空とフェンスと、君の手と

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「…で。結果、事が大きくならずに済みそうで、特別嫌悪感も危険も感じない俺に、白羽の矢が立ったって訳か」

思いっきりトゲを強調して言うと、亮子がバツの悪そうな顔をする。

「そこまでヒドイ言い方はしてないよ」
「でもそういうコトだろ?」
「うん…まぁ」

認めた。
思わずきょとん、としてしまった歩が、やがて小さく笑う。

「…あんた、意外と素直なんだな」
「うっさいね!悪いかい!?」
「いや、全然。悪くないさ」

ふわり、と取り出された笑みに、一瞬、彼の兄がカブって見えて、亮子が息を呑む。
それには気付かない振りで、少年は軽く息をついた。

「で、それをやることで、俺は何か良い事でもあるのか?」
「んー…今度、何か奢るよ」
「ありがちだな」

正直な感想を述べると、亮子が眉間に皺を寄せる。
何か望みがあるなら言ってみな、と強い口調で言われたが、歩としても、特に見返りを求めるつもりはなかった。

「…ま、いいや。その代わり、後始末は全部、自分で付けてくれよ。俺の方も、だぞ」
「それはもちろん」

彼女の即答に、迷いは無い。

「なら、商談成立」

やっぱり、お人好しだ。
思わず浮かんだ感想を、亮子は胸に留めた。
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