20140531

【香亮】

昇降口で馴染みの背中を見つけた。
鞄を背負い直して気合いを入れたりしているから、慌てて声を掛ける。

「おい亮子!ちょっと待ってろ!」
「え、香介?何でここに」
「そりゃこっちの台詞だ。部活はどーしたよ」
「雨天解散だってさ」

ひょい、と竦めた肩を抱き寄せることなど、当然できやしない。だから代わりに

「ほら、入れてやるから走って帰ろうとかするなよ」
「い、いいよ別にっ」

ひるんだ彼女を強引に傘に入れて歩き出す。

「あ、ありがと」

小さな呟きは、雨音で聞こえない振り。
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