Good Morning to All
「はっぴばーすで~つーゆーぅ♪」
「ハッピバースデートゥーユ~♪」
同じ旋律を歌っているハズなのに、どうしてハモって聞こえるんだろう。
男女の声の高低さ、では説明できない気がする。
「あ、起きました?」
「おそよう、歩」
「…お前ら、うるさいぞ」
今日は風もなく、日向に出れば、ぽかぽかと暖かい。
誰もいない屋上で、うとうとしていたところを、調子外れなハーモニーで起こされた歩は、若干不機嫌そうに身体を持ち上げた。
「はっぴばーすで~でぃーあ、あゆーむ~♪」
「でぃーあ、なるみさ~ん♪」
歩の様子を見て、楽しげに目を合わせた火澄とひよのが、ばっと同時に両手を広げた。
瞬間、色とりどりに染まる空。
「……花?」
白っぽく霞む冬空をバックに、赤や黄色や青やピンクや、様々な色形の花が舞う。
その向こうで、満面の笑みを湛える2人。
髪についた大きな花びらをつまんで、歩は首を傾げた。
「何なんだ、これ」
「見ての通り、お花です。それは造花ですけど、そっちの小さいのとかは、ちゃーんと生花ですよ」
「フラワーシャワー用の花びらって、売ってんねんで。もう何でもあるんやな」
得意気に説明する少女と、興奮気味の少年を順に見て、歩がひとつ息を吐く。
「そうじゃなくて、何のつもりかって聞いてるんだ」
こんなに散らかして、と小姑のような呟きを零す主役に、2人が呆れた顔を見合わせた。
「ほら、やっぱ覚えてへんねや」
「あの、鳴海さん。今日って何の日だか、覚えてます?」
「………」
探るようなひよのの視線に、歩の顔が歪んだ。
「言っときますけど、鳴海さん自身のことでお願いしますね」
言外に歩の思考を指摘して、ひよのが人差し指をくるりと回した。
きょとん、と火澄が2人の顔を見比べて、視線を1往復させたところで、歩が小さく声を発する。
「あー、俺も誕生日、か」
そういえば、目覚めに聞かされた曲が、そう歌っていた。
見上げれば満足気に笑う2人の背後で、早くも橙を映し始めた空。
そろそろ引き上げなければ、身体が冷えてしまう。
そう思ったのが顔に出たのか、ひよのと火澄が両側から腕を掴んで、歩を引っ張り上げた。
「ね、せっかくですからケーキ食べに行きません?」
「そうそう、ココのカフェにもあるんやろ?俺、まだ行ったことないねん」
「ほら、誕生日にはやっぱり、ケーキですよ!」
するり、と同時に腕を絡められて、歩が諦めたように息を吐く。
そこに肯定(というより、むしろ許容)の意を感じ取って、両腕にぶら下がる2人が、くすぐったそうに笑った。
「あー、でもその前に」
「「?」」
きょとん、と笑みをしまい込んだ2人に挟まれて、思わず笑いを噛み殺す。
「あの花、ちゃんと2人で片付けろよ」
振り返れば、屋上のコンクリートに咲く色とりどりの花。
それはあたかも、3人の足跡を暖かく覆うかのように。
≪fin.≫
「ハッピバースデートゥーユ~♪」
同じ旋律を歌っているハズなのに、どうしてハモって聞こえるんだろう。
男女の声の高低さ、では説明できない気がする。
「あ、起きました?」
「おそよう、歩」
「…お前ら、うるさいぞ」
今日は風もなく、日向に出れば、ぽかぽかと暖かい。
誰もいない屋上で、うとうとしていたところを、調子外れなハーモニーで起こされた歩は、若干不機嫌そうに身体を持ち上げた。
「はっぴばーすで~でぃーあ、あゆーむ~♪」
「でぃーあ、なるみさ~ん♪」
歩の様子を見て、楽しげに目を合わせた火澄とひよのが、ばっと同時に両手を広げた。
瞬間、色とりどりに染まる空。
「……花?」
白っぽく霞む冬空をバックに、赤や黄色や青やピンクや、様々な色形の花が舞う。
その向こうで、満面の笑みを湛える2人。
髪についた大きな花びらをつまんで、歩は首を傾げた。
「何なんだ、これ」
「見ての通り、お花です。それは造花ですけど、そっちの小さいのとかは、ちゃーんと生花ですよ」
「フラワーシャワー用の花びらって、売ってんねんで。もう何でもあるんやな」
得意気に説明する少女と、興奮気味の少年を順に見て、歩がひとつ息を吐く。
「そうじゃなくて、何のつもりかって聞いてるんだ」
こんなに散らかして、と小姑のような呟きを零す主役に、2人が呆れた顔を見合わせた。
「ほら、やっぱ覚えてへんねや」
「あの、鳴海さん。今日って何の日だか、覚えてます?」
「………」
探るようなひよのの視線に、歩の顔が歪んだ。
「言っときますけど、鳴海さん自身のことでお願いしますね」
言外に歩の思考を指摘して、ひよのが人差し指をくるりと回した。
きょとん、と火澄が2人の顔を見比べて、視線を1往復させたところで、歩が小さく声を発する。
「あー、俺も誕生日、か」
そういえば、目覚めに聞かされた曲が、そう歌っていた。
見上げれば満足気に笑う2人の背後で、早くも橙を映し始めた空。
そろそろ引き上げなければ、身体が冷えてしまう。
そう思ったのが顔に出たのか、ひよのと火澄が両側から腕を掴んで、歩を引っ張り上げた。
「ね、せっかくですからケーキ食べに行きません?」
「そうそう、ココのカフェにもあるんやろ?俺、まだ行ったことないねん」
「ほら、誕生日にはやっぱり、ケーキですよ!」
するり、と同時に腕を絡められて、歩が諦めたように息を吐く。
そこに肯定(というより、むしろ許容)の意を感じ取って、両腕にぶら下がる2人が、くすぐったそうに笑った。
「あー、でもその前に」
「「?」」
きょとん、と笑みをしまい込んだ2人に挟まれて、思わず笑いを噛み殺す。
「あの花、ちゃんと2人で片付けろよ」
振り返れば、屋上のコンクリートに咲く色とりどりの花。
それはあたかも、3人の足跡を暖かく覆うかのように。
≪fin.≫
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