艶のある生地で作られた黒いロングコートに左肩からかけられたロングコートよりも濃く闇に溶け込むような艶がないマントはふわりふわりと全身を覆うようだった。

黒光りするタイルの敷き詰められた魔法省内をわが物顔で歩くのはまだ二十代にさしかかるか否かに見える少女。

後ろでくくられた髪はオーロラのようで右サイドでは切り揃えられ、左サイドでは三つ編みにされている。

コツコツと去る後ろ姿に誰かが噂した。

「なあ、きいたか？ヴィクトリア・ノエル」

「やべえよな。死喰い人を今週だけで何人だっけ……5人？」

「8人だよ。先週は11人……アラスタームーディもやべえけど……闇祓いには許されざる呪文の許可があるとはいえまさか……」



「殺しちまうとはな」