Shall we party?

話の流れで何気なく、俺の誕生日が既に過ぎていることを明かしたら、目の前の男が渋い緑の瞳を、ぎょっと見開いた。

「え、いつ!」
「半月くらい前だけど」
「なんでもっと早く言わないのさ!」
「いや、別に、言うほどのことじゃねぇかな、と」
「言うほどのことでしょ!」

だって誕生日だよ!?と、近付けて来た顔を、ぐっと押し戻す。

「自分が生まれた日なんて、忌まわしいだけだろ」

出来るだけ素っ気なく言うと、カノンがきょとん、と力を抜いた。
これで終わりかと思ったのに、相手が笑い出すものだから、なんだか拍子抜けしてしまう。

「あはは、浅月は真面目だなぁ」
「はぁ?」

決して褒めているようには聞こえない賛辞に、思わず眉間が寄る。
それに気付いたカノンが、表情を苦笑に変えた。

「誕生日といえば、自分の好きな人たちが、自分を中心に集まってくれる日でしょ?1年に1度のこのチャンスを逃すなんて、ホントバカなんだから」

にこにこと言われても、過ぎてしまったものは仕方ない。

「浅月は気負いすぎなんだよ」
「お前は余裕がありすぎだ」
「僕は、これでも強いからね」

ふふ、と嬉しそうに笑いながら立ち上がる。
何気なく目で追っていると、部屋に備え付けの電話で外線をかけているようだった。

「あ、もしもし?あのさ、今度の僕の誕生日なんだけど――」

「あ、ねぇ浅月!」

振り向いたカノンが、受話器を持たない方の人差し指をくるくる回しながら言う。

「高町亮子ちゃん?だっけ?は呼ばないの?」
「呼ぶわけあるか!」

あいつは日本だ、と続ける前に、カノンは電話に向き直った。


 【Shall we party?】


あぁ、でもまぁ、確かに悪くないかもしれない。
そんなことを思って、密かに笑ってしまったのは、電話のコードをくるくると弄びながら喋るカノンが、あまりに楽しそうだったからに決まっているのだ。絶対。


 ≪fin.≫
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