闇夜に覗くテレスコープ

side:Regulus

重い前髪から覗く艶々とした黒い瞳はきらきらと輝いていた。
その目は大きく見開かれ薄い唇が形を紡いだ。

「どうして」

─────────

それは新学期から一月が経たないほどのことであった。
去年から変わらぬ友人という名の取り巻きの面々は由緒ある純血一族の子息達で構成されていた。
昼休み、食堂を出て渡り廊下を歩いていた。ふと、中庭を見るとローブを着た一団が視界に入る。一団。何を集まっているのだろうか?

「あれは何です?」

「ん?」

そう尋ねてその方向に立っていた友人が退いたことで視界が開ける。そして、そこで何が行われているのかに気づいて不快さに眉を顰めた。

「あれは何をしているのでしょうか?」

声に棘がこもる。強い不快感。
何人かの男子生徒に囲まれてうずくまっている生徒。
眼前で行われているのは一般にいじめと呼ばれる行為だろう。

「あれは…おい、座り込んでいるのうちの寮生じゃないか?」
「あいつ、確か1年だぞ。どうする?」
「でも純血じゃないだろう」
「だがスリザリンだ」

友人たちから視線を向けられレギュラスは息をつく。この中でもっとも家柄の良い自身に判断を委ねるということだろう。

「……少し注意をしてきます」

流石に現場に居合わせてしまった以上見て見ぬふりはできない。陳腐な正義感からではなく。人道的に。そして世間体を気にした打算に塗れた行動であった。
多少スリザリン生を目の敵にして嫌がらせやいじめにちかい“いたずら“を行う自身の兄への意趣返しがこもっていないといえば嘘になるが。小さく息を吐いて歩みを進める。
いじめを行っていたのはなんとスリザリン生であった。

軽く頭痛がして眉間をこする。

教授に見つかって寮の点数を引かれたらどうするつもりだったのだろう。第一、なぜ同寮のそれも後輩と思しき生徒をいじめるのか甚だ理解できない。その愚かで残念な頭の持ち主たちに軽い軽蔑の念を抱いた。

「何をなさっているのでしょうか?先輩方」
「ブラック…」
「教授に見つかったらどうなさるおつもりでしょうか?それにそちらの生徒はスリザリン生では?」
「……こいつが悪いんだ。こいつは穢れた血の…」
「…マクゴナガル教授がそろそろ次の変身術の授業のためにお通りになられる頃かと」

目撃されると厄介では?と続けるとマクゴナガルの厳しさをよく知っているためか確かに、と頷いて3年の生徒たちは走り去っていく。一人の生徒がレギュラスのことを気にしてか一度背後を振り返っていたが。

さて、いじめられていた下級生は、とレギュラスが振り返って見ているとさっさと立ち上がりローブに着いた泥を払っていた。まるで自身など存在しないかのように本を拾ってさっさと去ろうとする様子に(あんなことがあったのに、なんと図太いのか)と少し呆れを感じながらも杖を振り清めてやるとまるで今こちらに気づいたかのようにやっとこちらを振り向いた。
前髪に隠れた瞳と目が合う。
声をかける。

「大丈夫ですか?」
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