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花の本、死煙と共に
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「しばらくの間、奴は帝都外の軍事施設以外立ち入り禁止とすると伝えろ」
「は。」
忠臣は明らかに不機嫌そうな声色で月夜叉さんに命令をしている。
原因は私だ。ソファーに腰掛けながらも、怒られるかもしれない……と、身を縮こまらせている。気を付けろと言われていたのに、結局こんなことになってしまった。
「燐よ、用心せよと言ったな?」
「はい……。」
どう考えても私に否がある。お休みをもらっていたけど、こんな事になるなら大人しく屋敷で過ごしていればよかった。
ちらり、と忠臣の様子を伺うと、眉間に皺を寄せている。……やはり怒っている。
しかし、それも束の間、はぁ、と大きく溜め息を吐けば私の頭をぽんと撫でた。
「全く……仕様のない妹よ。怪我もなくてよかった。怖かったろうに」
「ご、ごめんなさい……」
「しかし、奴がまさか帝都で情報収集をしているとは思わなんだ。……我の血族と知ったからには迂闊に手出しはせぬと思うが、念には念を入れ暫しの間は立ち入り禁止とした。安心せよ」
「……説教は終わったか?」
そこにずっと居合わせていたグスタフが、居心地悪そうに呟く。人が怒られているところにいたんだから当然である。
「グスタフよ、大義であったぞ。よくぞ我が妹を守った。部下なら褒美をくれてやるところだ……して、何故あそこにいたのだ。」
「部下だったとしてもいらねえ……まあいい。俺は人の多いところが苦手なんでな、いつもここに来るときはなるべく人気のないところを通ってくる。そうしたら奴の姿を見かけたんで、嫌な気配がして追ってみた。あとはさっき話した通りだ」
フン、といつも通りのすました表情で言う。人が多いところが苦手なのに、人通りの多いところを歩いてくれたんだ……。
「……これからもこういうことがないとも言えん。そのときに必ず誰かが助けてくれるとも限らん。こいつに護身術ぐらい身に付けさせた方がいいんじゃないのか」
「ふむ。それはそうだな。……流石に経験はなかろう、一から教えねばならんか」
「あ、私、剣道なら……少しは……。」
ぼそり、と自信なさげに言う。何せ打ち込んでいたのは学生の頃。全国大会で優勝という華々しい成績は残っているものの、社会人となった今、竹刀に手を触れてすらいない。
「剣道か……、あれは殺す為の剣術ではないが、……そうさな、護身用くらいにはなるやもしれん。腕前を一度見せてみよ。我が受けてやる」
「えっ?え、いや、でもそんな、人に見せられるような腕じゃ……」
「良い。構わぬ。我が直々に受けてやると言うのだ、褒美と思え」
忠臣の、いつものジャイアニズムが始まってしまった。ここ数日でわかったことだけれど、こうなってしまうと彼は是が非でも押し通すのだ。ああ……とても楽しそうな顔をしている。
グスタフに視線で助けを求めてみたが、首を横に振られてしまった。観念するしかなさそうだ。
そうしている間に勝手に準備が進められて、屋敷内の中庭で行うことになってしまった。
「では立ち合おう。竹刀はない。故に、これを使え。」
そう言われて渡されたのは木刀。竹刀よりも固く、重さもある。これは凶器になり得る代物だ。……まあ、相手が忠臣だから安心だけれど。
間合いを取り、定位置につき、一礼する。久し振りの感覚で少し緊張する。木刀を構える。
「我は反撃はせん。いつでも良いぞ、来るがいい」
そう言って忠臣も木刀を構える。隙だらけ。けれど、敢えてそうしていると言わんばかりの、余裕のある構え方だ。
試合と違って防具もないし、裸足でもない。状況が全く違うけれど、動きは変わらない。
しばしの静寂が流れた。私は大きく声を出し、威圧する。もちろんそんなものに動じるような相手ではないとはわかっている。じりじりと詰めたり、離れたりして間合いを取る。忠臣は私を正面に見るようには向きを変えるけれど、その場からは動かない。
私は大きく動いた。飛び込むようにしてさっと相手の間合いに入り込みながら木刀を振りかぶる。面を繰り出す。しかし、当然と言うべきか。呆気なく防がれてしまった。
忠臣は片手で制止する。それを見た私は離れ、構えを解いた。
「うむ。良い。実力はわかった。こと剣道においてはそこいらの者共よりは長けているようだな。この実力ならば、ただの一般人相手であれば護身用には事欠かんだろう。十分すぎるくらいだ」
「あ、ありがとう……?」
一度打ち合っただけで実力がわかったらしい。流石、強者は違う。なんだかよくわからないけれど褒められてしまった。
「鍛えれば戦場にも向かえそうなものではあるが……」
「忠臣」
「……それはそれ、これはこれだ。流石の我もそのようなことはさせるまい。」
なにやら物騒な事を言おうとしていたけれど、グスタフに制止されたようだ。
しばらくしてからグスタフが口を開く。
「……俺は刀の扱い方なんてわからねえが、剣道とやらが達者でも、その刀引っ提げて街中に出たりしたら住民に驚かれるんじゃないのか」
忠臣。そういえばそうだなって顔、しないで欲しい。
「は。」
忠臣は明らかに不機嫌そうな声色で月夜叉さんに命令をしている。
原因は私だ。ソファーに腰掛けながらも、怒られるかもしれない……と、身を縮こまらせている。気を付けろと言われていたのに、結局こんなことになってしまった。
「燐よ、用心せよと言ったな?」
「はい……。」
どう考えても私に否がある。お休みをもらっていたけど、こんな事になるなら大人しく屋敷で過ごしていればよかった。
ちらり、と忠臣の様子を伺うと、眉間に皺を寄せている。……やはり怒っている。
しかし、それも束の間、はぁ、と大きく溜め息を吐けば私の頭をぽんと撫でた。
「全く……仕様のない妹よ。怪我もなくてよかった。怖かったろうに」
「ご、ごめんなさい……」
「しかし、奴がまさか帝都で情報収集をしているとは思わなんだ。……我の血族と知ったからには迂闊に手出しはせぬと思うが、念には念を入れ暫しの間は立ち入り禁止とした。安心せよ」
「……説教は終わったか?」
そこにずっと居合わせていたグスタフが、居心地悪そうに呟く。人が怒られているところにいたんだから当然である。
「グスタフよ、大義であったぞ。よくぞ我が妹を守った。部下なら褒美をくれてやるところだ……して、何故あそこにいたのだ。」
「部下だったとしてもいらねえ……まあいい。俺は人の多いところが苦手なんでな、いつもここに来るときはなるべく人気のないところを通ってくる。そうしたら奴の姿を見かけたんで、嫌な気配がして追ってみた。あとはさっき話した通りだ」
フン、といつも通りのすました表情で言う。人が多いところが苦手なのに、人通りの多いところを歩いてくれたんだ……。
「……これからもこういうことがないとも言えん。そのときに必ず誰かが助けてくれるとも限らん。こいつに護身術ぐらい身に付けさせた方がいいんじゃないのか」
「ふむ。それはそうだな。……流石に経験はなかろう、一から教えねばならんか」
「あ、私、剣道なら……少しは……。」
ぼそり、と自信なさげに言う。何せ打ち込んでいたのは学生の頃。全国大会で優勝という華々しい成績は残っているものの、社会人となった今、竹刀に手を触れてすらいない。
「剣道か……、あれは殺す為の剣術ではないが、……そうさな、護身用くらいにはなるやもしれん。腕前を一度見せてみよ。我が受けてやる」
「えっ?え、いや、でもそんな、人に見せられるような腕じゃ……」
「良い。構わぬ。我が直々に受けてやると言うのだ、褒美と思え」
忠臣の、いつものジャイアニズムが始まってしまった。ここ数日でわかったことだけれど、こうなってしまうと彼は是が非でも押し通すのだ。ああ……とても楽しそうな顔をしている。
グスタフに視線で助けを求めてみたが、首を横に振られてしまった。観念するしかなさそうだ。
そうしている間に勝手に準備が進められて、屋敷内の中庭で行うことになってしまった。
「では立ち合おう。竹刀はない。故に、これを使え。」
そう言われて渡されたのは木刀。竹刀よりも固く、重さもある。これは凶器になり得る代物だ。……まあ、相手が忠臣だから安心だけれど。
間合いを取り、定位置につき、一礼する。久し振りの感覚で少し緊張する。木刀を構える。
「我は反撃はせん。いつでも良いぞ、来るがいい」
そう言って忠臣も木刀を構える。隙だらけ。けれど、敢えてそうしていると言わんばかりの、余裕のある構え方だ。
試合と違って防具もないし、裸足でもない。状況が全く違うけれど、動きは変わらない。
しばしの静寂が流れた。私は大きく声を出し、威圧する。もちろんそんなものに動じるような相手ではないとはわかっている。じりじりと詰めたり、離れたりして間合いを取る。忠臣は私を正面に見るようには向きを変えるけれど、その場からは動かない。
私は大きく動いた。飛び込むようにしてさっと相手の間合いに入り込みながら木刀を振りかぶる。面を繰り出す。しかし、当然と言うべきか。呆気なく防がれてしまった。
忠臣は片手で制止する。それを見た私は離れ、構えを解いた。
「うむ。良い。実力はわかった。こと剣道においてはそこいらの者共よりは長けているようだな。この実力ならば、ただの一般人相手であれば護身用には事欠かんだろう。十分すぎるくらいだ」
「あ、ありがとう……?」
一度打ち合っただけで実力がわかったらしい。流石、強者は違う。なんだかよくわからないけれど褒められてしまった。
「鍛えれば戦場にも向かえそうなものではあるが……」
「忠臣」
「……それはそれ、これはこれだ。流石の我もそのようなことはさせるまい。」
なにやら物騒な事を言おうとしていたけれど、グスタフに制止されたようだ。
しばらくしてからグスタフが口を開く。
「……俺は刀の扱い方なんてわからねえが、剣道とやらが達者でも、その刀引っ提げて街中に出たりしたら住民に驚かれるんじゃないのか」
忠臣。そういえばそうだなって顔、しないで欲しい。