空とフェンスと、君の手と

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すっと音もなく、ひよのが前に進み出た。

「では、そのぶった切られた内容とやらを教えて頂けますか?」
「?…嬢ちゃん?」

隣に並んだ少女に向ける視線には、既に敵意は欠片もない。
あぁ、と大袈裟に歩が息をついた。

「…だから、あんたには関係ないって言ってるだろ」

力の抜けた声で、先ほどの台詞を繰り返すと、ひよのがじと、と睨み上げた。

「関係なくないです。鳴海さんと亮子さんの会話だなんて、ものすご―――く興味がありますし」
「興味があっても、関係あることにはならないぞ?」
「何言ってるんです。私に隠し事をしようだなんて、良い度胸してるじゃないですか」

その手には、いつからあったのか、彼女の手帳。
にこぉ、と笑うひよのに、香介と歩が同時に1歩後退する。

「ちょ、ちょっと…」

さすがに嫌な予感がしたのか、亮子が声を掛けるが、ひよのは彼女に目もくれない。

「亮子さんは、黙っていて下さいね?」
「ほら、こーすけくん、今がチャンスだよ」
「え?あ、あぁ、そうか」

理緒の耳打ちで、香介が我に返った。

「亮子には俺が聞く。おい、何話してたんだよ」
「!浅月っ、だから彼女に振るなって!」
「ばかやろ、俺はオメェに用はねーんだ」

言いながら大きく1歩踏み出して、亮子の腕を掴む。
肩を押された歩は、眉を寄せるだけで抵抗はしなかった。
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