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花の本、死煙と共に
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「っやだ、離して!誰か!!」
「それにしても実に興味深い……ただの少女にしか見えないが……。まずは検査からか、……大人しくしろ!」
男は手を振り上げる。私は衝撃に備え、咄嗟に目を瞑ってしまう。
しかし、いつまで経っても平手打ちが飛んで来ない。恐る恐る目を開くと、白衣の男の後ろに大男が立っている。
「おい」
グスタフだ。グスタフが、男の腕を掴んでいる。
「手を離せ」
「おやグスタフ、こんなところに何の用かな?僕の邪魔をしないで欲しいな」
「お前には関係ないだろう。……そいつを誰だと思っている。忠臣の妹だ。そいつの身に何かあれば奴が黙っていない。同盟国との関係に亀裂を生むような行為は見過ごせん」
「ぐあっ……!!」
グスタフはその腕をギリギリと締め上げていく。男は痛みに呻き、私の腕を掴んでいる手は離れていく。解放された私はすぐに距離を取り、怯えながらその光景を見ている。
「ひ、被検体の分際で僕にこんなことをしてただで済むと思うなよ!!」
「昔はお前らに逆らえなかった。だが今は違う。さっさと俺の目の前から消えろ、殺すぞ」
そう言ってグスタフは力任せに男を投げ飛ばした。男は起き上がれず、その場で腕を押さえながら苦しんでいる。
グスタフは私を一瞥し、顎で行くぞ、と合図をしたあと、繁華街の方へ向かって歩いていく。私ははっとして、小走りでその背中へと向かっていった。
しばらく歩くと往来の激しい大通りに出た。
グスタフはたまに後ろを振り向きながら歩いている。私が付いてきているか確認をしてくれているみたいに。
どことなく、歩く速度も合わせてくれているようにも感じる。
「……何もされなかったか。」
今まで何も言わなかったのに、突然グスタフから言葉が飛んで来る。
「は、はい……なんとか……、グスタフさんが来てくれなかったら、どうなっていたか……。」
「フン……ならいい」
ぶっきらぼうな返事が返ってくる。けれど、言動の端々から彼の不器用な優しさが伝わってきた。
もしあのまま研究材料にされていたら、どんな酷い目に遭っていたか……、想像したくもない。
「グスタフさん、ありがとうございました。助けてくださったの、2回目ですね。……さっきは何をされるかわからなくて、怖くて……、」
「グスタフ」
「えっ?」
唐突に飛び出した言葉を聞いて、反射的に聞き返してしまう。
「グスタフでいい。敬語もやめろ。忠臣には使わないのに、そうやって俺に敬語なんか使っていたらあいつが恥をかく」
そう言われてはっと気付く。確かに、忠臣には普通に話しているのに(忠臣からの命令のようなものだけど)、私が同盟国の軍人相手に、敬語を使っているところを帝都の民に見られたら、忠臣の総帥としての地位が下がってしまうかもしれない。
いくらぽっと出での小娘であっても、自分は桜華の血を引いているということを忘れてはならない━━
「そ、そうですね…………そう、だね……?」
どうにも慣れないせいで、フランクに言葉を交わすことが難しく感じ、これでいいのかと相手に聞くような風になってしまった。
「それでいい。……自分の置かれている状況を忘れるな」
「はい……、うん。っあ、グスタフさ……グスタフ!あの、私、元気だから!」
「は?」
いきなりなんなんだ、とでも言わんばかりに短い言葉が返ってくる。それでも私は構わず続ける。
「私、やっぱり毒に強いみたいで、えっと……貴方の毒の影響、全然なかったみたい。だから、大丈夫!」
グスタフは眉間に皺を寄せ、忠臣め、余計なことを、と呟いた。素直には喜ばないだろうが━━忠臣の言葉が脳裏を過る。不機嫌そうに見える。けれど、恐らくは……。
「……フン」
恐らくは、ほっと安心しているのかもしれない。
その後は言葉を交わすことなく桜華邸へ向かった。
「おお、帰ったか。グスタフもよう来た、入るがよい!」
けれどグスタフが忠臣を見たその瞬間、眉間の皺が深くなったのを私は見逃さなかった。
「それにしても実に興味深い……ただの少女にしか見えないが……。まずは検査からか、……大人しくしろ!」
男は手を振り上げる。私は衝撃に備え、咄嗟に目を瞑ってしまう。
しかし、いつまで経っても平手打ちが飛んで来ない。恐る恐る目を開くと、白衣の男の後ろに大男が立っている。
「おい」
グスタフだ。グスタフが、男の腕を掴んでいる。
「手を離せ」
「おやグスタフ、こんなところに何の用かな?僕の邪魔をしないで欲しいな」
「お前には関係ないだろう。……そいつを誰だと思っている。忠臣の妹だ。そいつの身に何かあれば奴が黙っていない。同盟国との関係に亀裂を生むような行為は見過ごせん」
「ぐあっ……!!」
グスタフはその腕をギリギリと締め上げていく。男は痛みに呻き、私の腕を掴んでいる手は離れていく。解放された私はすぐに距離を取り、怯えながらその光景を見ている。
「ひ、被検体の分際で僕にこんなことをしてただで済むと思うなよ!!」
「昔はお前らに逆らえなかった。だが今は違う。さっさと俺の目の前から消えろ、殺すぞ」
そう言ってグスタフは力任せに男を投げ飛ばした。男は起き上がれず、その場で腕を押さえながら苦しんでいる。
グスタフは私を一瞥し、顎で行くぞ、と合図をしたあと、繁華街の方へ向かって歩いていく。私ははっとして、小走りでその背中へと向かっていった。
しばらく歩くと往来の激しい大通りに出た。
グスタフはたまに後ろを振り向きながら歩いている。私が付いてきているか確認をしてくれているみたいに。
どことなく、歩く速度も合わせてくれているようにも感じる。
「……何もされなかったか。」
今まで何も言わなかったのに、突然グスタフから言葉が飛んで来る。
「は、はい……なんとか……、グスタフさんが来てくれなかったら、どうなっていたか……。」
「フン……ならいい」
ぶっきらぼうな返事が返ってくる。けれど、言動の端々から彼の不器用な優しさが伝わってきた。
もしあのまま研究材料にされていたら、どんな酷い目に遭っていたか……、想像したくもない。
「グスタフさん、ありがとうございました。助けてくださったの、2回目ですね。……さっきは何をされるかわからなくて、怖くて……、」
「グスタフ」
「えっ?」
唐突に飛び出した言葉を聞いて、反射的に聞き返してしまう。
「グスタフでいい。敬語もやめろ。忠臣には使わないのに、そうやって俺に敬語なんか使っていたらあいつが恥をかく」
そう言われてはっと気付く。確かに、忠臣には普通に話しているのに(忠臣からの命令のようなものだけど)、私が同盟国の軍人相手に、敬語を使っているところを帝都の民に見られたら、忠臣の総帥としての地位が下がってしまうかもしれない。
いくらぽっと出での小娘であっても、自分は桜華の血を引いているということを忘れてはならない━━
「そ、そうですね…………そう、だね……?」
どうにも慣れないせいで、フランクに言葉を交わすことが難しく感じ、これでいいのかと相手に聞くような風になってしまった。
「それでいい。……自分の置かれている状況を忘れるな」
「はい……、うん。っあ、グスタフさ……グスタフ!あの、私、元気だから!」
「は?」
いきなりなんなんだ、とでも言わんばかりに短い言葉が返ってくる。それでも私は構わず続ける。
「私、やっぱり毒に強いみたいで、えっと……貴方の毒の影響、全然なかったみたい。だから、大丈夫!」
グスタフは眉間に皺を寄せ、忠臣め、余計なことを、と呟いた。素直には喜ばないだろうが━━忠臣の言葉が脳裏を過る。不機嫌そうに見える。けれど、恐らくは……。
「……フン」
恐らくは、ほっと安心しているのかもしれない。
その後は言葉を交わすことなく桜華邸へ向かった。
「おお、帰ったか。グスタフもよう来た、入るがよい!」
けれどグスタフが忠臣を見たその瞬間、眉間の皺が深くなったのを私は見逃さなかった。