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花の本、死煙と共に
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あれから一週間が経過した。
少しの間、あの来客用の部屋を使わさせてもらっていたけど、(今でも信じられないが)正式に桜華の血を引く者として認められ、今は別の部屋をあてがわれている。
来客用の部屋でさえあの豪華な仕様だったのに、まさか専用の部屋をもらえるなんて思ってもみなかった。
広すぎる。
その上服や雑貨なんかも揃えられているし、なんだかお姫様にでもなったような気分で落ち着かなかった。
だから、しばらくしてから私は総帥……忠臣にお願いをしに行った。
「忠臣!お願いがあるの!」
「なんだ、申してみよ」
「仕事をください!!!」
こんなお願いをされるとは予想だにしなかったのだろうか、忠臣は鳩が豆鉄砲を喰らったかのような表情で数秒沈黙した。
けれど少し考えて、私の意図が伝わったのか口を開く。
「ふむ……あちらでは馬車馬の如く働いていたとは聞いたが……、やはりこの生活では物足りぬか」
「物足りないというか、落ち着かない。私なんにもしてないのに色んな人に色んな事をしてもらってるし……」
自分の事は自分で、が当たり前だった私には、今の生活は本当に落ち着かない。それどころか身の回りの世話までしてもらっている始末で、ありがたいとは思いつつも申し訳なさで一杯だ。数日経ったものの、未だに慣れない。
それに、私は助けてもらった身。
ここは軍事国家だ。私には国の事や戦いの事に関しては全くわからないけれど、それ以外に何かできることがあれば、と思っていた。
「案ずるな。我らに仕える者はそれが務めだ。もしお前もここで産まれていたならば、それに疑問を抱く事もあるまいて。……しかし、お前にとっては不慣れであろうな。……何か得意な事はあるのか」
「得意というか、一応、経理に関しては……それが仕事だったから。」
「経理か。……ときに、経理の長が人手不足だと言っていたな。話を通しておこう。それまでは待て」
「ありがとう!」
忠臣が柔軟性に富んだ指導者でよかったと心から思う。少しの間仕事ぶりを見ていてわかったけれど、彼はそのカリスマ性もさることながら、知略、柔軟性、指導力、どの点においても国のトップに立つ者として十分な能力を兼ね備えている。
だからこそ、ここの民達は彼を君主として、指導者として尊敬しているんだろう。
「ところで燐。……あれから一週間程になるか。ここの生活には慣れたか。体調の変化は。」
「お姫様みたいな扱いをされる以外はね。体調?うん、悪くないよ。すこぶる元気。」
「ふ、それならば良い。グスタフが心配していた」
「グスタフさんが?」
突然グスタフの名前が出てきて、驚いておうむ返しをしてしまった。嬉しいけれど、心配をされるような事があっただろうか。
「うむ。お前を保護したあの時は戦闘のすぐあとだったのでな。
『毒の纏わりついた身体で受け止めてしまった。何か影響があったとしたら俺のせいだ』
とぼやいておった。毒に耐性がある故、心配はないと伝えたのだがな」
私はなるほど、そういうことか、と頷く。
残虐だとかなんだとか言われているけれど、根の部分は優しいんだということがわかって、なんだか嬉しくなった。
いや、ゲーム中のボイスを聴いていても、それらしい事はなんとなくわかっていたけど。
「来週に合同演習がある為、その際にこちらへ来るはずだ。その元気な姿を見せてやるといい。素直には喜ばんだろうが、そういう男だ。」
「うん。ありがとう、忠臣。」
ああ、やっぱり素直じゃないとかっていうのは忠臣にはバレてるんだなあ、と、少し笑ってしまった。
来週が楽しみだ。
「だが、来るのはグスタフだけではない。あちらの研究員……ギフトの連中もやってくる。空から降ってきた娘の事を、しつこく嗅ぎ回っている者もおる。……用心せよ。」
「うん……」
恐らく、私がここに来たあの日に出会った男の事を言っているんだろう。あのときの視線……思い出すだけでも不快な気分になる。
グスタフに会えるのはとても楽しみだけど、あの男にだけは出会わないようにしようと、強く心に決めた。
少しの間、あの来客用の部屋を使わさせてもらっていたけど、(今でも信じられないが)正式に桜華の血を引く者として認められ、今は別の部屋をあてがわれている。
来客用の部屋でさえあの豪華な仕様だったのに、まさか専用の部屋をもらえるなんて思ってもみなかった。
広すぎる。
その上服や雑貨なんかも揃えられているし、なんだかお姫様にでもなったような気分で落ち着かなかった。
だから、しばらくしてから私は総帥……忠臣にお願いをしに行った。
「忠臣!お願いがあるの!」
「なんだ、申してみよ」
「仕事をください!!!」
こんなお願いをされるとは予想だにしなかったのだろうか、忠臣は鳩が豆鉄砲を喰らったかのような表情で数秒沈黙した。
けれど少し考えて、私の意図が伝わったのか口を開く。
「ふむ……あちらでは馬車馬の如く働いていたとは聞いたが……、やはりこの生活では物足りぬか」
「物足りないというか、落ち着かない。私なんにもしてないのに色んな人に色んな事をしてもらってるし……」
自分の事は自分で、が当たり前だった私には、今の生活は本当に落ち着かない。それどころか身の回りの世話までしてもらっている始末で、ありがたいとは思いつつも申し訳なさで一杯だ。数日経ったものの、未だに慣れない。
それに、私は助けてもらった身。
ここは軍事国家だ。私には国の事や戦いの事に関しては全くわからないけれど、それ以外に何かできることがあれば、と思っていた。
「案ずるな。我らに仕える者はそれが務めだ。もしお前もここで産まれていたならば、それに疑問を抱く事もあるまいて。……しかし、お前にとっては不慣れであろうな。……何か得意な事はあるのか」
「得意というか、一応、経理に関しては……それが仕事だったから。」
「経理か。……ときに、経理の長が人手不足だと言っていたな。話を通しておこう。それまでは待て」
「ありがとう!」
忠臣が柔軟性に富んだ指導者でよかったと心から思う。少しの間仕事ぶりを見ていてわかったけれど、彼はそのカリスマ性もさることながら、知略、柔軟性、指導力、どの点においても国のトップに立つ者として十分な能力を兼ね備えている。
だからこそ、ここの民達は彼を君主として、指導者として尊敬しているんだろう。
「ところで燐。……あれから一週間程になるか。ここの生活には慣れたか。体調の変化は。」
「お姫様みたいな扱いをされる以外はね。体調?うん、悪くないよ。すこぶる元気。」
「ふ、それならば良い。グスタフが心配していた」
「グスタフさんが?」
突然グスタフの名前が出てきて、驚いておうむ返しをしてしまった。嬉しいけれど、心配をされるような事があっただろうか。
「うむ。お前を保護したあの時は戦闘のすぐあとだったのでな。
『毒の纏わりついた身体で受け止めてしまった。何か影響があったとしたら俺のせいだ』
とぼやいておった。毒に耐性がある故、心配はないと伝えたのだがな」
私はなるほど、そういうことか、と頷く。
残虐だとかなんだとか言われているけれど、根の部分は優しいんだということがわかって、なんだか嬉しくなった。
いや、ゲーム中のボイスを聴いていても、それらしい事はなんとなくわかっていたけど。
「来週に合同演習がある為、その際にこちらへ来るはずだ。その元気な姿を見せてやるといい。素直には喜ばんだろうが、そういう男だ。」
「うん。ありがとう、忠臣。」
ああ、やっぱり素直じゃないとかっていうのは忠臣にはバレてるんだなあ、と、少し笑ってしまった。
来週が楽しみだ。
「だが、来るのはグスタフだけではない。あちらの研究員……ギフトの連中もやってくる。空から降ってきた娘の事を、しつこく嗅ぎ回っている者もおる。……用心せよ。」
「うん……」
恐らく、私がここに来たあの日に出会った男の事を言っているんだろう。あのときの視線……思い出すだけでも不快な気分になる。
グスタフに会えるのはとても楽しみだけど、あの男にだけは出会わないようにしようと、強く心に決めた。