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鳥(わたし)は籠から逃げ出した。
別に二度と戻らないわけじゃない。
ただ、今は一度だけ神威から離れたかっただけ。
【 だ っ て 記 憶 が 戻 っ て し ま っ た か ら 】
「……ごめんね、神威。
また戻ってくるよ………」
鳥は主人を覚えていればまた戻ってくる。
鳥は主人が好きだから、忘れられないから。
戻ってきても、その場にずっといても、“籠”という壁を使って想いを伝えない。
私もその鳥と同じだ。
“記憶”と言う壁を使って想いを伝えられないのだから。
臆病なんだ、私は。
だから籠から飛び出すということしか出来ない。
「休暇という形にしたけど…
どこに行けばいいんだろう…?」
先程、部屋から出てきて、少し離れた所で立ちすくむ。
ここにいたって、神威たちに見つかるだけで無駄って事は分かってる。
分かってるつもりが足が進まない。頭が働かない。
「……私はただ臆病なだけで、籠の中にいる鳥とは違うんだな…」
へたり、とその場に座り込む。
髪の毛がはらりと重力に沿って下に流れ落ちる。
《…夏海…》
頭で神威の声が流れる。
今までずっと神威の温もりを感じてきてた。
寒くて震えているとき、神威は傍にいてくれた。
私が独りのとき、神威は手を差し伸べてくれた。
………その優しさを…
「私なんかが受けたらダメなんだ…」
だって私は…
父さんと母さんを殺したヤツを原型がなくなるほどに…
夜兎の力を自分で止めることが出来ない…
どうしようもない…
【 バ ケ モ ノ な ん だ 】
そんな私を神威は嫌いになるだろう。
私のこの想いは捨てるしかない。
断ち切るしかないんだ…
考えていると涙が我慢出来ないと言わんばかりに溢れてくる。
拭っても拭っても出てくる涙。
仕方なく声を出さずに泣いていた時だった。
背後からコツコツと靴の音がした。
少ししてから靴の音は止まった。
まさかと思った。
「ねぇ、休暇ってどういうこと?」
神威に見つかった。
そりゃそうだ。
部屋から少し離れた所で座り込んでいるんだ、見つかるのも無理ない。
「そんな所に座り込んで何してるの?」
コツ、と神威は近付いてくる。
夜兎の血がざわつき始める。
ざわつきを必死に抑えつけているにも関わらず、神威は近付いてくる。
「ねぇ、聞いてる?」
肩に手が触れたとき、私は反射的にバシッと手を払った。
「イヤッ!触らないで!」
嫌な沈黙が流れる。
すぐにでもこの場から逃げ出したかった。
でも足が動かない。
「…何かあったの?」
私が手を払ったっというのに、神威は優しく問いかける。
─どうしてそんなに優しいの?
「…私が姫だって言ったら神威はどうする?」
神威に向かってポツリと言う。
私が顔を下げているから、神威の顔は見えない。
「…父さんと母さんを助けられなかったのは……私のせいだって言ったら?!」
神威の方を向いて顔を上げて言う。
神威は驚いた顔をしていた。
「なんでそのこと… まさか記憶が!」
「やっぱり… 神威、私のこと知ってたんだね」
生きる気力をなくしたように笑う。
笑う、というより、無理矢理笑うといった感じだろう。
「私、思い出したんだ。昔のこと…」
「夏海!」
いきなり名前を呼ばれたかと思ったら、神威に抱き締められた。
私はとっさのことで何が何だか分からなかった。
─逃げ出す前に捕まった─
⇒あとがき
別に二度と戻らないわけじゃない。
ただ、今は一度だけ神威から離れたかっただけ。
【 だ っ て 記 憶 が 戻 っ て し ま っ た か ら 】
「……ごめんね、神威。
また戻ってくるよ………」
鳥は主人を覚えていればまた戻ってくる。
鳥は主人が好きだから、忘れられないから。
戻ってきても、その場にずっといても、“籠”という壁を使って想いを伝えない。
私もその鳥と同じだ。
“記憶”と言う壁を使って想いを伝えられないのだから。
臆病なんだ、私は。
だから籠から飛び出すということしか出来ない。
「休暇という形にしたけど…
どこに行けばいいんだろう…?」
先程、部屋から出てきて、少し離れた所で立ちすくむ。
ここにいたって、神威たちに見つかるだけで無駄って事は分かってる。
分かってるつもりが足が進まない。頭が働かない。
「……私はただ臆病なだけで、籠の中にいる鳥とは違うんだな…」
へたり、とその場に座り込む。
髪の毛がはらりと重力に沿って下に流れ落ちる。
《…夏海…》
頭で神威の声が流れる。
今までずっと神威の温もりを感じてきてた。
寒くて震えているとき、神威は傍にいてくれた。
私が独りのとき、神威は手を差し伸べてくれた。
………その優しさを…
「私なんかが受けたらダメなんだ…」
だって私は…
父さんと母さんを殺したヤツを原型がなくなるほどに…
夜兎の力を自分で止めることが出来ない…
どうしようもない…
【 バ ケ モ ノ な ん だ 】
そんな私を神威は嫌いになるだろう。
私のこの想いは捨てるしかない。
断ち切るしかないんだ…
考えていると涙が我慢出来ないと言わんばかりに溢れてくる。
拭っても拭っても出てくる涙。
仕方なく声を出さずに泣いていた時だった。
背後からコツコツと靴の音がした。
少ししてから靴の音は止まった。
まさかと思った。
「ねぇ、休暇ってどういうこと?」
神威に見つかった。
そりゃそうだ。
部屋から少し離れた所で座り込んでいるんだ、見つかるのも無理ない。
「そんな所に座り込んで何してるの?」
コツ、と神威は近付いてくる。
夜兎の血がざわつき始める。
ざわつきを必死に抑えつけているにも関わらず、神威は近付いてくる。
「ねぇ、聞いてる?」
肩に手が触れたとき、私は反射的にバシッと手を払った。
「イヤッ!触らないで!」
嫌な沈黙が流れる。
すぐにでもこの場から逃げ出したかった。
でも足が動かない。
「…何かあったの?」
私が手を払ったっというのに、神威は優しく問いかける。
─どうしてそんなに優しいの?
「…私が姫だって言ったら神威はどうする?」
神威に向かってポツリと言う。
私が顔を下げているから、神威の顔は見えない。
「…父さんと母さんを助けられなかったのは……私のせいだって言ったら?!」
神威の方を向いて顔を上げて言う。
神威は驚いた顔をしていた。
「なんでそのこと… まさか記憶が!」
「やっぱり… 神威、私のこと知ってたんだね」
生きる気力をなくしたように笑う。
笑う、というより、無理矢理笑うといった感じだろう。
「私、思い出したんだ。昔のこと…」
「夏海!」
いきなり名前を呼ばれたかと思ったら、神威に抱き締められた。
私はとっさのことで何が何だか分からなかった。
─逃げ出す前に捕まった─
⇒あとがき