皇帝陛下と恋のしがらみ
坂本探偵事務所所長である龍馬とお竜は便宜的に夫婦と呼ばれているが、紙の上での婚姻をしているわけではない。
というより、お竜には戸籍がないから婚姻はできない。お竜は大蛇 の眷属で、人間ではないのだ。
お竜の詳しい種族名を以蔵は知らない。聞いていたとしても忘れた。
そんなお竜と仲睦まじい龍馬の許には時折、怪異との親和性を求めての依頼がある。
そういった客はたいてい『太い』し、客同士で評判を共有するから、とてもありがたい。普段以蔵が浮気調査や家出人探しなどのケチな仕事をしても糊口をしのげているのは、彼らのおかげである。
以蔵もどうやらそちら側の素質があるらしく、その手の案件の際に龍馬の手足となって動いている。癪 ではあるが、雇われの身なのでしかたない。以蔵にできるのは目の前の害悪を斬ることだけだ。
もっともこの仕事の一環で立香と出逢えたのだから、そこには感謝すべきかもしれない。
今回の事件を、龍馬は『ビザンツ皇帝の醜聞』事件と名づけた。
東欧の小国の王が秘密裏に来日して、龍馬に探しものの依頼をした。以蔵にとって不本意なことに立香も巻き込まれ、大立ち回りの末に事件は解決された。
立香の勇ましさには涙が出る。今回もすんでのところで救い出し、護りきれたからいいものの――。
びっちり説教したが、立香は目の前の者に危機が迫ればまた同じことをするだろう。
困ったものだが、以蔵はそんな立香も愛している。
というより、お竜には戸籍がないから婚姻はできない。お竜は
お竜の詳しい種族名を以蔵は知らない。聞いていたとしても忘れた。
そんなお竜と仲睦まじい龍馬の許には時折、怪異との親和性を求めての依頼がある。
そういった客はたいてい『太い』し、客同士で評判を共有するから、とてもありがたい。普段以蔵が浮気調査や家出人探しなどのケチな仕事をしても糊口をしのげているのは、彼らのおかげである。
以蔵もどうやらそちら側の素質があるらしく、その手の案件の際に龍馬の手足となって動いている。
もっともこの仕事の一環で立香と出逢えたのだから、そこには感謝すべきかもしれない。
今回の事件を、龍馬は『ビザンツ皇帝の醜聞』事件と名づけた。
東欧の小国の王が秘密裏に来日して、龍馬に探しものの依頼をした。以蔵にとって不本意なことに立香も巻き込まれ、大立ち回りの末に事件は解決された。
立香の勇ましさには涙が出る。今回もすんでのところで救い出し、護りきれたからいいものの――。
びっちり説教したが、立香は目の前の者に危機が迫ればまた同じことをするだろう。
困ったものだが、以蔵はそんな立香も愛している。
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