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花の本、死煙と共に
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今日はなんだか、いつもと雰囲気が違う。
と言うのも、今日が例のグスタフがやってくる日……もとい、軍事合同演習の実施日だからだ。
と言っても、戦闘機や戦車を用いた大型の演習ではなくて、今回は小隊同士での訓練を前提としたものらしい。
帝都の近くで行うらしく、忠臣はその監督として現場に行っているようだった。国のトップであり軍のトップ。忙しそうだ。
私はと言うと、あのあと早速忠臣が仕事のことを伝えてくれたらしく、今は経理部の新人として電卓を叩いている。
流石は桜華帝国の経理部だけあって、もちろん扱っているのは国家予算。そこら辺の会社とは比べ物にならない額の請求書が飛び交っている。
けれどここでは国の経済の運営だけではなく、桜華邸の資金の運営もやっている。
私は後者の、桜華邸の経理を担当することになった。
なんでも、
「総帥閣下からの命令とはいえ、燐様にこんな大変な仕事を押し付けるわけにはいきません!まだここへも来たばかりです、せめてこちらをお願いします!」
……と、言うことらしい。
なんだか逆に気を使わせてしまったかなと思いつつ、楽をしているようで少し罪悪感もある。
けれど、確かに私には国家予算を運営できるような手腕はないし、ここへ来たばかりの人に任せるには荷が重い仕事かもしれない。
私だって同じ状況だったら、いきなり新人に大変な仕事を任せるようなことはしない。
そういうわけで桜華邸の予算をやりくりしていく手伝いをすることになったんだけれど、いくつもある請求書を見ていたら、忠臣が私に買ってくれただろう家具や服や雑貨の請求書が紛れ込んでいて、なんとも微妙な気持ちになった。
そんなこんなであれからの数日間は慌ただしく過ぎていき、軍事演習のある今日はお暇をもらっている。
ついでに言うと、何故か忠臣からお小遣い(お小遣いとかいう可愛い額じゃないけど)ももらってしまっていて、行こうと思えば買い物にも行ける。
けれど今は不自由はしていないし、帝都の街並みを散策するだけでも十分楽しいから使う場面に遭遇しない。
折角仕事をもらったんだし、何か買うならお給料が出てからにしようと思っている。
忠臣からもらったお金は何かあったときのためにとっておこう。
というわけで、今日も帝都に散策に来ている。妖魔と言っても種類は様々で、完全に人型だったり、かと思えばどこからどう見ても妖怪だったり、色んな人達が思い思いに暮らしている。
電子機器なんかはあっても、この街の風景はどことなく情緒を感じさせ、まるで大正時代にタイムスリップをしたような気分になる。咲き誇る桜もとても美しい。出会う人たちからも温かさを感じる。
豊かな証拠、なんだと思う。
忠臣はこの街を守るために戦争をしているんだろうな。
散策が終わって、お気に入りの広場に着いた。中央に噴水があって、そこに散った桜の花びらが浮かんでいる。
今は3時半。演習は2時には終わると言っていたし、もうそろそろ忠臣も帰ってくる頃だろうか。グスタフと一緒に。
そう思いながらベンチに腰かけて、鞄の中から屋敷の人が持たせてくれたおやつを取り出す。
今日のおやつはクッキーだ。
ここで少しゆっくりしてから屋敷に戻ろう。
噴水の近くで井戸端会議をしている雀達を身ながら、クッキーを咀嚼する。さっくりとした歯応えで、口の中でほろほろと溶けてしまう。屋敷の料理やお菓子は頬が落ちそうなくらい美味しい。
こんな贅沢してていいのかなあ。と物思いにふけっていると、ざり、と足音が聞こえた。先程までは誰もいなかったはずだ。誰か来たのかと思い、反射的にその方向へ視線をやると、白衣を着た男性が立っている。
この人は……
「おや、誰かと思えばこの間の、桜華忠臣の後ろを付いていた女性ではありませんか。軍服ではないと言うことは、今日はお休みですか。今日の演習でも見かけませんでしたねえ。」
この男は、忠臣が用心しろと言っていたその男だ。私が出会うまいと思っていた、あの白衣の男。
相変わらず、じろじろと嫌な目で見てくる。まるで実験用のモルモットを観察しているみたいに。
「え、ええ……まあ……。」
「新人か何か、ですか?しかし、ただの新人をあのように桜華忠臣が連れて歩くこともないでしょう。」
「……すみません、用があるので、私はこれで……」
私は鞄を肩にかけ、軽く会釈をしてその場を立ち去ろうとする。しかし、白衣の男に腕を捕まれる。
「そう言わず、もう少しゆっくりお話しませんか。折角の縁ですからねえ。━━ああ、そういえば、君は空から降ってきた少女の話はご存じではありませんか?」
「知りません!は、離してください!」
怖くなって必死にその手を振りほどこうとするが、いくら科学者とは言え、男女の力の差は歴然で、びくともしない。男はにやついた表情で私を見ている。
「部下から聞いた話なんですが、どうもその少女は黒髪の長髪で、身長は150cmから155cmくらいの間の黄色人種……。おや、君によく似ていますねえ。もしや、君がその少女では?」
と言うのも、今日が例のグスタフがやってくる日……もとい、軍事合同演習の実施日だからだ。
と言っても、戦闘機や戦車を用いた大型の演習ではなくて、今回は小隊同士での訓練を前提としたものらしい。
帝都の近くで行うらしく、忠臣はその監督として現場に行っているようだった。国のトップであり軍のトップ。忙しそうだ。
私はと言うと、あのあと早速忠臣が仕事のことを伝えてくれたらしく、今は経理部の新人として電卓を叩いている。
流石は桜華帝国の経理部だけあって、もちろん扱っているのは国家予算。そこら辺の会社とは比べ物にならない額の請求書が飛び交っている。
けれどここでは国の経済の運営だけではなく、桜華邸の資金の運営もやっている。
私は後者の、桜華邸の経理を担当することになった。
なんでも、
「総帥閣下からの命令とはいえ、燐様にこんな大変な仕事を押し付けるわけにはいきません!まだここへも来たばかりです、せめてこちらをお願いします!」
……と、言うことらしい。
なんだか逆に気を使わせてしまったかなと思いつつ、楽をしているようで少し罪悪感もある。
けれど、確かに私には国家予算を運営できるような手腕はないし、ここへ来たばかりの人に任せるには荷が重い仕事かもしれない。
私だって同じ状況だったら、いきなり新人に大変な仕事を任せるようなことはしない。
そういうわけで桜華邸の予算をやりくりしていく手伝いをすることになったんだけれど、いくつもある請求書を見ていたら、忠臣が私に買ってくれただろう家具や服や雑貨の請求書が紛れ込んでいて、なんとも微妙な気持ちになった。
そんなこんなであれからの数日間は慌ただしく過ぎていき、軍事演習のある今日はお暇をもらっている。
ついでに言うと、何故か忠臣からお小遣い(お小遣いとかいう可愛い額じゃないけど)ももらってしまっていて、行こうと思えば買い物にも行ける。
けれど今は不自由はしていないし、帝都の街並みを散策するだけでも十分楽しいから使う場面に遭遇しない。
折角仕事をもらったんだし、何か買うならお給料が出てからにしようと思っている。
忠臣からもらったお金は何かあったときのためにとっておこう。
というわけで、今日も帝都に散策に来ている。妖魔と言っても種類は様々で、完全に人型だったり、かと思えばどこからどう見ても妖怪だったり、色んな人達が思い思いに暮らしている。
電子機器なんかはあっても、この街の風景はどことなく情緒を感じさせ、まるで大正時代にタイムスリップをしたような気分になる。咲き誇る桜もとても美しい。出会う人たちからも温かさを感じる。
豊かな証拠、なんだと思う。
忠臣はこの街を守るために戦争をしているんだろうな。
散策が終わって、お気に入りの広場に着いた。中央に噴水があって、そこに散った桜の花びらが浮かんでいる。
今は3時半。演習は2時には終わると言っていたし、もうそろそろ忠臣も帰ってくる頃だろうか。グスタフと一緒に。
そう思いながらベンチに腰かけて、鞄の中から屋敷の人が持たせてくれたおやつを取り出す。
今日のおやつはクッキーだ。
ここで少しゆっくりしてから屋敷に戻ろう。
噴水の近くで井戸端会議をしている雀達を身ながら、クッキーを咀嚼する。さっくりとした歯応えで、口の中でほろほろと溶けてしまう。屋敷の料理やお菓子は頬が落ちそうなくらい美味しい。
こんな贅沢してていいのかなあ。と物思いにふけっていると、ざり、と足音が聞こえた。先程までは誰もいなかったはずだ。誰か来たのかと思い、反射的にその方向へ視線をやると、白衣を着た男性が立っている。
この人は……
「おや、誰かと思えばこの間の、桜華忠臣の後ろを付いていた女性ではありませんか。軍服ではないと言うことは、今日はお休みですか。今日の演習でも見かけませんでしたねえ。」
この男は、忠臣が用心しろと言っていたその男だ。私が出会うまいと思っていた、あの白衣の男。
相変わらず、じろじろと嫌な目で見てくる。まるで実験用のモルモットを観察しているみたいに。
「え、ええ……まあ……。」
「新人か何か、ですか?しかし、ただの新人をあのように桜華忠臣が連れて歩くこともないでしょう。」
「……すみません、用があるので、私はこれで……」
私は鞄を肩にかけ、軽く会釈をしてその場を立ち去ろうとする。しかし、白衣の男に腕を捕まれる。
「そう言わず、もう少しゆっくりお話しませんか。折角の縁ですからねえ。━━ああ、そういえば、君は空から降ってきた少女の話はご存じではありませんか?」
「知りません!は、離してください!」
怖くなって必死にその手を振りほどこうとするが、いくら科学者とは言え、男女の力の差は歴然で、びくともしない。男はにやついた表情で私を見ている。
「部下から聞いた話なんですが、どうもその少女は黒髪の長髪で、身長は150cmから155cmくらいの間の黄色人種……。おや、君によく似ていますねえ。もしや、君がその少女では?」