未完成
セフレ
二人とも拗らせてる
二人とも拗らせてる
「ねえ……俺たちどうして付き合えないの?」
情事後の気怠さが残るベッドで、深津さんの背中を抱きしめながら問いかけた。
俺は深津さんが好きで、深津さんも俺のことを好きだと言ってくれる。キスもセックスもするのに、俺たちは付き合っていない。
自分で言うのもなんだが、情けとかではなく深津さんは本当に俺のことが好きだと思う。告白したのは俺からだったけど、その場の雰囲気に流されるような人ではない。たしかに「俺も沢北が好きピョン」と言ってくれた。
その日の気分でプレーに影響が出る俺の機嫌を損ねないように仕方なく抱かれてくれているのかと考えたこともあった。しかしそれだけの理由でここまでしてくれるだろうか。元々受け入れる器官ではない場所を準備するのはとても大変で、身体への負担もかかると聞く。だからせめて、行為の最中は絶対に痛くないように、深津さんが気持ちよくなれるようにめいっぱい尽くす。そうすると深津さんもとろけた顔で気持ちよさそうに甘えてくれる。それがどうしようもなく可愛くて愛おしくて、深津さんとのセックスはいつも幸せでいっぱいになる。
そんなハチミツみたいに甘い時間を過ごした後だからこそ、何気なく発した「俺らって付き合ってるんですよね」の問いにノーを突きつけられた時は大きなショックを受けた。泣きじゃくりながら問い詰める俺に、「嫌とかじゃなくて、別に必要ないと思うピョン」「付き合ったからって何が変わるピョン?今とやること変わらないピョン」と面倒くさそうに言い放った。
たしかに、関係にラベルを付けるか付けないかなんて些細なことだ。どれだけ縛り付けたって裏切る人間がいるように。そんなことは分かっている。しかし、俺には焦る理由があった。半年後にアメリカに行くことが決まっているからだ。この「名前のない関係」のままアメリカに飛び立つのはさすがに不安が残るため、正式に付き合っているという事実が欲しかった。だから何度も付き合って欲しいと伝えたが、あれこれ理由をつけてのらりくらりと躱される。
俺のことを好きだと言いながらもなぜか頑なに付き合うと言ってくれない深津さんに、少しずつ苛立ちを感じ始めていた。
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