「ここが、雁夜さんのお家ですか」

家、というより屋敷のようなご立派な建物がそこにはあった。


当たり前ではあるが私はごく普通の女子高生のため成人男性をここまで支えて歩いてきて体力の限界だ。


それを察したのか彼は私から離れた。

「ありがとう、星太ちゃん。お礼にお茶、出すよ。」

「え、あの。」

「本当はあんまり家に、入れたくないんだけど…………」

「すみません……！余計なことしちゃいましたよね……」

自分でも余計なことだったと思う。支えていたとはいえ、無理にここまで歩かせてしまって、家まで来てしまうのは本当にどうかと思う。

「いや、そうじゃないんだ。とりあえず入って。」

言われるがまま私は間桐低に足を踏み入れた。








玄関の先は見た目通り豪勢な内装だった。


相変わらず雁夜さんはよろよろとしていて申し訳なさが募るばかりだった。

「あの、本当に大丈夫なので休んでください。」


「いや、さっきよりは動けるようになったから、大丈夫。それに……」



なんで連絡できなかったのかきちんと君には話しておきたいから。

と優しい顔で言われる。







リビングらしきところに案内されお茶を出される。

「ありがとうございます。」

「こちらこそ、ありがとう。」

本題なんだけど、と彼が口にした時だった。


「おい、そこの小娘はなんだ？雁夜」



ドスの効いた声の杖をついたお爺さんがいた


「あんたには関係ない」

「雁夜、お前は今遊んでいる場合ではないことぐらい分かっているだろうな？」

コツコツとこちらへ向かってくる。

異様な雰囲気に私は動けなかった。


気がついた時にはすぐそばにいた

品定めするような視線に悪寒が走る
「ほぉ……。雁夜、おぬしこの小娘もあの蟲蔵に放り込むか？」

「何言ってんだよ」

「こやつ、どこの子か知らんが魔術回路が人並外れておる。正直、お前を育てるよりこいつを育てた方が勝機はありそうじゃな」

理解が追いつかない。


蟲蔵？

魔術回路？

勝機？

一体彼らはなんの話をしているんだと雁夜さんの方をみる

すると彼は苦い顔をした

「だから君をここに連れてきたくはなかったんだ。」

「な、何の話ですか」

「…………信じられないとは思うけど、俺はね魔術師の子で魔術師になって聖杯戦争に勝たなきゃいけないんだ」

意味わかんないだろ？と苦笑される。








あの頃は魔術なんて信じてなかったし、雁夜さんがどんな闇を抱えてるかなんて知りもしなかった。



すべてはあの日からはじまった。