あなたの名前を入力してください。
花の本、死煙と共に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幼い頃は、今がどんなに辛くても、最後には楽園へ辿り着けると信じていた。
絵本にあるような、神が作った幸せな世界。花が咲き誇り、天使が舞い、輝きに満ちた世界。
ギフトの連中は、その楽園を作るために強くならなければならないと言って、俺に酷い苦痛を与えた。
━━━楽園だと?笑わせる。
どうだ、この有り様は。戦場の跡は焦土と化し、生物の気配はない。毒によって侵されたこの土地は、しばらくの間植物が根付く事もないだろう。
そう、これではまるで━━
「……地獄のようだな。」
ぽつり、と呟く。
幼い頃に思い描いていた"楽園"なんてこの世には存在しない。俺には地獄を作ることしかできない。この苦しみを、怒りを、憎悪を、世界にぶちまけることが俺の役目であり、喜びであり、生きている証。
世界を壊すことが俺の存在理由だ。
「また派手にやってしまったな、グスタフよ。敵の軍隊は壊滅状態、我らの勝利だ」
桜華忠臣━━こいつは俺達と同盟を結んでいる国のトップだ。強さは折り紙付き。ただ玉座にふんぞり返って指示を出すだけのぼんくらとは訳が違う。
俺はガキの頃から忠臣を知っているが、その頃から姿が変わっていない。妖魔、というのは普通の人間よりも随分長生きだ。
「勝ち負けなんざどうでもいい。……俺は地獄が見たいだけだ」
眼前に広がるのは煙の上がる焼け焦げた大地。
ふと、天を見上げてみる。この空だけは、夢見た楽園と同じなのだろうか。柄にもなく感傷に浸ってみるが、すぐにどうでもよくなって、視線を戻そうとしたそのときだった。
空に、真上に、何か見えた気がした。
それは段々と大きくなっている━━いや、落ちてきているのだ。
ようやく形がはっきりしてきた。あれは……、人間の形に見える。いや、まさかそんなことは。空から人間が降ってくるなどありえない。
そう思っていたが、どんどんと近付いてくる。俺に向かって落ちてくる。
「なんだあれは!」
「空から何か降ってくるぞ!敵国のミサイルか!」
それに気付いた兵士達がざわつき始める。打ち落とそうとカノーネを向ける者もいる
「指揮官!打ち落とします!そこから離れてください!」
「待て!打つな!あれはミサイルじゃない」
「……人間、か?」
それを見上げたまま部下に命令を下す。忠臣は空を仰ぎ、目を凝らしている。俺は何故か、この人間を受け止めなければならないと思った。受け止める為に両腕を前へ出す。
俺の元へ落ちてくるまで、残り5秒、4、3、2、1……
受け止める瞬間、そいつはふわり、と浮いた気がした。
女だ。いや、少女と言った方がいいか。長い黒髪の少女が降ってきた。目を閉じており、意識はない。しかし、身体の暖かさが生あることを意味している。
どうしてか、天使のようだ、と思った。
俺はしばらくその状態のまま立ち尽くしていたが、今の俺がこのまま抱き抱えているとこいつに毒が回ってしまうかもしれないことを思い出す。
「忠臣、こいつを頼む。……俺が触れれば毒が回る」
そう言って忠臣に託す。どうしても守らねばならない。何故そう思ったのか、俺にはわからない。だが、そうしなければならないという思いだけが俺を支配していた。
「…………ふむ、わかった。こちらで預かる。この事は極秘だ。特にギフトの連中にはな。お前の部下にも言い付けておけ」
忠臣は忠臣で、何かを思案している様子だ。幸いここにはギフトの目はない。俺の部下もそれほどいない。隠蔽する事自体は難しくはないだろう。
俺は忠臣に預けた少女を一瞥する。地獄に堕ちた天使、か。我ながら臭い例えだ。
もう一度空を見上げる。風はない。
天使はどんな罪を犯して堕ちたのだろうか、と、マスクを外し、体内に回る毒を吐き出した。
絵本にあるような、神が作った幸せな世界。花が咲き誇り、天使が舞い、輝きに満ちた世界。
ギフトの連中は、その楽園を作るために強くならなければならないと言って、俺に酷い苦痛を与えた。
━━━楽園だと?笑わせる。
どうだ、この有り様は。戦場の跡は焦土と化し、生物の気配はない。毒によって侵されたこの土地は、しばらくの間植物が根付く事もないだろう。
そう、これではまるで━━
「……地獄のようだな。」
ぽつり、と呟く。
幼い頃に思い描いていた"楽園"なんてこの世には存在しない。俺には地獄を作ることしかできない。この苦しみを、怒りを、憎悪を、世界にぶちまけることが俺の役目であり、喜びであり、生きている証。
世界を壊すことが俺の存在理由だ。
「また派手にやってしまったな、グスタフよ。敵の軍隊は壊滅状態、我らの勝利だ」
桜華忠臣━━こいつは俺達と同盟を結んでいる国のトップだ。強さは折り紙付き。ただ玉座にふんぞり返って指示を出すだけのぼんくらとは訳が違う。
俺はガキの頃から忠臣を知っているが、その頃から姿が変わっていない。妖魔、というのは普通の人間よりも随分長生きだ。
「勝ち負けなんざどうでもいい。……俺は地獄が見たいだけだ」
眼前に広がるのは煙の上がる焼け焦げた大地。
ふと、天を見上げてみる。この空だけは、夢見た楽園と同じなのだろうか。柄にもなく感傷に浸ってみるが、すぐにどうでもよくなって、視線を戻そうとしたそのときだった。
空に、真上に、何か見えた気がした。
それは段々と大きくなっている━━いや、落ちてきているのだ。
ようやく形がはっきりしてきた。あれは……、人間の形に見える。いや、まさかそんなことは。空から人間が降ってくるなどありえない。
そう思っていたが、どんどんと近付いてくる。俺に向かって落ちてくる。
「なんだあれは!」
「空から何か降ってくるぞ!敵国のミサイルか!」
それに気付いた兵士達がざわつき始める。打ち落とそうとカノーネを向ける者もいる
「指揮官!打ち落とします!そこから離れてください!」
「待て!打つな!あれはミサイルじゃない」
「……人間、か?」
それを見上げたまま部下に命令を下す。忠臣は空を仰ぎ、目を凝らしている。俺は何故か、この人間を受け止めなければならないと思った。受け止める為に両腕を前へ出す。
俺の元へ落ちてくるまで、残り5秒、4、3、2、1……
受け止める瞬間、そいつはふわり、と浮いた気がした。
女だ。いや、少女と言った方がいいか。長い黒髪の少女が降ってきた。目を閉じており、意識はない。しかし、身体の暖かさが生あることを意味している。
どうしてか、天使のようだ、と思った。
俺はしばらくその状態のまま立ち尽くしていたが、今の俺がこのまま抱き抱えているとこいつに毒が回ってしまうかもしれないことを思い出す。
「忠臣、こいつを頼む。……俺が触れれば毒が回る」
そう言って忠臣に託す。どうしても守らねばならない。何故そう思ったのか、俺にはわからない。だが、そうしなければならないという思いだけが俺を支配していた。
「…………ふむ、わかった。こちらで預かる。この事は極秘だ。特にギフトの連中にはな。お前の部下にも言い付けておけ」
忠臣は忠臣で、何かを思案している様子だ。幸いここにはギフトの目はない。俺の部下もそれほどいない。隠蔽する事自体は難しくはないだろう。
俺は忠臣に預けた少女を一瞥する。地獄に堕ちた天使、か。我ながら臭い例えだ。
もう一度空を見上げる。風はない。
天使はどんな罪を犯して堕ちたのだろうか、と、マスクを外し、体内に回る毒を吐き出した。