believed it
ぺたり、と座り込んだまま、固まってしまったひよのに、さすがに歩も少し心配になる。
「おい、あんまり座ってると、冷えるぞ」
「…ですか」
ひよのが下を向いたままなので、よく聞こえない。
歩がしゃがみ込んで、聞き取ろうと顔を近付けた途端、ひよのが、ぱっと顔を上げて叫んだ。
「つまり昨日のは、ぜーんぶ嘘で、皆さんグルになって私を陥れたって事ですか!?」
そりゃあ、怒るよなぁ。
他人事のように、ぼんやりと考えた歩は、ひよのの顔が赤くなっているのを見て、少し驚いた。
何やら、うっすらと瞳が潤んでいるようにも見える。
「…あんた、何泣いてるんだ?」
「泣いてなんか、いませんっ!!」
そう言いながらも、両手でごしごし、と目をこする。
その仕種が、やたらと子どもっぽくて、思わず笑みが零れた。
「鳴海さんこそ、何笑ってるんですか!?」
「そろそろ昼だし、何か食ってくか?」
立ち上がりながら話題をすり替え、さりげなく手を差し出す。
むぅ、と膨れながらも、少女は歩の手をとって立ち上がった。
「もちろん、ごちそうになります」
「そうか」
玄関を開いて、家の中を指し示すと、今度こそ彼女は黙って家に入った。
「確かに、メリットがなかった訳じゃないな」
玄関を閉じながら歩は、そっと笑う。
それは昨日の彼の、どの笑みより優しく、温かいものだったが、ひよのがそれに気付く事はなかった。
≪fin.≫
「おい、あんまり座ってると、冷えるぞ」
「…ですか」
ひよのが下を向いたままなので、よく聞こえない。
歩がしゃがみ込んで、聞き取ろうと顔を近付けた途端、ひよのが、ぱっと顔を上げて叫んだ。
「つまり昨日のは、ぜーんぶ嘘で、皆さんグルになって私を陥れたって事ですか!?」
そりゃあ、怒るよなぁ。
他人事のように、ぼんやりと考えた歩は、ひよのの顔が赤くなっているのを見て、少し驚いた。
何やら、うっすらと瞳が潤んでいるようにも見える。
「…あんた、何泣いてるんだ?」
「泣いてなんか、いませんっ!!」
そう言いながらも、両手でごしごし、と目をこする。
その仕種が、やたらと子どもっぽくて、思わず笑みが零れた。
「鳴海さんこそ、何笑ってるんですか!?」
「そろそろ昼だし、何か食ってくか?」
立ち上がりながら話題をすり替え、さりげなく手を差し出す。
むぅ、と膨れながらも、少女は歩の手をとって立ち上がった。
「もちろん、ごちそうになります」
「そうか」
玄関を開いて、家の中を指し示すと、今度こそ彼女は黙って家に入った。
「確かに、メリットがなかった訳じゃないな」
玄関を閉じながら歩は、そっと笑う。
それは昨日の彼の、どの笑みより優しく、温かいものだったが、ひよのがそれに気付く事はなかった。
≪fin.≫