高町亮子

【た】


はぁ。

「あっ亮子!息吸って吸って!!」
「は?」
「いいから早くっ」

すぅ。

「もっと!」

すうぅ。

「もっともっと!!」

すうぅぅ。

「もっともっともっ「ぷは」

あ~、とわざとらしく嘆くカノンに、一発回し蹴り。
もちろん、最低限の動きで華麗にかわされる。

「ふざけんじゃないよ!」
「もう!ダメじゃないか、吐き出しちゃあ」
「吸ったもんは吐かないと苦しいだろ!?」
「溜め息つくと、幸せが逃げるって言うよ?」

やたらと真面目な顔で言うので、一瞬、思考が止まった。

「…カノン、まさかそんなの信じてんの?」
「そりゃ、深追いはよくないけど。逃がしたくないものは、ちゃんと捕まえとかなきゃね」

ふふ、と意味ありげに笑う。
彼が何を考えているのかは、相変わらず分からなかった。



『ためいき』
1/4ページ
スキ