an oak leaf

「あんたもだろう?」

顔を上げずに、歩が言った。
ぼんやりして、思考が追いつかない。

「はぁ…何がです?」
「柏の葉」

言いながら、空になった皿と湯飲みを取って、腰を上げる。
歩は決して、彼女を見ない。



「最後まで、見届けるんだろう?」



消え入りそうな声で。

だが、この静かな部屋で、聞き間違えるハズもなくて。

重ねた食器が、かちゃり、と音を立てた。


自然と、笑みが広がる。

「もちろんですよ!」

だって、ハッピーエンドなんでしょう?という、少女の問い掛けに、歩はただ、微笑んだだけだった。
俺は自分も、未来も信じてはいないから、と。

それでも。
その笑みの優しさは、信じられると思うから。


――最後まで、見届けさせてくれるんですよね?


ひよのの呟きは、食器を洗う水の音に、掻き消された。
それでも、彼には伝わっている。
今、それだけは信じられたのだった。


 ≪fin.≫
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