第十話 乱童の正体
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幽助が戻ってきたことで、第一回目の試合が終わった。
「早速準決勝に入る!!
第一試合、風丸VS浦飯!!」
そして、幻海の口から告げられたのは、幽助にとっては最悪のものだった。
「なに!?」
「おーー。待ちくたびれたぜ!!」
今戦って戻ってきたばかりだというのに、連戦することになり、幽助は驚く。
「オレは、たった今、戦ったばかりじゃねーか!!」
「順番は全てクジで決めとることじゃ!これも運命」
「~~~~」
「さあ、とっとと場所を移るよ」
幻海の言葉に幽助は何も言えなくなり、幻海は幽助を無視するように、扉を開けた。
第十話 乱童の正体
「ひぃ、はぁ」
闘技場の外に出て、準決勝を行う場所へ歩く候補者達。
他の者達は普通に歩いていたが、幽助だけは、戦った直後…しかも苦戦を強いられたからか、一人息をきらしながら歩いていた。
「くそ〜〜。霊丸はうっちまったし、体はキズだらけだし、最悪の状態で戦わなきゃなんねェぞ」
「そうだよ。それに、次の相手が、乱童かもしれない…!」
「!」
幽助はぼたんに言われ、ハッとなった。
「(そうか……オレと瑠璃覇と桑原をのぞけば、あとふたりしかいねーんだ)」
そのことに気がついた幽助は、冷や汗をかきながら、自分の前を歩く風丸と少林を見た。
「まあ、もしかりに、お前が乱童に殺られてしまっても、その時は私が乱童を倒すから安心しろ」
深刻な顔をしていると、横から瑠璃覇が割って入ってきた。
「安心できるか!」
「…お前は、己の力量と私の力量がわかってないのか?それに今の状況も…。あきらかに私の方が上だろうが…」
「んなこたァ、ハナっからわかってるよ」
「じゃあ何故…」
全てを理解した上で言ったことなので、瑠璃覇は疑問に思った。
「男が女一人に戦わせておいて、後ろでのんきに見物…なんてわけにはいかねーだろーが。男は、体をはってこそ男ってもんだぜ。だから、たとえ力量はお前の方が上でも、そんなの関係ねーよ」
「あ、そう…」
「だから瑠璃覇…。お前のことも、いざって時は…
オレが守ってやるぜ」
その言葉に瑠璃覇は驚き、目を丸くしながら、ジッ…と幽助を見た。
まさか、自分よりも弱い人間が……他人でしかない幽助が、そんなことを言うなど信じられなかったからだ。
瑠璃覇は、目を大きく見開いて幽助を見た後、拳を軽くにぎると、二人の少し前に早歩きで進んでいく。
「…お前は…ほんとにバカだな」
「なっ…」
だが、そう言いながらも、口もとは軽く弧を描いていた。
「さあ、着いたぞ」
三人が話していると、準決勝を行う場所にたどり着いたようで、幻海は前を向きながら、後ろの者達に声をかける。
「湿地帯か……!!」
そこは、やせ細った短い草と、はっぱがついてない、同じくやせ細った背の低い木が立っており、ところどころに沼があり、あとはせいぜい周りに森があるだけの、どこかじめじめした場所だった。
「ここは昔の戦場跡。この山で、最も霊的な力場の強い場所じゃ。おまえ達の持つ霊力を生かして戦うのに、一番ふさわしい所だよ」
「なるほど、確かにな。ぐんぐん力がみなぎってくる感じだぜ」
「あんたはどうだい?」
「………だめだ…!!確かに力は戻ってきてるが、霊丸を撃てる程の霊気が残ってねェ!」
隣にいる風丸は霊力がみなぎっているみたいだが、対して幽助は、力は戻っているのだが、霊丸が撃てるくらいの霊気は戻っていなかった。
「(もしも相手が乱童で、まだ本当の力さえ見せてないのなら………
勝ち目がねェ……!!)」
あきらかに自分の方が不利なので、どうしたものかと考えていた。
「はじめ!!」
そう考えている間にも、幻海の口からは、試合開始の合図が出た。
「おまえも運が悪い奴だな。同情するぜ。しかし、勝負の世界に、゙流れ゙や゙ツギは欠かせない要素だ。運勢も、霊格が高ければ呼びよせることができるのさ」
あまり余裕のない幽助に対して、風丸は自信満々だった。
幽助は、カウンターの一発にかけるしかチャンスはないと思い、緊張しながら、拳を強くにぎる。
「霊気をとばす技を使える奴が、オレ以外にいるのはおどろいたが…もう、その力さえ残ってないようだな。
今の貴様を倒すのは、素手で十分よ!!」
まっすぐに向かってくる風丸の拳を避けようと足を動かすと、ぬかるんだ地面に足をとられてしまう。
「う…っ!!足がぬかるむ」
そのことで動きが止まってしまい、そのすきをついて、風丸は拳の連続攻撃を繰り出した。
幽助は殴り飛ばされるが、それでもまだ意識があり、決着がついていないので、風丸は幽助のもとに歩み寄ってきた。
「だめだ!!反撃する力もよける力も残ってねェ!!」
「(どうした、幽助。私を守ると言ったお前は、もうこれで終わりか!?)」
観戦していた桑原は心配そうにし、瑠璃覇は厳しい目を向ける。
「今すぐ楽にしてやる!!」
「今だ!!」
風丸がとどめをさすために殴りかかろうとすると、相手が近づいてくるのを待ってた幽助が、急に殴りかかってきた。
「くっ」
「はずされた!!」
不意をつかれた攻撃で、風丸はそれをなんとかぎりぎりのところで避ける。
けど、顔に拳があたりはしなかったものの、少しだけかすってしまい、左の頬が、まるで鋭利な刃物で斬られたかのように斬れ、血が流れ出た。
そのことで、危険だと判断した風丸は後ろに飛び退いた。
「…………まだ、そんなパンチ力が残ってるのか。うかつに近寄れんな。
ならばオレも、奥の手を出すか」
「手裏剣……?」
風丸は懐から手裏剣を出すと、幽助に投げつける。
「なめんなよ。いくらボロボロだってな…
よけるだけなら、わけねェぜ」
幽助はあっさりと、手裏剣を避ける。
しかし、風丸は余裕でうで組みをして立っていた。
「どうした?それだけか。のん気に腕組みなんかしやがって…」
手裏剣を避けると、風丸のもとへ歩み寄ろうとした。
しかし、後ろから音がしたので見てみると、避けたはずの手裏剣が、なんと後ろから向かってきたのだ。
「なにィ!!?」
返ってきた手裏剣は、幽助の手足を傷つける。
「手裏剣が、生きてるみてーに、オレに向かってくる!?」
普通に考えたらありえないことなので、さすがに幽助も、これには驚いた。
手裏剣は空中でぐるぐるとまわって方向変換すると、再び幽助に向かってきて、幽助の手足を切りさいた。
「うわっ」
「その手裏剣は、お前の霊気に反応し、ひきよせられている。つまり、お前に命中するまで追い続けるのだ!!」
「くっ」
幽助は木の前に立ち、ギリギリのところまで引き寄せると、自分にあたる前に素早く避けた。
自分ではなく、木に命中させてしまおうという作戦だったのだ。
しかし、木にあたると爆発してしまい、幽助はわめき声をあげる。
「その手裏剣には、衝撃に反応する火薬がふくまれている。今のようにギリギリでよけても、ダメージはさけられんぞ。万策つきたな!!」
命中するまで追いかける上、あたったらあたったで爆発してしまう。もう勝ちが自分に決まったかのように、風丸は余裕の笑みを浮かべていた。
今のでかなりのダメージをくらってしまった幽助は、体がふらふらになり、あともう一度くらったら立つことができないことも、勝つチャンスが残ってないこともわかっていた。
けど、もし乱童だとしたら、意地でもこのままただで負けるわけにはいかない…とも思っていた。
そう思った幽助は、桑原を見た。
しゃくではあるが、桑原にまかせようと思ったのだ。
そう思った幽助は、風丸のもとへまっすぐに走っていく。
「風丸の方へ、一直線に向かっていくぞ!?」
「まさかあいつ…」
そのまさかであった。
「フッ……玉砕覚悟か………!?オレに霊気砲があることを忘れたか」
幽助は玉砕覚悟で、風丸を倒そうと思ったのである。
「ひとりじゃくたばらねー!!てめーも道連れだァー!!」
「バカめ、返り討ちだ!!くらえ!!」
風丸は幽助にとどめをさすため、霊気砲を撃とうとする。
だがその時、突然幽助の姿が消えてなくなってしまった。
「!!? なにィ!?消えた!?そ……そんなバカな!?」
そのせいで風丸は驚き、動きが止まった。
「はっ!!」
その間にも、目の前からは手裏剣がむかってくる。
「しまっ………」
しまったと思ったが、もうすでに遅かった。
向かってきた手裏剣は風丸にあたり、爆発してしまったのだ。
「い…一体、奴はどこへ…」
相当なダメージをくらい、風丸は地面に仰向けに倒れる。
「いねェ。本当にいねェぞ。浦飯が消えちまった!!」
桑原達が二人の元へやって来て、幽助を探してみると、本当に幽助の姿はなかった。
だが、その時水から泡が出る音がした。
「底なし沼!?」
見てみると、目の前の沼からは手が出ていたので、おそらく幽助だろうと、桑原がひっぱり出した。
「こんなとこにかくれてやがったのか!!」
「かくれたんじゃねェ…。ゲホッ。はまったんだ」
そこから出てきたのは、予想通り幽助だった。
「………しかし、もしかしてそのおかげで…………オレが勝ったのか…!?」
「突然視界から消えた驚きで、霊気砲を撃つタイミングがずれたね。まさに、偶然の勝利。ツキを味方にしたのは、浦飯の方だったわけじゃな」
「し、信じ…ら…れ…ん」
「オレだって同じだ!」
「でも、どうやら奴は乱童じゃなかったみたいだね。気を失ってるあいつから、妖気が感じられない」
「!
じゃあ、残ったのは…………」
「…………」
幽助とぼたんの会話に耳をかたむけながら、瑠璃覇は少林を見た。
「準決勝、第2試合!!」
「(フッ。楽勝だな)」
何も知らない桑原は、少林を相手に、絶対に勝てると信じて疑わなかった。
「残ったのはただひとり」
「それじゃ、あいつが………。
おい、本当かよ?瑠璃覇」
「ああ…」
最初から、乱童が誰なのかわかっていた瑠璃覇に確認すると、肯定の言葉が返ってきたので、幽助は口をあけたまま驚く。
すぐそばでは、いよいよ桑原と少林の戦いが始まろうとしており、これから起こることを予兆するかのように、空は暗雲が広がっていた。
「(さっさと、こいつかたづけて、浦飯をぶっ倒す!)」
「ちょっと待った。おい、桑原!!」
もう試合が始まろうとしていのに、幽助は焦って、桑原に声をかける。
「ちょっと!幽助、詳しい事まで教えちゃだめだよ。あくまで、ないしょで捜査してんだからね」
「あ、そか」
幽助は、少林が乱童という凶悪な妖怪かもしれないので、桑原に知らせようとしたが、ぼたんに止められる。
「なんだ?励ましのお言葉ならいらねーぞ」
「あ、だからな。相手が悪い。すげーやばい奴かも知れねーんだ。悪いこた言わねー。リタイヤしとけ!」
「何言ってやがる。テメーの方が、すぐに死にそーじゃねーか。悪知恵と運だけで勝ちやがって」
「ぐ」
「だまって待ってろ。あいつの次は、すぐにテメーだ、クソボケ」
真相を話せなくなったので遠回しに言うが、桑原は聞く耳もたずだった。
それどころか、真実と嫌味を言って、幽助を黙らせてしまう。
「わかったよ。ヘッ、ぶっ殺されちまえ」
「生命保険入っとけ。バーカ」
「もー、ケンカしてる場合じゃないだろ。ふたりとも!」
そして、結局はケンカになってしまい、瑠璃覇とぼたんは、二人を見て呆れていた。
「お願いします」
「はじめ!!」
少林があいさつをすると、試合は始められた。
「先手必勝、いくぜ!!」
桑原は先に動き、少林を殴り飛ばした。
「………あれ?」
意外にもあっさりと殴られたので、幽助は拍子抜けしてしまう。
「いててて………。すごいパンチ力だ。データ以上だなぁ」
「おいおい、今のは、小手調べだぜ。大丈夫かよ」
「なら私は、本気を出しますよ…」
一方で、桑原も同じく拍子抜けしていた。
少林は殴られたことで反撃をし、何度か桑原を殴ろうとするが、全部避けられ、またしても桑原にあっさりと殴られてしまう。
「力の差が歴然だな、オイ」
「つ~~~~~」
殴られた頭を押さえながら、うめき声をあげる少林を見て、幽助とぼたんは唖然とする。
「おい……。もしかして、あいつ違うんじゃねーか。じゃなきゃ、乱童ってうわさだけで、本当は強くねーとか。知らねーうちにだれかがやっつけちゃってたとか」
「う~~ん」
「おい瑠璃覇、本当にあいつなのか」
「だからそうだと言ってる」
再度確認すれば、先程と同じ答えが返ってきたので、幽助の頭はますますこんがらがった。
「よーし。それなら、必殺技を出しますよ」
「ん!?少林の体の霊気が変化してるよ」
少林は霊気を変化させると、手の平にひとつずつ炎を生み出す。
「げ!!炎!?」
「む!!あの技は」
幻海はこの技に見覚えがあるらしく、目を見張った。
「火掌発破拳!!
とうっっ」
少林は手の中に生み出した炎を、桑原に投げつける。それは桑原の脇腹をかすり、桑原は慌てた。
「火を見てびびってやがる。動きがにぶくなった!!ケモノかてめーは。よく見ろ」
「飛び道具出しやがったな。なら、こっちもエモノを出すぜ!
落合流首位打者剣!!」
だが桑原は、自分も負けじと霊剣を出して構えると、投げてきたもうひとつの炎を、野球のように打ち返して、少林にあてた。
「おぉ、火球を打ち返しやがったァ」
「(剣で、野球のように火球を打ち返すとは…。型破りなやつだな)」
「ふっ。てめーの球は、バッティング・センターの120km/hキロより遅い!!」
今ので幽助は感心し、瑠璃覇は、まさか剣をあんな使い方をするとは思わず、目を丸くしており、桑原は自信満々になった。
「桑原の野郎、段々、確実に強くなってやがるぜ!!相手がたとえ乱童だとしても、あれなら勝てるぜ!!きっと」
桑原の反撃に、うれしそうに興奮する幽助に、ぼたんはそうかも知れない…と思った。
「すごい!!よけずに逆に打ち返すなんて!!防御と攻撃を、一体にする闘技能力。すばらしい!!」
「へっ。おせじ言っても、ギブアップするまで許さねーぜ!!」
「ならば、これはどうかな?」
まさに形勢逆転だが、少林はまったく焦りを見せておらず、今度は妙な呪文を唱え始める。
「…………なんだ?念仏なんざ、となえやがって。覚悟決めたのか!?」
けど、桑原は少林が何をやっているのか、何がなんだかわけがわからなかった。
「あの呪術も………そして」
「「え?」」
「火掌発破拳もそうじゃ………。昔、名の通った呪詛師と武闘家が、半生をかけてあみ出した秘技じゃ。妖怪に殺され、奥義の体得書を奪われたと聞く」
「!!
じゃあ、やはりあいつが」
幻海の口から出たのは、少林が乱童であると、決定づけるものであった。
「こねーなら、こっちからいくぜ!!」
一方で桑原は、少林が念仏を唱えたまま動かなくなったので、攻撃をしようと、少林のもとへ走っていく。
「な!!?」
だが、少林の前に来ると、驚きのあまり目を見開いた。
「なにィ!?」
少林がいきなりでかくなったのだ。
巨大化した少林に、足で踏みつぶされそうになり、桑原は慌てて避ける。
「きっきっ、巨大化しやがった。
うっ!?いつのまに、こんなでけェ草が……」
少林が巨大化したことにもだが、よく見てみると、自分の背丈かそれ以上に大きな草がまわりに生え、更には巨大なイモムシまで出てきたので、桑原の頭は混乱した。
「こ、こんな。ま、まさか、オ、オレが」
巨大な草とイモムシを見て、ようやく現状を理解すると、急に少林につかまえられる。
「うあっ」
「その通り。ぼくが、大きくなったんじゃないよ。一寸法師くん」
体の大きさが変わり、桑原をとらえた少林は、先程とは違い、急に強気になった。
「く、桑原が、一寸法師みてーに縮んじまったー!!
あれじゃ、勝ち目がねェ。桑原!!もうよせ。ギブアップしろ!!」
「え~~~!?それじゃ、ぼくの気がすまないよ。もう少し、彼に痛い目にあってもらわないとね」
そう言って、桑原をつかむ手に力をいれると、桑原は苦しそうな声をあげる。
「さぁて、まずは左腕からいこうかな」
「桑原ーー!!」
そして、少林は桑原の左手に自分の指をかけると、徐々に力を入れていく。
「や、やめ…あぁあ」
桑原はこれから起こることに恐怖し、顔が青ざめ、冷や汗をかき、体が震える。
しかし、そんな桑原の制止の声も無視し、無情にも少林は、桑原の左腕を折った。
「あぁ、あっ、あ」
「あはは。マッチ棒みたいにもろいや。思いっきり両手で握ったらどうなるかな~~」
「おい、バァサン。もう、勝負あったろーがよ!!」
「うむ。それまで!!勝者、少林」
「あははは。せーの」
楽しそうに笑いながら、残酷なことを思いつく少林に、幽助は慌てて止めようとする。
幽助に言われると、幻海は少林の勝利を告げるが、少林は勝利したにもかかわらず、桑原を両手で強くにぎりつぶした。
「桑原ーー!!
てめェーー!!」
その非道っぷりに幽助が駆けてくると、少林はニヤっと笑う。
「それじゃ、返すよ。そーれ!!」
そして、ゴミを捨てるみたいに投げ飛ばした。
「あはははは。ゴミ人形みたいにとんでった。あーー、すっとしたーー」
「くっ、桑原!!」
桑原を投げると、愉快そうに笑い飛ばした。
幽助とぼたんは、どこに行ったかわからない桑原を慌てて探し出す。
「さて、どうなったか、元の大きさに戻してみよう」
少林が解呪の呪文を唱え、元の大きさに戻った桑原は、白眼をむいて気を失い、あちこちに痣ができており、腕がありえない方向にまがっていた。
「桑原……!!」
「………両腕の骨がコナゴナになってる。左足とアバラも…………。両腕は…元通りには戻らないかも…」
ぼたんが症状を見るが、それはあまりにもむごく、悲惨な状態だった。
「前からこの技使ってみたかったけど、念をふきこむのに時間がかかるなぁ。
その間スキだらけになるし、こっちの攻撃力が上がるわけじゃないし、あんまり実戦向きじゃないな。
その点、師範の霊光波動拳なら、極めれば、あとかたもなくふっとばせるんでしょ。
人間ぐらいならコナゴナにね」
「…………悪用すればな」
たとえ、とんでもない悪党であろうと奥義を渡すと言っていた幻海だが、あまりにも残酷な乱童を、気にくわなそうに睨んだ。
「ワクワクするなー。それがぼくの技になるなんて。早くためしてみたいなーーーー」
少林は、もうすでに勝ったつもりで、これからのことを想像して、胸を踊らせていた。
「こら、ねぼけてんじゃねーぞ」
そんな少林を見て、幽助は睨みながら立ち上がる。
「!?
………へェ。殺気混じりの霊気が、ぐんぐん上昇してる。すごい」
幽助の霊気を感じとった少林は、少しだけ冷や汗をかいた。
「乱童ーー!!てめェェ!!」
少林の、桑原に対するあまりにもむごい仕打ちに、幽助は怒りを燃やした。
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