高町亮子

【う】


「ねぇ高町!海行かない?」
「は?何でこの暑いのに、そんな暑いトコ行かなくちゃなんないのさ」
「なーに言ってんのよ!せっかくの夏に、夏らしいコトしないで、どーすんの!」

友人の明るい台詞に、はっとした。
月並みな言葉というのは、皆が1度は感じることだからこそ、使い古されているというのに。

「なぁ、香介」
「あん?」
「海、行かないかい?」
「は?珍しいな。どうかしたのか?」
「今年の夏は1回しかないって、友達に言われてさ。妙に納得しちゃったんだよね」
「ふーん。まぁ、日本にいりゃ、夏は何回だってやってくるけどな」

何かを考えるように、しばらく目を泳がせてから、香介がニヤリと笑った。

「でも、行っとくか。今年の海も」

来年はどうしているか、分からないからこそ。
来年もココに来よう、と言えるように。



『うみ』
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