名前に関して“その名の通り“などといった記述があるかもしれませんが読みとばしてください
賢者の石
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なぜだか翌日の朝はかなり苦しかった。もともと朝も夜も弱いが目覚ましよりも30分遅く目覚めた。早めに設置していてよかった。
「ミッシェル……早く起きて……目覚まし鳴っているわよ。ミッシェル!」
「わ、かったわ……」
重たい体をみっともないところを見せたくないというプライドだけで起き上がる。流石に昨日であったばかりの少女に醜態を晒すわけにはいかない。体がひどく重い。
心臓がどくんどくんと主張する。脈がいつもより早く波打っている。冷汗が額を流れた。鈍痛が頭を走った。昨日、薬を飲まなかったからだろうか。一晩飲まなかったくらいでここまでなるのか。一晩で変わるって私の病ってなに?
談話室の出入口である絵画を通る。一度閉まったら合言葉を言わないかぎり開かない扉にどきどきするがまあハーマイオニーもいるし大丈夫だろう。そういえば合言葉ってなんだっけ?……ハーマイオニーから離れないようにしよう。
階段を動かないことを祈りながら降りる。壁にかけられた驚くほどの量の絵画や動く階段にわくわくするが目的地に行くために動くならまだしも目的地以外の場所に着かれるのは勘弁なので休み時間とかにでものんびりのぼりたい。あと動かれるとバランス感覚が不安になる。なぜエスカレーターみたいな感じで動かないのだろうか。
というか階段を降りる度に体が上下に動くからか頭痛がする…。
何メートルもある開けるのが億劫そうな大きな扉を潜ると空腹を刺激するできたてのおいしそうな香りが鼻をくすぐる。
食堂は朝から騒がしかった。天井を見上げるが朝だからか昨晩のように星空や蝋燭は広がってはいなかった。
ハーマイオニーが起こしてくれたおかげで私たちは比較的早くにこれたようで騒がしいといえば騒がしいもののそこまで人は多くなかった。時間がたつごとに人が増えていく。これ以上に賑やかになると思えば少しばかり憂鬱であった。
水を飲み食事をとると体調はだいぶ回復した。食事の偉大さを実感する。
お腹が満たされて食後の紅茶をのんびりと傾けているとやっとハリーがやってきた。少しばかり遅いのではないだろうか。
「おはよう、ハリー」
「おはよう!ミッシェル!」
嬉しそうに笑うハリーに私も何だか嬉しくって笑みを返す。ハリーの横にいた人物に目を留め、彼にも挨拶する。
「おはよう、Mr.ウィーズリー」
微笑みながら告げるも何も返って来ない。これは嫌われてしまったのだろうか、困ったなあ、と思い首を傾げているとロンが私の方を向き目を合わせ口を開けた。
「き、君さ、僕のことMr.ウィーズリーなんかじゃなくてロンって呼んでも問題ないよ」
思ってもみなかった言葉に少しの間目を見開く。黙ってしまった私に不安そうな色を宿した瞳を私からはずして焦ったようにロンが付け足す。
「僕も君のことミッシェルて呼ぶからさ。いいだろ?……嫌なら…別にいいんだけど…」
尻すぼみになっていき口ごもるロンの言葉に思わず微笑ましくて笑ってしまった。
「な、なんだよ」
「……い、いいえ、ただ……そうね、ありがとう。ロン」
その時私の胸に広がっていたのは間違いなく安堵感だった。
***
ハリーとロンがせっせと食事を掻き込んでいるのをぼーっと見つめながら紅茶のカップを回す。
「ホゥー」という鳴き声に紅茶を飲みながら目を開いた。大量のフクロウがやってくるのを上目でとらえる。紅茶の中に羽やら色々なものが入ったら嫌なのでさっさとを飲み終えた。
キラキラとしたある種派手なフクロウがこちらへと飛んでくる。「わあ」という歓声が周囲から上がった。ハーマイオニーの「まあ」って声かわいいなー、好き。
立派にお使いを果たした利口なアンジュをよしよしと撫でながら足から手に渡された手紙をじっと見る。薬を頼んだはずなのに小包がないことに小首をかしげていると届いた手紙に目を瞬かせる。
あれ…これもしかして…
どこかからか息を呑む声が聞こえたなあとぼんやり思っていると私の背中のすぐそばでほぉーっほぉーっと言う音と共に「いたっやめろっおいっ」という途切れ途切れのかわいらしい聞き覚えのある声の小さな悲鳴が聞こえる。
私の背後を見たロンが口を手で覆いながら吹き出してしまって後ろの人物を察する。
「あらあらあらどうしたの?ドラコ」
私がそう尋ねるとフクロウはドラコをつつくのをやめ、上で旋回しながら満足げに「ホゥー」と鳴いた。ドラコは気まずげに私から顔を背ける。昨日のことがあったからだろう。昨日のことがなかったかのように振る舞う私に対して微かな苛立ちさえ抱いているようだった。
「……フクロウが…」
「あら…お母様のフクロウね。私わたくしにはお父様から私達宛に手紙がきたわ。」
口を開こうとしたドラコを無視して言葉を続ける。
「だけれど…これ吠えメールなのよね」
「え?」
「ちょっと待ってくださ…!姉様!!」
焦ったように声を荒げるドラコを放ってローブのポケットからペーパーナイフを出して手紙の封を切る。お父様の声が響き注目が集まる。ドラコが嘆く。
「あー!」
「あら、本当に吠えメールなのね」
「ミッシェルとドラコが一緒か。姉弟仲が良いみたいで何よりだ」
いやお前がそうさせたんだろう、どんな八百長だ。という思いは押し殺して笑みを浮かべ聴く。いったいなぜ吼えメールなんて物騒なもの送り込んできたんだろう。疑問を抱くが私は次に続いた言葉でなんとなくの理由を把握した。
「まずは入学おめでとう。ドラコ、ミッシェル。ミッシェルはグリフィンドールにドラコはスリザリンに入ったと聞いた。何か寮や学校…まあ何でも構わないが何か困ったことがあればすぐに連絡しなさい」
なるほど、牽制だな、と思う。ありがたい限りだ。こいつ苗字変わったけれどうちの娘だからな!手出すんじゃねよ!家が黙ってねえからな!ってことである。
あと、お父様やドラコの話し方が気取った言い方だといわれる理由がわかる。ハリーやハーマイオニーと話した後だと耳に聞こえる発音に違和感がある。両親や周りがずっとそうだったため今更変えることは難しいけれど。うーんこの差は何だろう、魔法界独特の違いなのかマグルと同じくクィーンズイングリッシュというものかな…。
「入学祝いを後ほど送る」
「ねえ、あなた…「少し待ってくれ、ナルシッサ今吼えメールを…」まあ!吼えメールですって?ミッシェルとドラコに?ああ…なんでわたくしにおっしゃらないの!……ミッシェル、ドラコ、元気かしら?学校生活は…「ナルシッサ、別にそれは吠えメールで送らなくても良いのではないか?」…なぜ学校になんて行かなくてはならないの?「ナルシッサ?」まだあの子達はあんなに小さいのよ…?「シシー??」…わかっている、わかっているわ、ルシウス。…そうだわ!ドラコ、ミッシェル。お友達ができたらぜひ紹介してちょうだいね?わたくし、楽しみにしているわ」
「それは…そうだな、見極めなくては」
また手紙を送らなくてはな、と考えていると爆弾をぶっこまれた。かわいそうなドラコは入学早々恥ずかしいのか顔を真っ赤にして両手で覆っている。うん、かわいい。私もそうしたいところだけれど意識を逸らすことと姉の矜持でなんとか気にしていない風を装う。うそ、少し困っているよう見えているかも。
これだけ聞いてしまったら誰も授業すらはじまっていないとは夢にも思わないだろうな。
「ずいぶん……過保護なんだね」
かわいそうなドラコはハリーのその言葉に撃沈した。
「それと、ミッシェル」
「はいお母様」
意識を逸らしていたところにお母様の声が聞こえ反射的に返事をしてしまう。私も沈みたかった。手紙は私の耳元までやってきて小さな声で囁く。
「お薬は見あたらなかったからセブルスに頼んでおいたわ。昼頃に部屋に伺いなさい」
それだけ囁くと手紙は私の耳元からまたふわふわと離れ高く昇る。
「ではお元気で。わたくしのかわいいミッシェル、ドラコ」
それだけ告げると手紙はバラバラになりふわふわと降ってきた。床や机の上に落ちるとまるで雪のように溶け消える。……吼えメールってこんなのだっけ?
哀れなドラコはまだ朝だというのにどこかぐったりしていた。顔を覆った手から覗く耳は真っ赤である。後ろに駆けつけたゴイルとクラッブも気の毒そうにドラコを見つめていた。私はなんとも言い難い感情を抱きながら薄い笑みを浮かべていた。なんだか無性に泣きたかった。
……はっっずい。せめて、せめて、お母様が出てこなければ…!
***
朝のあの一件のお陰かそれともせいなのか周りからこそこそ見られたりなんなら面と向かってどういうことなのか尋ねられることはあれど罵倒されることは特になくそこそこ平穏な1日を過ごしている。私は節々で心を無にしながら授業を受けたりしていた。授業は楽しかった。うん。
驚くべきことはスリザリン生に何度か話しかけられたことである。遠巻きにしつつも授業の隙間にちょこちょこと。あれだろう。あの言葉のおかげだろう。友人を紹介しろという言葉の。
よくもわるくも純血一族は魔法界でまだまだ幅を利かせておりその代表格であるマルフォイ家に気に入られたら将来安泰──ぐらいに思ったのだろう。まあその恩恵に幼少期からだいぶ預かっている私に言えることはないが。
うだうだといってはいるもののやはり授業は楽しかった。初回ということもあって説明が大半を占める授業もあったけれど、それでも。蝋燭と重たいカーテンの間から覗く光だけが頼りの少し暗めの石造りの教室で羊皮紙と共に踊るのは羽ペン。生徒たちはみな一様にローブをまとい教壇に立つ先生に至ってはローブに魔女帽まで被っている。これでワクワクせずにいられようか。
そうして楽しみつつ授業のたびに四時間分の重たい本を抱えながら廊下を駆けているとあっという間に昼休みになった。寮に教科書を置き次の授業までの間に昼食をとることとなる。ちなみに合言葉は”カブート ドラコニス”だった。さてさて、お昼休みということで私は用事を済ませなくてはならない。
「ねえ、ミッシェル。あの、一緒に食堂に行かない?」
「申し訳ないのだけれど、私少し寄らなくてはならない所があるの。また誘ってくださらない?」
「……そう。わかったわ」
ハーマイオニーの声が沈んだことに多少の罪悪感を覚えるがしかたがない。私の健康のためなのだ。許して、ハーマイオニーと思いながら手を振りわかれる。食欲はあまりわかなかったので、一緒に行ってもきっとろくに食事をとれないだろうから一緒に行かなくて正解かもしれないと思考を巡らせつつ廊下を歩く。初めて行く場所であるものの映画を見ていたお陰かなんとなくの場所はわかる。
階段をおり緊張で逸る呼吸を整えながら、ドアをノックすると扉越しに「入れ」と告げられおそるおそる扉を開く。
「先生……」
「ミス……あーポッター?」
「何でもよろしいですわ、先生。呼びやすいように…呼びたいようにお呼びになって下さい」
「そういうわけにはいかんだろう。……それで?何の用できた?まさか呼び名の確認のために来たわけではあるまい?」
「先生、私……えーとその私、用事がありまして」
「薬の件であろう?」
「ええ」
「……君たち一家は我輩を梟か何かだと勘違いしているのではあるまいな。今調合しておる。晩には、出来上がるだろう」
先生の嫌味はスルーするためにある。別に先生もそこまで本気でいっているわけではないだろうから。質の悪い冗談や、ブラックジョークの類いだと思っている。……少なくとも私や、私達一家は。
「わかりました。ありがとうございます。……あの」
その言葉を聞いて聞きたいと思っていたことを聞こうと口を開く。
「なんだね?」
黒く硬質な瞳を向けられ決意が揺らいだ。
「あーいえ、ただ不思議なものだと思いまして。私、これから先生のことスネイプ先生と呼ばねばなりませんでしょう?ドラコも」
「さようで。」
そう言ったのち再度開かれた口に慌てて言葉を紡ぐ。嫌味の一つでも言ってやろうかという意地の悪そうな表情だったものだから。
「けど、家で先生のことを先生と呼んでいたのは私だけでしたから。違和感がありましてね」
その言葉に先生は得心がいったかのように頷いた。もともと何人かの家庭教師が着いていたのだがホグワーツが休暇であるときにお父様やお母様に呼び出された先生が私に魔法薬について教えてくれていたことがある。今思うとずいぶんとまあ贅沢なものだ。当時私は先生とのみ呼んでいた。両親はセブルスと呼んでいたが。
「ああ……なるほど、それは……そ…うですな」
「それにしても先生は調合できるのですね、私の薬。さすがは魔法薬学の教授ですわ」
「……もとを辿れば我輩が考案した薬だ。当たり前のこと」
「そうだったんですの!?……あの、先生はしってらっしゃるのですか?私の病が何なのか……」
「ルシウスはお前に何も言わなかったのか? 本当に?」
「…はい……。」
「……ふむ…。…血の病だ………」
囁くように先生は告げた。その先生の言葉は私に混乱だけをもたらした。
「え? 血……ですか?」
何それ、物騒な…と思いながら聞いていて、ふと顔をあげるとあまりに先生が真面目で…硬い表情をしていたので思わず口元に浮かべていた笑みを消す。
「二度は言わん。……晩餐前に薬を取りに来い」
「わかりました。」
それだけ言って固く唇を結んだ先生は…先生の瞳はどこか泣いているように見えた。
「ミッシェル……早く起きて……目覚まし鳴っているわよ。ミッシェル!」
「わ、かったわ……」
重たい体をみっともないところを見せたくないというプライドだけで起き上がる。流石に昨日であったばかりの少女に醜態を晒すわけにはいかない。体がひどく重い。
心臓がどくんどくんと主張する。脈がいつもより早く波打っている。冷汗が額を流れた。鈍痛が頭を走った。昨日、薬を飲まなかったからだろうか。一晩飲まなかったくらいでここまでなるのか。一晩で変わるって私の病ってなに?
談話室の出入口である絵画を通る。一度閉まったら合言葉を言わないかぎり開かない扉にどきどきするがまあハーマイオニーもいるし大丈夫だろう。そういえば合言葉ってなんだっけ?……ハーマイオニーから離れないようにしよう。
階段を動かないことを祈りながら降りる。壁にかけられた驚くほどの量の絵画や動く階段にわくわくするが目的地に行くために動くならまだしも目的地以外の場所に着かれるのは勘弁なので休み時間とかにでものんびりのぼりたい。あと動かれるとバランス感覚が不安になる。なぜエスカレーターみたいな感じで動かないのだろうか。
というか階段を降りる度に体が上下に動くからか頭痛がする…。
何メートルもある開けるのが億劫そうな大きな扉を潜ると空腹を刺激するできたてのおいしそうな香りが鼻をくすぐる。
食堂は朝から騒がしかった。天井を見上げるが朝だからか昨晩のように星空や蝋燭は広がってはいなかった。
ハーマイオニーが起こしてくれたおかげで私たちは比較的早くにこれたようで騒がしいといえば騒がしいもののそこまで人は多くなかった。時間がたつごとに人が増えていく。これ以上に賑やかになると思えば少しばかり憂鬱であった。
水を飲み食事をとると体調はだいぶ回復した。食事の偉大さを実感する。
お腹が満たされて食後の紅茶をのんびりと傾けているとやっとハリーがやってきた。少しばかり遅いのではないだろうか。
「おはよう、ハリー」
「おはよう!ミッシェル!」
嬉しそうに笑うハリーに私も何だか嬉しくって笑みを返す。ハリーの横にいた人物に目を留め、彼にも挨拶する。
「おはよう、Mr.ウィーズリー」
微笑みながら告げるも何も返って来ない。これは嫌われてしまったのだろうか、困ったなあ、と思い首を傾げているとロンが私の方を向き目を合わせ口を開けた。
「き、君さ、僕のことMr.ウィーズリーなんかじゃなくてロンって呼んでも問題ないよ」
思ってもみなかった言葉に少しの間目を見開く。黙ってしまった私に不安そうな色を宿した瞳を私からはずして焦ったようにロンが付け足す。
「僕も君のことミッシェルて呼ぶからさ。いいだろ?……嫌なら…別にいいんだけど…」
尻すぼみになっていき口ごもるロンの言葉に思わず微笑ましくて笑ってしまった。
「な、なんだよ」
「……い、いいえ、ただ……そうね、ありがとう。ロン」
その時私の胸に広がっていたのは間違いなく安堵感だった。
***
ハリーとロンがせっせと食事を掻き込んでいるのをぼーっと見つめながら紅茶のカップを回す。
「ホゥー」という鳴き声に紅茶を飲みながら目を開いた。大量のフクロウがやってくるのを上目でとらえる。紅茶の中に羽やら色々なものが入ったら嫌なのでさっさとを飲み終えた。
キラキラとしたある種派手なフクロウがこちらへと飛んでくる。「わあ」という歓声が周囲から上がった。ハーマイオニーの「まあ」って声かわいいなー、好き。
立派にお使いを果たした利口なアンジュをよしよしと撫でながら足から手に渡された手紙をじっと見る。薬を頼んだはずなのに小包がないことに小首をかしげていると届いた手紙に目を瞬かせる。
あれ…これもしかして…
どこかからか息を呑む声が聞こえたなあとぼんやり思っていると私の背中のすぐそばでほぉーっほぉーっと言う音と共に「いたっやめろっおいっ」という途切れ途切れのかわいらしい聞き覚えのある声の小さな悲鳴が聞こえる。
私の背後を見たロンが口を手で覆いながら吹き出してしまって後ろの人物を察する。
「あらあらあらどうしたの?ドラコ」
私がそう尋ねるとフクロウはドラコをつつくのをやめ、上で旋回しながら満足げに「ホゥー」と鳴いた。ドラコは気まずげに私から顔を背ける。昨日のことがあったからだろう。昨日のことがなかったかのように振る舞う私に対して微かな苛立ちさえ抱いているようだった。
「……フクロウが…」
「あら…お母様のフクロウね。私わたくしにはお父様から私達宛に手紙がきたわ。」
口を開こうとしたドラコを無視して言葉を続ける。
「だけれど…これ吠えメールなのよね」
「え?」
「ちょっと待ってくださ…!姉様!!」
焦ったように声を荒げるドラコを放ってローブのポケットからペーパーナイフを出して手紙の封を切る。お父様の声が響き注目が集まる。ドラコが嘆く。
「あー!」
「あら、本当に吠えメールなのね」
「ミッシェルとドラコが一緒か。姉弟仲が良いみたいで何よりだ」
いやお前がそうさせたんだろう、どんな八百長だ。という思いは押し殺して笑みを浮かべ聴く。いったいなぜ吼えメールなんて物騒なもの送り込んできたんだろう。疑問を抱くが私は次に続いた言葉でなんとなくの理由を把握した。
「まずは入学おめでとう。ドラコ、ミッシェル。ミッシェルはグリフィンドールにドラコはスリザリンに入ったと聞いた。何か寮や学校…まあ何でも構わないが何か困ったことがあればすぐに連絡しなさい」
なるほど、牽制だな、と思う。ありがたい限りだ。こいつ苗字変わったけれどうちの娘だからな!手出すんじゃねよ!家が黙ってねえからな!ってことである。
あと、お父様やドラコの話し方が気取った言い方だといわれる理由がわかる。ハリーやハーマイオニーと話した後だと耳に聞こえる発音に違和感がある。両親や周りがずっとそうだったため今更変えることは難しいけれど。うーんこの差は何だろう、魔法界独特の違いなのかマグルと同じくクィーンズイングリッシュというものかな…。
「入学祝いを後ほど送る」
「ねえ、あなた…「少し待ってくれ、ナルシッサ今吼えメールを…」まあ!吼えメールですって?ミッシェルとドラコに?ああ…なんでわたくしにおっしゃらないの!……ミッシェル、ドラコ、元気かしら?学校生活は…「ナルシッサ、別にそれは吠えメールで送らなくても良いのではないか?」…なぜ学校になんて行かなくてはならないの?「ナルシッサ?」まだあの子達はあんなに小さいのよ…?「シシー??」…わかっている、わかっているわ、ルシウス。…そうだわ!ドラコ、ミッシェル。お友達ができたらぜひ紹介してちょうだいね?わたくし、楽しみにしているわ」
「それは…そうだな、見極めなくては」
また手紙を送らなくてはな、と考えていると爆弾をぶっこまれた。かわいそうなドラコは入学早々恥ずかしいのか顔を真っ赤にして両手で覆っている。うん、かわいい。私もそうしたいところだけれど意識を逸らすことと姉の矜持でなんとか気にしていない風を装う。うそ、少し困っているよう見えているかも。
これだけ聞いてしまったら誰も授業すらはじまっていないとは夢にも思わないだろうな。
「ずいぶん……過保護なんだね」
かわいそうなドラコはハリーのその言葉に撃沈した。
「それと、ミッシェル」
「はいお母様」
意識を逸らしていたところにお母様の声が聞こえ反射的に返事をしてしまう。私も沈みたかった。手紙は私の耳元までやってきて小さな声で囁く。
「お薬は見あたらなかったからセブルスに頼んでおいたわ。昼頃に部屋に伺いなさい」
それだけ囁くと手紙は私の耳元からまたふわふわと離れ高く昇る。
「ではお元気で。わたくしのかわいいミッシェル、ドラコ」
それだけ告げると手紙はバラバラになりふわふわと降ってきた。床や机の上に落ちるとまるで雪のように溶け消える。……吼えメールってこんなのだっけ?
哀れなドラコはまだ朝だというのにどこかぐったりしていた。顔を覆った手から覗く耳は真っ赤である。後ろに駆けつけたゴイルとクラッブも気の毒そうにドラコを見つめていた。私はなんとも言い難い感情を抱きながら薄い笑みを浮かべていた。なんだか無性に泣きたかった。
……はっっずい。せめて、せめて、お母様が出てこなければ…!
***
朝のあの一件のお陰かそれともせいなのか周りからこそこそ見られたりなんなら面と向かってどういうことなのか尋ねられることはあれど罵倒されることは特になくそこそこ平穏な1日を過ごしている。私は節々で心を無にしながら授業を受けたりしていた。授業は楽しかった。うん。
驚くべきことはスリザリン生に何度か話しかけられたことである。遠巻きにしつつも授業の隙間にちょこちょこと。あれだろう。あの言葉のおかげだろう。友人を紹介しろという言葉の。
よくもわるくも純血一族は魔法界でまだまだ幅を利かせておりその代表格であるマルフォイ家に気に入られたら将来安泰──ぐらいに思ったのだろう。まあその恩恵に幼少期からだいぶ預かっている私に言えることはないが。
うだうだといってはいるもののやはり授業は楽しかった。初回ということもあって説明が大半を占める授業もあったけれど、それでも。蝋燭と重たいカーテンの間から覗く光だけが頼りの少し暗めの石造りの教室で羊皮紙と共に踊るのは羽ペン。生徒たちはみな一様にローブをまとい教壇に立つ先生に至ってはローブに魔女帽まで被っている。これでワクワクせずにいられようか。
そうして楽しみつつ授業のたびに四時間分の重たい本を抱えながら廊下を駆けているとあっという間に昼休みになった。寮に教科書を置き次の授業までの間に昼食をとることとなる。ちなみに合言葉は”カブート ドラコニス”だった。さてさて、お昼休みということで私は用事を済ませなくてはならない。
「ねえ、ミッシェル。あの、一緒に食堂に行かない?」
「申し訳ないのだけれど、私少し寄らなくてはならない所があるの。また誘ってくださらない?」
「……そう。わかったわ」
ハーマイオニーの声が沈んだことに多少の罪悪感を覚えるがしかたがない。私の健康のためなのだ。許して、ハーマイオニーと思いながら手を振りわかれる。食欲はあまりわかなかったので、一緒に行ってもきっとろくに食事をとれないだろうから一緒に行かなくて正解かもしれないと思考を巡らせつつ廊下を歩く。初めて行く場所であるものの映画を見ていたお陰かなんとなくの場所はわかる。
階段をおり緊張で逸る呼吸を整えながら、ドアをノックすると扉越しに「入れ」と告げられおそるおそる扉を開く。
「先生……」
「ミス……あーポッター?」
「何でもよろしいですわ、先生。呼びやすいように…呼びたいようにお呼びになって下さい」
「そういうわけにはいかんだろう。……それで?何の用できた?まさか呼び名の確認のために来たわけではあるまい?」
「先生、私……えーとその私、用事がありまして」
「薬の件であろう?」
「ええ」
「……君たち一家は我輩を梟か何かだと勘違いしているのではあるまいな。今調合しておる。晩には、出来上がるだろう」
先生の嫌味はスルーするためにある。別に先生もそこまで本気でいっているわけではないだろうから。質の悪い冗談や、ブラックジョークの類いだと思っている。……少なくとも私や、私達一家は。
「わかりました。ありがとうございます。……あの」
その言葉を聞いて聞きたいと思っていたことを聞こうと口を開く。
「なんだね?」
黒く硬質な瞳を向けられ決意が揺らいだ。
「あーいえ、ただ不思議なものだと思いまして。私、これから先生のことスネイプ先生と呼ばねばなりませんでしょう?ドラコも」
「さようで。」
そう言ったのち再度開かれた口に慌てて言葉を紡ぐ。嫌味の一つでも言ってやろうかという意地の悪そうな表情だったものだから。
「けど、家で先生のことを先生と呼んでいたのは私だけでしたから。違和感がありましてね」
その言葉に先生は得心がいったかのように頷いた。もともと何人かの家庭教師が着いていたのだがホグワーツが休暇であるときにお父様やお母様に呼び出された先生が私に魔法薬について教えてくれていたことがある。今思うとずいぶんとまあ贅沢なものだ。当時私は先生とのみ呼んでいた。両親はセブルスと呼んでいたが。
「ああ……なるほど、それは……そ…うですな」
「それにしても先生は調合できるのですね、私の薬。さすがは魔法薬学の教授ですわ」
「……もとを辿れば我輩が考案した薬だ。当たり前のこと」
「そうだったんですの!?……あの、先生はしってらっしゃるのですか?私の病が何なのか……」
「ルシウスはお前に何も言わなかったのか? 本当に?」
「…はい……。」
「……ふむ…。…血の病だ………」
囁くように先生は告げた。その先生の言葉は私に混乱だけをもたらした。
「え? 血……ですか?」
何それ、物騒な…と思いながら聞いていて、ふと顔をあげるとあまりに先生が真面目で…硬い表情をしていたので思わず口元に浮かべていた笑みを消す。
「二度は言わん。……晩餐前に薬を取りに来い」
「わかりました。」
それだけ言って固く唇を結んだ先生は…先生の瞳はどこか泣いているように見えた。
