青い鳥、さえずる日に
「はぅあ~。ごめんね、カノンくーん」
大きな溜息をついて、ただでさえ小さな身体を益々縮めた少女に、本日の主役は、けろりと笑顔を返した。
「うん、まぁ休業日じゃ仕方ないよね」
「でもでも、あえて今日お休みしなくたって良いのに!ね、アイズくん!」
名指しで同意を求められたアイズは、表情を崩さないまま、小さく頷く。
「だが、前もって調べておかなかったリオにも、非はあるな」
「むぅ~、臨時休業なんて知らないよぅ」
不機嫌に口を尖らせると、元々の童顔が際立った。
本人はそれを気にしているようなのに、仕種が一々可愛らしい様子を見て、カノンとアイズが揃って首をすくめる。
それに目ざとく気付いて睨み上げた理緒に、2人が思わず苦笑を零した。
「2人せーので笑わなくたって良いのに~」
「あはは、ごめんごめん。相変わらず理緒は可愛いなぁって思ってさ」
「別にいーよ。元はと言えば、あたしが悪いんだし」
それはもう良いんだけどなぁ、とカノンが眉を下げると、理緒が両手を力いっぱい握り締める。
目の前のカップに注がれた紅茶が、ゆらりと波立った。
「ダーメ!絶対、ぜーったい連れてくんだから!」
力説する理緒を横目に、アイズが手元へ視線を落とす。
インターネットから地図をプリントアウトしたそれには、少女の丸っこい文字で『猫カフェ!』と赤マルチェックが入っていた。
「もうね。見付けた瞬間、カノンくんの為の場所だなって思ったの!」
アイズが顔を上げると、理緒が同じ紙を覗き込んで笑っている。
彼女いわく、猫に癒され、和み、幸せになれるカフェらしい。猫好きにはたまらない、という締めのコメントで彼も反射的に、カノンが猫と戯れる様子を想像していた。
「確かに、にゃんこカフェなんて、ものすごーく魅力的だけど」
アイズと理緒が顔を寄せ合って、にこにこしているのを眺めながら、カノンが機嫌よく紅茶をかき混ぜる。
ミルクをたっぷり注いだそれは、ふわりと柔らかく色を変えた。
「おかげで今日、のんびり過ごせてるワケだし」
「…まぁ、こういうのも結構、楽しいけど」
「でしょ?」
くすくすと肩を揺らすカノンに、理緒も力を抜く。
本人が構わないと言っているのだから、これ以上騒ぐ理由もなかった。
「誕生日なんかでなくとも、カフェくらい、いつでも行けるだろう」
「そうそう。日を改めて出直せば良いじゃない?」
「うん、じゃあ約束だからね!3人で猫カフェ!」
明るい宣言と共に、少女が右手を突き出す。
それに倣って少年たちの、形の良い手も重なった。
『Happy BirthDay KANON!』
「それにしても、誕生日プレゼントが次の約束だなんて、粋だよねぇ」
ふふ、と嬉しそうにカノンが首を傾げた。
「これが日本古来の、ワビサビってやつ?」
「それはちょっと違うと思うよ?」
呆れたように息を吐きながら理緒が、するりと手を引く。
それを合図に、同じく手を引いた2人が眉を上げた。
「予定とは違うけど、とりあえずケーキは食べようね!」
くるくると表情を変えてきた少女が、とっておきの笑顔を取り出す。
ぱっと花が咲いたような空気に、カフェに行かなくても充分だったな、とこっそり考えた。
『Happy BirthDay KANON!』
ささやかな幸せが歌う日、キミといられれば、それで。
≪fin.≫
大きな溜息をついて、ただでさえ小さな身体を益々縮めた少女に、本日の主役は、けろりと笑顔を返した。
「うん、まぁ休業日じゃ仕方ないよね」
「でもでも、あえて今日お休みしなくたって良いのに!ね、アイズくん!」
名指しで同意を求められたアイズは、表情を崩さないまま、小さく頷く。
「だが、前もって調べておかなかったリオにも、非はあるな」
「むぅ~、臨時休業なんて知らないよぅ」
不機嫌に口を尖らせると、元々の童顔が際立った。
本人はそれを気にしているようなのに、仕種が一々可愛らしい様子を見て、カノンとアイズが揃って首をすくめる。
それに目ざとく気付いて睨み上げた理緒に、2人が思わず苦笑を零した。
「2人せーので笑わなくたって良いのに~」
「あはは、ごめんごめん。相変わらず理緒は可愛いなぁって思ってさ」
「別にいーよ。元はと言えば、あたしが悪いんだし」
それはもう良いんだけどなぁ、とカノンが眉を下げると、理緒が両手を力いっぱい握り締める。
目の前のカップに注がれた紅茶が、ゆらりと波立った。
「ダーメ!絶対、ぜーったい連れてくんだから!」
力説する理緒を横目に、アイズが手元へ視線を落とす。
インターネットから地図をプリントアウトしたそれには、少女の丸っこい文字で『猫カフェ!』と赤マルチェックが入っていた。
「もうね。見付けた瞬間、カノンくんの為の場所だなって思ったの!」
アイズが顔を上げると、理緒が同じ紙を覗き込んで笑っている。
彼女いわく、猫に癒され、和み、幸せになれるカフェらしい。猫好きにはたまらない、という締めのコメントで彼も反射的に、カノンが猫と戯れる様子を想像していた。
「確かに、にゃんこカフェなんて、ものすごーく魅力的だけど」
アイズと理緒が顔を寄せ合って、にこにこしているのを眺めながら、カノンが機嫌よく紅茶をかき混ぜる。
ミルクをたっぷり注いだそれは、ふわりと柔らかく色を変えた。
「おかげで今日、のんびり過ごせてるワケだし」
「…まぁ、こういうのも結構、楽しいけど」
「でしょ?」
くすくすと肩を揺らすカノンに、理緒も力を抜く。
本人が構わないと言っているのだから、これ以上騒ぐ理由もなかった。
「誕生日なんかでなくとも、カフェくらい、いつでも行けるだろう」
「そうそう。日を改めて出直せば良いじゃない?」
「うん、じゃあ約束だからね!3人で猫カフェ!」
明るい宣言と共に、少女が右手を突き出す。
それに倣って少年たちの、形の良い手も重なった。
『Happy BirthDay KANON!』
「それにしても、誕生日プレゼントが次の約束だなんて、粋だよねぇ」
ふふ、と嬉しそうにカノンが首を傾げた。
「これが日本古来の、ワビサビってやつ?」
「それはちょっと違うと思うよ?」
呆れたように息を吐きながら理緒が、するりと手を引く。
それを合図に、同じく手を引いた2人が眉を上げた。
「予定とは違うけど、とりあえずケーキは食べようね!」
くるくると表情を変えてきた少女が、とっておきの笑顔を取り出す。
ぱっと花が咲いたような空気に、カフェに行かなくても充分だったな、とこっそり考えた。
『Happy BirthDay KANON!』
ささやかな幸せが歌う日、キミといられれば、それで。
≪fin.≫
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