放課後のテルテル坊主

「ここからだとさ、ちょうどお前が走ってるコースが見えたんだよ。でもちょっと目を離した隙に、いなくなっちまったから、ヒマでさ」


咄嗟に、聞かなければ良かったと思った。


無論、嫌だったからではない。
むしろ真逆だ。

顔が緩んでしまって、仕方ないのである。

馬鹿みたいだ、と思いながら、唇をぎゅっと引き結ぶ。
まさか、本当に自分を見ていたとは思わなかったのだ。
嬉しいような、くすぐったいような、妙な気分だった。


「何だよ、亮子。変な顔して」
「な、変な顔とは失礼だ……」

言いかけた言葉が、止まってしまった。
香介の手に、何やら白いものが見える。

…目が、合ったような気がした。

「何だい…それ」
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