5周年祝

合格通知は郵送でお送りします。
その文面を見たとき、玄関で正座して待ってるべきかな、と半ば本気で思いかけた。



「何でオメェの方が緊張してんだよ」

俺の通知だろが、と香介が片目を眇めると、亮子の肩がびくりと跳ねる。

「だ、だって、あたしはもう決まっちゃってるし…」



実際にはもちろん、リビングではらはらしながら待ち続けて、玄関のチャイムに飛びつきそうになるのを必死で堪えて、今に至るのだけど。



「自分のときは、けろっとしてたくせによ」

だって、ここで香介が落ちていたら、バラバラの大学に通うことになってしまう。
どうせ進学すると決めたのなら、同じ大学にいて欲しい。
そこまで言えずに黙って唇を噛むと、香介の手が頭に伸びてきて、ぽすぽす、と叩かれた。

「心配しなくたって、なるようにしかなんねーよ」
「その言い方が心配を煽ってんだよ…」
「あはは、悪ィな」

全然悪びれない様子に、はぁ、とため息を零す。
それを合図にしたかのように、香介が封筒をびりり、と豪快に破った。
亮子がぎょっと固まる。



「ほれ、合格おめでとうございますってよ。どーだ!」

偉そうに胸を張って、現れた合格通知を亮子の眼前に突き出した。



「………」
「…亮子?」

おい、何とか言えよ。そう言いながら通知を下ろすと、相変わらず亮子が固まっていた。

「おーい?」

ぱたぱたと手を振ると、思い出したかのように瞬きを繰り返す。
口を開けたり閉じたりして、結局何も言わないまま、手近にあったクッションを抱えて顔を埋めた。

「おい、亮子「―――」…あ、何だって?」

クッションに吸い込まれて、声が聞き取れない。
邪魔物を引き摺り出そうとして、激しい抵抗にあった。

「だーッ!何だよオメェはっ!」
「――!」
「あん?何だよ聞こえねーって」

瞬間、ばっと上げた顔は、クッションに押し付けすぎて真っ赤になっていて。

「だからっ!おめでとうって言ってんだよこの馬鹿!!」

言うや否や、投げつけられたクッションを、香介は甘んじて受け止めることにした。



≪合格≫

…そういえばこの2人が進学について歩に話に行ったのは、もう寒くなってから?だとしたら、亮子ちゃん推薦じゃないのか??
20080630+0707/Kohsuke*Ryoko
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