならないんだ。結界を解けば、笛を渡すとか言っているけど、結界を解いたら最後だからね」
「で、その妖魔街に行って、四聖獣を倒し、虫笛を奪って破壊しろと?」
「そーゆーこと。すでに幽助は、桑原くんと一緒に妖魔街に向かってる。瑠璃覇ちゃんも、早く行って合流しとくれ!」
「まったく…」
瑠璃覇はぼたんから指令の内容を聞くと軽くため息をつき、妖魔街へ行く方法を聞くと、なんだかんだ言いながらも、周りに風を発生させ、妖魔街に行くために、そこから移動した。
それから3秒後、瑠璃覇は、魔界の妖魔街へと続く扉がある場所にたどり着いた。
「ここか…」
そこは、幽助と桑原も通った、妖魔街へ続く扉がある場所。
瑠璃覇は目の前にある建物の扉を開けて、中に入ると、下へ続く階段を降りていく。
階段を降りると、ぼたんに言われた通りに床をたたいて、隠し扉の在り処を探る。
何回かたたくと、床の一部が開いたので、そこを持ちあげた。
持ち上げると底の見えない穴が広がっており、そこからは、不気味な魔界の気がもれてきていた。普通の人間であれば躊躇し、そこから去るところだが、瑠璃覇はなんの躊躇もなく、穴の中に飛びこんだ。
その数秒後、瑠璃覇は魔界にたどりついた。
目の前には、四聖獣のアジトの迷宮城があり、場所を確認すると、瑠璃覇は城を目指して歩きだした。
「ここが入口か。やけに長い、トンネルみてーな門だな」
一方、瑠璃覇が目指している城の門の前には、幽助と桑原だけでなく、蔵馬と飛影までいた。
「虎穴に入らずんば虎児をえーず。前進あるのみぁーーー!!」
頭上は髑髏のように形づくられており、向こう側が見えず、いかにも不気味で何かありそうだというのに、幽助は何も考えず、ただひたすら進みだした。
「!!」
しばらく進んで行くと、トンネルの出口が見えた。
それと同時に、目の前に、見たことのない形の生物が宙に浮かんでいるのを目にした。
「ようこそ、迷宮城へ。この城に入らんとする者達は、裏切りの門の審判を受けなければなりません」
それは、大きなひとつの目玉にコウモリのような羽根が生え、下からは細長い触手のようなものが何本かついてるもので、絶対に人間界にはいない、どう見ても魔界の生物だった。
「審判だぁーー!?」
幽助と桑原の二人は、妖怪の言ってる意味がわからず、オウム返しで叫ぶ。
しかし、妖怪は何も答えず、壁の方へ飛んでいき、そこにあるレバーを、触手を使って下ろした。
「なにィ!?天井が降りてきた!!」
妖怪がレバーを下ろすと、天井が幽助達に向かって降りてくる。
「くっ!!」
「うおお!!」
つぶされるわけにはいかないので、幽助達は天井を支えた。
「その門は大変敏感で、頭がいいのです。性格は悪いですが。支えている者の力を読み取り、ギリギリで耐え得る重さで重圧をかけます。ひとりでも力を抜けば、ペシャンといきますよ、ペシャンとね」
「ううっ。くそっ……」
「ひとりが裏切って逃げようとすれば、残りの者は全てつぶされますし、お互いを信頼し合いながら、力尽きて、全員つぶれて死ぬのもいいでしょう。
裏切り者だけが、この城に入る資格があるのです。選択は、あなた方の自由です」
「く、くそったれが……!!ふざけやがって」
「………… (………あのレバーを、戻さねェと………!!)」
幽助は、妖怪の後ろにあるレバーを、なんとか戻すことができればと考えていた。
「ひ、飛影!!やつのそばにある、あのレバーを上げてくれ!この中で一番すばやいのは、飛影、おめーだ!!」
「……!!」
まさか、かつては敵として戦った自分に頼んでくるとは思わず、飛影は驚きの目を幽助に向けた。
「バカヤロ、浦飯!!血迷ったのか!?オマエが行け!!浦飯。どーもオレは、そいついけ好かん!!」
しかし、幽助の隣にいた桑原は、そのことを猛反対する。
「…………そこのつぶれた顔の言う通りだぜ」
「つぶ…だれがだ、コラァ!!」
「オレなんかを信用していいのか?」
「オレが全霊気を放出すれば、短い間なら、オメーの分もささえられる。
いってくれ、飛影!!
まかせたぜ!!」
「くっ」
幽助の、疑いを微塵も見せないまっすぐな目を見ると、飛影は天井から手をはなして駆け出した。
「!」
そして、一瞬のうちに壁まで行き、レバーに手をかける。
飛影がいなくなったことで、飛影の分の重さが三人の手にかかった。
「うおおおお」
幽助は全霊気を放出し、飛影の分も天井をささえる。
「………」
「ど、どうした。早くレバーを上げろォオ」
けど、レバーがあるところまで行ったにも関わらず、飛影は、レバーを上げようとはしなかった。
「まったく……。バカな奴らだな」
「「「「「!!!!!」」」」」
そこへ、後ろ…トンネルの入口の方から、声が聞こえてきた。
「ほんと…」
だが、後ろから声が聞こえたと思ったら、今度は飛影とトンネルの出口の間に、小さなつむじ風が巻き起こった。
「これはっ…」
それに思い当たる節がある蔵馬は目を見開き、その風を凝視する。
「あきれてものも言えないな」
「「「瑠璃覇(さん)!!!」」」
そこに現れたのは、先程妖魔街に着いた瑠璃覇だった。
「こんなもの、天井をささえずに、天井が完全に降りる前に、すばやくトンネルを通ればいいだけの話だろう。微妙な頭の良さだな」
遠くからでも話が聞こえていたようで、瑠璃覇は呆れながら、トンネルの方へ歩いていく。
「大体蔵馬、お前がついていながら何をやってるんだ?」
「説教はいいから、助けてくれないかな」
天井を支えながらなので、蔵馬は苦しそうに呼吸しながら、瑠璃覇に助けを求める。
「あなた、何者ですか?突然ここに現れるなんて…」
「それで?飛影とか言ったか。お前は、レバーをつかんだまま、何を固まっている」
瑠璃覇は妖怪を無視して、今度は飛影に話しかけた。
「私を無視するんじゃありません!」
無視されたことで、当然妖怪は怒るが、それすらもまったく気にせずに、瑠璃覇はなおも無視を決めこんだ。
「……なんだ?貴様…」
「別に…。誰でもいいだろう。それで、レバーを上げなくていいのか?三人が苦しんでるぞ」
しかし、そう言われても、飛影はまだ迷っているのか、レバーを上にあげなかった。
「なにも迷う必要はありませんよ、飛影殿。あなたは私に案内されるまま、彼等を置いて、朱雀様にあわれればよろしいのです。あなたほどの犯罪者なら、四聖獣の方々も、喜んで仲間に入れてくださるはずです」
「て、てめェ、こらチビ!!浦飯が信頼してまかせたのに、それを裏切る気か、コラ!!」
「…くっ。くくく」
桑原が叫ぶと、飛影はのどの奥で、怪しげに笑う。
「ほとほと甘いヤツラだぜ」
「「!!」」
「オレをなめるな!!」
「!!」
そう叫ぶと、飛影は剣を抜き、妖怪を縦に切った。
「ギェェエェ」
そのことで妖怪は断末魔の叫び声をあげ、飛影はレバーを上げた。
「!!
止まった!」
「ヤツらに言っておけ!!お前らこそ、オレの子分になるなら、命だけは許してやる。命ごいをするなら、今のうちだとな!!」
「ひぃぃぃぃいい」
飛影が宣戦布告をすると、妖怪はどこかへ飛び去っていった。
「大丈夫か、浦飯」
「血管ぶっちぎれるかと思ったぜ」
一方、幽助は二人分も天井を支えていたので、体がガタガタになっていた。
「助かったぜ飛影!!サンキュー」
飛影の前まで来ると、幽助は親指をあげてにかっと笑いながら、飛影にお礼を言う。
「ヒヤヒヤさせやがって。役者だな、オイ?性格がワリーのは、変わってねーみてーだな」
「……フン。別に、貴様らを助けたわけじゃない!!かんちがいするな。頭数がいた方が、ヤツらを倒しやすいのはオレも同じだからな」
笑いながら幽助に肩を組まれると、飛影は悪態をついた。
だが、悪態をつきながらも、飛影はどこか照れ顔だった。
「フッ…。彼流の礼のつもりなんだ。気にしないで」
そこへ、この中で飛影のことを一番よく知っている蔵馬が、すかさずフォローをいれる。
フォローされなくても、そのことがわかっているのか、幽助は笑顔のままだった。
「裏切りの門を突破したか…。飛影め、オレ達に命ごいをしろだと……」
時を同じくして、城の中では白虎が、先程飛影が言っていたことに腹を立てていた。
「ヤツらの始末は、この玄武にまかせてもらおう。すぐに五つの死体を、ここに持ってきてやる」
そこへ玄武が、幽助達を狩ることを宣言した。
その頃幽助達は、裏切りの門を突破したので、城の中へと入っていった。
「ところで瑠璃覇ぁ。お前、さっきはなんだって、高みの見物決めこんでたんだ?助けてくれてもよかったんじゃねーのか?」
「もし、どうしようもなくなったら、助ける気でいたさ。すぐに助けたら、お前達のためにならないだろ?私はコエンマの奴に、幽助のパートナーの他に、お前達を援護しつつ、少しでも成長できるよう見守るようにとも言われてるからな」
「おめェ、結構いい性格してるよな」
「お褒めにあずかり、光栄だね」
別にほめているわけではないのだが、瑠璃覇は特に反論することなく、幽助の言葉を受け取った。
「フン…。このオレを援護する…だと?なめやがって」
だが、飛影はそのことに対して不満があり、瑠璃覇を睨んだ。
瑠璃覇もまた、そう言われると飛影を睨む。
「貴様が何者なのかはわからんが、このオレを援護しようなど、笑止千万!そんな軟弱そうな見た目で、オレの面倒を見れるというのか?」
「その点については大丈夫ですよ、飛影」
「蔵馬」
飛影が文句を言っていると、そこへ蔵馬が割って入ってきた。
「瑠璃覇は、この中の誰よりも強い。あなたも聞いたことがあるでしょう?
あの……パープル・アイの名を…」
「何!?こいつが、あの伝説のパープル・アイだと!?」
「そう。だから、心配はいらないでしょう?」
蔵馬がにこっと笑い、瑠璃覇の正体を知ると何も言えなくなり、信じられないものを見るような目で、瑠璃覇を凝視した。
「お…おいおい、なんだよ?パープル・アイってよ」
そこへ、わけがわからない状態の桑原が、三人の間に入ってきた。
「瑠璃覇のことですよ」
「そうそう。伝説の極悪盗賊とか言われてて、とにかくスンゲーつえーんだってさ」
「何!?」
二人の口から瑠璃覇のことを聞かされ、驚いた桑原は、瑠璃覇を凝視する。その視線に気づいた瑠璃覇は、桑原を見つめ返した。
そして瑠璃覇を見ると、桑原は体をブルブルと震わせた。
「すっげぇええええ!!」
「!!?」
「伝説って……それってつまり…すっごい強いってことだろ!?そんなに強いなんてすっげェじゃねーか!!」
体を震わせていたかと思うと、突然この前の幽助と同じことを叫ぶ。
瑠璃覇は、幽助が言っていたことと同じことを桑原の口から聞くと、口をあけて呆然とした。
「なあなあ、今度また特訓してくれよ」
そして、これまた幽助と同じように、目をキラキラと輝かせて、桑原は瑠璃覇に頼みこむ。
「おい、桑原。お前、瑠璃覇に特訓してもらったのか?ずりーぞ」
「おめーは幻海のばあさんとこで、修業してたろーが」
「それはそれ、これはこれなんだよ!」
そこへ、今度は幽助が割って入ってきて、桑原と軽く言い争いを始めた。
その様子を見て、瑠璃覇は目を丸くしていた。
「!」
二人を見ていると、後ろからいきなり剣が振り下ろされるが、瑠璃覇はそれを、指一本で受け止める。
「さすがは、あのパープル・アイだな。オレの攻撃を、指一本で受け止めるとはな…」
「……なんのマネだ?」
「今は、状況が状況だからやめておく。だが、いずれこのオレと戦ってもらう。覚悟しておくんだな」
剣を振り下ろしたのは飛影で、宣戦布告をされると、瑠璃覇はニヤッと笑う。
「それには、せめて今の20倍は強くなってもらわないとな。でないと、張り合いがない」
「上等だぜ」
そのことを聞くと、今度は飛影がニヤッと笑った。
「テメッ、飛影!何ぬけがけしてんだコラ!瑠璃覇といずれ戦うのは、オレだっつーの!」
「いいや、このオレ様だぜ!」
すると、そこへ聞きずてならないとばかりに、幽助と桑原が割りこんできた。
そんな三人を見て、瑠璃覇は軽く笑みを浮かべており、更に、そんな瑠璃覇を見た蔵馬も、笑みを浮かべていた。
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