空とフェンスと、君の手と

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一方その頃、話題の少年はといえば、すっかり人気のなくなった校舎をふらふらと歩いていた。

「あーっ!こーすけくん、やっと見付けたっ」
「お、理緒じゃねーか。何か用か?」
「うん。ちょっとね…」

屋上から、随分離れた廊下。
その両端にいた2人だが、教室の扉が閉まっていることもあって、互いの声はよく響いた。
そのまま会話を続けることも出来そうだったのだが、それきり黙って走り寄って来る幼馴染みに、香介の方が早く辿り着く。
すると理緒は、ありもしない人目を気にするように、香介にぴたりと寄り添い、囁いた。

「亮子ちゃんのことなんだけど…」
「何だ?亮子に何かあったのか?」

理緒の真剣な表情に、知らず香介の瞳が鋭くなる。

「うんと…とりあえず、屋上に来てくれる?」
「お、おぅ。何なんだよ」
「いーから、早くっ」

引きずられるように、屋上に向かう。
前を走る少女が、悪戯な笑いを堪えていることなど、露ほども気付かずに。
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