空とフェンスと、君の手と

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「…で?どーしてカノンが来てる訳?」
「いやぁ、理緒が浅月を探してたから、もしかしてと思って。まさか歩くんがいるとは、思わなかったけどねぇ」

じろ、と睨んだ亮子の視線を笑顔で受け流す。
刹那、周囲の体感温度が、さっと下がった。

それを感じているのかいないのか、おずおず、といった仕種で、ひよのが前に進み出る。

「あの、一応言っておきますと、鳴海さんは亮子さんに頼まれて、し、か、た、な、くっ!ですね」
「あんたはうるさい。引っ込んでろ」

フォローした相手に邪険にされて、少女がぐりん、と方向転換する。

「ぬぁっ!?鳴海さん、何てことを!?」
「あー、とにかく、そういうコトなんだ。弟が引き受けてくれたからさ。カノンも協力してよね」

自分の後ろ髪を撫で付けながら亮子が言うと、カノンはぱちぱち、と瞬いた。

「協力って?」
「え、っとー…」

言い淀む亮子をちらりと見やって、歩が言葉を挟む。

「浅月を煽ってくれりゃ良いさ」

助かった、と亮子がアイコンタクトを飛ばす。
それと同時にひよのが、あぁ、と手を打った。

「なるほど。カノンさんなら適役かもしれませんね」
「ん、そうかな?」
「えぇ!その真っ黒なオーラを、これでもかと浅月さんにぶつけちゃって下さい!!」
「…頼むから、あんたは黙っててくれ」

カノンを敵に回すんじゃない、という歩の呟きは、誰にも届かず、空に溶けていく。
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