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花の本、死煙と共に
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「ここだ」
着いた先で見たのは厳重に警備された扉。ケルパーズだけではなく、女の人が警備に当たっている。確かこの人は、月夜叉……ではなかっただろうか。どうやらここが総帥の私室、らしい。
「月夜叉よ、我の許可が下りるまで何人たりともここを通すな」
「は。仰せのままに。」
総帥は彼女に声をかけると部屋の戸を開け、入っていく。私もそれに続く。
部屋の中は広さはあるけれど豪華絢爛、というわけでもなく、かと言えば質素というわけでもない。気品は備わっているものの、実用性に富んだものが多い。
その一角にテーブルとソファが置かれている。……誰かが、座っている。あれは、
「遅かったな忠臣」
あれは、あれは、
「ここへ来る途中、ギフトの奴に捕まった。相変わらず食えない奴だ。屋敷に招待した覚えもないが、いつの間にか潜り込んでいたようだ。」
「……大方、俺の管理の為なんて理由を付けて入ってきたんだろう。」
一部を後ろへ撫で付けた金髪、バイオレットの眼、大きな体躯、マスクでくぐもった声、
「グスタフ…………」
あまりの驚きに、思わず声に出してしまった。
「あ?」
それを聞いた彼は不審そうに私を見る。
「忠臣、俺の事教えたのか」
「いや、何も教えてはいない」
「……ほお」
「何故お前を知っているのか、我にはわからん。だがスパイの類いではない。この娘は我の一族の者だ。」
「は?」
は?と言いたいのはこっちである。ちょっと待って、一族って何?私、妖魔じゃないし、そもそも貴方たちゲームのキャラクターでしょう。まさかそんなわけ。
「お前にも話しておくべきだな、グスタフよ。……ああ、燐、そこのソファーに座れ。これからお前に話さなければならないことがたんとある故、心して聞け。」
いつの間にやら呼び方も態度も変わっているし、若干挙動不審にになりながら、言われた通りにソファーへ腰掛ける。普段なら座り心地がいいとか、流石総帥のソファーだなあとか思うところなんだろうけど、今の私にそんな余裕はなかった。
「まず、グスタフよ。この娘は桜花燐という。」
「オウカ?忠臣と同じだな。」
「うむ、少し違うが概ね同じだ。
随分昔のことだが、我の一族の中で、人里へ下りていって人と交わった者がおった。その者は毒を操る妖でな。ここを去ると言ったときは波乱を巻き起こした。妖魔が人と交わると言うのだ、無理もない。しかし我の一族はそれを許した。先代は寛容であったのだな。
しかし、その代わりにある命令を下した。桜が現れし時は必ず戻れ、と。命令というより呪術のような類いだ。
その者は桜華ではなく桜花と名を変え、今はその子孫は完全なヒトとして人間界で暮らしている。
その子孫が、燐よ、お前だ。」
「……………………え?」
歴史を語られていたかと思いきや、最後にぐっと現実に引き戻された。いや、現実にしてはあまりにも突拍子で、信じられない。やっぱり夢なのだろうか。
「え……いや、いやいやいや、そんなまさか、私はただのしがない人間で、」
「信じられぬか。無理もない、が。何か毒を盛られた際、効かなかった事はないか。毒虫に刺されても平気だったことは」
「毒は盛られた事はないです……あ、麻酔……効かないから、歯医者が嫌いで……蚊に刺されても、痒くならない……いや、でもこんなのただの体質で、」
「身体のどこかに、桜の痣はないか。」
桜の痣。
いつの日か、左のわき腹に白い痣を見つけたときの事を思い出した。それが桜の花に似ていて、幼心に綺麗だと思った。
そこにそうあるのが当たり前で、誰にも話した事はなかったけれど、今でもその痣はそこにある。
「あり、ます……」
「それが我の一族だという確固たる証拠だ。……数百年の時を経て、桜華の元に戻ってきたか。」
そう言われても信じられた話ではないけれど、自信たっぷりにそう言われては信じるしかない。
「……つまり、こいつはお前の一族の子孫で、ただの人間なんだな。それはわかった。だがこいつは何故俺の事を知っていたのか、説明がつかん」
「それもそうだ。……燐よ、何故グスタフを知っている。」
「え、ええと…………」
ここでゲームのキャラクターだからです、とは言いにくい。けれど嘘を言って取り繕う事はできない。なによりあのグスタフに不振な目を向けられていることが我慢ならない。
「あの…………上手く伝わるかどうか、わからないんですが……。」
着いた先で見たのは厳重に警備された扉。ケルパーズだけではなく、女の人が警備に当たっている。確かこの人は、月夜叉……ではなかっただろうか。どうやらここが総帥の私室、らしい。
「月夜叉よ、我の許可が下りるまで何人たりともここを通すな」
「は。仰せのままに。」
総帥は彼女に声をかけると部屋の戸を開け、入っていく。私もそれに続く。
部屋の中は広さはあるけれど豪華絢爛、というわけでもなく、かと言えば質素というわけでもない。気品は備わっているものの、実用性に富んだものが多い。
その一角にテーブルとソファが置かれている。……誰かが、座っている。あれは、
「遅かったな忠臣」
あれは、あれは、
「ここへ来る途中、ギフトの奴に捕まった。相変わらず食えない奴だ。屋敷に招待した覚えもないが、いつの間にか潜り込んでいたようだ。」
「……大方、俺の管理の為なんて理由を付けて入ってきたんだろう。」
一部を後ろへ撫で付けた金髪、バイオレットの眼、大きな体躯、マスクでくぐもった声、
「グスタフ…………」
あまりの驚きに、思わず声に出してしまった。
「あ?」
それを聞いた彼は不審そうに私を見る。
「忠臣、俺の事教えたのか」
「いや、何も教えてはいない」
「……ほお」
「何故お前を知っているのか、我にはわからん。だがスパイの類いではない。この娘は我の一族の者だ。」
「は?」
は?と言いたいのはこっちである。ちょっと待って、一族って何?私、妖魔じゃないし、そもそも貴方たちゲームのキャラクターでしょう。まさかそんなわけ。
「お前にも話しておくべきだな、グスタフよ。……ああ、燐、そこのソファーに座れ。これからお前に話さなければならないことがたんとある故、心して聞け。」
いつの間にやら呼び方も態度も変わっているし、若干挙動不審にになりながら、言われた通りにソファーへ腰掛ける。普段なら座り心地がいいとか、流石総帥のソファーだなあとか思うところなんだろうけど、今の私にそんな余裕はなかった。
「まず、グスタフよ。この娘は桜花燐という。」
「オウカ?忠臣と同じだな。」
「うむ、少し違うが概ね同じだ。
随分昔のことだが、我の一族の中で、人里へ下りていって人と交わった者がおった。その者は毒を操る妖でな。ここを去ると言ったときは波乱を巻き起こした。妖魔が人と交わると言うのだ、無理もない。しかし我の一族はそれを許した。先代は寛容であったのだな。
しかし、その代わりにある命令を下した。桜が現れし時は必ず戻れ、と。命令というより呪術のような類いだ。
その者は桜華ではなく桜花と名を変え、今はその子孫は完全なヒトとして人間界で暮らしている。
その子孫が、燐よ、お前だ。」
「……………………え?」
歴史を語られていたかと思いきや、最後にぐっと現実に引き戻された。いや、現実にしてはあまりにも突拍子で、信じられない。やっぱり夢なのだろうか。
「え……いや、いやいやいや、そんなまさか、私はただのしがない人間で、」
「信じられぬか。無理もない、が。何か毒を盛られた際、効かなかった事はないか。毒虫に刺されても平気だったことは」
「毒は盛られた事はないです……あ、麻酔……効かないから、歯医者が嫌いで……蚊に刺されても、痒くならない……いや、でもこんなのただの体質で、」
「身体のどこかに、桜の痣はないか。」
桜の痣。
いつの日か、左のわき腹に白い痣を見つけたときの事を思い出した。それが桜の花に似ていて、幼心に綺麗だと思った。
そこにそうあるのが当たり前で、誰にも話した事はなかったけれど、今でもその痣はそこにある。
「あり、ます……」
「それが我の一族だという確固たる証拠だ。……数百年の時を経て、桜華の元に戻ってきたか。」
そう言われても信じられた話ではないけれど、自信たっぷりにそう言われては信じるしかない。
「……つまり、こいつはお前の一族の子孫で、ただの人間なんだな。それはわかった。だがこいつは何故俺の事を知っていたのか、説明がつかん」
「それもそうだ。……燐よ、何故グスタフを知っている。」
「え、ええと…………」
ここでゲームのキャラクターだからです、とは言いにくい。けれど嘘を言って取り繕う事はできない。なによりあのグスタフに不振な目を向けられていることが我慢ならない。
「あの…………上手く伝わるかどうか、わからないんですが……。」